今、各自治体で公立保育園の運営が民営化が進んでいます。市町村の運営費の負担減につながるなど、メリットもある取り組みですが、その一方で、保護者からの反対の声や、民営化に伴う雇い止めなど、問題も指摘されています。今回は保育の現場で働く皆さまに、公立保育園民営化についてご意見を伺ってみました。
民営化されつつある公立保育園
数年前から、各自治体で公立保育園の民営化が進められているのをご存じでしょうか。これは国の官業の民営化の方針に従った動きで、例えば東京都板橋区を例に取れば、平成18年度から5つの保育園が民営化、平成28年度までにさらに3園の民営化が検討されています。
この公立保育園の民営化については、以下のようなメリットやデメリットがあると言われています。
- ◆メリット◆
-
□ 自治体の運営費負担の軽減
□ 早朝保育や延長保育など保護者の保育ニーズに対応したサービス向上
□ 公務員の定数を抑えられる
□ 受け入れ児童数を増やせる
- ◆デメリット◆
-
□ 保育士の大幅な入れ替えで子どもに負担がかかる
□ 入れ替えに伴う業務負担が大きい
□ 保護者の保育料以外の費用負担が増える可能性がある
□ 子どもにとっては1人当たりの保育面積が減るなどのデメリットが生じることがある
□ 公務員の保育士は異動、臨時職員などは場合により雇い止めとなる可能性がある。
訴訟も発生?民営化の問題点とは…
保育園の民営化を巡っては、保護者や職員と自治体との間で、トラブルも発生しています。例えば2004年には、東京都中野区が2つの保育園を民営化した際、民営化しない区立園含む28名の非常勤保育士を雇い止め。うち4名が中野区を相手に裁判を起こしており、中野区側に損害賠償金を支払うよう判決が下っています。
一方、2006年には横浜市で、民営化後に事故が多発したことなどから、保護者が民営化取消しを求めて訴訟を起こしています。民営化にともなうこういった問題は公立保育所民営化問題とも呼ばれています。
認知度はどれくらいなの?
今回は読者の皆さま160人に、この公立保育園の民営化の賛否について伺ってみました。まず、民営化が進んでいることについて、その認知度を調査したところ、「良く知っている」という回答が60.6%と最も多く、「だいたい知っている」が23.8%、「聞いたことはある」が8.8%、「知らなかった」と答える方は6.9%でした。
独自調査結果!民営化に反対が賛成を上回る
続いて公立保育園の民営化に対する賛否を伺ってみたところ、「賛成」は27.5%、「反対」は40.6%と反対が賛成を上回りました。また「どちらとも言えない」というご意見も31.9%ありました。
賛成派、反対派にそれぞれその理由を伺ったところ、賛成派からは「多様な個性を持つ園が増える(32人)」、「保育の質が上がると思う(31人)」などの意見が集まりました。
また反対派からは「行政の責任放棄だと思う(42人)」、「保育の質が落ちると思う(38人)」、「営利目的の運営に疑問を感じる(37人)」などの意見が集まりました。民営化に伴って、サービス内容の充実から保育の質が上がるというご意見と、逆に質が下がるというご意見とに分かれていることがわかります。
あなたはどう思う?保育現場のリアルな声
では自由回答でいただいた声を、いくつかご紹介しましょう。
編集者より
さまざまな自治体が財政難に苦しむ現在、ある意味民営化の流れは、避けられなくなっているのかもしれません。しかし、公務員として働く保育士や臨時職員、保護者や子どもたちにとって、負担が最小限となるよう、行政は支援するべきだと感じます。
また、民営化で自治体の運営費が削減できたとして、その資金を何に使うかも大きな課題でしょう。ただ保育園を民営化しただけでは、待機児童問題、保育士不足などの解決には結びつきません。社会が抱えるこういった問題解決に向け、削減経費が使われることを願います。
・実施期間:2015年7月10日~7月22日
・実施対象:
保育士(81.9%)・幼稚園教諭(7.5%)
その他保育関連職(4.4%)・学生(1.3%)・主婦その他(5.0%)
・回答者数:160人(平均年齢:38.5歳)
・男女割合:女性/97.5%・男性/2.5%
※ご協力いただきました皆さま、貴重なご意見をありがとうございました!