PTSD(心的外傷後ストレス障害)をご存じですか?強いショックが原因となってさまざまな症状を引き起こす心の病気で、虐待を受けた子どももなりやすいとされています。PTSDを予防するためには、ストレス反応に対する正しい理解と対応が必要です。今回は心に傷を負った子どもたちと接するためのポイントをご紹介します。
虐待を受けた子がなりやすいPTSD(心的外傷後ストレス障害とは?
- ◆PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?◆
- 強いショックや精神的なストレスが、心の傷となってしまい、そのことが何度も思い出されるトラウマ状態が長く続いて、身心に不調が現れてしまう病気です。
災害や事故、事件や犯罪被害、虐待などが原因になると言われています。
感受性の強い子どもたちは、大人よりもPTSDになりやすいと言われています。また、その原因が虐待などの場合には、複雑性PTSDとなってしまい、人間不信や協調性の欠如、多重人格などになってしまうケースもあります。
回復には時間がかかることも多く、またショックな出来事があってすぐに発症せずに、数年後、大人になってから発症する場合もあります。
心的外傷後のストレス反応とPTSDの症状を知ろう!
ショックな出来事の後には、一時的にあらゆるストレス反応が現れますが、これが1カ月以上経っても続く場合には、PTSDが疑われます。主なストレス反応やPTSDの症状をチェックしてみましょう。
◆心的外傷後のストレス反応例(~5歳児程度)◆ | |
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食欲 | 食欲不振・吐き気・嘔吐・消化不良 |
痛み | 頭痛・腹痛・筋肉の痛み |
睡眠 | 眠れない・夜中に目が覚める・悪夢を見る |
排泄 | 便秘・下痢・おねしょ |
衝動性 | 落ち着きがない・攻撃的になる・注意力が散漫になる・すぐに飽きてしまう・急に泣き出したり怒ったりする |
執着・再現 | こだわりが強くなる・体験に関連した遊びに友だちを巻き込む・体験した出来事を何度も話す |
赤ちゃん返り | ぐずったり泣くことが多くなる・世話をする人にまとわりつく・離れるのを怖がる |
気持ちの低下・無気力 | 元気がない・気持ちが沈み込む・ボーっとして無気力になる |
◆PTSDの主な症状◆ | |
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フラッシュバック (再体験) |
原因となった出来事を何かの拍子に思い出す。恐怖や苦痛、怒りや悲しみ、無力感など様々な感情が混じった記憶がよみがえり、パニックを起こすこともある。 |
回避 | つらい記憶を思い出すきっかけとなる場所や人を避ける。無意識に避けてしまっている場合もあり、行動が制限されることもある。 |
過覚醒 | 常に精神的に不安定になり、集中力に欠けたり、常に極度の緊張状態になる。ささいなことに驚いたり、警戒心のあまりよく眠れないなどが起こる。 |
感覚まひ | つらい記憶に苦しむのを避ける防衛反応として、感情や感覚がまひする。人に心を許さず、人からも愛情を感じにくくなる。 |
保育士にできる心のケア~関わり方のコツ~
ここからは心に深い傷を負った子どもたちに接する際のポイントをご紹介します。ただし、症状が長引く場合には専門的なケアが必要となります。自分だけで抱え込まないようにましょう。
- ◆心に傷を負った子どもへの関わり方◆
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【恐怖感・不安感を示す】
「大丈夫だよ」と言葉に出して伝え、傍にいて安心感を与えます。一緒に遊ぶ、絵本を読む、抱きしめるなどのスキンシップも良いでしょう。 -
【イライラしている】
イライラしている原因がわからないことが多いので、怖い思いをした後は仕方がないのだと伝えます。何か落ち着かないならば、一緒に片付けなどをして気持ちを整理しても良いでしょう。 -
【言葉が出てこない】
気持ちに寄り添い代弁してあげることで、子どもを安心させてあげましょう。 -
【保育者から離れたがらない】
常に傍にいて大切に思っていることを、言葉や態度で示してあげましょう。 -
【赤ちゃん返りが見られる】
おねしょや指しゃぶりなどは無理にやめさせず、まずは安心できる環境作りを心がけましょう。 -
【眠れない】
生活パターンは乱さず、今までどおり続けることが大切です。添い寝や読み聞かせなど安心できる環境をつくり、スムーズに入眠できる環境を整えましょう。 -
【外傷体験を何度も話す・再現する遊びをする】
心の整理をしているため、やめさせるのではなく、耳を傾け寄り添うことで、子どもがその出来事について整理できるのを待ちましょう。ただし無理に思い出させるのはNGです。
専門家に相談すべきケースも…
虐待など、つらい体験をした後は、誰にでもストレス反応が見られますが、何カ月にもわたって症状が見られたり、生活に支障が出るほどの症状がある、悪化してしまうといった場合には、専門家への相談が必要です。
編集者より
ショックな出来事がきっかけで発症するPTSDは、保護者でも気付かないこともあります。なんとなく子どもに気になる症状がある時などは、保護者とも密にコミュニケーションを取り、相互に支えていくことが必要です。
また、虐待が疑われる場合などには、保育者が子どもの様子に目を配り、異変に気付くことも早期回復のポイントとなるでしょう。難しいことではありますが、PTSDを正しく理解しておくこと、子どもや虐待を受けた場合に発症しやすいことは、頭に入れておきたいですね。