取材・インタビュー

「たとえ少数でも、ニーズがある限り続けていく」夜間保育園の園長先生に聞いた”保育の本質”とは?

「キッズタウンうきま夜間保育園」。
ここは全国に約80か所、東京都には2園しかない認可夜間保育園のうちのひとつです。
東京都北区、物静かな隅田川のほとりに構えられた保育園からは、子どもたちの元気な声が聞こえてきます。

そんな子ども達と保育士さんを優しく見守り、温かい声をかけて回っているのが、キッズタウンうきま夜間保育園の園長・新保美幸(しんぼ みゆき)先生。
元は24時間体制の乳児院に勤められていましたが、平成25年にうきま夜間保育園の園長先生に赴任されました。

今回は新保園長先生に、キッズタウンうきま夜間保育園の魅力や夜間保育園への思いについてインタビューしてきました!

夜間保育のリアルがここに。「キッズタウンうきま夜間保育園」密着リポートあなたは、「夜間保育園」についてどんなことを知っていますか? 夜間保育園とは、夜18時以降も保育サービスを提供する保育園のこと。主...

https://hoiku-shigoto.com/report/archives/18612/

    *シリーズ「保育ノゲンバ」は、保育施設や保育士・園長先生などにフォーカスし、保育の現場(ゲンバ)をお伝えするリポート取材連載です。

「子どもには、家でできないことをたくさん経験させてあげたい」

――キッズタウンうきま夜間保育園の特徴について、お聞かせください。

新保園長:「地域とのかかわりを大切にしている」点が大きな特徴だと思います。うきま夜間保育園は同じ施設内に介護施設と障害者の就労支援施設があるので、子ども達が普段接する機会のない年齢のおじいちゃん・おばあちゃんと触れ合ったり、ベーカリーカフェで働く大人達とのかかわりを持ったりすることができます。
そうした世代間交流ができるのは、子どもにとっていい影響になっているかなと思いますね。それ以外にも、地域の方と交流する機会を多く設けています。

――具体的にはどのようなものでしょうか?

新保園長:地域の保育ママさんの子どもたちを園の行事に誘って交流したり、当園の給食を体験してもらったりしています。あとは地域のボランティアさんにお話しや手遊び・人形劇などをしていただく機会も設けていますね。

――地域での交流がとても盛んなのですね。今後、何か地域交流について新しくやってみたいことなどはありますか?

新保園長:うきま夜間保育園を卒園していった子どものお母さんが運営している、近所の“子ども食堂”に何か協力できないかな、と思っています。

――夜間保育園の子ども達が野菜を育てている屋上の菜園、園内見学の際に拝見いたしました。園長先生が自ら土を耕されたとか……菜園を作ろうと思われたのはどうしてですか?

新保園長:保育園で過ごす時間が長いので、子ども達には家でできないようなことをたくさん経験させてあげたいと思ったからです。夜間保育園に通っていることで、一般保育園の子ども達に比べて経験不足になっていることがないようにと。おかげで、乳児でも土いじりの体験ができるようになりました。

「いつかはみんなママになるから、助け合おう」


――うきま夜間保育園で働く保育士さんの特徴はどのような点だと思いますか?

新保園長:「夜は家庭で過ごすように、好きなことをしてのんびり過ごそう!」という、穏やかでゆったりした保育士さんが多いですね。あとは男性保育士を積極的に採用していて、現在は4名の男性保育士が活躍しています。男性保育士は子どもにとって、お兄さんやお父さんのような役割になっていますし、夜遅くまで開園しているので防犯面でも安心ですね。職場結婚した職員もいるくらい、和気あいあいとした職場だと思っています。

――確かに、温和そうな保育士さんが多い印象を受けます。お子さんがいる保育士さんなどはいらっしゃるのでしょうか?

新保園長:いますよ! そういったママ保育士さんは増えてきています。彼女たちには早番をとってもらうシフトを組んで、遅番や夜勤はできる人で回していますね。「いつかみんなに(ママさん保育士になる)順番がくるから協力し合おう!」と声掛けをしています。

――産休・育休が取れないから辞める……というケースもある中で、職場全体でママさんに無理をさせないシフトを協力して組まれているのは素敵ですね。

新保園長:キッズタウンうきま夜間保育園では、夕食が終わるまでは各クラスの担任を配置していますが、夕食以降の遅番と夜勤は保育士を4名・非常勤を1名配置しています。少人数の子どもに対して手厚い人数の保育士を確保できていると思いますね。

――新保園長の目から見て、夜間保育園にはどのような保育士さんが向いていると思いますか?

新保園長:私が採用の際に重視するとしたら、「豊かな人間性と思いやりがあるか」という点でしょうか。夜間保育園では一般保育園よりも長い時間を同僚・子ども達と過ごすので、チームワークを構築する上で欠かせないポイントだと思います。

男性保育士さん。子ども達からは「第二のお父さん」として慕われていました。

「夜間保育園だから……」なんて偏見を作らない保育を


――保護者の方とのやり取りで、何か印象に残っていることはありますか?

新保園長:やっぱり「この夜間保育園があったから仕事を続けられました」と仰っていただけたときは嬉しかったですね。たとえ少数でも夜間保育のニーズがある限り続けていくのが使命だと思っているので、お役に立てたな、とやりがいを感じました。
……一方で、身の引き締まるような思いをしたこともありましたね。

――なにか、苦情などがあったのでしょうか?

新保園長:いいえ、クレームや苦情ということではないです。ただ、私がうきま夜間保育園の園長になって初めて出した卒園児の一人が、小学校の個人面談で「あー、夜間保育園出身なんだ」と偏見をもった言われ方をされた、と聞いて。その時はとてもショックでしたね。
「夜間保育園出身だから○○」、みたいなことを言わせないような保育をしなければいけないな、と思いました。

「子育ての権利を奪ってはいけない」


――夜間保育園を運営していく中で、意識しているのはどのような点ですか?

新保園長:「親御さんの子育ての権利を奪ってしまわないようにする」ということです。
キッズタウンうきま夜間保育園では、ご要望があれば園で子ども達をお風呂に入れることもできます。しかし、お風呂は貴重な親子のスキンシップの場なので、「どうしても園でやってあげた方がいいケース」なのかどうかを見極めることが大切だと思っていますね。

――実際にこちらの夜間保育園で働いていらっしゃる保育士さんも、「子ども達は家よりも夜間保育園で過ごす時間が長い」と仰っていました。その中では、親子が触れ合う時間というのは確かに貴重ですよね。

新保園長:はい。あとは、行事の後に預かる場合も対応に気を付けていますね。うきま夜間保育園では運動会などの行事の後でもお子さんをお預かりしているのですが、周りのお友達がお父さん・お母さんと帰っていく中で、自分だけ園に残る……というのはやっぱり、子どもにとっては寂しいと思うんです。
もちろん保育園では寂しくなったり心細くなったりしないよう、気を遣って保育しますけれど、そういうときは親御さんに「きちんと子どもの気持ちをわかってあげてくださいね」「お家でよくお話なさってくださいね」ということを伝えるようにはしていますね。
やっぱり、子育ての基本は家庭にある、と思っています。

※キッズタウンうきま保育園で働く保育士さんにもお話を聞きました!気になる方は↓の記事をチェック!!

https://hoiku-shigoto.com/report/archives/18612/

編集者より

明るくハキハキとした調子で、始終笑顔でインタビューに応じてくださった新保園長。子ども達や保護者の方、保育士さん、夜間保育にかかわるすべての人へ向けられた温かい眼差しを、お話を伺う中で幾度となく感じることができました。
保育士さんや子ども達からもたくさん慕われている様子だったのは、きっと新保園長の愛情が伝わっているからでしょう。

高いニーズがあるにもかかわらず、いまだ認知度の低い夜間保育園。保育士さんにも、保育を必要としている保護者の方にも、正しい認知が広まっていくことを願わずにはいられません。

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