取材・インタビュー

「子ども達の今が、その後の人生の基盤になるという緊張感」ロハスキッズ・センター クローバー密着レポート

東京都世田谷区、二子玉川。
多摩川を望む閑静な住宅街の中に、認可外保育園「ロハスキッズ・センター クローバー」はあります。
道路を挟んだ向かい側にある多摩川の土手を園庭代わりに、子ども達は毎日外遊びを楽しんでいます。自然の移ろいと触れ合い、子ども主体の時間を過ごすために、時には一日のほとんどを外で過ごすこともあるそうです。

ユニークな保育方針に惹かれる保護者の方は数知れず、区外からも入園希望の声が絶えないという「ロハスキッズ・センター クローバー」。今回は、そんな「ロハスキッズ・センター クローバー」の魅力についてじっくりお話を伺ってきました!

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「保育って、クリエイティブな仕事だと思う」ロハスキッズ・センター クローバー 高橋先生インタビュー東京都世田谷区・二子玉川に構えられた認可外保育園「ロハスキッズ・センター クローバー」。 ここでは「自然の移ろいと触れ合い、子ども主体...
    *シリーズ「保育ノゲンバ」は、保育施設や保育士・園長先生などにフォーカスし、保育の現場(ゲンバ)をお伝えするリポート取材連載です。

ロハスキッズ・センター クローバーとは?

PHOTO:Toshinari Soga(studio BAUHAUS)

「ロハスキッズ・センター クローバー」は、保育事業・アート事業を手掛ける株式会社Kleurが運営する認可外保育園です。「地域で育つ。社会で学ぶ。」をコンセプトとして、2004年9月に創業されました。
今年の4月にはアーティスト・JUN INOUEのアトリエとアートギャラリー「NAAM」を併設した新園舎(建築設計:日比野設計)が完成。子ども達が本物のアートに触れたり、作品が出来上がるまでのプロセスを見たりして過ごすことができます。

JUN INOUEのアトリエ
2階にあるアートギャラリー「NAAM」。保育室のすぐそばにある
6歳までの時期にどれだけの人が関わるか・どれだけのものに触れるかによって、その子の人生のベースは大きく変わります。乳幼児期の過ごし方がその後の人生に大きく関わるんです。だから少しでも、子ども達には『本物』に触れる機会をたくさん作ってあげたいと思っていますね。

株式会社Kleurの代表取締役にして、「ロハスキッズセンタークローバー」の園長・中田綾先生は、こうコメントされていました。
ドアノブひとつに至るまで中田園長がデザインされたというこだわりの園舎。
そこには、「子ども達に豊かな人間へと育っていってほしい」という思いが込められています。

施設の中を見学させてもらいました

広々とした、シックでおしゃれなエントランス PHOTO:Toshinari Soga(studio BAUHAUS)

中田園長に案内される形で、施設の中を見学させていただきました!
園内はとても保育園とは思えない、モデルルームのようなスタイリッシュな空間。園長先生や保育士の先生が長い時間を過ごすオフィスもカフェのような趣で、大人も子どももゆっくりと過ごせる場所になっています。

玄関から入ってすぐの場所にあるミーティングルーム PHOTO:Toshinari Soga(studio BAUHAUS)
アトリエ前でのんびり
2階へと続く階段。大きな窓からはたっぷりの自然光が差し込む PHOTO:Toshinari Soga(studio BAUHAUS)
保育室。広々としている PHOTO:Toshinari Soga(studio BAUHAUS)
元気な子どもたち
ガーデンから外へ飛び出す! PHOTO:Toshinari Soga(studio BAUHAUS)

どんな保育をしているの?

保育室にディスプレイされた本。細部に至るまでアートがちりばめられている

「ロハスキッズ・センター クローバー」の基盤となるオリジナルプログラムは、「外遊び・読書・生活面」から構成されています。
朝から夕方にかけての基本となるプログラムで、「時間に対する気付き」を育むことを意識しています。

1日の中でも、朝から夜へ時間が移り変わっていくにつれて、空の色や見える景色、感じる空気は変わっていくもの。1年を通しても、春夏秋冬の季節によって、草木の色や咲く花、飛んでいる虫の種類は異なります。
「ロハスキッズ・センター クローバー」では、そうした移り変わりに気付くことから「表現」が生まれると考えています。

春の匂いがするとか、木枯らしが吹くとどうなる? とか、そういった不意に出てくる言葉や感情があるかどうかで人間の深みはぐっと変わると思うんです。それが大人になったときに出てくるかどうかは、6歳までの乳幼児期にどれくらい自分自身で共感したか、体験したかに関わってきます。

時間経過に伴うさまざまなものの変化を、自分の五感できちんと感じられたか。そういった経験の有無によって、大人になってからの「表現」の幅は大きく変わってくる……と中田園長は言います。
外遊びにはもちろん身体作りのための目的もありますが、「ロハスキッズ・センター クローバー」では特にこうした「時間の気付き」を得ることを重要視しています。そのため、その瞬間しか見られないもののためであれば、給食を後回しにして外遊びに長い時間を取ることもあるのだとか。

こうした「時間の気付き」を大切にするプログラムは、子ども達にもいい影響を及ぼしていると言います。

先日、当園を卒園した小学生の男の子がたまたま来てくれていたのですが、背中がオレンジ色のクワガタの話をするのに「みんなが外遊びの時に見る、秋の夕焼けの色だよ」って表現したんです。それに対して、ほかの子ども達もすぐ「ああ、あの色ね!」と理解しました。そういう表現は、『引き出しを持っている』者同士でないと気付けないし伝わらないですよね。だから、たくさん表現の引き出しがある子どもたちは、とても幸せだと思います。
多摩川河川敷が子どもたちの遊び場

保育は「定点観測」――地域を巻き込んでのスペシャルプログラム

多摩川の土手を園庭代わりにした自由な外遊びなど、オリジナルプログラムだけでも十分にユニークな保育を実施している「ロハスキッズ・センター クローバー」。
しかし、この園では基本となるオリジナルプログラムのほかに、スペシャルプログラムと呼ばれる課外活動も実施しています。

園の目の前は見晴らしのいい土手 PHOTO:Toshinari Soga(studio BAUHAUS)

地域の方々と交流する多摩川の清掃活動や、企業と協力して行う会社見学、スウェーデン大使館への社会科見学など、さまざまな団体とコラボレーションしたキャッチーな活動が目立ちますが、実はこうしたスペシャルプログラムも、じっくりと時間をかけて行われているそうです。

ひとつのプログラムに対して、導入の時間をしっかり作るようにしています。たとえば動物園に行くとしても、動物に対する知識がない子は、ただ『動物がいる』と思うだけで終わってしまうんです。興味や関心を持てなくてぽかんとなっちゃう。ある程度知識や考える力を日常的につけておかないと、プログラムをやる意味がなくなってしまうんです。

さまざまなイベントごとを単発でたくさん実施するのではなく、ひとつのプログラムを年単位の長いプロジェクトにしていくことが「ロハスキッズ・センター クローバー」の大きな特徴。
プログラムを日常的な習慣にすることで、継続的な教育を実施することができ、子ども達もしっかり学びを得ることができます。

読書の時間

また、5年間同じ会社に見学しに行っていたこともあるそう。年少から数えると毎年3回は同じ場所へ行くことになりますが、それにもきちんとした狙いが。

保育で大切なのは定点観測なんです。毎年同じところに行っても、1年で子どもたち自身が変わっているから、1年後に得るものはまったく違う。その年ごとでどんな学びを得たか、その変化があるかどうかをきちんと見る必要があると思っていますね。

大人が3年連続で同じ場所へ見学に行っても得るものはあまり変わりませんが、乳幼児期の子ども達は毎年吸収するものが異なります。年少で一度見学しているからこそ、翌年、年中になって新しく理解できる学びもあるのです。

ひとつの物事について長期的に取り組み、年ごとの学びの差をきちんと引き出して子ども達に表現してもらう……こうした継続は、どうしても保育園の中で保育士さんだけで完結させるのでは限界があります。
そのために「ロハスキッズ・センター クローバー」では、企業や地域を巻き込み、「いっしょに子ども達を育てていきましょう」といったスタンスで教育プログラムに加わってもらっているそうです。
保育はいつか社会に返還できるもの。地域で一丸となって子どもを育てていくという姿勢が素敵ですね。

編集者より

スタイリッシュな園舎、自由でキャッチーな保育プログラム。
そういった目立ちやすいものの中にある本質は、「子ども達に豊かな人生を送ってほしい」という熱く真摯な願いでした。
中田園長が二十代で保育園の立ち上げを始めて以来、この信念はずっとぶれずに変わらないでいるそうです。

次回の記事では、そんな確固たる思いをもって「ロハスキッズ・センター クローバー」を運営されている中田園長から、保育への強い思いや柔軟な保育観のルーツについてお聞きします!

◆ロハスキッズ・センター クローバーについてはこちら

※この取材記事の内容は、2018年10月に行った取材に基づき作成しています。

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