生活発表会・お遊戯会のプログラム、何をするかお悩みではないですか?
この記事では、プログラムの定番である「劇」・「音楽(合唱・合奏)」・「ダンス」について詳しくご紹介!
劇遊びの台本作りや音楽(合唱・合奏)、身体表現(ダンス)などの実践方法も身につけましょう。
記事の後半では対象年齢別のユニークなプログラムの例もありますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
発表会・お遊戯会のねらいや保護者対応についてはこちら
【劇あそび】のキホン
子ども達は身近なものをまねっこすることが始まり、次第に友達を巻き込んだごっこ遊びに発展し、ファンタジーの世界に没入して演じることができるようになります。
発表会は遊びのひとつの通過点だと捉えて、「劇遊び」を楽しむ気もちで取り組みましょう。
まずは発表会までのおおまかな流れを確認します。
【劇ver.】発表会までのやることリスト
☑題材選び
(「何を伝えたいか?」「クラスの良さは何か?」を整理)
☑台本作り
(起承転結→セリフ・動き)
☑配役
☑練習
(部分練習→通し練習)
☑道具・衣装作り
☑リハーサル
☑本番
題材選びの3つのポイント
劇の題材に使える素材は山ほどありますが、いざ劇でおこなうと難しく感じてしまします。
題材を絞る時はぜひ以下のポイントを意識してみてください。
①登場人物の数
『スイミー』や『てぶくろ』のように、登場人物が多いものは劇にしやすいですね。
あるいは『桃太郎』のような話であれば、桃太郎役を3人にしてセリフの負担を減らしたりすることもできます。
必要に応じてクラスを「劇団〇〇」というように分けて、短い劇をいくつか行ってもよいでしょう。
②分かりやすいストーリー展開
起承転結がわかりやすい題材を選ぶと子ども達も理解が早く、観客も飽きません。
なじみのある名作・昔話を選ぶのも一つの方法です。
③見せ方、演出をイメージ
劇でも歌やダンスが入れば「オペレッタ」「ミュージカル」となります。
発展形として即興劇にしたり、楽器を使うなど様々な演出・見せ方も視野にいれてみてくださいね。
「オペレッタ」「ミュージカル」の違いはあるの?
保育の現場ではよく耳にする「オペレッタ」と「ミュージカル」、その違い分かりますか?
どちらも「歌やダンスのある劇」という特徴は共通しており、保育の現場では明確な線引きはされていないようです。
オペレッタの源流は16世紀末~17世紀にイタリア発祥の「オペラ(≒歌劇)」。
それが発展し、短く・喜劇的な内容となって親しまれたのが「オペレッタ」です。
本来はクラシック音楽を用います。
日本の保育の現場では「遊び」の要素に着目され、幼児教育の一環として根付いてきました。
19世紀後半からアメリカで発祥。
演劇に加え、音楽やダンスが組み合わされた総合舞台芸術です。
ポップな音楽や日常的なモチーフも取り入れられてきました。
あるものも活かして! 台本作りはここから学ぼう
劇で先生が最も苦労するのが「台本作り」ではないでしょうか?
元となる物語(絵本・紙芝居など)があれば、それを元にセリフや動きに起こしていきましょう。
子ども達に「この場面は登場人物はどんな気持ちかな?」と問いかけて、出てきた言葉を採用すれば、子どもと一緒に作り上げるオリジナリティあふれる劇ができますね。
もちろん、市販の台本や著作権フリーのサイトを活用してもOK。
専門家による知見も得られます!
「細谷建治の脚本紹介 こどものための劇・歌・ミュージカルの部屋」
http://park10.wakwak.com/~hosoya/tobira.html
▲対象年齢が小学生とやや高いので、年長さん向け。子ども達が演じやすいように一工夫は必要ですが、ミュージカルの音源も聞ける総合的なサイトです。
SPOT LIGHT「小学生の学習発表会のための台本を無料公開」
https://www.kazz-spot.com/
▲つかこうへいさんに師事した脚本家・演出家の渡辺和徳さんのサイトです。15人程度のキャストが登場する劇ですので、セリフをさらに分担してもよいですね。
台本作成のコツは、こちらも参考に
世界観をつくる背景・大道具・小道具はリスト管理が◎
大道具や小道具も劇をより盛り上げるために重要な役割を果たしますね。
劇の道具作りで意識したいことは世界観。
日本昔話がモチーフなのに背景が現代的な家だったり衣装がドレスだったりすると、子どももストーリーに入り込むことが難しくなります。
劇の世界観に即しているか、他クラスの保育者に確認してもらうのもよいでしょう。
また、やみくもに道具作りに取り掛かるのではなく、まずは場面ごとに必要な道具をピックアップしましょう。
リスト例(桃太郎の場合)
実際どのような道具が作られているかは、こちらの投稿サイトからもチェックすることもできます。
大道具・小道具・背景作りは子ども達も一緒にできれば、よりお話の世界に入り込むことができます。
たとえば、子ども達が演じていくうえで「髭があった方がもっとおじいさんみたいになりそう」と発言があれば、保育者は「そうだね、自分達で作ってみようか!」などと広げていけると良いですね。
※衣装については次の節で詳しく解説します。
背景の作り方
①参考となる絵を決める。
絵本やフリー素材などを使うとよいでしょう。
②舞台の大きさをはかり、模造紙の枚数を決める。
③①のコピーなどに補助線を引き、模造紙に描いた場合の構図を把握する。
④模造紙に下書きをしていく。
⑤着色する。
薄い色から濃い色へ。色を重ねると立体感が出ます。
ローラーを使うと早く着色でき便利です。
お裁縫が苦手でもOK! カンタン衣装作りのヒント
「衣装作り」も普段取り組むことが少なく心理的なハードルが高いお仕事のひとつかもしれません。
凝りすぎて、肝心のお芝居が疎かになってしまうのはもったいないですね。
世界観を壊さずに、しかし子ども達の演技に注目がいくようなコスチューム作りを意識しましょう!
ここでは応用のきく「ベスト」のカンタンな作り方を紹介します。
3ステップで簡単!~カラーポリ袋のベストの作り方~
素材はカラーポリ袋が扱いやすいのでオススメしていますが、不織布でももちろんOK!
お話の世界観に合わせて素材も選びましょう。
また、茶色のカラーポリ袋でベストを作り、お腹の部分に白い丸を貼れば「おさるさん」、水色にして丈を長くし襟を付けたりエプロンをプラスすれば「不思議の国のアリス」、というように色々応用ができます!
困った時はお面や帽子を活用しよう
「凝った衣装が用意できそうにない!」という場合は被り物(お面や帽子)を用意するのはいかがでしょうか?
赤い頭巾、王冠、猫の耳、ターバン、侍のちょんまげ(カツラ)などなど……。
子ども達も「変身」気分が味わえる上、ワンアイテムで明確にそのキャラクターが伝わるので便利です。
【10分でできる手作り帽子のアイデア】
土台となるのはカップ麺の容器。これを装飾用の布や紙で覆って飾りつけするだけ。
子どもの頭のサイズに応じてゴムなどを付けてくださいね。
カラー帽子に装飾すればより簡単です。
【音楽(合唱・合奏)】のキホン
リズムや言葉に親しみながら、みんなで一つの音楽を作り上げていく楽しさがあります。
せっかくの発表会。
衣装のワンポイントを揃えたりしても一体感が出てかわいらしいです。
【音楽ver.】発表会までのやることリスト
☑選曲
☑役割分担(合奏の場合)
☑練習
(リズム遊び→パート練習・合わせ練習)
☑道具・衣装作り
☑先生のピアノ伴奏・指揮練習
☑リハーサル
☑本番
合唱は具体的な言葉かけで美しいハーモニーを
導入でみんなで一緒に歌ったり、子ども達が好きな番組の歌をふと口ずさんでいたり……。
子ども達にとって歌は身近なものかもしれません。
発表会では、みんなで声を合わせて歌うことの楽しさに加えて、いつもと違うホールでの音の響きや聞き手がいることの喜びも分かち合えるのが理想的です。
☑子ども達の発達に合っているか
(歌のモチーフや歌詞の言葉へのなじみなどをチェック)
☑子ども達にとって歌いやすい音程、スピードか
(必要に応じて転調したり速度を変えましょう)
☑曲のメッセージ、曲調はふさわしいか
(悲しい曲よりも明るく楽しい曲が望ましいです)
子ども時代にしか出せない澄んだ声を聞かせられるよう、練習をしていきましょう。
①ウォーミングアップ
②腹式呼吸
③体の力を抜いて正しい姿勢で立つ
④お互いの声を聞きながら歌ってみる
⑤音を遠くに飛ばすイメージをもつ
特に「大きい声で歌おう」と言うと怒鳴り声のような歌い方になる子どもが出てきます。
保育者は「口を大きくあけて歌おう」「げんこつがお口に入る大きさで声をだしてみるとどうなるかな」などとより具体的に伝えると、自然に・よい声量で子どもが歌うことができます。
合奏はリズム遊びの一環として
子ども達にとって楽器に触れることができる数少ないチャンス!
リズム感は普段の生活の中でも活きてきます。
楽器はカスタネットやタンバリンなど叩くだけで簡単に音が出るものを中心に、4・5歳になったらピアニカやハンドベルなどにチャレンジしてみても良いですね。
☑曲のテーマや世界観がわかりやすいか
(歌詞がない分、表現力が問われます 世界の民謡などにチャレンジしても)
☑拍やメロディラインがはっきりしているか
(打楽器を使うことが多いのでリズムをとりやすい曲を選びましょう)
☑曲のテンポが速すぎたり、遅すぎたりしないか
(慣れない合奏では早くなってしまったり、ついていけなかったりしがちです)
ダンスはリズムに合わせて身体を動かし、言葉や音から動きをイメージをふくらませることで豊かな表現力を育むことができます。
流行の曲を取り入れたり、クラスの個性が出しやすい発表にもなりますね。
【ダンスver.】発表会までのやることリスト
☑選曲
☑振り付け
☑練習(部分練習→通し練習)
☑道具・衣装作り
☑リハーサル
☑本番
3・4歳位までは、普段の保育から歌や楽器に親しんで、自然と体を動かすような楽しみ方をしていき、「即興ダンス」に近い見せ方がよいでしょう。
保育者の振り付けを真似て覚えて踊るのは、5・6歳以降がふさわしいという指摘もあります。
「振り付け」のヒントは動画や書籍から得よう
保育者にとっては振り付けを考えるまでが一苦労。
子ども達と歌詞から動きを連想してみたり、即興風に曲のイメージから一緒に振り付けを考えると世界に一つだけの素敵なダンスになりますよ。
最近は多くの動画や資料がたくさんあるので、色々な振り付けを取り入れてみましょう。
こちらでは保育者にオススメの参考資料を紹介します。
動画・サイト:平多正於舞踊研究所
戦後まもなくから舞踊の研究・振興に携わってきた平多正於舞踊研究所のサイトには、子ども向けにピッタリの振り付けが100種類以上見ることができます。
身体理論に基づいた振り付けのアイデアの参考になります。
年齢別・プログラムのユニークアイデア例
ここからは、年齢別のプログラムのアイデア例をご紹介します。
定番の「劇・音楽・ダンス」をベースに、ちょっぴりユニークなアレンジを加えています。
年齢ごとに気を付けるべきポイントや練習方法も紹介しているのでぜひ参考にしてくださいね。
〖0歳児〗ファッションショーでランウェイデビュー
発表の舞台の作りを工夫し、ノリの良い音楽をかけて、ランウェイ風に。
名前を一人一人呼び上げて「ハーイ!」と元気にお返事したら、端から端までハイハイしたり、ベビーカーで保育者と一緒にランウェイを進んでいきます。
モデルさんのような子ども達の姿に保護者もにっこりです。
照明も無理に暗くせず、子ども達がリラックスできる環境を構成しましよう。
〖2歳児〗「おつかいごっこ」の劇遊び
ごっこ遊びが楽しめるようになる2歳児。
子ども達が、ペアになっておつかいに出かけるというストーリー風にして楽しみます。
舞台の下手(しもて)から手をつないだ子ども達が登場し、上手(かみて)にあるお店屋さんにおつかいに行きます。
「〇〇ください」と言って、お金と引き換えに食材を渡し、大きなお鍋に入れていきます。
最後に「カレーライスの歌」をみんなで歌ったら、カレーが完成!というストーリーです。
衣装はコックさんの帽子をかぶってもかわいいですね。
食材などの小道具は子ども達と一緒に作れば、本番まで長く楽しめます。
〖3歳児〗手作り楽器で『山の音楽家』を合奏
『山の音楽家』は登場する動物も多く、明るいメロディやくり返しが多いことからも、3歳児さんにもおすすめの曲です。
発表会では、動物に扮した子ども達が、手作りの楽器を手に代わる代わる演奏をしていきます。
最後はクラスみんなで音を合わせて合奏を楽しみましょう。
実際の歌詞では動物は小リスやウサギ、楽器はピアノやフルートなどですが、自由にアレンジも可能です。
手作り楽器はこちらに多数掲載されています。
〖4歳児〗小道具を持って日本舞踊にチャレンジ
和装で桜の枝(作り物でもOK)や扇子、和傘などをもって日本の伝統的な踊りにチャレンジしてみましょう。
着物は不織布で簡単に作ることができます。型紙が付いている書籍を使うと便利です。
日本の伝統的な音楽を使えば、伝統への理解へも繋がります。
一方、和の曲調のアイドルソングならばリズムにのりやすくノリノリで踊れます。
たとえば歌詞に「桜」と出てくるのであれば「桜の花になったつもりで、咲いたらどんな動きかな?」などの言葉かけをし、想像力をかき立て、身体で表現することの楽しみを引き出していきましょう。
♪『さくら さくら』 / 日本古謡
♪『うれしいひな祭り』 / 童謡
♪『花笠音頭』 / 山形の民謡
♪『KAGUYA』 / NEWS
♪『にんじゃりばんばん』 / きゃりーぱみゅぱみゅ
〖5歳児〗楽しく異文化理解 ミニ英語劇
異文化理解の一環として、「英語の時間」を設けている園もありますね。
そのような下地があるのならば、英語劇に挑戦してみるのはいかがでしょうか?
子ども達にとって英語が「勉強」になる前に、楽しみながら英語にふれ合うよい機会となるでしょう。
セリフを全て英語で行わずとも、セリフの一部や挿入歌を英語で歌ってみたりするだけでも、普通の劇とは一味違ったものになりますよ。
編集者より
発表会は保育者としても総合的な能力が求められる行事です。
プレッシャーもあるかもしれませんが完璧を目指すのではなく、子ども達と過ごした1年間の成長の姿を元気に披露できたら素敵ですね。
発表会が終わったら、保育者としても一回りも二回りも成長したと感じられるはずです!
参考文献・サイト
- シナリオ・センター「脚本の書き方を6つのポイントで紹介。学習発表会の脚本に苦しむ先生へ」(2019/09/13)
- 平多舞踊研究所「じゃぽキッズ[幼稚園・保育園・小学校向けダンス&保育教材]」(2019/09/13)
- 毎日新聞「コトバ解説:「オペラ」と「オペレッタ」と「ミュージカル」の違い」(2019/09/13)
- ほいくらいふ「簡単!楽器遊びにおすすめの保育活動」(2019/09/13)
- 岩井真澄(2017)「幼児教育におけるオペレッタの位置づけとその歴史的変遷」日本乳幼児教育学会第27回大会報告
- 足立広美(2019)「日本の幼児教育・保育の音楽劇に関する研究(1) ― 保育園による劇遊び活動から見る「保育者の質の向上」の可能性についての一考察 ―」『教育学論集』69:43-59
- 細田淳子, 蟹江春香(2010)「保育者養成教育における発声法」『東京家政大学研究紀要 1 人文社会科学』東京家政大学50:31-39
- 石渕聡(2017)「幼児の身体表現と指導方法 : 触覚的身体の啓発に向けて」『教育学研究紀要』大東文化大学 8:93-105
- 磯島紘子,西谷伶子,大久保和子,荒木恵美子,井上邦江(1969)「リズム遊び・リズム運動およびダンスにおける幼児・児童・生徒のレディネスにあった系統的学習指導法 : そのII 3・4才児のリズム遊びについて」『体育学研究』13(5)306,
- グループこんぺいと(2007)『先輩が教える保育のヒント40―運動会・生活発表会・作品展』黎明書房
- 花輪充(2013)『みんなでつくろう発表会 (行事別保育のアイデアシリーズ)』フレーベル館
- 寺西恵里子(2016)『型紙つき 0~5歳発表会コスチューム155』ひかりのくに株式会社