昨今ワークライフバランスが話題になり、残業についての意識が高まっています。今回は保育士さんを中心とした保育業界の皆さまに、残業時間やその内容についてのアンケートを行いました。この記事では、保育士さんや幼稚園教諭さんの残業の実態と、残業軽減のための工夫のポイントについて考えてみました!
保育士さんの残業の実態
保育士さんを中心とした保育業界の皆さまに行った読者アンケートから、保育士さんや幼稚園教諭さんの残業の実態についてのデータを紹介します。
実施期間:2016年12月23日〜2017年1月16日
実施対象:保育士(84%)、幼稚園教諭(13%)、その他保育・教育関連(3%)
回答者数:204人
平均年齢:35歳
男女割合:女性94% 男性6%
1日あたりの残業時間の平均はどれぐらいですか?
1日あたりの残業時間は平均1〜2時間以内という方が34.8%と最も多く、次いで1時間以内が21.6%、2〜3時間以内が19.6%…と続く結果でした。
残業は一切ないという方が10%強いらっしゃる一方で(ここにはパートタイムや契約の方も含まれるかもしれません)、3時間以上の長時間残業をしている方もいらっしゃいました。
1日の残業はどれくらいまで許せる?
1日の残業時間はどれくらいまでなら許せるか、という質問には、「1時間以内」が32.4%と最も多く、次に僅差で「30分以内」の31.4%、次いで「1〜2時間以内」の24.5%…と続く結果でした。3時間以上でも許せるという方は今回のアンケートの中にはいませんでした。
69.7%の方が1時間以内の残業時間を望んでいますが、実際に残業が1時間以内で済んでいる方は31.9%であるため、許容範囲を越えて働いている方が多くいると言えるでしょう。
持ち帰りとなる頻度は?
週に1度以上持ち帰り仕事をしている方は83.8%で、ほぼ毎日という方は32.8%もいらっしゃいました。持ち帰り仕事が恒常化している現実が伺えます。
最長の残業時間は?
最長の残業時間で上位を占めていたのは「4時間」と「5時間」でした。ほかには「8時間程度」との回答が複数あり、最長では「10時間」や「泊まり込み」といったものがありました。
残業でこなす業務の内容は?
残業でこなす業務の内容では、書類書きに類する回答が非常に多かったです。
- シフト作成
- 園だより
- 日誌
- 月案
などといった書類系仕事のほか、
- 会議
- 時間外預かり
- 掃除
- 制作物
- 行事の準備
- 研修
- 保護者対応
- 人が足りないときの緊急の助っ人
といった、さまざまな業務内容が挙がりました。
日中は目の前の保育業務をこなすのに精一杯で、業務時間内にはとても現場を回せない保育園の現状が浮かび上がってきます。
いちばん大変だった残業のエピソードは?
いちばん大変だった残業のエピソードには、さまざまな声が集まりました。
中でも行事の準備がいちばん大変だった、という声がもっとも多かったです。
- 行事の準備が大変!
- ◆ 運動会前日にアーチ作りを行い帰りがとてつもなく遅くなったのに次の日は、朝の6時半までに出勤だったとき。【家に着いたのは夜の12時前だった】(20代前半 保育士)
- ◆ 新年度で、法人で新しい園を引き継ぎ、会議資料と行事が重なり、定時が18:00な日に、22:00までかかった(30代前半 保育士)
- ◆ 発表会の衣装作りで2週間毎日2時間睡眠でした(30代後半 保育士)
- 保育園ならではの残務…
- ◆ 要録を何度も何度も書き直した(打ち直した)→添削、校正でOKが出なかったため。ほんとに辛かった。休日も幽霊出勤して仕上げた。(50代前半 保育士)
- ◆ クレームを言う保護者の対応。卒園式の前日で、準備もあり、夫婦で乗り込んできた保護者の面談も行い、精神的に疲れ果てた。(30代後半 保育士)
- ◆ 園児の事故対応の為の残業(40代後半 保育士)
保育園ならではの業務もたくさん挙がっていました。日中にこなしきれない保育園独特の書類、保育園独特の突発的な対応業務も残業となる確率が高いと言えそうです。
- ほかのビジネスと共通の悩み
- ◆ 3月31日、新年度の準備の際でした。翌日出さなくてはならないお便を園長が最後まで変更し続け、最終ゴーサインが出たのが22時前。その後印刷、名前の印鑑押し、手紙を折る、全世帯分の新年度の知らせの封筒に入れ閉じる…全て終わったのは23時半…。(30代前半 保育士)
- ◆ 仕事は終わってるのに上司が帰らないから帰れないこと。(20代前半 幼稚園教諭)
- ◆ 日案を決めるのに話しあっても3時間ほど何も決まらないとき。(20代後半 保育士)
普通の企業でもありがちな、効率を欠く会議や上司に逆らえない雰囲気のために帰れないという状況も挙がりました。
- 保育の現場は日々の保育業務だけで精一杯
- ◆ 日々の保育業務以外のプラスアルファの事に関しては残業してやらなければうまくこなせません。(30代後半 保育士)
こちらの声は、日々の保育業務だけでパンク寸前の保育園の現状をよく表しているように感じられます。
保育士さんが残業時間を減らすための工夫・コツ・ポイントって?
さて、今まで保育士さんや幼稚園教諭さんの残業の実態について紹介してきました。では、これを少しでも軽減するためにできる工夫とはどんなものでしょうか?アンケート結果から一部を紹介します。
一般的なビジネスと共通の時短術
- ◆ やることリストを作って時間を決めてからできるだけ集中して一気に終わらせるようにしたり、朝早く起きて家で仕事をしてから出勤(20代後半 幼稚園教諭)
- ◆ 隙間時間を効率良く利用する。(20代後半 保育士)
- ◆ 使いまわせるものは使い回す(30代後半 保育士)
- ◆ 会議で話す内容をまとめ、簡潔に終わるよう職員みんなで意識(20代後半 幼稚園教諭)
- ◆ 持ち出しの出来ない書類は家で下書きし、園で最小時間でやる。園でしか出来ないこと、家でも出来ることで、効率よく仕事をする。(30代後半 保育士)
- ◆ どこでもできるようにiPadで同期させたりパソコン2台にしてもらった。(30代前半 保育士)
保育園の環境ならではの工夫
- 保育園特有の仕事の工夫もたくさん挙がっていました。
- ◆ 人が多いとき、一人でも足りている時に保育室からでて業務をやる時間をつくり、一人ずつ交代で出てく。(20代前半 保育士)
- ◆ 非正規職員に出来ることを託す(30代後半 保育士)
- ◆ 職員で仕事を分担する(50代前半 保育士)
- ◆ 早出の人は、1時間事務時間を取れるようにしている。(20代後半 保育士)
持ち帰り仕事、休憩・休日返上でこなすなどの力技
残業時間を減らすために仕事を家に持ち帰り、結局仕事をしている、という声が複数ありました。子どもの昼寝中などの休憩時間を削る、休日出勤・幽霊出勤する、という声も…
持ち帰り仕事に関するアンケート結果をまとめた記事は、こちらで読めます。
⇒2時間の持ち帰り業務は当然?アンケートから見る保育士さんのお仕事 | 保育のお仕事レポート
その他の時短術
その他の時短術については、こちらの過去記事で詳しく紹介しています。
⇒毎日てんてこまいの保育士さんに!仕事効率化のコツ12選 | 保育のお仕事レポート
できることから試してみて
残念ながら、残業をなくすのは無理、できる工夫はすべてしている、保育士を増やすしかない、といった声もありました。しかし一方で今回のアンケートでは、現役の保育士・幼稚園教諭の読者さまから具体的な工夫の方法をたくさん教えていただけました。上に紹介した工夫の中から、まだ試しておらず、簡単にできそうだと思ったものから試してみるのも良いですね。
ご協力ありがとうございました
現場の保育士さんたちの苦労や工夫が浮かび上がってくるようなアンケート結果でした。ご協力くださった方々、本当にありがとうございました。
金銭的な面だけではなく、残業、持ち帰り業務といった労働環境についても待遇の改善が進んで欲しいと感じます。毎日降りかかる仕事の負担は確かにつらいものですが、今回ご紹介した工夫を参考に少しでも残業や仕事の負担を軽くしていただけたら幸いです。皆さまの保育士さんとしての仕事生活が少しでも良いものになるよう、保育のお仕事では心よりお祈り申し上げております!