読了の目安:約8分42秒

自閉症スペクトラムという言葉をご存じでしょうか。近年では発達障害が注目され、自閉症スペクトラムへの理解も広まってきています。しかし一方で「よくわからない…」「対処法に困っている」という方も多いことでしょう。今回は子どもたちの正しい支援のために、自閉症スペクトラムの特徴と対応を学んでいきましょう。

自閉症スペクトラム(ASD)ってなぁに?

話をする女性たち
「自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder(ASD)」とは、自閉症、高機能自閉症(知的な遅れを伴わないもの)、アスペルガー症候群、レット症候群、小児崩壊性障害、特定不能な幅広い広汎性発達障害を含んだ総称です。
 
症状の強さや特性によって、いくつかの診断名に分かれていますが、本質的には同じ1つの障がい単位と考えられています。
 

◆”スペクトラム”とは◆
スペクトラムとは英語で連続体のこと。例えば虹思い浮かべてみましょう。色が微妙に変わっており、明確な色の変わり目がくっきりと分かるわけではありませんね。そのように、同じような症状のある中でも、知的障がいの有無や、自閉度の強さが異なることから、それらを連続体として捉えようとする考え方が、自閉症スペクトラムなのです。

 

それぞれの障がいの特徴を知ろう!

地球のイラスト
まず自閉症スペクトラムの特徴は大きく分けて3つ。それは対人関係の障がい、コミュニケーションの障がい、想像力の障がいです。自閉症スペクトラムの子どもたちには、このような特徴がだいたい3歳くらいまでに現れるとされています。
 

◆自閉症スペクトラムの3つの特徴◆
対人関係の障がい ●人との関わりに無関心、関わりを避ける
●目が合いにくい
●一人遊びを好む
コミュニケーションの障がい ●表情が乏しい
●オウム返しが多い
●一方的にしゃべるなど会話に困難がある
想像力の障がい
(こだわり行動)
●相手の気持ちを考えられない
●変化を嫌いこだわりが強い
●人の視線がわからない

 
では自閉症スペクトラムに含まれる障がいについて、それぞれの特性をチェックしてみましょう。

◆それぞれの自閉症スペクトラムの比較◆
自閉症 1000人に1~2人の割合で発症します。女児よりも男児に多いとされ、その程度には大きな個人差があり、てんかん発作や睡眠障害を起こしやすいともいわれています。社会的対人関係やコミュニケーションで特徴が見られる傾向があり、知的障害がない場合には高機能自閉症と呼ばれます。

【主な特徴】
・目を合わせることが苦手
・言葉の遅れやオウム返しがよくみられる
・多動である
・こだわりが強い
・意思を言葉にできずパニックをおこす
・要望がある場合相手を引っ張っていくクレーン現象がある

アスペルガー症候群 男性の割合が4分の3ほどであるといわれています。自閉症によく似ていますが知的な障害はなく、高機能自閉症と同じように考えられる場合もあります。会話能力は正常であり、気付かれにくいケースもあります。特に想像力(こだわり行動)の点で特徴がみられます。

【主な特徴】
・社会的なルールの理解が苦手
・場の空気が読めず、自己中心的と誤解されやすい
・相手を傷つけることを思ったまま言ってしまうことがある
・ジェスチャーやアイコンタクトを交えて会話ができない
・車や鉄道など特定のものに強いこだわりがある
・興味のあるものに対する集中力や記憶力に優れている
・本人が決めたルールを変えることを嫌がる

小児期崩壊性障害 有病率は約0.01%で男児に多いとされています。2歳くらいまでは正常に発達するものの、その後対人反応障害がおこり、言葉がなくなるなどの退行がみられます。精神発達の退行は半年以内にストップすると言われていますが、自閉的な状態はその後も続くとされます。

【主な特徴】
・2歳以降に特性があらわれる
・言葉が出なくなる(有意味語消失)
・排便や排尿機能に問題が生じる
・運動能力の退行がみられる
・執着心が強くなる

レット症候群 女児に起こる進行性の神経疾患。生後6カ月ころまでは正常な発達を見せるのが特徴。1万~1万5千人に1人の割合で発症し、生後6カ月~1歳半の頃に発症します。

【主な特徴】
・常に手をもむような動作をする
・知能や言葉、運動能力が遅れる
・手をたたく、手を口に入れるなどを繰り返す
・昼夜の区別ができず睡眠パターンが安定しない

その他の広汎性発達障害 広汎性発達障害には、特定の診断基準を満たさないものの、さまざまな知的障害、行動障害、社会的関係上の問題が現れるケースも含まれます。特定の診断名が無い場合は、「特定不能の広汎性発達障害」と呼ばれます。

 
自閉症スペクトラムは、なんらかの脳の機能の問題が原因の障がいのため、治療を行えば完治するものではありません。多くの専門家がその治療法や原因の特定などの研究を行ってはいますが、現時点では治療法などが確立されているわけではありません。
 
特性をしっかり理解したうえで、適切な支援・援助を行い、その子どもたちがよりよく生きられる環境、体制を作り出してあげることが重要と言えるでしょう。
 

こんなときには?対応のポイントと正しい支援

春の鳥のイラスト
ではここからは、自閉症スペクトラムに多くみられる行動事例から、具体的な対応のコツをご紹介します。

◆ 指示が伝わらない

一見うなずいていたり、きちんと話を聞いているように見えても、なかなか言っていることを理解できないことがあります。そんな時にはその子の言語理解力を踏まえた適切な指示の出し方を考える必要があります。

★対応のポイント★
【視覚的に指示する】
絵やカード、文字を使って視覚的に見せることで理解が進むこともあります。
【簡潔明瞭に指示する】
指示は短く、また複数やらなくてはいけないことがある場合にも、一つひとつの行動に対して個別に指示しましょう。
【情報を整理する】
手を握りながら、頭をなでながら、など、他の行動を取りながら指示をすると混乱しがちなので、指示をするときはそれだけに集中しましょう。
【具体的に指示する】
「キチンと〇〇して!」などではなく「〇〇をこの袋に入れて」など具体的な言い方で伝えましょう。
【すぐに指示する】
いけないことをした場合には、その場ですぐに伝える必要があります。その場合には「〇〇しちゃダメ!」という否定形よりも「〇〇します」という肯定形に変換してあげると良いでしょう。

◆ ジッとしていることや時間を守ることが苦手

一見わがままのように見えるこの行動も、他者の気持ちがわかりづらい、状況判断が苦手といった特性が原因となっています。やるべきことが決まっているならば、例えばリストを作って具体的に指示する、ものごとに取り組む前に、何時まで何をするのか予定を伝えるなどして、予定を明確にしてあげましょう。

◆ やって良いこと悪いことの区別がしにくい

自閉症スペクトラムでは、暗黙のルール、常識といったものの理解が難しいとされています。自分や他人を傷つける行動や、社会に出て許されない行動については、具体的にどうすべきなのかを示しながら、根気よく教えることが必要でしょう。
 
ピクトグラムやリストなどを用いて、やってはいけないこと、やらなくてはいけないことなどをわかりやすく明示しても良いでしょう。

◆ コミュニケーションがうまく取れない

これは単なる言語の問題だけでなく、2つのことを同時にできないなどの認知上の特性が原因となっている場合もあります。「今度は先生がお話しする番です」など具体的にハッキリ指示する、また順番に話すということをあらかじめ伝えることも必要です。
 
身振りやしぐさも加えて、やりとりの機会を増やし、コミュニケーションの楽しさを少しずつ伝えていきましょう。

◆ パニックを起こしてしまう

パニックは、その子にとってよくわからないこと、伝えたいことが伝わらないことに対する混乱のしるしです。まずはパニックが起こりやすい状況を記録して、子どもが何に困っているのかを知りましょう。
 
見通しのある落ち着いた生活のリズムを与えることも大切です。変更点があるときには、前もって伝えておくことを心がけましょう。
 

★パニックが起きたら?★
まずは本人と周囲の安全を確保しましょう。ただし対応の際には、止める側はあくまで冷静に。説得したり怒鳴ることは状況をさらに悪化させるため、静かにクールダウンさせましょう。

◆ 強いこだわりがある

こだわりをなくすことを目指すのではなく、それが心の安定を保っていることを理解しましょう。その行動が本人や周囲にとって問題となっている場合には、時間帯や場所を限定してみたり、できない時にはできないことが明確にわかるようにする(例:バツ印を付ける)など工夫してみましょう。
 
予測ができないために変化を恐れる特徴もあるため、あらかじめ予定を明確に伝えることも大切です。

◆ 感覚が極端に敏感

触られるのを嫌がったり、爪切りなどを極端に嫌うなどがあります。無理やりやらせようとするのではなく、興味を引きだす導入を行ったり、「突然の変化」を防ぐために予告をするのも良いでしょう。

◆ 同じことを何度言ってもわからない

何度も同じ間違いを繰り返す場合には、その子が何が間違っているのか分からず、本人も混乱していることがあります。根気よく教えるとともに、よりわかりやすい方法はないか考え、図にする、写真を使うなどの工夫をしてみましょう。

 

困ったときは…保護者とも共有したい相談窓口

相談する女性のイラスト
自閉症スペクトラムの子どもたちに対して適切な支援を行うために、各地方自治体には、「発達障害者支援センター」が設置されています。発達障害者支援センターでは、発達障害のある本人やその家族、関係機関などの、さまざまな相談に乗り、その療育方法についてもアドバイスを行っています。
 
対応の仕方に困っている、という場合にはお近くの自治体に確認し、相談をしてみても良いでしょう。またセンターは自閉症スペクトラムの子どもを持つ保護者にとっても、良き相談窓口になってくれるはずです。もしも対応に困難を抱えているようならば、最寄りの相談機関を紹介してあげてもよいでしょう。
 

◆全国の発達障害者支援センター一覧◆
発達障害情報・支援センター

 

編集者より

自閉症スペクトラムでは、障がいの重さや診断名によって、抱える特徴に差があります。またその子なりのこだわりや、感じ方があるため、一概にこの行動にはこのように対処すれば絶対に大丈夫!という方法がある訳ではありません。
 
その子どもがより安心して、能力を伸ばしていけるように支援をするには、その子の様子や取り巻く環境を十分に観察し、どこに困難を抱えているのか理解しようとする姿勢が不可欠と言えるでしょう。知識を蓄えることと同時に、そういった姿勢も大切にしながら、多様な子どもたちの育ちを支えてゆきたいものですね。
 
※漢字表記については、厚生労働省および政府広報などに合わせて「障害」とさせていただいておりますが、「障碍」「障礙」「障がい」とも表記されます。
 

◆保育のお仕事人材紹介◆

保育のお仕事をお探しのあなたを私たちがサポートします!一緒にあなたにピッタリの職場を見つけていきましょう!お気軽にご相談くださいね!
保育のお仕事転職サポート

◆放課後等デイサービスSTEPのご紹介◆

障がいのある主に6歳~18歳のお子さまを放課後や長期休暇中などにお預かりしています。資格を持つスタッフが、自分らしく生活できるように、お子さまの自立を支援します。
⇒放課後等デイサービスSTEP
放課後等デイサービスSTEP

参考資料

ふぁみえーる
ALL You NeeD is InformaTion Blog
宮崎県自閉症協会
今日と総合教育センター|自閉症のある子どもへの支援ガイドブック
メルクマニュアル医学百科家庭版
行列のできる情報館

保育のお仕事
友だち追加