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忙しい毎日を送る保育士さんにとって、ホッと心身を休ませることができる休日は、貴重な時間。しかし、「せっかくのお休みなのに仕事のことが頭から離れず、ちっとも気が休まらなかった……」そんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。

今回は、精神科医・産業医としてご活躍されている、奥田弘美先生に、休日に心と体をリフレッシュさせて、より有意義な時間に変えるためのコツを教えていただきました!

休日は心身の「休息」と「リフレッシュ」のための時間

保育士さんの困った表情

せっかくのお休みなのに、先週仕事でミスをしたことを引きずってしまって……。気持ちが沈んでしまってやる気がおこらないんです。

奥田先生

お気持ち、とてもよくわかりますよ。
でも、休日は心と体に休息を与え、リフレッシュさせてあげるための大切な時間。今回は、どうしたら休日をより充実した時間に変えられるか、いっしょに考えていきましょうね!

 

休日の「ストレス思考」は体の不調にもつながる

休日に仕事のことを考えてしまっても、それがポジティブな思考や感情からくるものであれば、大きな問題はありません。

たとえば、「今仕事において、夢中で取り組んでいることがあって、楽しくてたまらない。だから休日もそのために勉強をしたい!」といった思考の場合、睡眠と食事をきちんと摂って体を休めることに気を付ければ、あえて頭のなかから仕事のことを排除する必要はないでしょう。

いっぽう、ネガティブな思考や考え、つまり「ストレス思考・感情」が原因になっている場合や、自分が「オフ」の状態になりたいと思っているにもかかわらず、「オン」の状態を引きずってしまっている場合には、注意が必要です。

たとえば、「先週の仕事での嫌なできごとを、どうしても思い出してしまう」というような場合には、せっかくの休日も楽しめませんよね。

休日とは「心と体の休息」と、次の一週間を元気に過ごすための「リフレッシュ」という2つの重要な役割を担っています。

イライラや怒り、不安、後悔……そういった「ストレス思考・感情」にとらわれ続けていると、気づかないうちに、心や体からエネルギーが吸い取られていってしまいますので、心身の重大なトラブルにもつながりかねません。

【ストレス思考・感情が引き起こす心身トラブルの例】
・憂うつになり、なにもやる気が出なくなる
・不眠
・感情が不安定になる。
・食欲不振
・出勤前の吐き気や腹痛

だからこそ、休日には、仕事におけるストレス思考・感情から離れ、心と体をゆっくりと休ませてあげることが必要なのです。

保育士さんの驚いた表情

心と体をきちんと休めることが、次の一週間の活力になるんですね。

笑顔の奥田先生

そのとおりです!ここからは、ストレス思考・感情から離れて、穏やかな休日を過ごすためのトレーニング法をご紹介しますね。

 

心身をゆったり休めるためのトレーニング「心を観る瞑想」

空のイメージ写真
休日に心身をゆったり休め、リフレッシュするためには、とらわれてしまっている「ストレス思考・感情」に気づいて、それらを手放すことが必要です。

そのために今回ご紹介するのが、心のトレーニング法のひとつである、「心を観る瞑想(ヴィパッサナー瞑想)」( ※以下「心を観る瞑想」と表記します)です。

「心を観る瞑想」は、前回の記事でご紹介した、マインドフルネス瞑想のうちのひとつ。呼吸を意識のベースにしながら、次々とわいてくる思考に気づき、観ていく瞑想法です。

奥田先生

ストレス思考・感情にとらわれている自分の状態に気づいて、休日の『今、この瞬間』を大切にしながら過ごせるよう、いっしょに心をトレーニングしていきましょう!

 

「心を観る瞑想(ヴィパッサナー瞑想)」をやってみよう!

ではさっそく、「心を観る瞑想」のやり方をご紹介していきます。

【1】胡坐(あぐら)をかくか、イスに座りましょう

床に座布団などを敷いて胡坐(あぐら)をかく、またはイスに座りましょう。
ヴィパッサナー瞑想

【ポイント】
胡坐をかくのは、骨盤から背筋をスッと伸ばす姿勢を作りやすくするためと、床に長時間座っても足がしびれないようにするため
胡坐の姿勢で座るときには、体が安定するように土台を作るイメージで、無理なく座るようにしましょう。
【ポイント】
手の重ね方・置き方に、とくに決まりはありません。
マインドフルネス瞑想を創造したブッダに習い、左手を下にして右手を上に重ねる方が多いですが、自分が落ち着けるかたちであれば、どのようなかたちでもかまいません。

【2】背筋を伸ばしましょう

座ったら、背筋をスッと伸ばして姿勢を整えます。

【ポイント】
姿勢を崩したままだと、ネガティブな思考にとらわれやすくなってしまうだけでなく、刺激が少ないため、眠気を引きおこす原因にもなります。
瞑想を行うときは、かならず背筋をしっかりと伸ばしましょう

【3】目を閉じ、鼻先の空気の流れを意識しながら呼吸を繰り返します

目を閉じて、鼻から息をゆっくり吸い込みながら、鼻先を意識します。
空気が鼻腔の中を通る感覚をもっともとらえやすい場所を一点決め、そこで空気が入ってくる感覚を感じます。

つづいて鼻から息を吐きながら、空気が出ていくときの感覚を同じ場所で感じましょう。

鼻先の空気の流れに意識を集中しながら、呼吸を何度も繰り返していきます。

呼吸法

【4】思考や感情が生まれたらそのことに「気づき」、呼吸に意識を戻します

瞑想を始めてしばらくすると、さまざまな思考や感情が浮かんでくるのが普通です。一時はその思考や感情に意識がとらわれることもあるでしょう。

そのときは、「〇〇のことを考えていた」「××を思い出していた」というように、その思考についてしっかりと気づいてください。そして、気づいたあとにはまた、静かに鼻先の空気の流れへと、意識を戻していきます。

ヴィパッサナー瞑想

【ポイント】
この瞑想の目的は心を「無」にすることではありません。思考や感情が浮かぶのはあたりまえ。呼吸から意識が離れても「集中力がないな……」などと自分を責めたりしないようにしましょう!

【4】ある程度繰り返したら「目を開けます」と心の中で言って目を開けます

「満足した」と感じ、心が落ち着いたところで、心のなかで「目を開けます」と言ってから、瞑想を終了しましょう。

【ポイント】
瞑想を続けるなかで「つらい」と感じたときには、瞑想を終了するようにします。無理をしない範囲で取り組むことが大切です。

「心を観る瞑想」で期待できる効果とは?

では、この「心を観る瞑想」は、どのような効果が期待できるのでしょうか。

自分がとらわれている思考や感情などが見えてくる

目を閉じてじっと座っていると、心にさまざまな思考が浮かんできます。

その思考に気づいて、ふたたび意識を鼻先の呼吸に戻すことを繰り返すことで、
思考に囚われずに流しやすくなっていきます。またそれを繰り返している中で自分が気になっていることや、自身の思考の根底にあるものに気づくこともあります。

自分が「思考や感情にとらわれている状態」に気づきやすくなる

「心を観る瞑想」は、心に浮かんだ思考を手放すということを繰り返していく、いわば「心のトレーニング」。繰り返し行うことで、思考や感情に飲み込まれてしまっている自分の状態に気づく力が高まっていきます。

思考が連鎖したり増幅したりする状況が見えてくる

思考というものは連鎖していくものです。

たとえば、救急車の音が聞こえたとしましょう、すると「救急車の音が聞こえる」→「そういえば2年前に事故で車をぶつけてしまったっけ……」→「私は注意力が散漫だなあ」→「そういえば仕事でもこんな些細なミスがあったな……」というように、思考を連鎖させることで、より不安や妄想をかきたててしまうことがあるのです。

瞑想を続けて心をトレーニングすることで、このような思考の連鎖があることに気づき、自分自身でネガティブ思考を膨らませてしまうことを防ぐことができるようになっていきます。

「気づく」ことが「今、ここ」の瞬間を大切に生きるための第一歩

「心を観る瞑想」で、自分自身が思考や感情にとらわれているということに気づくことは、それらを手放すために欠かせないステップです。

過ぎ去った過去に対する後悔や怒り、まだ起こっていない未来に対する不安というような、ストレス思考・感情に気づくことでネガティブ思考と距離をとることができます。そしてさらに瞑想を活用することで、少しずつそれらを手放すことができるようになっていきます。

すぐに完ぺきにネガティブ思考を手放すことは難しいと思いますが、これらを繰り返すことによって「今、ここ」の瞬間を大切にしながら、より有意義な時間を過ごせるようになるでしょう。

瞑想をするときには、こんなことに注意しましょう!

マインドフルネス
「心を観る瞑想」を行う際には、次のことに注意しましょう。

◆自分に強要しないこと
まずは数分~30分程度を目安に、瞑想に取り組むことをおすすめしますが、「〇分間続けなくては」と自分に強要しないようにしましょう。
その日の体調や心の状態にあわせて、無理のない範囲で行うことが大切です。
◆短時間でも繰り返し瞑想を続けること
マインドフルネス瞑想は、「心のトレーニング法」。一度の瞑想でも心の休憩にはなりますが、前述してきたような効果を得るためには続けることが必要です。短時間でもよいので、休日など時間の余裕があるときに、繰り返し実践することをおすすめします。
◆予定を控えているときには……
瞑想をしていると心地よく、その後の予定を忘れて没頭してしまうこともあります。もしもやるべきことが後に控えている場合には、タイマーなどを活用してみるとよいでしょう。

うまく思考・感情を手放すコツは「エネルギーの無駄遣い」を自覚すること

呼吸に集中しながら、思考や感情にとらわれていることに気づき、それらを手放すことを繰り返す「心を観る瞑想」を行っても、なかなかネガティブ思考はきれいさっぱり消えてくれないことも多いもの。イライラや不安、心配などは繰り返し沸き起こってくることが普通です。

そんなときに重要なのは、過去のできごとへのクヨクヨした執着と、まだ見ぬ未来への漠然とした不安は、あなたの貴重な時間と労力の「ムダ使い」だということを、頭に置いておくことです。

もちろん過去に対する「適切な反省」や、未来に対する「必要な準備」をすることはよいのです。しかし仕事で過去に失敗したことをいくら悔んでも、失敗はなかったことにはなりません。また、「明日の行事、うまく進行できなかったらどうしよう……」と不安がったところで、未来のことはどうなるかわかりませんよね。

「今やるべきことに集中せず、過去や未来にばかり引きずられているというのは、エネルギーの無駄遣いである」

このことをしっかり認識していると、自分がどうすることもできないことに心をとらわれていることに気づいたとき、思考・感情を手放しやすくなっていきます。

こんなときはどうする?お悩み相談室

保育士さんのイラスト
では、ここからは「心を観る瞑想」を実践するうえでのお悩みに、いくつかお答えしていきましょう。

【お悩み1】周囲の音がとても気になってしまいます……

その音への気づきも、じつは「心を観る瞑想」のおもしろさのひとつです。

瞑想をしていると、時計の秒針の音や、外で近所の人がしゃべっている声など、普段気づかない音にも気づくようになるでしょう。

音に気づいたら、「あ、〇〇の音に気づいたな」と意識して、また鼻先の呼吸に意識を戻すようにしましょう。

奥田先生

雑音が多い環境のなかでは、集中力が途切れてしまいがちです。瞑想に不慣れなうちは、できるだけ静かな環境で行うようにするとよいですね。

 

【お悩み2】なかなか一人になる時間がなくて……

ご家族と同居されている場合など、親しい人のなかで、自分だけ目を閉じて瞑想をすることには、抵抗がある方も多いでしょう。

そんなときには一人になれる入浴の時間に、瞑想をしてみるのもおすすめです。

「心を観る瞑想」は、かならずしも座禅を組む必要はありません。イスなどに背筋を伸ばして座り、目を閉じることができれば屋外でも実践することができます。

奥田先生

慣れてきたら、通勤電車の中や公園のベンチなどで瞑想をしてみてもよいでしょう。

 

【お悩み3】週に1回でも効果はありますか?

できれば毎日1分ずつでも何らかの瞑想を続けた方がベストですが、忙しいときは無理をせずに、負担のない範囲で実践してみてください。徐々に瞑想の効果が実感できるようになるはずです。

【より深く理解するために】マインドフルネス瞑想のルーツと「無常」の概念

今回ご紹介した「心を観る瞑想」を含め、マインドフルネス瞑想は、2500年前にブッダが悩みや苦しみを滅するための教え(八正道)の中で、心のトレーニング法として創造し、広められた瞑想法がベースになっています。

ブッダの教えと聞くと「宗教」のイメージを抱く方が多いかもしれませんが、本来ブッダの教えはいわゆる宗教ではなく、人生の苦しみを滅するための理論と、それを身につけるための心のトレーニング方法でした。

マインドフルネス瞑想をよりよく知り、「今、ここ」の瞬間を大切に生きようとする生き方ができるよう、最後にその教えを少しだけご紹介しましょう。

「執着」と「無常」の概念

人は楽しい時間や大切にしているものは「ずっとこのままであってほしい」と望み、失うことを恐れてしまいがちです。これは、変わり続けるものに「執着」してしまっているため。

「執着」を強く持てば持つほど、「常に人から認められていたい」「失敗したくない」「ずっと若く美しくいたい」というような欲望が生まれ、自分自身を苦しめてしまうことにつながっていきます。

ブッダは「この世のすべては無常である」と説きました。無常とは、すべての物・人・状態は、常に変化して、同じ状態で留まっていることはできない、ということです。

私たちの大切にしている物も、人も、周囲からの評価も、自分の体や心、そして自身が置かれた状況も、かならず変化していきます。よいこと・楽しいことも永遠に続くわけではなく、逆に悪いこともまた、いつまでも続くわけではありません。

なにかに強く執着して「無常」と逆行するような欲望を持てば、それが苦しみにつながっていく。そして今苦しい状況でも、「今、ここ」に目を向け、前向きに過ごしていれば、いずれ状況は変化する。ブッダが説いたのは、そんな心理学・哲学的な内容だったのです。

マインドフルネス瞑想=「無常」の実体験

今回ご紹介した「心を観る瞑想」では、次々に浮かんでくる思考や感情に気づいては、鼻先の呼吸に意識を戻す、ということをひたすら繰り返しますね。

これは、まさにブッダの説いた「無常」を実体験していることになります。

意識や感情は常に変化していき、心がひとところにとどまることはない。それを、瞑想を通じて実際に体験することで、なにかに執着し、心がとらわれてしまっている自分自身の状態に気づきやすくなり、それらの思考や感情を手放して「今、ここ」に意識を戻すことができるようになっていくのです。

笑顔の奥田先生

「なぜ鼻先の呼吸に意識を集中するのか」という、目的や意義を理解すると、瞑想を続けるモチベーションアップにもつながります。

休日にストレス思考・感情にとらわれてしまって、心が休まらないという保育士さんは、ぜひこの「無常」を意識しながら、継続して「心を観る瞑想」を実践してみてくださいね!

 

編集者より

花のイラスト
休日は、毎日頑張って働いている保育士さんにとって、限られたご褒美の時間です。仕事のことを引きずって有意義に使えていないならば、それはとても「もったいない」こと。

もしも休日に心が休まらない、前向きな気持ちになれない……という場合には、ぜひ今回ご紹介いただいた瞑想法を活用し、「今、ここ」の瞬間を大切にできるマインドフルネスな時間を取り戻してくださいね!

この記事が一人でも多くの保育士さんの、充実した休日の時間の創出につながること、そして、一人でも多くの保育士さんが、笑顔で休日を過ごすことができることを心から願っています。

次回は月曜の朝が憂鬱な「ブルーマンデー」の対処法について、引き続き奥田先生にお話をうかがいます。どうぞお楽しみに!

◆奥田弘美先生について◆

奥田弘美先生
奥田 弘美(おくだ ひろみ)

精神科医、産業医(労働衛生キャリアアドバイザー)
作家、日本マインドフルネス普及協会代表理事

平成4年山口大学医学部卒。
精神科医・産業医として都内20か所の企業で産業医として
働く人の心身のストレスケアに携わるほか、
日本マインドフルネス普及協会を仲間とともに設立し、マインドフルネスの普及活動も行っている。
著書にはベストセラーとなった「心の折り合いをつけて、うまいことやる習慣」(すばる舎)
「何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから」(扶桑社)のほか、
「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)
「図解・めんどくさいをスッキリ消す技術」(マキノ出版)、など多数。


毎日忙しい人や、はじめてマインドフルネス瞑想に取り組む人にもわかりやすく、マインドフルネスとその実践法について紹介されています。

 

    ※本連載でご紹介しているマインドフルネス瞑想は、「悟り」を目的とした瞑想修行や、病的症状の治療を目的とする集中プログラムではありません。
    ※心身の病気などで医療機関にかかっている場合などには、主治医に相談し、許可をうけたうえでマインドフルネス瞑想を取り入れることをおすすめします。

 

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