保育園・幼稚園のビッグイベント「お泊まり保育」。
ドキドキなのは先生だけでなく、送り出す保護者も参加する子どもも同じ。
そこで「お泊り保育完全ガイド」の第2回は「保護者・子どもの不安解消編」!
保護者、そして子どもの不安を少しでも和らげるためのポイントや保育士さんの対策方法を紹介します。
●第1回「準備編」はこちらから
●第3回「当日プログラム編」(アクティビティのアイデア)はこちらから
「子どもと共に育つ」意識をもって保護者支援を
「保育所保育指針」第4章「子育ての支援」にも書いてある通り、行事においても保護者支援は重要です。
指導計画でも「子育て支援」を記入する欄がありますね。
保護者にとってお泊まり保育は「子どもの自立と成長」を感じられ、「子離れ」の機会という側面があります。そのような意図があることをきちんと伝えられるといいでしょう。
また、保護者の参加の要素を盛り込むことで「保護者の子育てを自ら実践する力の向上」にも繋がるといいます。
お泊まり保育の一部プログラムに保護者の方に助っ人として参加として参加してもらうのもいいですね。
●食事(配膳・流しそうめんの設営など)
●夜のアクティビティ(肝試しの見守り・キャンプファイヤー火起こし、見守り・寸劇の登場人物として)
●入浴時(特に男湯は男性の保護者に見守り)etc…
保護者の最大の関心は「持ち物」?!チェックリスト+αを共有すべし
保護者の最大の関心ごと。実は、子どもの持ち物だったりします。
そこで、しおりには持ち物のチェックリストページを用意したり、保護者用におたよりを出してもいいでしょう。
とくに普段の保育では使わない物が必要な場合は、保育士さんが早めに口頭でもお伝えすることが大事ですね。
「川遊びに水遊び用の靴が必要だった!」と直前に気づいて保護者が慌てる、なんてこともよくあります。
保護者の迷いもこれで解消!~子どもの持ち物編~
また、保護者はリュックサック選びでも迷いがち。
宿泊先のアメニティの充実度を確認しておき、例年の様子なども前年の担任に聞いた上で、保護者にお伝えできるといいですね。
子どもの体型にもよりますが、容量は20リットルもあればバスタオルや水遊びの道具もバッチリ入ります。
子どもに負担がないよう軽量で防水の素材を観点に、そして成長することを見越してリュック選びをする保護者が多いようです。
子どもの持ち物リスト
こちらは子どもが持っていく持ち物の例です。
☑しおり
☑お弁当
☑水筒
☑敷物
☑帽子
☑タオル
☑ティッシュ
☑バスタオル
☑歯磨きセット
☑パジャマ
☑2日目の着替え
☑予備の着替え
アクティビティによっては必要な物が増えるかと思います。
持ち物が増えすぎても子ども・保護者の負担になりますので、吟味しましょう。
着替えを「小分け」すれば子どもも保育士も安心!
また着替えはファスナー付きの袋に小分けにしてもらい、さらに「パジャマ」「よびのきがえ」と袋に用途を書いてもらうと、子どもも保育士も混乱を避けられます。
おたよりなどに記載して、保護者に協力を促すといいでしょう。
保育園に持ってくる物と同様、全ての物に必ず名前を書いてもらうようにするのは忘れずに!
複数回の全体周知+個別対応で保護者の不安を軽減
「お泊まり保育」は保護者にとっても準備が大変で、不安も大きいです。
子どもの成長の機会であり、しっかりと安全に配慮することを伝えましょう。
保育者の方から積極的に保護者に話しかけ、気になる点を丁寧にを聞き取ることで、不測の事態を防ぐこともできます。
もちろん保護者のお休みの予定や子どもの体質によっては参加ができない場合もありますので、無理な参加の強要は避けたいものです。
おたより、口頭、メール……連絡はコミュニケーションツールをフル活用
様々なコミュニケーションツールを使って保護者の不安を軽減していきましょう。
入園時や新学期が始まる時から「園ではお泊まり保育がある」ということを伝えておけば、保護者の方も早めに心構えができましょう。
日程が決定し次第、おたよりや掲示、口頭でお知らせをします。
しおりは子ども用だけでなく、保護者の分も用意するといいですね。
しおりに先立って、持ち物や準備してほしいことは早めに伝えておきましょう。図解やチェックリスト形式のものが便利です。
例年聞かれるよくある質問をまとめておくと、先生も保護者も助かります。
そして、重要になってくるのが事前アンケートです。詳細は次節で説明します。
保護者に不安が見られるようなら、個別相談の時間もしっかりとりましょう。
お泊まり保育当日は一斉メールを利用する園もあります。
夜になったら「全員大きなケガもなく1日を終えました」、帰ってくる時は「やや渋滞しており、園の到着時刻は●●時になりそうです」などと伝えられると保護者も様子が分かり安心です。
最近はアプリなどを用いて、リアルタイムで写真を見られるようにしている園もあるそうですね。
お泊まり保育終了後は子どもの様子を詳しく伝えましょう! 成長した子どもの姿が何よりのお土産となります。
保護者会などで写真のスライドやビデオを流しても喜ばれます。
事前アンケートで懸念点を共有
子どもの健康や個々の事情の把握のためには、「事前アンケート」を上手く使うのが重要です。
投薬の必要や夜の様子、乗り物酔いなど懸念点を事前アンケートで聞いておけば、園でも備えをすることができます。また、緊急連絡先も複数聞いておき、いざというときに備えましょう。
アンケートの作成例を示しますので、参考にしてください。
事前アンケート例(Excelファイル/A4判)
事前アンケートを預かった際には保護者と一緒に目を通し、気になる点は口頭で確認するようにすると良いでしょう。
またこれを元に職員間でも重要事項の共有をします。
縮小コピーをして当日担任が携帯する園もあります。
※個人情報なので取り扱いには十分注意しましょう。
「お薬を持参したい」の要望には……
通常の保育でも園によってルールがあると思いますのでそちらにしたがってください。
服薬が必要な場合は、出発の前日までに直接保護者から手渡ししてもらうようにすると安心です。服薬回数ごとに小分けにしてもらうとミスも減ります。
薬担当(看護師さんが同伴するようなら看護師さんに)も決めると良いでしょう。
子どもには「絶対に無理をさせない」が基本
お泊まり保育当日、保護者が微熱に気づいていても「子ども本人が行けないとかわいそうだから……」と思って少し無理をさせて子どもを参加させてしまうケースもあるようです。
万が一体調を崩しても、すぐに引き取りに来れない距離に行くことも多いです。
絶対に無理をさせないよう保護者にも丁寧に説明し、参加できなかった場合も寂しくならないようフォローをしていきましょう。
参加できない場合は?
子どもの持病や保護者のお休みなどの関係でどうしても参加できない家庭もあるかもしれません。
お泊まり保育の期間は預かりができない園がほとんどです。早めにお泊まり保育中の園の対応も伝えておきましょう。
言葉かけや装飾で段階的に子ども達の不安を楽しみに
お泊まり保育にテーマ(物語性)を設定した園では、1か月ほど前からテーマにまつわる装飾をしたり、お誕生日会で伏線を張ったりと徐々に気分を盛り上げていくと、より物語の世界に入り込むことができますね。
テーマがなくても「プログラムの内容(または一部)」や「何を調理するか」、「グループの名前」などを子ども達が話し合いながら決定しても参加意欲を高めることができます。
他にも、言葉かけやお泊まり保育にまつわる絵本やシアターを活用することで不安を軽くし、「お泊まり会は楽しいんだ!」と前向きなイメージをもってもらいましょう。
まずはお泊り保育前の言葉かけで安心感を伝える
例年お泊まり保育に行くおにいさん・おねえさん達をお見送りしているかもしれませんが、
改めて「お泊まり保育とは何か?」、「何が楽しいのか」、「心配しなくて大丈夫」だということを伝えていきましょう。
言葉かけ例
去年もおにいさん、おねえさんが行ってたね。
今年は●●山に行くよ。山にはどんな生き物がいるかな?
みんなでカレーを作ったり、キャンプファイヤーしたり楽しいよ。
夜は自分でお布団を敷いたり、洋服を畳んだりできるかな?
困ったことがあったら、先生が助けるから安心してね。
みんなで協力して、楽しいお泊まり会にしようね!
問いかけをすることで子ども達はどんなことをしてみたいか思いを巡らせることができます。
そして自立と挑戦を促しつつも、保育者がきちんとついているという安心感もきちんと伝えられると良いでしょう。
それでも子どもが参加を嫌がるなら「プチ予行練習」を家族にお願いするのもアリ
保護者はお泊まり保育に賛同してくれているものの、当の本人が「行きたくない」と言っており、手を焼いている……ということもあるようです。
原因として保護者と離れる不安が一つでしょう。
子どもになるべく楽しい雰囲気を伝えていけるように、導入を盛り上げていきましょう。
もし具体的な不安が分かる場合は、家族でプチ予行練習をしてもらうという提案もしてみましょう。
たとえば、「広いお風呂に入ったことがなく不安」というのであれば、「家族と一緒に近所の銭湯に行って少し慣れてもらう」というようなことです。
プログラムの組み方でホームシックを軽減
また、「登園するまでは大丈夫だったのに、いざ当日に大泣き」ということもあります。
以下に、ありがちな「ホームシックタイム」の例と対応方法も記載します。
- 出発時
保護者もついお見送りに力が入ってしまいがちで、子どもは長いお別れになってしまうのではないかと不安になりがちです。
保護者の不安に理解を示しつつ、元気よくさわやかに出発できるのが望ましいです。 - 就寝時
ホームシックのピークです。翌日のお話をして期待感を高めたり、簡単なクイズや読み聞かせをしたり、楽しいムードのまま一日を締めくくれると良いですね。
就寝の準備でバタバタしがちな時間だからこそ、子どもの心に寄り添って安心感を。 - 起床時
起きた時に子どもが「ここはどこ!?」と思って、寂しさがこみあげてくることも。
朝のおさんぽや体操などのアクティビティなどで雰囲気を切り替えるのも手です。
編集者より
初めての経験を前にした子ども達や保護者の不安に対して、保育者はその不安を受け止めて、寄り添うことが大事。実は普段の保育と変わりはないことかと思います。
そして、何より大人は子ども達が自らが育つ力を信じること。
キャンプ当日、寂しくなってしまった子どもの隣に他の子どもが寄り添って「一緒に寝てあげる」と手をつないで眠りにつくシーンも……。子ども達同士で励まし合うやさしさが見られたりもします。
子どもの成長の大きな一歩を、保護者とともに温かく見守りたいですね。
参考文献・サイト
- 厚生労働省「保育所保育指針」(2019/07/05)
- 山本克彦(監修),2003,『行事別保育のアイデアシリーズ1 元気がいっぱい夏期保育』フレーベル館
- 高橋詠美子・中島祐子・金田英恵・菊地君江・小菅恭子・部井友紀子,2008,『年齢別 行事ことばかけハンドブック』世界文化社
- 『PriPri 2013年7月号』世界文化社
- 『Piccolo 2015年7月号』学研
- 『PriPri 2018年6月号』「指導計画のヒント 7~9月の月間計画」世界文化社
- 『PriPri 2019年7月号』世界文化社