コラム

【コラム】心のお道具箱に増えていく、現場で役立つ先輩の教え

保育士になってまだ日が浅く、正直できないこと、イケてないことだらけです(笑)。
でも、そんな中で少しずつ、「困ったときに使える道具」を自分の心の中のお道具箱に蓄えながら日々を過ごしています。

学校で習ったことだけじゃダメだった


この前近所の公園に遊びに行ったときに、2歳児のSちゃんが固定遊具の段差を踏み外してしまいました。
見たところは踏み外しただけで、特にどこかを打ったりすったりしている訳でもなさそうだったのですが、Sちゃんはびっくりしたのか激しく泣き始めました。

近くにいた私はSちゃんに駆け寄りながら、専門学校の授業で先生から教わった「子どもが泣いていたらまず子どもの気持ちを受け止めて」という言葉を思い出していました。
Sちゃんに怪我が無いことを確認した後、私は気持ちを受け止めようと「痛かったかな。びっくりしたね」と声をかけました。しかし、Sちゃんはさらに激しく泣いたので、抱っこして再び声をかけてみました。

しばらくしても、Sちゃんは泣き止まないどころか、どんどん泣きが激しくなっていきます。
すると様子を見るに見かねて、O先輩がこちらにやってきました。
O先輩は私より少し年下なのですが、他の園では園長も務めたことがある大ベテランで、色々と頼りになる存在です。
O先輩は「ちょっと代わりますね」と私に声を掛けてSちゃんを抱き上げると、少し離れたお花畑の方に歩き始めました。
O先輩はSちゃんと一緒に花の名前を言いながら、きれいに咲いている花を指差してしばらく歩きます。するとSちゃんは、割とすぐに泣き止んで笑っていました。

後でO先輩が「ああいう時は、全然違うものに子どもの関心を向けさせた方が、気持ちが切り替わっていいのよ」と教えてくれました。次の日から、私も真似してやってみるようになり、私の心の中のお道具箱に「子どもの気持ちを受け止める」に加え「気持ちを切り替える」が加わりました。

アレで泣き止むの?


また別の日、お散歩に行くために1歳児のHちゃんをお散歩カートに乗せようとしたときのこと。
カートに乗りたくないらしいHちゃんは、抱き上げようとすると泣きながら踏ん張っていました。
手遊びや歌で一瞬ご機嫌になった瞬間に抱っこしようとするのですが、泣いて踏ん張っているので無理に動かせません。
Hちゃんが自分で歩きたくて泣いているのはわかっているのですが、オトナの事情がありまして、ここはカートに乗ってもらわないと困る状況なのです。

そこへO先輩が登場しました。手にはチャックの付いた「小銭入れ」を持っています。
O先輩が小銭入れをHちゃんに手渡すと、Hちゃんは夢中で小銭入れのチャックを開け閉めします。O先輩はその隙に、Hちゃんをカートに乗せて歩き始めました。
歩いて少ししたらO先輩はHちゃんの手から小銭入れを取り戻し、何事も無かったかのようにお散歩を続けました。

お散歩が終わった後、O先輩に「どうして小銭入れを出したんですか?」と尋ねると、「Hちゃんは今チャックに興味があるから、チャックが付いている物を見せるとそっちに夢中になるのよ。あれくらいの子だとカートに乗るのを嫌がっていても、乗る瞬間だけ他に気持ちを逸して乗っちゃえばその後は割とどうにかなっちゃう」と答えてくれました。
そして、「今は小銭入れが目新しくて効果あるんだけど、飽きたり違うことに興味が移ったりして、そのうち効かなくなっちゃうかも」と笑いながら付け加えました。

この日から、私の心の中のお道具箱に「子どもがそのとき興味を持っているものを使ってみる」が加わりました。
お道具箱の中身は、このように他の人が教えてくれるものもあれば、学校で教わったこと、自分で試行錯誤してわかったことなどでさまざまですが、どれも私を助けてくれます。
これからもっと、保育士の仕事の中で役に立つ「道具」を増やしていけたらいいな、と思っています。

ABOUT ME
よこ
事務職OLから、ハローワークの職業訓練を経て保育士と幼稚園教諭の資格を取得した四十代の新人保育士。いつか自分で子ども向けの事業を立ち上げたいと思い、現在は経験を積むために保育士として修行の日々を送る。 変顔で子どもを笑わせるのは得意だが、制作は苦手なのでどうにか避けられないかと密かに画策している。また、保育士と並行して、自分の思いや学びをアウトプットしていくために、ライターとしても活動。
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