「運動保育士」という認定資格をご存じでしょうか。運動保育士はいわば保育における運動遊びのプロフェッショナル。運動の機会が減った現代において、生き生きと体を動かせる遊びを提供することで、子どもたちの運動能力や頭脳、心の発達を促します。今回は保育士さんのスキルアップに役立つ資格のひとつとして、この運動保育士についてご紹介します。
運動が子どもたちに与える影響
子どもたちにとって、体を思い切り動かして遊ぶことは大変重要です。運動遊びは体力や運動機能の発達に役立つだけでなく、ものごとを瞬時に判断する必要があることから、状況判断力や認知力のアップにもつながり、更には社会性や意欲的な心の育成にも役立つと言われています。
- ◆幼児期の運動のもたらすメリット◆
- □ 体力や運動能力が向上する
□ 運動習慣が身に付き健康な体になる
□ 骨が丈夫になる
□ ものごとに取り組む意欲や集中力、粘り強さが身につく
□ 大勢で遊ぶ中で感情を抑制する能力や協調性を身に付けられる
□ すばやい状況判断や予測などの思考判断力が向上する
□ 五感が刺激されて豊かな感性の発達につながる
運動をすると、気持ちの安定に関与する「GABA」などの物質を出す神経系が育つという報告もあるのだそう。つまり運動はストレスに強い脳をつくるためにも必要なんだね!
一方文部科学省の幼児期運動指針によれば、生活環境が豊かになるなかで、子どもたちが自然と体を動かす機会が減っているとされています。実際平成19年度から21年度に実施された調査研究においても、体を動かす機会の減少傾向が見られたそう。
こういった運動の機会の不足は、子どもたちにとって心身に重大な影響を及ぼすことにもなりかねません。だからこそ子どもたちの生活の中に、体を動かす遊びを積極的に取り入れることが必要なのです。
運動保育士とは?
子どもたちが生き生きとと体を動かす機会を作るには、その発達の段階に合った運動遊びを行うこと、また何よりも子どもたちが楽しめることが大切となります。そこで活躍するのが「運動保育士」です。
- ◆運動保育士とは◆
- 松本短大の柳沢秋孝教授が考案した「柳沢運動プログラム」に基づいた運動遊びを提供するプロフェッショナル。子どもの脳と心と体の発達を促すために、年齢やその子の発達段階に応じたさまざまな運動遊びを実践します。
子どもにとっての運動の重要性は全国的に注目されており、運動保育士の活躍の場も広がりつつあります。実際、運動保育士が実践する運動遊びのベースとなる「柳沢運動プログラム」を実践する自治体も多く存在します。
- ◆柳沢運動プログラムを導入する自治体の例◆
- 兵庫県豊岡市
長野県箕輪町・南箕輪村・小諸市・茅野市
長野県教育委員会
他全国の自治体や保育施設で導入されています。
運動保育士になるにはどうすればいいの?
運動保育士は、民間の認定資格。資格を取得するためにはいくつかのコースに沿って、学習を行う必要があります。コースは「初級」「中級」「上級」にそれぞれ分かれており、取得までの日数や費用、必要とされる条件が異なりますので、詳しくは運動保育士会のホームページでチェックしてみましょう。
◆運動保育士会HPをチェックする◆
⇒運動保育士会こどもプラスへ
◆「運動遊び実践」コース | ||
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【レベル】 | 【取得できる資格】 | 【所要日数】 |
初級 | 運動遊び実践アシスタント | 半日 |
中級 | 運動遊び実践サブリーダー | 2日 |
上級 | 運動遊び実践リーダー | 4日 |
▲あらゆる場面っで発達年齢にあった遊びを提供できるプロフェッショナルを養成するコースです。
◆「子育て脳機能」コース | ||
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【レベル】 | 【取得できる資格】 | 【所要日数】 |
初級 | 子育て脳機能アドバイザー | 半日 |
中級 | 子育て脳機能ディレクター | 2日 |
上級 | 子育て脳機能プロデューサー | 2日 |
▲子どもの育ちに必要な記憶力、語彙力、集中力などを身に付けるために、どのような取り組みを行うことが効果的か学ぶコースです。運動とは離れますが、運動遊びをより効果的に活かすために必要な知識が身に付きます。
資格を活かす働き方のポイントとは
柳沢運動プログラムは、多くの保育施設で導入されています。積極的に運動保育士を採用している園ならば、運動遊びのプロフェッショナルとしてその知識をフル活用できるでしょう。また柳沢運動プログラムを導入している自治体には、保育園に運動保育士を配置する取り組みを行っているところもあります。募集は決して多くはありませんが専門職として知識を活かしたい場合には問い合わせてみても良いかもしれません。
また運動保育士を配置していない園であっても、運動に力を入れている園はたくさんあります。そういった園でも運動遊びのレパートリーを毎日の保育に活用できるでしょう。
編集者より
編集者の幼いころには、近くの道路や公園で走り回っていた記憶がありますが、最近は子どもたちが外遊びをする姿も見なくなった気がします。利便性はもとより、交通事故や不審者など遊ばせる環境における不安が大きくなってしまったこともひとつの原因なのでしょう。
お家に帰った後、自然と外遊びをするというのが難しい今、やはり保育施設などで、積極的に体を動かす機会を設けることが必要なのかもしれません。
子どもたちの成長のためにもっと発展的なプログラム、遊びを提供したいと思っている保育士さんは、スキルアップのため学んでみるのも良いかもしれませんね!
参考文献・サイト
- ●文部科学省
- ●神奈川県