取材・インタビュー

「子どもは生まれたときから学習している」認定こども園の園長先生が語る、本来あるべき保育の姿

「認定こども園 こどものもり」。
埼玉県松伏町の閑静な住宅街に構えられた、埼玉県で第一号となる幼保連携型の認定こども園です。

昭和46年に認可外施設としてとしてスタートしてから、平成13年の新しい園舎の設立をきっかけに認可保育園を併設。中央にランチルームを設えることで、子ども達が幼稚園と保育園を自由に行き来できる幼保一体型の施設になりました。
平成18年に認定を受けて埼玉県認定第一号の幼保連携型こども園として今日にいたるまで、実に47年もの歴史を歩んできたこども園です。

そんなこどものもりを運営しながら、長きにわたり地域に寄り添って保育に情熱をかけてこられたのが、こどものもりの園長・若盛正城(わかもり まさしろ)先生。
今回の記事では、異色の経歴をお持ちの若盛園長に、こどものもりの魅力や認定こども園への熱い思いについてインタビューしました!

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    *シリーズ「保育ノゲンバ」は、保育施設や保育士・園長先生などにフォーカスし、保育の現場(ゲンバ)をお伝えするリポート取材連載です。

「保育の仕事するのは、運命だったと思う」

――若盛園長が「こどものもり」の園長になるまでの経緯を教えてください。

若盛園長:私は元々こどものもりの敷地の隣にあるお寺(真言宗豊山派 宝珠院)に生まれ育ち、学生時代から域の保育のお手伝いをしておりました。お寺は地域住民が家族として集まる場ですから、子どもの保育に関する話題も身近だったのです。
幼児期こそ、基本的な生活習慣を身につける上で大切な時期です。その中で「子どもを中心として保育ができる施設を作りたい」と思い、こどものもりの前身となる施設を1946年に設立しました。ですので、肩書としては設置者兼園長となります。
ここで生まれて、地域とかかわりを持ちながら育ってきた人間ですので、私が地域の保育を助ける仕事をするのは運命だったと思いますね。なるべくして園長になった、という感じがします。

「幼稚園も保育園も、本来分けるものではない」

――こどものもりの大きな特徴として「異年齢保育」「幼保一体型」の施設であることが挙げられると思いますが、幼保一体型であることで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

若盛園長:そもそも、本来は幼稚園でいう「教育=学習」と保育園でいう「養護=生活」は、分けるべきものではありません。幼保一体型であることがメリットというよりは、本来保育はそうあるべきだと私は考えます。
なぜなら、子どもは生まれたときから、性善説で育っている(本能的に身に付いている善意の心で生きていると同時に、その経験から物事を学んでいる)からです。たとえば0歳児の子でも、何か不快なことがあったときに泣くのは本能ですが、同時に自分の意思表示のやり方を経験として学んでいるわけですね。

――子どもは生まれたときから学習している、ということでしょうか。

若盛園長:そうです。本来は、生活も学習も一緒にあるのが当然なのです。しかし、幼稚園と保育園とでは成り立ちが異なるうえ、それぞれ「教育」「養護」と違う言葉で表現してしまっている……教育と養護が別物のように扱われてしまっている期間が日本の歴史的には長かった。それを変えていくには、さまざまな法制度の改正が必要ですから、今すぐに幼保一体型にしていくことは難しいと思います。
現状では、生活と学習を一緒にできる、子どもたち主体の保育を行えるのは、認定こども園だけしかないと思いますね。今はやっと、幼保一体型が本来あるべき姿だという、土台ができたところだと思います。

――それでは、「異年齢保育」についてのメリットはどのようなものがあるでしょうか。

若盛園長:個性を優先して育っていく0~2歳の子どもたちと、集団生活の中で育つ3~5歳の子どもたちが、一緒になって生活できることが絶対的なメリットですね。生活の中で学びを得ていく0~2歳児と、集団の中で学びを基本として身に付けていく3~5歳児が一緒に生活することで、学びの相乗効果が発揮できると考えています。
相手への理解や気配り、感謝する気持ち、誰かのお世話をする……といったことを自然に身につけさせるのが、認定こども園の役割ですから。そのように育てていかなくては、社会参加ができないのではないかと私は思いますね。

――子どもが自分から進んで行動できる主体性と、違う世代の人とのかかわりを学んでいけるのが認定こども園というわけですね。

あなたは何のために、どうして保育をするのか

――若盛園長から、保育者や園長となる人に向けて、何か伝えたいことなどはありますか。

若盛園長:私は認定こども園協会の代表として、認定園の園長になろうとしている人たちに向けた研修を長年やってきていました。その中で必ず伝えていたのは「あなたが設立した乳幼児施設は、何のために、どうして立ち上げたのですか?」という部分に立ち返るべきだ、ということです。
「子どもたちに、人としてどういう生き方をしてほしいのか」「どういう人になってほしいのか」というポリシーや理念、哲学は、保育者や園長なら当然持っておくべきだと思いますね。
保育指針や教育要領はあくまで基準でしかありません。それを、どうやって子ども主体に読み取っていくかが大切だと思います。

先生たちも、主体的であってほしい

――若盛園長が、認定こども園に向いていると思うのはどんな保育者ですか。

若盛園長:そうですね。認定こども園に、というよりはこどものもりに向いている、という話にはなりますが……。うちでは面接試験をほとんどしません。質問するのは三つだけ、「子どもの頃、どういう育てられ方をしてきたか」「何か得意なことや自慢できることがあるか」「社会の中でどのような活動をしてきたか」ということです。
それぞれ、「乳幼児期に愛されて育ってきたか」「主体的にやっていることがあるか、発信できるか」「今までどのような経験を積んできたのか」を見るために聞いています。

――その意図はどのようなものでしょうか。

若盛園長:子ども主体の保育をするためには、保育指針や教育要領を読み取る保育者の価値観がとても大切なのです。ですから、その先生がどのような価値観を持っているのか、子どもたちとどう接するのかを見ていますね。
また、こどものもりでは子どもたちと同様に、保育者の主体性も大切にしています。ですから、先生が担当したい子どもの年齢もコーナー保育のコーナーも申告制です。
保育者たちも子どもと同様に、やらされるのではなく自分から主体的に行動する、ということを理解できる人が向いているのかなと思いますね。

編集者より

認定こども園に子どもを預けようか迷っている保護者の方も、認定こども園で働こうか迷っている保育教諭さんも、きっとネックになっているのは「認定こども園が具体的にどういうよさを持っているのか、今一つ伝わってこない」こと。
「保育者や園長がどう指針や要領を読み解いていくのか、そして自分達の保育をどのようにわかりやすく伝えていけるかが、認定こども園の課題」と若盛園長は仰っていました。

認定こども園は年々増加しており、今後も保育ニーズに合わせてどんどん展開していくことでしょう。
もし、あなたが働く場所として認定こども園を検討するのなら、「子どもたちにどう育ってほしいのか」を一度整理してみてはいかがでしょうか?

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