保育士不足のなか、保育園で保育士さんが一人担任を任されるケースが増えています。新卒なのに一人担任を任されてしまった、一人担任の大変さを聞いて不安になってしまった、という人もたくさんいます。今回は、一人担任のメリット、一人担任を乗り切るコツや対策、についてお伝えいたします。
一人担任のメリット
大変さばかり強調されがちな一人担任ですが、メリットにはどんなものがあるのでしょうか。
保育の自由度が高い
一人担任では複数担任よりも、日々の保育の中に自分なりの創意工夫を多く取り入れることができます。保育について自分なりの理想を実現できるチャンスとも言えます。
人間関係の心配が減る
複数担任と違って、組む先生との人間関係について思い悩むことが減ります。職場の人間関係のトラブルはいつも「保育園での仕事でストレスになること」の上位にランクインしていますが、一人担任ではこのストレスを軽減することができます。
子どもたちと一対一の関係が深められる
担任の先生方は、複数担任であれ一人担任であれ、もちろん子どもたちと深く関わっています。ただ一人担任の場合は、これに加えて子どもたちと一対一の関係性を深めていくことができます。今まで子どもに対していまいち思い切った関わりができずに悩んでいた人にとっては、思いきってもう一歩踏み込んでいくきっかけになります。
保育士としての成長の機会に
一人担任は責任もプレッシャーも大きいですが、その分保育士に求められるひととおりのスキルを身に着け、一日の保育を一人の手で完遂できるようになる大きな成長の機会となります。保育士としてのキャリアアップにとっても、一人担任の経験は重要な糧となるでしょう。
一人担任を乗り切る方法・コツ・対策
一人担任については、責任が大きい、目が回るくらい忙しい、トラブル時の対応も一人でやらなければいけないなどいろいろ言われています。不安やプレッシャーが募ってしまう人も多いでしょう。
こうした不安やプレッシャーを乗り切り、一人担任の役割を遂行していくためのコツをご紹介いたします。
できるだけの準備を
一人担任の声がかかって不安が募ってしまったときは、落ち着いてできるだけの準備をしましょう。たとえばこの記事を読むことを始めとして、関連の情報を集めてみることは重要な一歩です。
ぼんやりとしていた不安も、情報を集めることで明確になり、具体的な対策を練ることができます。
大丈夫、先輩たちもきっとあなたのように最初は不安でいっぱいだったはず。それでもできるだけの努力をしたり、悩んだりしながら成長していったのです。
どんどん相談する
何か少しでも困ったこと、迷うこと、悩むことがあったら、一人で抱え込まずにどんどん周囲に相談しましょう。同学年に複数のクラスがある場合はそこの担任に相談したり、一緒に企画を考えたりすることもできます。幼児クラスで異年齢合同活動を計画して、実行するのも面白いですし、子どもたちにとってもとても良い刺激になるでしょう。
人に相談するのは恥ずかしいことではありません。誰しも、周囲の人と互いに頼り合いながらだんだんプロになっていくのです。
主任や園長にも指導を仰ぐ
同僚に相談するだけでなく、主任や園長先生といった上の立場の人たちにも積極的に指導を仰ぎましょう。
上の立場の人たちに迷惑なのではなどと思う必要はありません。これは仕事に不可欠な報告・連絡・相談の観点からも重要なことです。分からないこと、不安なことをそのままにしておくことはあなたにとっても良くありませんし、子どもや園にとってもリスクとなってしまいます。
周囲を見て技術を盗もう
保育の技術は、周囲に相談したり指導を仰いだりする以外の方法でも身につけることができます。そのひとつが「見て盗む」ことです。周囲の保育士さんたちが普段どのような工夫をして保育にあたっているかをよく観察して、良い点をどんどん取り入れていきましょう。
何を盗んでいいかわからない場合は、まずはちょっとした仕草に注目してみましょう。目や表情の使い方、声の細かなトーン、身体の向きや高さなど。どういった仕草に子どもがどんな反応をしているか、どんな方法が効果的なのか… 盗めるものはたくさんあるはずです。
雑誌や書籍などで研究しよう
見て盗むほかには、本や雑誌から知識を取り入れる方法があります。保育雑誌を読んだり、保育業界についての書籍を手に入れて読み込むことは、非常に大切な学びのひとつです。
このような書籍をいくつか手にとって読んでみましょう。
0・1・2歳児担任の保育の仕事まるごとブック―先輩保育者がやさしく教える (ハッピー保育books/池田 かえる)
3・4・5歳児担任の保育の仕事まるごとブック―先輩保育者がやさしく教える (ハッピー保育books 2/永井 裕美)
時短対策を試してみる
一人担任は特に忙しく時間に追われる役割です。毎日必ずこなさなければならないようなタスクには優先順位をつけて順序よくこなしていくなど、時短対策、仕事効率化のコツをいろいろ取り入れてみましょう。
時短術について詳しくはこちらの過去記事をご参照ください。
毎日てんてこまいの保育士さんに!仕事効率化のコツ12選 | 保育のお仕事レポート
無理せず人に頼る
一人担任は基本的にすべてのことを一人で対応しなければなりませんが、一人では無理そうだと感じたときは無理せず素早く人に助けを頼みましょう。
他の先生も忙しそうだし…と躊躇する気持ちが湧いてしまうかもしれませんが、どんな人にも限界はありますし、最も大事なのはその場の保育がしっかりと回っていくことです。限界が来たときはどんどん人に頼っていいのです。
ただし、こういったことは助け合いです。次に自分が余裕のあるときに誰かから援軍を頼まれたら、お礼のつもりで積極的に助けにいきましょう。
助けてもらったときには心を込めてお礼を言うことも忘れずに。場合によっては、相手が割いてくれた労力に応じて、ちょっとしたお菓子や飲み物を差し入れするのも良いでしょう。
笑顔を忘れない
いま一度思い出してほしいのが、笑顔です!笑顔は、保育の基本中の基本です。いつも笑顔を忘れないでいてください。特に子どもや保護者の前では、不安でもできるだけ笑顔で堂々としているようにしましょう。不安げな顔をしているとその不安は周囲にうつってしまうものです。
また、ストレスがあるときにも笑顔でいると、自分の笑顔に引っ張られて自然と気分が明るくなってくるということも言われています。常に口角を上げることを意識していましょう。
※意識しても笑えない、というときは、既にそうとう心身が参ってしまっているはずです。そういうときは無理してはいけません。すぐに上の人に相談し、心身を休めることのできる対応をとってください。
子どもたちにお手伝いをお願いする
お片づけや準備、企画アイデアを練ることなどを一人でこなそうとするのではなく、子どもたちに関わってもらうのも一つの方法です。
子どもの多くはお当番を楽しんでやってくれます。先生が少し肩の力を抜くと同時に、子どもたちには保育指導やアクティビティのひとつとしてお当番を学んだり楽しんだりしてもらいましょう。
自分をいたわる
一人担任をこなす中で、いろいろと思うようにできないことが重なったりすると「自分はダメな保育士かもしれない…」などと気分が落ち込んでしまうこともあるかもしれません。そんな場合には、積極的に自分の心をいたわる機会を持ちましょう。
誰でもストレスが重なれば気持ちが滅入ってくるものです。気持ちが滅入る自分を弱いとかだらしないなどと責める必要はありません。
成長を楽しみにトライして
他の多くの保育士さんたちも、今のあなたと同じように不安を抱えて初めての担任に挑戦したはずです。諦めるのは、まずはやってみてからでも遅くないですよ。
応用は必ず基本から。まずは子どもたちとの信頼関係を築き、向き合う…こういった保育の基本を忘れずに取り組み続ければ、技術的なことは必ずあとからついてきます。1年後の子どもたちと、そしてあなた自身の成長を楽しみに、ぜひ一人担任にトライしてみてください!