「ついネガティブな考え方をしてしまって、最近うつ気味……」
そんな保育士さん、幼稚園教諭さんはいませんか?その原因はもしかしたら、心理学で「認知のゆがみ」と呼ばれている、ものの捉え方のせいかもしれません。
今回は、気付かないうちに陥りがちな認知のゆがみについて詳しくご紹介します。ゆがみを修正するためのポイントもあわせてご紹介しますので、ぜひチェックしてくださいね!
「認知のゆがみ」とは?
そもそも「認知」とは、人のものの捉え方や、解釈の過程を指す言葉です。
例えば、仕事でミスをしてしまった時。「こんな初歩的なミスをするなんて……」とひたすら落ち込む人もいれば、「どうすればこのミスを繰り返さなくて済むだろう?」と前向きに考えられる人もいますよね。感じ方や考え方は、人それぞれ異なります。
「認知のゆがみ」とは、その認知が極端に誇張され、不合理な方向に偏ってしまっている状態のこと。
アメリカの精神科医アーロン・ベック氏によって築かれた概念です。
「認知のゆがみ」があると、現実を正確に認識することができず、ネガティブな思考や感情が強調されてしまいます。これが精神病理状態(抑うつや不安)を永続化させてしまうのです。
ついやってない?「認知のゆがみ」10パターン
それでは、まず「認知のゆがみ」の代表的な10個のパターンをご紹介いたします。
- 【1】全か無か思考
- 物事を白か黒かの二極でしか考えられない、極端な完璧主義の思考パターンです。
- (例)行事の進行で1つだけミスをしてしまい、「もうこの行事は全部失敗だ」と感じてしまう など
- 【2】一般化のし過ぎ
- 1度や2度起きただけの悪いことを、「いつもこうだ」「成功した試しがない」など、当然のことに捉えてしまうパターンです。
- (例)一度強く先輩から叱責されただけなのに、この人はいつも自分を叱る人だと感じてしまう など
- 【3】心のフィルター
- 物事のいい部分を認識できなくなり、ひとつの悪いことにこだわり過ぎてしまうパターンです。
- (例)ほとんど全員が高い評価をしている中で、悪い点を指摘した1人だけのことばかりが頭から離れない など
- 【4】マイナス化思考
- 普通のことや良いできごとを、悪い方向にすり替えてしまうパターンです。
- (例)仕事で大きな成果を上げられたのに、「前にやった失敗の償いだから」などと落ち込んでしまう など
- 【5】結論の飛躍
- 相手の気持ちや将来を根拠なく決めつけ、悲観的な結論を出してしまうパターンです。
- (例)連絡を取ったもののなかなか返信が来ないために「自分は嫌われているんだ」と考えてしまう
悪い状況が永遠に変わらないと決めつける など
- 【6】誇大視・過小評価
- 自分の悪いところを大げさに考え、良いところをあまり評価しないパターンです。
- (例)絵がうまいことなんて大したことではない、それよりも自分は仕事が遅いダメな人間だ……と考えてしまう など
- 【7】感情的決めつけ
- 自分の感情を根拠に物事を決めつけてしまうパターンです。
- (例)発表するのがこんなに不安なのは、この発表が失敗するからに違いない……と考えてしまう など
- 【8】すべき思考
- 理由もなく「絶対に〇〇すべきだ」「絶対に〇〇すべきでない」と考えてしまうパターンです。
- (例)家に帰ったら掃除や洗濯・炊事など、全て完璧にこなすべきだと考えてしまう など
- 【9】レッテル貼り
- ミスなどをした際に「自分はバカだ」「無価値だ」などとネガティブなレッテルを貼ってしまうパターンです。
- (例)仕事でちょっとしたミスをしてしまい、自分は保育士失格だと思い込んで落ち込んでしまう など
- 【10】自己関連付け
- 良くないことはすべて自分の責任であると思い込んでしまうパターンです。
- (例)プロジェクトが失敗したのは全部自分のせいだと思う など
認知のゆがみはなぜ起こるのか?
認知のゆがみの根底には、「スキーマ」と呼ばれる固定が観念が存在するとされています。スキーマとは今までの経験や学んだことから形成された、いわば”考え方の癖”のようなもの。それがもとになって、自然と浮かんでくる考え(自動思考)を生み出します。
こういったマイナスな固定観念によって、認知のゆがみは生じてしまいます。
認知のゆがみに陥ってしまうと、どんどんネガティブな思考に陥ってストレスにさらされることになります。しかしこの認知のゆがみは強いストレスによってより強く表れるため、ストレスにさらされ続ける悪循環に陥ってしまいます。
だからこそ放っておくと、深刻なうつ状態を引き起こしかねないのです。
ゆがみを修正するための方法とは
認知のゆがみを修正するための訓練に、「認知療法」と呼ばれるものがあります。
ゆがんでしまったものの捉え方を合理的なものに直すことができれば、新たな気付きを得られたり、心を少し楽にすることができるでしょう。ここからはその具体的な方法をご紹介していきます。
認知療法の代表的なやり方
1 | 【状況】 問題が生じた状況について、「いつ、どこで、誰が、何を」という4つの点に着目し、紙に書き出します。 |
2 | 【自動思考】 問題が生じた時に、無意識にどう感じたかをそのまま書きだします。 |
3 | 【認知のゆがみ】 先にご紹介したうちのどの認知のゆがみのパターンに当てはまるかを書きだします。複数のゆがみが隠れていることもあります。 |
4 | 【合理的反応】 認知のゆがみで偏ってしまった考えを、客観的に合理的に見つめ直し、正しい認知に修正します。 |
上記の方法で具体的に書き出した例が下の表です。大切なのは、合理的な考えを導き出すことです。他の人が自分と同じような思考をしていたら、どうアドバイスするだろうか、逆にプラスに考えられる面はないだろうか、などと自分に問いかけてみると良いでしょう。
編集者より
自分の考え方を変えるというのは、とても大変なことであり、大変時間のかかることでもあります。最初のうちは、ご紹介したような対処法にチャレンジしても、うまくいかないこともあるかもしれません。しかし、認知のゆがみにまず「気付く」ということが大きな一歩です。
一方で自分自身の認知のゆがみというものは、意外と気付きにくいものです。うまくいかない時には、信頼できる人や、専門の医療機関などに相談するのも良いでしょう。焦らずゆっくり、あなたのペースで、認知のゆがみを修正できたら良いですね。