少子化が進むなか、その対策に必要な財源を確保するために検討が進んでいる「こども保険」をご存じでしょうか。社会保険料を上乗せすることで得られた財源をもとに、未就学児への支給を増やし、将来的に保育・幼児教育の無償化を目指すという「こども保険」。この新たな施策案を巡っては賛否さまざまな意見が出ています。
今回は1時間1000円~24時間 即日も予約手配もできるベビーシッターサービス「キッズライン」を運営する、株式会社キッズラインと共同でアンケート調査を行い、保育士さんやキッズラインサポーター(ベビーシッター)として活躍される皆さん、お子さまを持つ保護者の皆さんに、「こども保険」に対するご意見を伺ってみました。
「こども保険」ってどんなもの?
子どもが必要な保育・教育等を受けられないリスクを社会全体で支えることを目的に創立が検討されている制度案です。
具体的にはまず社会保険料率に、0.1%上乗せし、3400億円の財源を確保。子ども1人あたり児童手当を月5000円上乗せして支給することで幼児教育・保育の負担軽減をするとともに、確保できた財源は保育所等の受け皿拡大など、待機児童ゼロを目指すために利用される予定です。
ゆくゆくは保険料率を0.5%まで拡大することにより、児童手当を子ども1人あたり月2.5万円上乗せし、幼児教育・保育の実質無償化を実現することを目指しています。
「こども保険」認知度は46%!
まずは「保育のお仕事レポート」の読者の皆さま、株式会社キッズラインサポーターの皆さま、キッズラインペアレント(保護者)の皆さま計159名を対象に、「こども保険」の認知度を調査しました。
調査結果によれば、アンケート実施前から「こども保険」についてその内容も含めて詳しくご存じだったのは全体の9%。「もともと名前だけ知っていた(37%)」と合わせても46%にとどまる結果になりました。一方「今回初めて知った」という回答は54%と半数以上に及びました。
ニュースなどで報じられてはいるものの、保護者の方でも「こども保険」に対する認知度がまだまだ低いことが伺えますね。
導入に約半数が賛否決められず…不安感も?
続いて「こども保険」の導入について賛否を伺ってみました。
導入に「賛成」と回答されたのは回答者全体の35%、「反対」が11%、最も多かったのが「どちらでもない」54%という結果になりました。それぞれの回答について理由を聞いてみましょう。
- ◆賛成◆
- 国の将来を担うこども達を、国民全体で守り、育てる事が大切。若い世代が結婚や子育て、仕事に対する不安をなくし、希望が持てる国になるよう全世代で支えていく必要があると思う。
(キッズラインサポーター/子ども:4人) - 社会問題化していることだから社会で支えていくことは共感できる。
(保育園勤務/子ども:なし)
- ◆反対◆
- 現金を支給したところで、子どもに使用されるとは限らないから。
(保育以外の業務に従事/子ども:2人) - 税金や介護保険等も支払っているのに個人の負担額が今以上に増えるのは困る。
(保育以外の業務に従事/子ども:1人)
- ◆どちらでもない◆
- こども保険を実施したとして、どのくらい幼児教育・保育負担の軽減や待機児童ゼロ対策に貢献できるのか、現実味がないから。
(キッズラインペアレント/子ども:1人) - 子どもを保育する保育士の待遇面をまず良くしていく方が先決だと思うので。
(キッズラインサポーター/子ども:なし) - お金をばらまくより、もっとわかりやすい形で使って欲しい。
(保育園以外の保育関連職/子ども:なし)
自由記述からは、制度の内容がよくわからないという現状が伺えるとともに、「もっと他に方法があるのではないか」「保育園の整備など資金を他の方法に使ってほしい」などのご意見が目立ちます。「どうなるかわからない…」という不安感から手放しに「賛成」とは断定できない懸念感が伺えました。
「こども保険」の手当ては保育料に使われるのか
「こども保険」が導入された場合、児童手当に上乗せされた手当金が支給される予定ですが、お子さまをお持ちの保護者の皆さまは、実際どのようなことに手当金を充てるのでしょうか。
「こども保険の手当てが支給されたら、何に使いますか?」という質問に対して、制度の本来の目的同様に保育園の保育料や幼稚園の利用料として使うと回答されたのは19%。最も多かったのは「子どものための貯金(34%)」次いで「習い事など保育以外の幼児教育費(17%)」、「おもちゃ、教材、衣類など子どものための物品の購入9%)」など、保育園や幼稚園の費用以外で子どものために使うというご意見が多く見受けられました。
また生活費として使うという回答が15%、その他(6%)のご回答の中には、大学など将来の学費に充てるというご意見もありました。
実際に家庭の資金状況が厳しい場合には生活費などとして、保育料や幼児教育費以外の目的に使用される可能性もありそうですね。
金銭的な補助は不可欠…でもそれだけではない
最後に「どんな対策があればもう1人子どもを産もうと考えますか?(複数回答可)」というテーマで皆さまのご意見を伺ってみました。
最もニーズが高かったのは「金銭的な補助(65%)」、次いで育休・時短制度導入などの「勤務先のサポート(64%)」、「待機児童がいない状態であること(33%)」「家族のサポート(33%)」「家族以外の地域や周りのサポート(32%)」、「出産費用の無償化(25%)」という結果になりました。
全回答者の65%が「金銭的な補助」を重要であると感じていることからもわかるとおり、子どもを育てる上での経済負担軽減はやはり必要。しかしながら一方で共働き世帯が増える中、勤務先や地域等の支援がなければ、女性が子どもを産み育てることは難しい現状が伺えます。
編集者より
少子高齢化や待機児童など、子育てを取り巻く問題には子育て世代をはじめ、幅広い年代からの注目が集まっています。しかし今回のアンケート結果を見る限りでは、「こども保険」の認知度はまだまだ低い状況であると言えます。
これからを担う若い世代が家族を持ち、安心して子どもを産み育てるためには、子育てを取り巻く問題に対してどのような対策が講じられているのかが広く認知されること、そしてその対策が当事者のニーズに本当に沿ったものなのか、十分に検討されることが必要でしょう。
「こども保険」に関しても、より広く認知され、世間において議論されることで、課題やより良い施策にするためのヒントが見えてくるのではないでしょうか。
「こども保険」の制度案については2017年末に向けてその方針が固められていく予定です。今後の展開に注目したいところですね。
【記事はコチラ ↓ 】
https://kidsline.me/magazine/article/96
・実施企業:株式会社キッズライン
株式会社ウェルクス(共同調査)
・実施期間:2017年5月16日~5月21日
・実施対象:
ウェルクス:保育園勤務(37名)・その他保育関連職従事者(8名)・
保育以外の職業従事者(2名)・無職・専業主婦等(8名)計55名
キッズライン:サポーター(76名)・保護者(28名)計104名
・回答者数:159名(2社合計)
・調査方法:インターネット調査
※ご協力いただきました皆さま、貴重なご意見をありがとうございました!