澄んでキラキラとした子どもたちの瞳…彼らの目には世界はどのように映っているのでしょうか。実は視力や色覚の発達、視野の広さなどの関係で、乳幼児期の子どもの目には、大人とは大きく異なってものが見えているようです。本日は私たち大人が忘れてしまった”子どもたちの世界”をちょっぴりのぞいてみましょう!
子どもの視力は大人と同じ?
生まれた時点で器官としてはほぼ完成している子どもたちの目。しかし視力や色覚など目の機能自体は成長と共に発達していきます。まずは視力の発達について見てみましょう!
子どもの視力発達の目安 | |
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新生児 | 【0.03】まだ両目の協調性がない状態。顔の正面にあるものを見つめる凝視ができます。 |
0~3カ月 | 【0.1以下】2カ月頃には、人間の顔とそれ以外の物の形が区別できるようになります。物体が立体的に見えてきます。左右に動くものを目で追う追視ができます。 |
6カ月頃 | 【0.1】視野が広がり数メートル離れた物体が捉えられるようになります。まだ輪郭はうっすらしていますが、人の表情の違いが分かるようになります。 |
1歳頃 | 【0.2】より細かいものを見つけることができるようになります。ものの形の区別ができ始めます。本の絵の簡単な輪郭がわかるのは1歳半頃から。 |
2歳頃 | 【0.4~0.6】四角・丸・三角形などの形の区別がつくようになります。立ちあがることで視界が大人に近くなっています。 |
3歳頃 | 【0.6~0.8】輪郭は多少ぼやけるものの、形の違いがはっきりしてきます。発達に個人差があり、この頃から1.0の視力を持つ子どももいます。 |
5~6歳 | 【1.0】ほとんどの子どもが大人と同等のレベルの視力を持つようになります。 |
いかがでしょうか。思った以上に視力の発達には長い時間がかかっていることがわかるでしょう。乳児が白黒の境目がくっきりした模様などに興味を持ちやすいのも、この視力の発達が関係していると言われています。
赤ちゃんの色の認識には段階があった!
世の中にあふれる色を識別する色覚、乳児には周囲の色が大人が見るままに見えているわけではないようです。ここでは子どもたちの色覚の発達について学んでみましょう!
始めに認識するのは赤?
ダニフ・マウラ氏はさまざまな赤ちゃんを調査した結果、赤ちゃんの色彩感覚は誕生後に急速に発達し、数週間後に赤、黄、オレンジ、緑を認識できるようになると述べています。1カ月後には黄色と緑を区別し、3カ月後には赤と黄色を区別、だいたい4カ月後に大人と同じ色彩感覚を得られるとのことです。
中でも赤は生まれてもっとも早く認識できる色とも言われています。乳幼児にとっては一般的な赤ちゃんのイメージカラー(ペールピンクやペールブルー)などは認識しづらく、はっきりした色の方が認識しやすいと言われています。
▲ 赤ちゃんが認識しやすい模様と色使いをした絵本とポスター。一般的に淡い色合いが用いられるベビー用品などとは全くデザインが異なっていますね。
音や文字に色を感じる?子どもの頃はみんな持っている「共感覚」
「共感覚」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。共感覚とは文字や数字に色がついて見えたり、音を聞くと色や形が見えたりする不思議な感覚のこと。芸術家などにこの感覚を持つ方が多いそうですが、実は一説には赤ちゃんの頃には、皆が共感覚を持っているのではないかと言われています。
- 「共感覚」とは…
- ある刺激に対して、通常の感覚のみでなく異なる種類の感覚をも生じさせる特殊な知覚現象。文字に色を感じたり、音に色を感じたり、形に味を感じたりとその種類は多様で、共感覚者の間でも感じ方が個々に異なる場合もあるようです。
なぜ乳児は「共感覚」を持つとされているの?
赤ちゃんの頃はまだ脳が未熟であり、視覚、聴覚などの感覚を個別に処理する神経のつながりが未分化であるためと言われています。成長に伴い脳に変化が生じ、ほとんどの場合は大人になる前にその感覚が失われるとされています。
3歳程度の子どもに対し、色と大きさの異なるボールを使って、そのバウンド音が低いものか高いものか答えてもらう実験した結果、明るい色、小さいボールのバウンド音は高音、暗い色、大きなボールのバウンド音は低音であると答える傾向があり、色と大きさをそれぞれ音の高さと対応させていることがわかりました。
知ってる?子どもの視野ってこんなに狭い!
スウェーデンのステイナ・サンデルス氏の実験によれば、6歳くらいの幼児の平均的な視野は左右(水平)で90度程度、上下(垂直)で70度程度とされています。一方大人は水平で150度、垂直で120度あります。比べてみるとかなり視野が狭いことがわかりますね。
大人と子ども(6歳程度)の視野の違い | ||
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【大人】 | 【子ども】 | |
左右(水平) | 150° | 90°(大人の60%) |
上下(垂直) | 120° | 70°(大人の58%) |
子どもの視野を体感しよう!
そんな子どもたちの世界の見え方を体験するためのツールもあります。CHILD VISION(幼児視界体験メガネ)というこの組み立て式のメガネは、東京都のホームページなどからダウンロードができます。
▲ 体験してみると、足もとや左右がかなり見づらいと感じることでしょう。園内の設備の安全性をチェックしたり、交通安全について指導をしたりする際には、この視野の狭さを考慮に入れるようにしましょう!
《こちらから型紙がダウンロードできます》
東京都福祉保健局:東京都版チャイルドビジョン(幼児視界体験メガネ)
編集者より
今回情報を集めながら、「子どもの頃はもっと多くの美しいものが見えていた気がする」…そんなことを思いました。
視野が狭くとも視力は弱くとも、体を動かしてさまざまなものを見に行き、観察していたためでしょう。大人になると季節は飛ぶように過ぎ、多くのものを見過ごして過ごしがちです。秋も深まり木々の紅葉や空の青が美しい季節…子どものような純粋な気持ちで見つめてみたら、もっと世界は輝いて見えるかもしれませんね。
参考文献・サイト
- バイオメカニズム学会誌Vol.32「感覚器の成長・発達」
- Wikipedia「共感覚」
- 子育ての友「子どもの視界の狭さ」
- たまひよ「赤ちゃんの視力は?聴力は?五感はこう育つ!」