コラム

【コラム】新人保育士が子どもたちの個性に学んだ、保育の奥深さ

今、私は0歳児の担当をしています。
子育てをしている方から「同じように育てたはずなのに、兄弟姉妹が全く違うように育つ」という話を聞くことがありますが、保育園の友だち同士はなおのこと、異なる個性を持って日々育っています。

例えば、Sちゃんは目に障害がありますが、歩くのも上手で室内用の小さいジャングルジムに登ることもでき、他の子どもたちを上回るくらい活発に遊んでいます。
そのため、子ども6人に対して保育士を加配で1人増やして3人配置した上で、他の子どもと特別に区別することはなくいっしょに保育しています。

硬いブロックでケガ! 園がとった対策は


ある日、Sちゃんは皆と一緒にプラスチックのブロックおもちゃで遊んでいたのですが、転倒してブロックの角に頬をぶつけて、顔に痣を作ってしまいました。
数日前には窓の桟にぶつかってやはり顔に傷をつけてしまったところだったので、保育者同士の話し合いで決定して、硬い角があるプラスチックのブロックは使わないことになりました。
とはいえ、自分で形を作って創造性を養う造形遊びは子どもの発達に大切で、ブロックに代わる遊びは必要です。

次の日、ニコニコ顔の園長が手に何かを抱えて0歳児の保育室にやってきました。
手に持っていたのは柔らかいウレタンでできた積み木セット。
0歳児の皆は積み木を手に大喜びで遊び始めました。ウレタンなら上で転んでも傷になりにくくて安心、めでたしめでたし。

一難去って、また一難!?


と思ったら、ここで新たな問題が発生。
何でも口に入れる時期の子どもたちは柔らかいウレタンも口に入れてかじります。ウレタンの感触がふかふかで、なんだかおいしそうなのですね。
プラスチックであればおもちゃをかじっても後で消毒すればいいのですが、ウレタンの場合は噛みちぎってしまって誤飲しないか気がかりです。

特に、おいしいもの大好きで給食もいつもおかわりするKくんは、ウレタンをよだれでデロデロにしながら思い切りかじるので、誤飲しないように「ベーして」と声をかけて口の中をチェックするのが必須になってしまいました。
体格が良くて力も強いYちゃんは、天性のかじり本能に火が付いた(?)のか友だちの腕をかむようになり、ますます目が離せなくなりました。

あちらを立てればこちらが立たずという言葉がありますが、プラスチックのブロックをウレタン製に替えることで問題を一つ解決したように見えても、他に注意しなければならない事項が以前より増えたのかもしれません。

個性が集まる保育の、難しさと奥深さ

発生した問題を解決する場面において、その対象の子どもだけでなく他の子どもに与える影響も考慮する必要があるのということが身をもってわかったように思います。
特に、子どもたちは様々な個性があり、その個性を持つ子どもが同じ場所で生活する保育の難しさというか奥の深さを実感しました。

と言っているうちに、目に障害のあるSちゃんの動きが最近更に良くなり、「もしかして見えているのでは」と保育者の間で話題になっています。
「今ならプラスチックのブロックに戻しても大丈夫なのでは?いや、でもやっぱりウレタンの方が安心かも?」と、私は自問自答を繰り返しています。
そして、満面の笑顔でウレタンブロックを舐めているKくんを見ると、誤飲の危険がないか確かめつつも、かわいらしくてついつい「Kくん、おいしい?」と聞いてしまうのでした。

ABOUT ME
よこ
事務職OLから、ハローワークの職業訓練を経て保育士と幼稚園教諭の資格を取得した四十代の新人保育士。いつか自分で子ども向けの事業を立ち上げたいと思い、現在は経験を積むために保育士として修行の日々を送る。 変顔で子どもを笑わせるのは得意だが、制作は苦手なのでどうにか避けられないかと密かに画策している。また、保育士と並行して、自分の思いや学びをアウトプットしていくために、ライターとしても活動。
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