保育の基礎知識

保育園の運営主体「社会福祉法人」と「株式会社」はどう違う?

保育園の設置主体制限が撤廃されて20年あまり。
それまで公立と社会福祉法人しか認められなかった保育園運営にも、今では多くの学校法人や宗教法人、株式会社などが参入するようになりました。

しかしながら保育士さんの中には、
「運営主体が違うからって、何か働き方が変わるの?」
「学校では社会福祉法人の運営する園を勧められたけど、株式会社よりいいところがあるの?」
といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、保育園の主な運営主体「社会福祉法人」と「株式会社」を比較していきます。

そもそも「社会福祉法人」「株式会社」ってなに?

社会福祉法人

2つの運営主体について違いを見ていく前に、まずは社会福祉法人と株式会社とは何か、確認しておきましょう。

社会福祉法人

「社会福祉法人」(通称:社福)はその名の通り、保育・医療・介護などの社会福祉事業を行うために設立された公益法人です。都道府県や政令指定都市、中核市が所轄となります。

寄付金や補助金を資金として、障害者・高齢者などを対象とした各種福祉施設や、保育所、病院や診療所などの医療機関を運営することがほとんど。
中には介護福祉士や保育士を養成する専修学校を運営している法人もあり、同じ法人内の福祉施設と連携していることもあります。

株式会社

事業を興す際に必要な資金を投資家から集め、それに対して株式(受け取った資金に対する証書)を発行する会社を「株式会社」といいます。

営利目的で事業を展開できることが主な特徴。
保育業界には2000年の規制緩和より参入し、とくに都市部を中心に保育園を開設してきました。

「社会福祉法人」と「株式会社」の違いは?

社会福祉法人

「社会福祉法人」と「株式会社」のもっとも大きな違いは、営利団体か非営利団体かという点です。
非営利団体である「社会福祉法人」は営利目的での社会福祉事業ができない分、税制や補助の面で優遇されている特徴があります。

具体的な違いについて、以下のまとめを見てみましょう。

税制・補助金の違い
社会福祉法人 株式会社
法人税 原則的に非課税
(収益事象で生じた所得は所得の22%課税
所得の30%課税
道府県民税 原則的に非課税 課税
市町村民税 原則的に非課税 課税
固定資産税 社会福祉事業用の固定資産は非課税 課税
事業税 原則的に非課税 課税
補助金(施設整備費) あり なし
補助金(運営費) あり あり
自治体による補助金加算 あり 対象外が多い
開設時の低利融資 (独)医療福祉機構より低利融資あり なし

このように社会福祉法人と株式会社には、補助や税制の待遇に大きな差があります。

そのほかにも株式会社は、いまだに「認定こども園に参入できていない」という点で、社会福祉法人とは大きく違っているホィ。

社会福祉法人の保育園で働くメリット&デメリット

社会福祉法人

ではここからは実際に、保育士として働くうえでのメリットとデメリットをチェックしてみましょう。
まずは社会福祉法人運営の園についてです。

メリット

社会福祉法人が運営する園には、働く人にとって以下のようなメリットがあります。

  • 保育園経営の歴史が長く、基盤がしっかりしている
  • 長年の経験を持つベテラン職員がいる傾向にある
  • 大規模な社会福祉法人であれば待遇や福利厚生が充実している
  • 歴史ある保育園が多く、方針等が安定している
  • 法人ごとに大きな特徴があり、自分にあった保育方針を探せる

保育園運営を長くやっているところが多いため、ノウハウの蓄積があり、運営基盤や保育方針がしっかりしています。自分の保育観と合致する園を探しやすいのは素敵ですよね。
また、ベテラン保育士さんが在籍しているケースも多いため、悩んだときには相談しやすいという一面も。

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デメリット

一方、社会福祉法人が運営する園で働く上で、注意しなければいけないポイントもあります。

  • 経営困難のリスクがないわけではない
  • 社会福祉法人への指導監査がある
  • 営利目的で経営ができないため、備品や遊具などになかなかお金を割けない
  • 家族経営だと園長やその親族の権力が強い、人間関係に気を遣うなどの可能性がある
  • 園の歴史が長く、地域に密着しているため、学閥がある

福利厚生が充実していると思われがちな社会福祉法人ですが、必ずしも安定・安全であるとは限りません。
不測の事態によっては株式会社と同じように、経営が困難になるリスクもあることは念頭に置いておきましょう。

また実際に働く上では、遊具に使えるお金が少なかったり、新しいことにチャレンジするのが難しかったり、といった不自由さを感じることも。
「慣習にとらわれず新しい取り組みを行いたい」という保育士さんには息苦しいかもしれませんね。

株式会社の保育園で働くメリット&デメリット

子どもと遊ぶ保育士

続いて、株式会社が運営する園で働くメリットとデメリットを見てみましょう。

メリット

  • 大規模な株式会社を中心に、処遇改善への取り組みも見られる
  • 複数施設を運営しており、転居などに対応しやすい
  • 業務のIT化など新たな取り組みに積極的
  • 新園オープンなどで立ち上げから関わることができる
  • 本部での研修など情報交換の機会がある

株式会社が保育業界に参入するようになったのはここ最近のこと。そのため社会福祉法人の園に比べると、歴史の浅い新しい園が多いです。
若手の保育士さんが多く、新しいことに挑戦したり意見を出したりしやすい傾向があります。
全国に複数の園を展開することも多いため、ライフスタイルに変化があっても会社を辞めずに異動できるケースも。

とくに大手の園ではSVとして本部で働けるなど、多様なキャリアを選択できる可能性があるホィ!

デメリット

一方、注意しなければいけないポイントもあります。

  • 小規模な企業などは経営リスクがある
  • 同園で長年経験を重ねてきたベテランが少ない
  • 園長や上席の経験年数が浅く、ケーススタディが蓄積されていない

事業参入から日が浅い園の場合、ベテラン職員さんが少なかったり園長のキャリアが不足していたりするケースもあります。
さまざまなことに挑戦できる反面、安定して働きたいという保育士さんには少々不安を覚える職場かもしれません。

実際の求人を見てみよう!

計画的に

社会福祉法人と株式会社、それぞれの保育園に長所と短所があることがわかりましたね。
ここでは実際に人材紹介サービス「保育のお仕事」に掲載されている求人から待遇を比較してみましょう。

東京都大田区

東京都大田区にある園の求人を比較してみます。

社会福祉法人

月給:193,500円~(短大卒)
職務手当/役職手当/残業手当/住宅手当などが別途付与
賞与(年2回)/昇給(年1回)/交通費支給/退職金制度

株式会社

月給:243,000円~※各種手当込み
賞与(年2回)/昇給(年1回)/社内外研修制度/各種優待/退職金制度

大阪府大阪市

大阪府大阪市にある園の求人を比較してみます。

社会福祉法人

月給:202,470円~(短大卒)
残業手当/住宅手当などが別途付与
賞与(年2回)/交通費支給/退職手当共済制度/入社お祝い金

株式会社

月給:178,000円~※各種手当込み
賞与(年2回)/昇給(年1回)/社内外研修制度/各種優待/退職金制度

富山県富山市

富山県富山市にある園の求人を比較してみます。

社会福祉法人

月給:175,000円~262,000円※各種手当込み
賞与(年2回)/昇給/交通費支給/退職金共済制度

株式会社

月給:192,000円~
賞与(年2回)/昇給/交通費支給/育児・介護時短勤務

待遇はそれぞれの園や地域によってさまざまであることがわかりますね。

どちらがいいかはあなた次第!

指示棒を持つ保育士さん

「社会福祉法人」と「株式会社」それぞれが運営する保育園の特徴について見てきました。
中にはここまで読んで、「結局、どっちの園に就職する方がいいの?」と疑問に感じた保育士さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

一概に「社会福祉法人だから」「株式会社だから」という区別で、良し悪しを決めることはできません
「株式会社の園は経営破綻のリスクがあるのでは?」と思われがちですが、経営がうまくいかなくなる可能性は社会福祉法人の園にもあります。
保育の質にしても、営利目的だから低いわけでもありません。むしろ独自の保育プログラムを導入したり環境整備を充実させたりと、努力している企業もたくさんあります。

保育園の特色は園によって異なります。
運営する法人の方針、園で働く方の意識や取り組み内容でも変わりますので、自分の働き方にぴったりあう園を探しましょう。

編集者より

社会福祉法人

園探しで大切なのは、先入観や偏った意見に惑わされないことです。
確かに運営主体が異なることで生じる相違点はあります。しかし保育方針や待遇などは、法人や園ごとにさまざまです。
運営主体のイメージだけで「こっちはいい」「こっちはダメ」と決めつけてしまうのは、素敵な園と出会うチャンスを自分から失うようなもの。

ぜひ複数園を比較したり、気になった園を見学したりして、ベストな職場を見つけてくださいね!

園選びに自信がない方や、求人が多すぎて選べない方には、保育士専門の人材紹介サービス「保育のお仕事」がおすすめホィ。
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参考文献・サイト

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