ADHDをご存じでしょうか。ADHDは注意欠陥多動性障害とも呼ばれ、集中力がない、じっとしていられない、衝動的な行動をしてしまうなどの特徴のある、発達障害のひとつです。その行動の特徴から周囲の誤解を受けてしまうことも多いADHD。本日はその特徴や具体的な関わり方のポイントをご紹介します。
ADHD(注意欠陥多動性障害)とは?
ADHD(注意欠陥多動性障害)とは、年齢や発達に釣り合わない不注意さや衝動性、多動性を特徴とする発達障害のひとつです。その特徴の現れ方は個々に異なり、不注意が目立つタイプ、多動性・衝動性が目立つタイプ、混合タイプに分けられます。なおADHDの8割は混合タイプであるとも言われています。
◆ADHDの特徴◆ | |
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不注意 | 集中力が続かない、気が散りやすい、忘れっぽいなどの特徴があります。不器用で縄跳びなどが苦手だったり、片づけが苦手だったり、興味があることに集中しすぎて切り替えられないこともあります。 |
多動性 | ジッとしているのが苦手で、落ち着きがない特徴があります。体を常にもぞもぞと動かしていることもあります。 |
衝動性 | 思いついた行動を考える前に、実行に移してしまう特徴があります。些細なことで手を出してしまったり、ルールや順番が守れないことがあります。 |
ADHDの原因については、まだ詳しくはわかっていません。しかし行動をコントロールする脳の働きに偏りがあることや、遺伝的要因も関係していると言われています。
- ◆育て方やしつけが原因ではない!◆
- ADHDは生まれつきの脳の発達の偏りが関係していると考えられています。決して家庭でのしつけや育て方が悪いがために、特徴的な行動が見られる訳ではありません。
脳の先天的な障がいのため、治ることはありませんが、成長とともに、また周囲の適切な支援により、長所を伸ばしたり、特性を目立たなくすることができるでしょう。
集中力を高めるためにできる工夫とは
ADHDの特徴のひとつ「不注意」。周囲の刺激に気を取られやすく、忘れっぽく、集中力が長続きしません。しかしちょっとした工夫でも、集中力が持続しやすい環境をつくることができます。
- ◆余計な刺激の少ない環境づくり◆
- テレビは付けっぱなし、おもちゃも散乱…という環境の中では、ADHDの子どもは気が散ってしまいます。おもちゃの棚にカーテンを付けて見えなくする、パーティションなどを使って、外部刺激の少ない空間をつくるなど工夫しましょう。
- ◆集中時間に合わせたリセット◆
- 例えば10分しか集中力が続かない子に40分かかるプログラムを実施する場合、10分おきに声をかけたり、質問をしたり、他の取り組みを挟んだり…注意のリセットを行うようにしましょう。
- ◆小さな課題を与える◆
- 静かに待たなくてはならない場面などには、短時間で終わる単純な「やること」を用意するのも良いでしょう。砂時計などを見せても良いですし、その子が興味を持って、比較的集中できることをさせても良いでしょう。
指示を伝えやすくする5つのポイント
- ◆視覚的に伝える◆
- 言葉による指示が伝わりづらいことがありますので、絵に描く、順番にならべるなど、視覚的情報にして伝えると受け入れやすくなります。
- ◆短く具体的に伝える◆
- 「きちんと静かに座っていなきゃだめだよ」といったあいまいな伝え方ではなく「イスに座って膝に手を置きましょう」といった具体的な方法で伝えましょう。自己肯定感を低くしないためにも、肯定的な言い方を心がけましょう。
- ◆感情をこめてすぐにほめる◆
- 小さなことでも、その子の良い行動を見つけたら、心から褒めてあげましょう。
適切な行動が取れたら、カードにシールを貼るなどし、一定数貯まったらご褒美がもらえるポイント制度を作っても良いでしょう。(トークンエコノミーと言います)良い行動を促し、好ましくない行動を抑制するのに役立ちます。
- ◆興味のあることに関係づける◆
- ADHDの子どもたちは、自分の興味があることに対しては、ある程度集中することができます。関心のあることを導入に用いるなど、関心を引く工夫をしましょう。
- ◆近づいて静かに穏やかに◆
- 声を荒げたり、遠くから感情的に注意せずに、近づいて静かに穏やかに話しかけましょう。注意する場合などでも、パニックが起こりにくくなります。
トラブルの時の対処のコツ
ADHDの子どもたちとの関わりの中で、困ってしまうのがトラブルの時。ただ感情的に叱っても、子どもの感情を刺激して、余計に興奮を引き起こしてしまうこともあります。
ここでも基本的には大声で叱るのではなく、向かい合って落ち着いて注意しましょう。興奮状態にあるときは、周囲の安全を確保し、落ち着くのを待つようにしましょう。絵カードを見せたり、「あと○分で落ち着こう」と声掛けをしたり、数を逆から数えるといった方法もあります。
- ◆トラブル時の対応のポイント◆
- 【気持ちを受け入れる】
こんなことしちゃダメ!ではなく、こうしたかったんだよねと気持ちを代弁します。なぜこんなことをしたかという理由ではなく、何かしたかったのかということを聞きましょう。 - 【代替行為の提示】
してはいけないことに対して、「今度からは代わりに〇〇しよう」と代替案を示しましょう。 - 【時に無視を活用しよう】
冷静になれない時には、好ましくない行動をいったん無視してみるという視点も大切です。注意したいのは、子どもを無視するのではないということ。問題行動がおさまって好ましい行動をし始めたら、すかさず褒めることが必要です。
編集者より
家庭や集団行動の中で、なかなか理解されない、叱られてしまうなど、自己肯定感が低くなりがちなADHDの子どもたち。将来をより良いものにしていくためには、周囲が早くから特徴に気付き、適切な配慮をしていくことが欠かせません。
保育者が正しい理解をするだけでなく、同時に保護者とも密に連携を取り、関わり方へのアドバイスを行ったり、不安や悩みを聞いたりすることも必要になってくるでしょう。
子どもたちが、愛されていることを感じ、自信を持って成長できるよう、周囲の大人皆で助け合い、支えていけたら良いですね。
※漢字表記については、厚生労働省および政府広報などに合わせて「障害」とさせていただいておりますが、「障碍」「障礙」「障がい」とも表記されます。
参考文献・サイト
- 親と子のためのADHDサイト
- ADHDの子どもたち
- AD/HDナビ