保育所不足が叫ばれている昨今、注目されているのが保育ママです。
自宅で子どもを預かることができる、より家庭的な環境の中での保育が実現できるとして、利用希望者も少しずつ増えているようです。
一方、保育士や潜在保育士からも、「保育ママとして開業したい!」という声が多くあがっているそう。
今回の記事では、「保育ママ」についてリアルな声とともにお伝えします!
「保育ママ」とは?
「そもそも【保育ママ】ってどういうもの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
保育ママとは、仕事や怪我・病気などにより保育ができない保護者に代わって、子どもを自宅で預かる保育者・保育施設のことを指します。自治体の認定を受けており、家庭福祉員、家庭的保育者とも呼ばれます。
平成22年4月の児童福祉法の改正に伴い、家庭的保育事業として法定化されました。
すべての自治体で実施されているわけではないので、「利用したい」・「開業したい」という場合には、各自治体に確認しましょうね。
保育ママになるために必要な条件は?
では、今度は保育ママになるための必要条件について見ていきましょう。
各自治体によって制度が異なりますが、保育ママとして開業するには一定の条件を満たす必要があります。
江戸川区の保育ママの例
江戸川区は昭和44年から全国に先駆けて「保育ママ」の呼称・制度を導入していました。
ここでは、江戸川区の「保育ママ」になる条件・資格を例に見てみましょう。
保育ママの資格とは
次の(1)から(5)のすべてに該当し、愛情深く保育ができる方
(1)乳児を育てた経験のある方(または、保育士・教員・助産師・保健師・看護師の資格がある方)
(2)健康な25歳~概ね60歳までの女性
(3)日曜・祝日を除く、毎日午前7時30分から午後6時までの保育が可能な方
(4)保育室として6畳相当の部屋を確保できる方
(5)就学前のお子さんがいない方
健康診断や施設調査を受けていただいた上で、区による研修をすべて受講した後に、保育ママとして認定可能かどうかを判断しています。
●引用:江戸川区ホームページ「保育ママ募集」
待遇は?保育士さんより良いの?
収入や働く時間など、気になる点をまとめました。
収入
・保護者からの保育料(平均20,000円~30,000円/月程度)
・時間外保育料(1時間当たり300円~500円程度)
・自治体からの保育補助金(ある場合は平均70,000円~85,000円/月程度)
紙おむつ等の必要な経費については別途徴収可能なことが多いです。
地域によってはその他整備費などとして30,000円/月程度の補助がある場合もあります。
定年
65歳の誕生日をむかえた年の年度末
延長できる可能性もあります。
定員
預かる人数はおおむね2~3人程度
補助者がいる場合には5人程度まで預かれる人数の上限が増える場合もあります。
保育時間
・午前8時~午後6時程度まで
・基本的には日中8時間の勤務です
別途時間外保育を行うことも可能とされています。
休日
・基本的に日・祝日が休日
自治体によっては年末年始、夏期休暇など日にち指定で休日となる場合もあり、10~20日程度の有給休暇も取得できます。
給食など
・保護者によるお弁当持参の場合が多い
アレルギーの対応などは保護者とよくコミュニケーションをとっておきましょう。
ここは注意して!
保育ママになる上で注意すべきポイントは、保育ママが「個人事業主」であるということ。
個人事業主となのりますので、国民健康保険、国民年金、その他賠償保険への加入は必須となります。
その費用については基本的に保育ママの負担となるので注意しましょう。また確定申告などの税務署へ届出も必要です。
メリット・デメリット! 先輩保育ママのリアルな声
それでは実際に保育ママとして活躍される方の声から保育ママとして働く上のメリット、デメリットを探ってみましょう!
良かった点は?
●子どもとの距離感が近く、アットホームで丁寧な保育ができる
●子どもとも保護者とも深く関わることができて、成長を一緒に喜べる
●地域に密着しているので、近所での関わりが増えたり愛着がわいた
大変な点は?
●看護師や事務・経理も兼ねているようで一人でなんでもこなさないといけない
●自分の子育て経験だけではなく、専門知識を日々磨き続ける必要がある
●責任の重さ・緊張感
家庭的な雰囲気、子どもや保護者との距離が近いことなどのメリットがある一方で、責任が重い、幅広い業務への対応が出来なくてはならない、保育に関する十分な経験と知識が必要であるなど、大変な点もあるようですね。
将来の開業のために準備しておくとよい5つのコト
保育ママは個人事業主であり通常の保育所に勤めるのとは状況が大きく異なります。
将来的に保育ママとして働くことを考えている方は、必要な条件を満たすことに加え、開業に向けた次の5つの準備をしておくと良いでしょう。
大規模な保育施設で経験を積む
保育ママとして開業する場合、様々な状況に対応できる知識と経験が必要になります。保育士資格や幼稚園教諭資格をお持ちでまだ若くキャリアが浅いという場合には、多くの子どもや保護者と接し、対応事例を増やすことも役立つでしょう。
キャリアの長い方は小規模保育を経験しても
ある程度の保育経験のある方であれば、開業後の保育環境に近い小規模保育での経験を積んでおくのも良いかもしれません。敷地面積が狭い中で注意すべき点や園庭が無い環境での遊びなど参考になる点がいろいろとあるはずです
チャイルドマインダーや社会福祉士などの資格取得
チャイルドマインダーは家庭的保育のスペシャリストを目指すための民間の認定資格です。集団保育ではなくより少人数の家庭的保育に特化した知識の習得に役立つため、通信教育などを受講し、資格を取得するのも良いでしょう。
また、保育ママとして開業する場合は、保護者に対してもよりきめ細やかな対応が必要になります。
社会福祉士の資格取得を目指したり、関連書籍などで知識を深めておくことで様々な悩みを抱える保護者へ適切なアプローチをしやすくなるでしょう。
開業のための施設整備、資金準備
自宅を利用する場合、開業には基本的におもちゃなどの準備のみで済みますが、子どもたちが安全で快適に過ごせるようリフォームなどが必要な場合もあります。
そのほか家具の転倒防止器具や安全柵などの設備を整えることが重要になりますので、資金面でのプランをよく練り整備を行いましょう。
(自治体によっては開業資金の補助がある場合もあるので相談を!)
事業主としての会計管理方法を考える
個人事業主として避けては通れないのが確定申告。
帳簿の付け方によって青色、白色の申告方法があり、帳簿つけや決算書をきちんと作れば、節税効果が見込める青色申告が可能です…とはいえ知識が名合状況で様々な帳簿をつけるのは大変…そんなときには会計ソフトなどを準備し、操作に慣れておくと良いでしょう。
編集者より
第二の家庭のような環境で保育に関われる保育ママですが、一方では事故例なども報告されており、命を預かることの責任の重さを感じます。
子どもたち、そして自分自身を守るためにも開業前には入念な準備をしたいものですね。
また、保育ママ制度は地域によって体制が異なります。開業を考える場合は自治体に問い合わせて要項を確認しましょう!
参考文献・サイト
- 子ども・子育て本部 – 内閣府「平成23年版 子ども・子育て白書」(2020/08/27)
- 江戸川区「保育ママ」(2020/08/27)
- 江戸川区「保育ママ制度のご利用案内」(2020/08/27)
- 大田区「保育ママ募集」(2020/08/27)
- 「葛飾区保育ママ情報」
- 「家庭的保育事業の実施について(◆平成21年10月30日雇児発第1030002号)」(2020/08/27)
- 仙台市「家庭的保育事業・小規模保育事業(C型)(保育ママ)」(2020/08/27)