共働きの家庭が増え、ますます需要が高まっている「学童保育」。
大事な子ども時代の育ちをサポートするために、学童保育で働く人にも高い専門性が求められます。
そこで、学童保育指導員がもっておきたい資格の代表として挙げられるのが「放課後児童支援員」という資格です。
この「放課後児童支援員」資格は、研修を受けて取得することができますが、実際はどのようなことが行われているのでしょう?
今回は「学童保育指導員」として働いていた元職員が、研修の申し込みから受講、そして実際に研修を受けた感想など、詳しくレポートします。
研修を受講して「放課後児童支援員」資格を取ろう
2014年に放課後児童クラブの設備運営基準が策定され、そこで働く学童保育指導員にも基準ができました。
そして2019年現在、自治体により「放課後児童支援員」の研修を修了した人が学童で働くにあたり必要とされています。
「学童保育指導員」資格の概要はこちらの記事をご参考ください。
ここからは2018年に「放課後児童支援員」の資格研修を修了し、学童保育指導員として働き始めた筆者がその様子や感想をレポートします!
※受講地域・時期などにより内容・詳細が異なります
受講の準備 受講対象者の確認と書類準備が肝
まずは、各自治体のホームぺージから研修の案内を確認し、書類を準備していきます。
個人の研修の申し込みは自治体HPから!
参加者の多くは、既に学童で働いており「資格取得の必要に迫られて来た」という方々でした。その場合は、職場に案内が届いて一括して申し込みをされている場合が多いです。
一方で、私は学生時代に新卒で学童保育の内定を得て、就職前にこの資格を取ることにしました。
その為、個人で研修日程を確認して調整し、必要書類を郵送する必要がありました。
まずは資格研修の案内を確認します。
神奈川に住んでいたので、神奈川県のホームページを確認して応募手続きをします。
「自治体名(東京都など) 放課後児童支援員 研修」で検索すれば出てきます。
職場で申し込みをされた方も、研修の流れが分かるのでぜひ一度ホームページには目を通すことをおすすめします。
受講対象者に該当するかをチェック
受講には条件があります。
こちらも自治体によって詳細が異なるようです。
私は「4年制大学で社会学を専攻し卒業した」、かつ「これから神奈川県内で放課後児童支援員として働く予定」、だったのでこの条件を満たしています。
学童施設が増え、資格の必要も高まったことで大変人気の研修だと聞いていました。
定員がオーバーした場合は、現在学童に従事している人が優先されるとのことだったので、受講決定通知書が届くまでヒヤヒヤしました。
「卒業証書」など必要書類の準備は余裕をもって、郵送
そして、受講対象者である証明のために書類を提出しなければなりません。
申し込みの際には、該当条件によって異なる書類提出が求められます。
具体的には「保育士証」や学校の「卒業証明書」、そして子どもに関わる仕事をしている方は「実務経験証明書」などです。
たとえば、「保母資格」をもっている方は「保育士資格」に切り替え申請を行った後、書類を送らなければなりません。
大学にわざわざ「卒業証明書」を発行して送ってもらわなければならない場合も時間がかかります。
ホームページをよく読んで余裕をもって書類の準備も進めましょう。
◆受講資格確認書類(卒業証明書のコピー)
◆受講申込書
以上の必要書類を揃え、研修運営会社の資格学校等に郵送します。
送り先が自治体ではないことにお気をつけください。
※必要書類は、勤め先・勤続期間などによって異なりますので事前にご確認ください。
費用は無料、ただしテキストは購入必須
研修の受講料は無料です。
しかし、神奈川では資料代として2,500円(テキスト代1,000円+講師用意のレジュメ代1,500円)が徴収されました。
こちらは研修初日に受付に現金で支払います。
また、研修会場までの交通費や朝食代は各自負担です。
教材テキストの購入は必須です。
受講申込書にテキスト購入希望欄があり、申し込みと同時に購入することができます。
申し込み時に購入すると価格が1,000円と消費税分が割引になり、研修初日に会場で受け取りができるのでおすすめです。
受講決定書が届いたらスケジュールを確認
研修が近づくと「受講決定書」が届き、無事に研修を受けられることが分かりました。
研修ギリギリまで到着しなかったので、受けられるのか不安だったことを覚えています。
受講決定書と共に会場地図やスケジュールも同封されているのでよく確認します。
研修のスケジュール 資格によって一部科目免除もあり
一日の流れは1科目90分の講義を午前2コマ、午後2コマ合計4コマ受講し、最後にレポート記入の時間があります。
時間は9時20分から16時50分とほぼ丸一日です。これが4日間開催されます。
初日のみガイダンスがあるので、他の日程より5分長くなります。
私は春休みの期間を選びましたが、働きながら4日間終日参加するのはなかなか大変そうだなと思いました。
研修内容は下記の通りでした。
1日目 | ・放課後児童健全育成事業の目的及び制度内容 ・放課後児童健全育成事業の一般原則と権利擁護 ・子ども家庭福祉施設と放課後児童クラブ ・放課後児童クラブに通う子どもの育成支援 |
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2日目 | ・子どもの発達理解 ・児童期(6~12歳)の生活と発達 ・障害のある子どもの理解 ・特に配慮を必要とする子どもの理解 |
3日目 | ・子供の遊びの理解と支援 ・障害のある子どもの育成支援 ・保護者との連携・協力と相談支援 ・学校・地域との連携 |
4日目 | ・子どもの生活面における対応 ・安全対策・緊急時対応 ・放課後児童支援員の仕事内容・放課後児童クラブび運営管理と運営主体の法令順守 |
※受講案内を元に作成
所有資格(保育士・教員免許など)により一部科目が免除になるので、有資格者は改めていつが免除になるのかをチェックしましょう。
持ち物は本人確認書類を忘れずに
受講案内に書いてある持ち物に加え、あると便利だったものをまとめました。
必要な物
☑受講決定通知書
☑本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)
☑筆記用具
☑資料代(現金):初日のみ
☑テキスト
あるといい物
☑A4資料が入るファイル、バッグ
☑飲み物
☑お昼ご飯(会場の外に食べに行くことも可能です)
☑マスク(特に冬場の開催の場合)
受講決定通知書と本人確認書類は忘れると受講できなくなるそうなので、忘れないようにしてください。
レポート記入があるのでシャープペンシルや鉛筆、びっしりと法律が書いてあるテキストの重要ポイントを目立たせる蛍光ペンなどは最低限必要に感じました。
会場が400人詰めのホールだったのでスペースにあまり余裕はなく、荷物はなるべくコンパクトにするのが良いとも思いました。
飲食については、開催会場のルールを守ってください。私は眠気対策もかねてコーヒーを買っていきました。
研修当日の様子 長時間の座学は大変だけど充実!
ここからは、私が受講した研修の二日目を例に実際の研修の様子をご紹介します。
意外と手こずるレポートの書き方のコツもお伝えします。
9:00~ 受付
研修が始まる前には、受講決定通知書と本人確認証を見せて、資料や理解度チェックの課題用紙をもらいます。
15分以上の遅刻は受講ができなくなるのでゆとりをもって会場に到着できるようにしましょう。
15分以上の遅刻・離籍・早退をした場合、欠席扱いになります
体調不良などでやむを得ない事情で欠席する場合は、別クールの研修を再度申し込みをして受けられます。
受付開始の15分前には大勢の受講者が会場の前で並んでいました。
席は自由席なので、職場の仲間同士で受けたい方やお気に入りの席に座りたい方が早めに来て並んでいました。
2日目は保育士資格所有者はこの日に行われる全科目が免除のため、他の3日程よりも会場にゆとりがありました。
ざっくりですが、参加者の1/4程度が保育士資格をもっていると推測できました。
場所は、折り畳みテーブル付の椅子がずらっと並んだホール。長時間の座学なので快適に過ごせるよう工夫が必要です。
大きいホールで室温調整が難しいので、体温調整のしやすい恰好で行くことをおすすめします。
9:20~ 講義開始
事務局の方が注意事項と講師の紹介をし、講義がスタートします。
講座は講師が壇上で話し、テキストと配布プリントを横断して進めるパターンがほとんどです。
この日の最初の講義は「子どもの発達理解」。
保育士資格、教員免許をもっている人は免除になります。
講師は社会福祉士・精神保健福祉士として福祉の現場で働かれている方でした。
この講座ではテキストの要点を軽く説明した後は、事例の紹介がメインに進みます。
現場の方によるリアルな事例紹介は、自分の想像を超えたものが多くショッキングでもありました。
難しい内容でもかみ砕いてわかりやすく説明してくださり、あっという間の90分でした。
10:50~11:00 休憩
講義の間には、10分間の休憩があります。
参加者は圧倒的に女性が多かったので、トイレはかなり混雑します。
会場の上下階のトイレも利用が可能だったので、私は積極的にそちらを利用しました。
また、休憩中に前の講義のキーワードをピックアップしたり、簡単にまとめておくと、全講義終了後のレポートが書きやすくなります。
11:00~ 2コマ目の講義
2コマ目の講義は「児童期(6歳~12歳)の生活と発達」です。
先ほどと同じく保育士資格、教員免許をもっている人は免除になります。
講師の方も1コマ目と同じ方でした。
ホワイトボードに家系図を描いて、親の婚姻歴や性格などを説明し、子どもの状況と発達への影響を解説します。
また、より心理学的な内容に踏み込んだうえで、学童児を相手にする「対人援助職」として気を付けることを学びました。
講師の方も話していたように「自分が小学生だった時どうだったか」を思い出しながら話を聞くと、より理解が深まりました。
12:30~13:20 昼休み
お昼休憩は50分間です。
お弁当の提供はありません。
ホールエントランスで持参したお弁当やコンビニで買ってきた物を食べている方が多かったです。
エントランスはかなり混雑し、場所取り競争になりかねないです。
私は少しでも身体を動かしたかったので、近くの飲食店に食べに行きました。
会場に近い飲食店を事前に調べておくと、時間が無駄になりません。
午後の集中力につながるので、この昼休憩でしっかりリフレッシュすることが大事だと感じました。
13:20~16:30 午後の講義
講義内容は「障害のある子どもの理解」、休憩を挟んで、「特に配慮を必要とする子どもの理解」です。
こちらは、保育士資格をもつ方、社会福祉士資格をもつ方の免除科目です。
既に現場で働かれている方は、特に関心が高いのか一層真剣に聞き入ったり、近くの人と「分かるわかる!」と共感しあっている様子でした。
また、昼食後で眠くなる時間帯でもあります。
講師が受講者を指名をしたり、「この場合どうしますか? 隣の人と話してみましょう」というワークも増えました。
私も眠くならないように、講師の話をテキスト欄外に書き込んだり、マーカーを引いたりと手を動かし続けました。
そして机上には出席チェックの為、「受講決定書」など受講番号が書かれたものを置かなければなりません。
事務局の方が回って出席を確認をしていきます。
ちなみに豪快に居眠りをしていると、事務局の方がやさしく起こしにきます。
16:30~16:50 理解度チェックのレポート記入
1日の最後に理解度チェックをします。この時は三行くらいのマス目のついた用紙に、一科目ごと「講義で分かったこと」を記入します。
あまりに字数が少ないと注意されるそうですが、このレポートがどのように評価されていたのかは謎のままでした……。
レポートを書く時間は十分に与えられますが、書き終わった人から会場を後にすることができました。
しかし、多くの方がレポート執筆に頭を悩ませて、時間を要していました。研修後に予定がある方はお気をつけください。
レポートを書くコツ!
◆休憩中に前の講義内容をまとめておく
◆テキストに書き込みをしておく
◆キーワードを3~5個程度抜き書きしておく
レポート用紙は受付時に渡されるので、講義の間や休憩中に書いても問題はありません。
内容も重複するので、その都度書いていくことを個人的にはおすすめします。
研修を受講してみて……非保育士さんなどはこの研修だけでも受ける価値アリ!
4日間の講座を全て受講したら研修は終了です。
全日程を終了後、約1カ月で修了書と携帯用カードが郵送されます。
これらは職場や面接時にコピーを求められることが多いのでなくさないように気を付けましょう。
「学童保育指導員」という仕事を知ることができる
改めて、学童保育指導員がいかに専門的な仕事かということや子どもだけでなくその家族や学校など広い視野をもたなければならないこと、
そして、子ども達が健やかに育つ、家でも学校でもない「第三の居場所」としての学童の重要性を知ることができました。
子育て経験もなく、専門的に子どもについて学んできていない私は、学童保育指導員の仕事や子どもの知識を体系的に知ることができ、就職前の不安も少しは軽減されました。
私の場合は、学童保育指導員として働く前にこの研修を受けましたが実際に働いてみると、
・気になる子への接し方
・どんなケガが多いのか、その対処法
・保護者とのコミュニケーション方法……
など実践的なことも研修で知りたかったな
と感じました。
受講者の声
また、私が学童で働きはじめてからこの研修を受けた同僚に話を聞くと……
などの感想をもっていました。
講師は学童保育指導員のベテランだけでなく、児童相談所や虐待防止センター職員などの現場の方が登壇されるので、様々な事例を聞く機会にもなるはずです。
「これから学童保育指導員を始めたい!」という方や「学童保育指導員としてスキルアップしたい!」という方はぜひ、「放課後児童支援員」資格の取得を目指してみてください。
参考文献・サイト
- 神奈川県「放課後児童支援員認定資格研修」(2019/04/03)
- 東京リーガルマインド「放課後児童支援員認定資格研修」(2019/04/03)
- 厚生労働省「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(2019/04/03)