乳幼児は大人の表情をよく観察し、そこから多くの情報を得ています。だからこそ子どもと接する際、大人が気を付けなくてはいけないことがあります。本日は発達心理学に基づいて、子どもたちと接する際に心がけるべき”6つのポイント”をご紹介します。
子どもたちは大人をよく見ている…発達心理学に学ぶ
乳児の段階から子どもは、他者の顔や視線を知覚し、さまざまな情報を読み取る能力を持っているとされています。
発達心理学者バロン・コーエン氏によれば、社会性を身に付ける過程の中でも人間の顔の認知が特に重要であるそう。まずは、子どもたちが視覚的な情報をどのように認識していくのか、その過程を確認しましょう!
子どもの成長と視覚的要因(大人の表情など)との関わり
- ◆ 0~1歳児
- 乳児期には愛され大切にされることで絆が深まり、情緒の安定や人への信頼感が育まれると言われており、アイコンタクトやスキンシップで愛情や安心感を感じとります。
3カ月頃からは動くモノを目で追う”追視”、他の人の視線を追って自分もそちらを見る”視線追従”ができるようになります。人間の表情に対する興味も持ち、相手の視線や声、表情やジェスチャーを通じて相手の感情を感じ取る能力の土台ができる時期です。
7~8カ月ごろからは表情の理解が進み、9カ月頃からは他者の意図や、自分の意思が理解できるようになると言われています。 - ◆ 1~3歳児
- 1歳頃には新しいものや初めて見るものがあると、その安全性などを確かめるために保護者などの顔を見る”社会的参照”が現れます。
つまりは他者の発する情報から世界に対する知識をつけていくため、保護者や保育者が外界に対して向ける表情なども、子どもたちに影響を与えます。 - ◆ 3~5歳児
- 神経系統は生まれてから5歳頃までに 80%の成長を遂げ、6歳までには90%まで発達すると言われています。
5歳頃には基本的な表情の絵を見せた時、その顔が怒っているのか、笑っているのか、悲しいのか…といった感情が十分に理解できるようになっているようです。物語の主人公の気持ちなど他者の感情経験を推測する能力もこの頃には備わっています。 - ◆ 6歳児以上
- 他者は本当に感じている感情とは異なる感情を表わすことがある、ということを理解し認知できるのが6歳以上であるとも言われています。
それ以前には見かけの表情などの外的要因が、子どもにとってさまざまな要素の判断材料になっていると言えるでしょう。
ではここからは実際に子どもたちと接する際に気をつけたいポイントについてご紹介します!
【point-1】目と目を合わせること
特に月齢の低い乳児の場合、子どもたちは安心感や信頼感をスキンシップやアイコンタクトから感じ取り、それが情緒の安定にもつながっていると言われています。
大人でもそうですが、話をする際に相手が目を見て聞いてくれないと「理解してもらえているのかな?」と不安になります。しっかりアイコンタクトを取り、理解や共感を示して安心させてあげましょう。
発達障がいや自閉症をお持ちの場合には、目を合わせることが子どもにとって大変苦痛なこともあります。
恐怖心を与えないように、子どもから次第に目を合わせるようになるまで、少し斜めの位置関係を取るなどの接し方の工夫が必要な場合がありますので注意しましょう。
【point-2】物理的に目線の高さを合わせること
子どもたちの垂直方向の視野は大人約120度に対して70度、水平方向は大人約150度に対して90度と狭くなっています。そのため子どもたちと関わる際には、物理的に子どもの視野に入ることが大切です。
また頭より上から言葉をかけられた場合、威圧感を感じやすく大人の表情もわかりづらいもの。話を聞く際やしゃべりかける際には、子どもの目線までかがんであげましょう。
【point-3】目の表情を意識すること
3歳程度の子どもたちが大人の顔のどの部分に注目しているのかを追及した研究によれば目、口、鼻のうち最も注視時間が長かったのは目であったそう。例えば笑顔の場合、つい口角を上げることに注意を向けがちですが、意識的に「目の表情」で表現をすることが子どもに心が伝わりやすくなるポイントです。
「目は心の窓」とも言われています。子どもと接しながらつい他のことを気に病んでいたり、疲れが出ていたり…微妙なニュアンスは目を通して伝わってしまっているかもしれません!
【point-4】喜怒哀楽…表情に気を配る
下の動画では保護者が表情豊かに接した時と、無表情で接した時の子どもの反応の差を紹介しています。
無表情になった母親に対して子どもは不安を感じて泣き出してしまいます。表情はアイコンタクト同様に愛情や安心感を得られる要素でもあります。子どもたちにわかりやすく感情豊かに接することを心がけましょう。
また、子どもに対する表情だけでなく、他者やものに対する表情にも気を配りたいもの。1歳頃からは社会的参照という能力があらわれます。
たとえば他者を見る際に大人が警戒をしていた場合などには、子どももその警戒を感じ自分の認識としてしまう可能性もあるので、注意しましょう。
【point-5】表情と感情を一致させること
生後8カ月頃には表情の理解が進み、自分の行動の良し悪しを保育者の表情などから読み取っていると言われています。そのため、子どもを褒めるとき、叱るときなどにはその感情に見合った表情を示しましょう。
感情と表情が一致していなければ、子どもは混乱し、気持ちが伝わりづらくなります。ストレートなわかりやすい表現を心がけましょう。
【point-6】子どもの目に入る場所で愚痴や悪口は言わない!
最後に、当たり前のことではありますが、子どもたちのいる前で、仕事や家庭の愚痴、他者の悪口などの雑談をするのは避けましょう。
子どもたちは5歳頃までには神経系統の8割が成長し、言葉が理解できなくとも表情などからニュアンスは伝わると言われています。認知をゆがめてしまったり、不安感を与えてしまったりすることのないよう、気を付けましょう。
編集者より
先日友人の1歳の男の子と遊んだ編集者。きれいな瞳でまっすぐ目を見てくるので、ちょっぴりドギマギしてしまいました。
しかししっかり目を見て話しかけると、言葉はわからずとも伝えたいことは感じるようで、編集者に合わせて笑ったり、びっくりしたり…子どものかわいさと不思議さを感じた。1日でした。
感受性溢れる子どもの時に豊かな感情と愛情にたくさん触れ、心豊かに育ってほしいものですね。
参考文献・サイト
- 幼児期・児童期における自己理解他者理解感情理解の関連性について
- 3 歳児の表情認識における比較視線行動の分析
- 天白子ネット|聞きかじり発達心理学
- 日常を心理学する
- マイベストプロ神戸