運動会は保育園や幼稚園における一大イベントのひとつ。子ども達の成長した姿を、家族の前で披露できる絶好の機会です。
この記事では、保育士さんの準備の負担を増やさずに、運動会をグレードアップできるようなユニークな種目・競技のアイデアを紹介します。
年齢ごとの発達にあわせた競技を紹介していますので、運動会の競技選びの参考にしてみてくださいね!
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まずは運動会の「ねらい」をしっかり定めよう!
運動会の「ねらい」をしっかりと理解することは、種目を考えるうえでも手助けになるはずです。
まずは、2018年から施行された「保育所保育指針」、「認定こども園教育・保育要領」の3つの柱・五領域をもとに、乳児・幼児別の運動会に関連のある保育のねらいを解説していきましょう。
【健康】「身体を動かす楽しみ」を伝え成功体験を積む時間に
運動会においても、日々の保育と同じく、保育者が年齢と個々の発達を理解し、子ども達が心身の機能を向上できるようサポートしていくことが大切です。
定期的に行う「運動の時間」や「リトミック」などではなかなか体験できないような動きを取り入れてみるとよいでしょう。
[乳児期]
健康な体作りの基本となる時期。保育者は月齢・個人の発達の差を理解し、子どもが這う・立つ・歩くなどのびのびと体を動かしたくなる環境作りをしましょう。
[幼児期]
子どもが様々な活動・遊びによって全身を動かして楽しめるようにしましょう。十分に「動きたい」意欲を満たし、大人や友達と「できた!」という充実感を得られるように工夫します。
【人間関係】身近な人とのふれあいから友達の輪へ広がりを
乳児期はダイナミックに走ったり踊ったりということはできないので親子のふれあい遊びを通じて、また幼児期はチーム対抗戦や集団の演技(ダンス)など友達同士のふれあいを通じて、人とのかかわりを楽しめるように工夫するとよいでしょう。
[乳児期]
身近な人からの語りかけや歌いかけから信頼関係を深め、子どもの興味・関心を伸ばしていきましょう。
[幼児期]
喜びを共有し、友達と協力する楽しみを感じられるように工夫し、助け合うクラスづくり目指しましょう。
【0歳児】ゆったりした種目でアクシデントもにっこり
ここからは、年齢別に競技のアイデアを紹介していきます。
0歳児が運動会に参加する場合には、子ども達が運動会のにぎやかで楽しい雰囲気を感じられるように、また、保護者にとって家庭でのかかわり方のヒントとなるように、ゆったりとしたプログラム構成を検討しましょう。
赤ちゃんにとっては見慣れない環境やたくさんの大人に戸惑い不安になるかもしれません。機嫌がすぐれないことも想定の範囲内にして、プログラムを組む際には時間や内容にゆとりを設けましょう。
《親子競技》ハイハイレース
0歳児クラスの定番競技「ハイハイレース」。
ウレタン積み木で壁をつくり、手前にマットを敷きます。パパ・ママは積み木の奥で待機、子どもを音の出るおもちゃや呼びかけで誘導します。
マットには傾斜をつけてみてもよいですね。
【アレンジ例】
「おもちゃのチャチャチャ」をテーマにして、音の出るうちわを作ってみましょう。ホログラム折り紙や鈴など、赤ちゃんが大好きなものを取りつけることで、子どもも楽しんで競技に参加することができるでしょう。
《個人競技》段ボールの車に乗ろう
紐を付けた段ボールを乗り物に見立て、中に赤ちゃんを乗せ、それを大人が引っ張ります。
段ボールの高さを調節したり、中にはクッションを用意するなどバランスが崩れないように工夫しましょう。
モチーフとする乗り物は車だけでなく、汽車や動物でもよいですね。テーマを決めて統一感を出すと楽しい雰囲気が演出できるでしょう。会場をぐるりと一周したり、リレー形式にしたりしても楽しめます。
段ボールの装飾には赤ちゃんの好むはっきりした色を用いるのがおすすめです。
《親子演技》親子ふれあい遊びメドレー
先生を中心に円になって指揮をとり、親子でまねっこしてもらいながら、ふれあい遊びをしましょう。
おなじみの曲を3~5曲つなげてメドレーにしたり、ストーリー仕立てにして先生達による寸劇を挟むと運動会の特別感が出てよいですね。
一つひとつの動きにもどのような効果があるのかも保護者に伝えられると良いですね。
①赤ちゃんを寝かせ、手の開閉や足の屈伸をする
手首・足首をもってやさしく開閉や曲げ伸ばしをします。
脚力をつけるだけでなく、赤ちゃんに触れること(タッチケア)は愛着形成の助けとなり、親子双方にリラックス効果があります。
②大人が座り、立っている赤ちゃんのわきの下を支えて膝の上でジャンプ
座りながらの「たかいたかい」です。向き合って赤ちゃんの反応を見ながら高さを変えてみましょう。ハイハイを促すことにもつながります。
③赤ちゃんの顔の一部をやさしくなぞる
まゆげや鼻、耳などを声かけをしながらやさしくタッチしていきます。触覚を刺激しつつ、緊張をほぐしていきます。
【1歳児】ヨチヨチ歩きでも大丈夫!全身を大きく使おう
1歳は様々な筋肉が発達し、できることもグンと広がります。「歩く」ことへのサポートをしつつ、家族と一緒に焦らず温かく見守れるようなプログラムを取り入れましょう。
《個人種目》タオルにのって
室内で運動会を行う場合にオススメの、お楽しみ種目です。
まず、床にビニールシートを敷きます。
その上に大きめのバスタオルなどを敷き、子どもはその上に乗り、落ちないようにしっかりタオルを掴んでもらいます。
先生はタオルを引っ張ってビニールシートの上を滑らせるように動かしてあげましょう。
「魔法のじゅうたん」や「サーフィン」に見立てつつ、音楽などを流して楽しめるプログラムです。
【アレンジ例】
タオルの両側を大人が持ち、真ん中に子どもを乗せて揺らせば、まるでハンモックのよう! 子どもが喜ぶアレンジアイデアです。
《個人競技》つみき崩し
スタートとゴールを用意して、その途中につみきを重ねるコーナーとつみきを崩せるコーナーを用意します。
1歳の子どもは積んだものを「壊す」ということにとても関心を抱きます。普段は「ダメ」と言われがちなことも、運動会だけは特別。積んだつみきを崩す種目を設けて、思いきり「崩してみたい!」という欲求に応えましょう。
つみきをうまく積むことが難しい場合には、保育士さんがサポートしてあげるとよいでしょう。
《親子演技》まねっこ動物遊び
大人の動きを見てまねっこをするのも楽しいこの時期、親子でペアになって、動物になりきる遊びをしましょう。
「パンダうさぎコアラ」や「どうぶつたいそう1・2・3」「ブンバ・ボーン」など、動物になりきる手遊びや体操もたくさんあるので、子ども達の興味にあわせて選んでもよいでしょう。
①うさぎのジャンプ
子どもの手を取りながらぴょんぴょんと跳びます。全身の筋肉を鍛えることができます。
②ゾウのお鼻
子どもの脇を両手で抱え、横にゆらゆら揺らします。
平衡感覚に刺激を与え、「パワフルに動きたい」という欲求が満たされます。
③トンネル
大人が足を肩幅大に広げ、その下を子どもがくぐります。
大人が前屈をして子どもを迎えてあげることで、ふれあう喜びを感じることができます。
【2歳児】歩くって楽しい! 道具も使って元気に動こう
安定して歩くことができるようになる2歳ごろ。運動会でも、お友達と手をつなぎながら歩調を合わせて歩いたり、マットや平均台、フラフープなどの道具も使った運動にチャレンジしたりするとよいでしょう。
《親子競技》パックンレース
シンプルながらも、様々な要素が詰まったレースです。
動物はダンボールを重ねて装飾し、口の部分に穴を開けたものを使います。
食べ物は丸めた新聞紙を着色したものでもラミネートされたカードでもOKです。
ルールは親子でスタートして、カゴの中から食べ物の模型(またはカード)を選び、スズランテープのカーテンを超えます。
そして、カーテンの先にいる動物のうち、取った食べものが好きな動物がどれか考えます。
保護者が子どもを抱っこして、動物のお口に食べものを入れてあげたらゴールです。
【アレンジ例】
2歳頃から「バナナやリンゴは『フルーツ』」、「にんじんやキャベツは『野菜』」といったグループ分けをしたり上位概念をもったりすることができます。
「かごのなかから『フルーツ』をひとつ選びましょう!」など、子どもに考えさせる工夫を施してもよいでしょう。
《集団競技》みんなで的あてゲーム
両面テープを貼った的(まと)に向かって、直径5.5cm前後のボールを子どもに投げて当ててもらいます。マジックテープを貼った的と布ボールでも代用できます。
的には絵を描いて、みんなで力を合わせて悪者をやっつける、大きな木に実をつける……といったストーリー仕立てにしてもよいでしょう。
日々の保育では、まず先生が「両手で抱えるように持てるかな?」「上にポーンって投げてみようか」などと言葉と実演をしながら見せるようにしましょう。
ハンドボール程度の大きめのボールから、徐々にボール遊びに慣れていくと、スムーズに練習が進むでしょう。
《個人競技》とび箱越えて
複雑な障害物競争はまだ難しくても、とび箱を使った簡単なレースであれば、一人でも走りきることができるでしょう。
数段のとび箱をよじ登って降りたり、1段のとび箱の上から両足でジャンプしたりして、スタートからゴールまでを目指します。
最後に決めポーズをしてもらうと、かっこいい「見せ場」を演出することができます。
とび箱が飛べるようになる基礎を作ります
①リズムに合わせてとび箱に触れてみる
先生が打つタンバリンのリズムに合わせて、子どもはとび箱の前まで足を揃えてジャンプしたり、手をついたり、足を広げてみたりします。
②足を開く練習
四つん這いになって歩いたり、できたらカエル跳びのまねっこをしてみましょう。
③とび箱に飛び乗って進む
1段のとび箱の前に立って手をつき、ぴょんと飛んで座ります。そして手をつきながら前へ進んでいきます。
④飛び降りることに慣れる
先生が子どもの手をとりつつ、「2段のとび箱からジャンプして降りる」など高さに慣れていく練習をします。
【3歳児】子どもの世界を広げよう
歩く、走る、跳ぶなどの基本動作が巧みにできるようになる3歳児。
走りも安定してくるのでテクニカルな「障害物競争」もできるようになります。競技のテーマや衣装などに工夫を凝らし、子ども達の想像力や社会性を育めるようなプログラムを考えましょう。
《個人競技》障害物競走
障害物競争に「ごっこ遊び」の要素をプラスしてみるのはいかがでしょうか?
2歳~3歳にかけては、自分をほかの人や動物・キャラクターに見立てた「ごっこ遊び」もできるようになります。
運動会では身体を思い切り動かしながら、楽しんで役を表現しましょう。
①いもむしからちょうちょへ
最初はしゃがんで卵の状態からスタートします。マットをいもむしのようにゴロゴロ転がって、先生によじ登ってこんどはサナギに変身!最後は羽をつけてちょうちょになり、大きくジャンプしたらゴールです。
ちょうちょは大きな羽など、コスチュームを用意すると見ている人にも分かりやすいでしょう。
②おつかいごっこ
最初にカードを引き、書かれたものを平均台を渡った先から買って戻ってくる競技ですカゴやお金などの小道具を用意して、本格的に楽しめるようにしましょう!
《集団演技》フラダンス
簡単にできる集団ダンスにチャレンジしてみてもよいでしょう。
おそろいの衣装を用意して、子ども達に集団での活動ならではの楽しい雰囲気を味わってもらうことができます。
集団でのダンスにオススメなのが「フラダンス」。
普段の童謡やキッズソングとは少し違ったゆったりとしたメロディを子ども達も楽しめます。
振り付けも「波のように手を動かす・横に揺れる」と3歳でも簡単にできるため、動画サイトなどを参考に振り付けを考えてみましょう。
ダンスがバラついても見守ってあげましょう。最後のかけ声だけでも合わせると一体感が出ます。
《親子競技》ビッグパンツレース
大きなハーフパンツに、片足ずつ子どもと大人が入って走ります。
ただ走るだけでなく「イチ、二、イチ、二」とペアで声をかけながら、息を合わせて走るのが、難しくも面白いポイントです。
二人三脚のように足が固定されていないので、比較的安全に楽しめます。
【アレンジ例】
何組かに分かれてチーム対抗にしても盛りあがります。
サクランボなど、ペアを連想させるものや、恐竜などの大きな生き物をモチーフにして、パンツや装飾をデザインしても楽しいでしょう。
【4歳児】リズムやバランスをとって
走るのもグンと速くなり、ダイナミックな動きから繊細な動きまでできるようになる4歳児。
協調性や社会性が育ってくるとともに、競争心が芽生えたり、勝ち負けにこだわったりするようにもなるため、その発達にあわせたプログラムを選ぶとともに、ケガや子ども同士のトラブルにも丁寧に対処する必要があるでしょう。
《集団競技》 お菓子運びレース
二人組になってランスを取りながら、ケーキを落とさずに、ゴールに運ぶ競技です。走るスピードをペアであわせて調整する必要があり、チームワークがポイントになる競技です。
イラストのようにケーキを乗せる土台はカラーポリ袋、「持ち手」は丸めた段ボールを使用します。
「ケーキ」も同じくカラーポリ袋を使用し、中には丸めた新聞紙を入れて丸く形成し、装飾します。ポリ袋は2枚重ねると中の新聞紙が透けにくくなって、見栄えがよくなります。
【アレンジ例】
「パティシエ」をモチーフに、コック帽などの小道具も手作りすると本格的に楽しめるでしょう。
パティシエに限らず、子どもの将来の夢を聞いて、それぞれ違ったコスチュームを身につけてもよいでしょう。
集団競技は「まずは二人組」「5人組のグループ」「クラス全員で」と段階的に行っていくことが望ましいです
《親子競技》タオルを使った親子体操
親子でペアになり、首に掛けられる長さのタオルを1本用意してもらい、ふれあいながら楽しく身体を動かします。
先生の指示に従いながら、簡単な動きをしてもらいましょう。
①つなひき
向き合って立って引っ張り合います。
応用編は開脚して座り、足の裏をくっつけて、引っ張り合いをします。
筋力を強化します。開脚つなひきは柔軟性も高めます。
②丸めてバスケットボールに
大人は身体の前で腕を丸くしバスケットゴール役になります。
子どもは丸めたタオルを投げてそこに入れます。
ねらいを定め、コントロールする能力を養います。
③ボクシング
タオルの端に結び目を作り、それを大人が持ち、子どもはパンチをします。
ストレスやエネルギーの発散になります。
④ブランコ
二組の親子でチームを組んで楽しみます。
子どもは三角座り(体操座り)になり、わきの下と膝の下に一本ずつタオルを通します。
大人は両側からタオルをもちあげ、子どもを前後にゆらゆらゆらします。ブランコに乗っていない子どもは、ブランコをしている子の背中をやさしく押すなどします。
息をあわせたり、バランス感覚を育みます。
「4歳の壁」という言葉があるように、自我が確立しつつ反抗的になってくるこの時期。家でも簡単に実践できるので、子どもと絆を深めてもらうのにもピッタリのプログラムです。子どもの接し方に不安がある保護者にとっては子育ての手助けにもなるでしょう。
《集団演技》新体操風・小道具を使った演技
4歳ごろには、友達と動きを合わせて踊ったり、踊りながら小道具を扱ったりもできるようになります。そんな4歳児にオススメなのが、リボンやバトンを使って行うダンス。
リボンやバトンを大きく回してみたり、高く投げてみたり、ウェーブをしてみたり……集団で同じ動きをすることで、一体感を感じながら演技を楽しむことができるでしょう。
【アレンジ例】
馬の飾りをつけてギャロップのステップをする「チャグチャグ馬こ」や鳴子を使って「よさこい」を踊るなど日本の伝統的な踊りを子どもができるようにアレンジして行ってもよいでしょう。
楽しみながら伝統に触れるよい機会になります。
【5歳児】グループダイナミクスを魅せて年長児としての誇りを
異年齢との関わりの中でも自然とおにいさん・おねえさんとしての振る舞いを見せる5歳児。同じクラスの友達同士のつながりも強くなるこの頃には、力を合わせて取り組む集団の競技がオススメです。
自信をもって小学校に進学できるような、ステキな思い出を作ってあげましょう。
《集団演技》パラバルーン
パラバルーンは円形の大きな薄いシートのようなもので、「パラシュート」と「バルーン」をかけ合わせた遊具。水谷英三氏(元・甲南女子大学教授)が考案した日本発祥の遊び・運動です。
少し練習は必要になりますが、リズムにあわせ、友達と協力しながらパラバルーンを動かす集団での演技は迫力満点で有終の美を飾るにはふさわしい種目となるでしょう。
初回はみんなで思い切りパラバルーンで遊んでみるとよいでしょう。
ピーンと引っ張ってみたり、空気を含ませてドームのようにして、中に入ってみたり……楽しみながらパラバルーンの性質を身体で覚えていきます。
演技で使えるパラバルーン動きには次のようなものがあります。
大波・小波
全身を使って大波を、腕だけを使って小波を立ててバルーンを揺らします。
かくれんぼ(おまんじゅう)
パラバルーンを頭上に高く振り上げ、一斉に中に入ります。中に入ったらパラバルーンをお尻の下に敷きます。
外から見るとまるでふくらんだお饅頭のように見えます。
メリーゴーランド
保育者がパラバルーンに入り込み、中央に立ちます(長い棒を持っているとよりきれいに外から見えます)
周りの子どもたちは腰ほどの高さでパラバルーンを片手で持ちながら、右回りか左回りに歩きます。
花火
玉入れの玉やあらかじめ腕などにつけておいたポンポンをバルーンの上、中央部に放り込みます。
そしてパラバルーンを高く掲げ、一気に振り降ろします。
その勢いで小道具が弾けるように飛び上がりまるで花火のようになります。
《集団競技》巨大立体パズル完成ゲーム
チーム対抗戦で、ダンボールで作成したパズルを積み重ねて早く絵を完成させたチームが勝ちです。
絵を合わせるために子ども同士で考え、話し合う必要があるこの競技。役割を分担したり、案を出し合ったりと、社会性を発揮する姿を見ることができるでしょう。
観客もダイナミックな絵柄が着々と完成していく過程が見られ、ワクワクすることができる競技です。
《集団競技》動く玉入れ
おなじみの玉入れも楽しいですが、マンネリを感じる方も多いのでは?そんなときには「動く玉入れ」がオススメです。
先生が玉を入れるカゴを背負って、子どもはそれを追いかけながら玉を入れます。通常の玉入れよりコントロール力が必要となります。
子どもの発達に応じて、先生は走るスピードなどを調整するとよいでしょう。
スペースを広く確保し、少人数のグループに分けるなど、競技中に子ども同士がぶつかってケガをしないよう工夫しましょう。
みんなが笑顔で終われる運動会にするための4つのポイント
せっかくの運動会、参加する子どもも、見に来た保護者も全員に「良かった」と思ってもらい、締めくくりたいもの。
ここからは、楽しい一日にするためにもかならず気を付けておきたい4つのポイントを紹介します。
【①熱中症対策】十分な日除けと水分補給
熱中症は子ども達の命にもかかわりかねない危険なものです。プログラムや会場設営の工夫や、こまめな水分補給など、十分な対策を取りましょう。
開催時期やプログラムに工夫を
運動会開催時期をずらす・室内で運動会を実施する・練習やプログラムを詰め込みすぎないなど企画の段階でできる熱中症対策もあります。
運動会を屋外で行う場合は、テントを張って日陰を確保したり、打ち水をしたり、熱中症・暑さ対策を万全にしましょう。
当日は適宜休憩をし、1時間に一度は必ず全員水分補給をするなど徹底しましょう。
保育者自身の体調管理も万全に!
忘れてはいけないのが、保育者自身の健康管理です。
過去には保育園の運動会中に倒れ、そのまま熱中症で保育士が亡くなってしまった悲しい事故もありました。
子ども第一に思う気持ちは大切ですが、少しでも「体調がおかしい」と感じたら、周りに声をかけて休息をとるなど、無理をしないようにしましょう。
手厚い人員配置ができると保育士さんのプレッシャーも軽くなります。交代で休憩が取れるよう、管理職の方は余裕を持った職員数の確保に努めましょう。
【②ケガ対策】リハーサルで道具チェックもぬかりなく
一生懸命に運動会に挑めば、それだけケガも増えることが予想されます。
小さなケガは「がんばりの証」でもありますが、早急で適切な手当てをすることが必要です。
保育園看護師・保健係と打ち合わせをし、救急セットもいつもより多く用意しておくようにしましょう。
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重たい門が突風で倒れたり、ピンと張ったロープに子どもが足を引っかけて転倒し頭を強打したり……さまざまなリスクを想定し環境構成の不備や想定の甘さによる大怪我は避けるようにしましょう。
本番前には保育者が何度かリハーサルを行って、必ず安全確認を!
【③子どもの対応】まずは受け止め、個々へ配慮を
運動が得意な子どもにとっては運動会はスターになれる出番でワクワクするものかもしれません。
一方、運動が苦手な子ども達は「いつも競争で負けてつまらない」「やりたくない」などと後ろ向きな気持ちになってしまうかもしれません。
そんな時はネガティブな気持ちを否定するのではなく、その気持ちに寄り添ったうえで、子どもの練習のプロセスやできるようになったことに目を向け、子どもに伝えていきましょう。
子どもだけでなく保護者にも「今日はこんなことができるようになったのですよ、お家でたくさんほめてあげてくださいね」などと伝えると、子どもは安心感や期待感をもって運動会を迎えられるでしょう。
「気になる子」にとって運動会は一大試練
発達障害の子どもや、「グレーゾーン・気になる子」と呼ばれる発達に課題を抱える子どもにとって、運動会は刺激が多く不安定になりがちです。
まず、たくさんの観客がきたり、大きな音楽が鳴ったり、未知のことに遭遇する不安を抱えることが考えられます。
あらかじめどんなことが起こるのか伝えたり、ときには静かな場所に移動して安心できる環境が確保できるように工夫をしましょう。
また、練習の時もクラス全体へ指示出しをしたのち、「何のためにやるのか」や具体的に「次はこんな動きをする」など1対1で丁寧に伝えるようにしましょう。
また、クラスの全体練習などになじめない可能性も考えられます。
個別のニーズに配慮して、気が散らないようなシンプルな環境にする、できることがあったらこまめにほめていく、ストレスが貯まっているようなら集団から離れ休憩する……といったことを実践していきましょう。
運動機能の発達が気になる子には、主任や体操教員、保護者とよく相談して、その子が参加しやすいようなアレンジを加えてもよいでしょう。
特にバランス感覚に課題を抱えている子どもは「不安定な道具を使って転倒し、頭を強打してしまう」などというケガが起こらないよう、環境整備や難易度の設定に十分注意しましょう。
【④保護者対策】例年の反省を活かし不満を解消
保護者の不満や負担を増幅させないために、まずは保護者に対し、衣装づくり、お弁当の用意、親子競技への参加など、行事によって大きく負担が増えることはないか見直してみましょう。場合によっては、負担を軽減するために衣装を簡略化する、親子競技を練習不要なものにするなどの工夫も必要です。
また、例年までの保護者のクレーム・トラブル例がある場合には、あらためて確認・共有して、事前に対策を考えることが必要です。
例えば、会場の場所取りで例年トラブルが起こっているようならば、保護者席のルールを決めてあらかじめ周知しておくなど工夫をしましょう。
行き過ぎた要求にはどう対処する?
あまりにも「行き過ぎ」と感じる保護者からの要求には、ときには、「園としては対応ができないこと」を伝えることも必要です。
その際も、冷たくあしらうのではなく、要求を受け止めた上で「いかに子どものことを考えての対応か」「園の保育理念に基づいたものか」などを説明できるように、上席と相談のうえ、対応を検討しましょう。
イマドキの運動会は「開催時期の変化・時短・子ども主体」がキーワード
これまでの運動会は凝ったもの・派手な出しものを求める傾向もあったのではないでしょうか。
最近ではその流れに変化が起きています。キーワードは、「開催時期の変化」「時短」「子ども主体」です。
子ども・保護者・保育者の「三方良し」の運動会とは何か、事例とともに考えてみましょう。
「9月に運動会」は過去のもの
近年の運動会の大きな流れとして、まず「開催時期の変化」が挙げられます。
これまでは9月に運動会が開催されることがほとんどでしたが、炎天下の中子ども達に練習させることを避けるため、
●暑くなる前の5月・6月に実施する
●卒園イベントの代わりに年度末に実施する
などのケースが増えてきました。
保護者にも優しい「半日開催」
また、これまで朝から夕方早くまで1日かけて行われることが多かった運動会ですが、半日で運動会を開催する園も増えています。
子ども達にとっては、他の年齢の競技を見ることも大切ですが、集中力・体力の限界を迎えがちです。
半日開催なら楽しい雰囲気のままイベントを終えられます。
また「朝早く起きて作るお弁当の負担がなくなって嬉しい」など、保護者にとっても時短の半日開催はメリットのあるアイデアです。
「子ども達が楽しめる」運動会に
そして、もう一つの流れが「子ども主体」の行事への切り替えです。
一糸乱れぬ完璧なマスゲームなどは確かに見る人に感動を与えますが、子ども達からすれば「やらされている」と感じ、心から楽しめない可能性もあるでしょう。
その場で楽しめる種目を中心にして、体を動かす楽しみを分かち合うイベントにするという園は増えてきているようです。
また、「見栄えのする種目をやりたい」「保護者の期待に応えたい」という気持ちも分かりますが、危険を度外視した種目は避けねばなりません。
どの種目も複数人でリハーサルをして確認してみたり、専門家の監修がある本などを参考にしたりして、競技の安全性が保障されるように注意しましょう。
編集者より
運動会は園のカラーや時代のカラーが出るイベントです。
毎年、様々な個性の子ども達をまとめ、運動会を企画していくことは大変ですが、ぜひ、先生の個性やアイデアも活かして素敵な運動会にしてくださいね。
めいっぱい身体を動かす喜び・楽しみを子ども達と分かち合いましょう!
参考文献・サイト
- 厚生労働省「保育所保育指針」(2019/07/19)
- 内閣府「幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説」(2019/07/19)
- wezzy「変わる「運動会」 時短、冷房休憩、熱中症対策…当たり前は「正解」じゃない 」(2019/07/19)
- NIKKEI STYLE「小学校、運動会は時短 大人の事情で競技と弁当カット」(2019/07/19)
- 厚生労働省/京都府舞鶴市 社会福祉法人倉梯福祉会 さくら保育園 園長 森田達郎「保育所等における保育の質の確保・ 向上に関する検討会(第3回)保育の見直しと その取り組み 」(2019/07/19)
- 厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト「学校法人猿橋幼稚園」(2019/07/19)
- 東京新聞「組み体操、国連が審査へ 子どもの権利条約委 「危険」報告書受け」(2019/07/19)
- CRC「Concluding observations on the combined fourth and fifth periodic reports of Japan* (ADVANCE UNEDITED VERSION)」(2019/07/19)
- 浦安市「就学前「保育・教育」指針改訂『第Ⅳ部 保育・教育の具体的な取組み』」(2019/07/19)
- Stars Smileyチアダンススクール「未就園児の跳び箱あそび~柔軟性&リズム感を身につけよう~」(2019/07/19)
- 一関市体育協会「親子でタオルで体育遊び」(2019/07/19)
- 東京成徳大学「子ども学部の『幼児運動遊び演習』」(2019/07/19)
- 独立行政法人日本スポーツ振興センター「学校安全ナビ34号」(2019/07/19)
- 三谷明美・田中マキ子・長坂祐二(2015)「ベビーマッサージが父親・母親の心理的側面・発達的側面に 及ぼす影響 に関する文献レビューの一考察」『山口県立大学学術情報 第8号』(16)
- 木村順(2014)『発達障害のある子どもの運動と感覚遊びを根気よくサポートする』日東書院
- 川原佐公(2015)『発達がわかれば保育ができる!』ひかりのくに
- 山下直樹(2018)『「気になる子」のわらべうた』クレヨンハウス
- 『月刊保育とカリキュラム 2018年6月号』ひかりのくに
- 『PriPri 2018年9月号』世界文化社
- 『PriPri 2018年8月号』世界文化社
- 『PriPri 2013年7月号』世界文化社
- 『Piccolo 2015年7月号』学研