保育の基礎知識

どうする?保育園での紫外線対策~必要性と実践のポイント~

保育園での紫外線対策

ギラギラと太陽が照りつける夏の時期、特に注意したいのが強力な紫外線です。皆さまの保育園の紫外線対策は万全でしょうか?

紫外線は単に日焼けを引き起こすだけではなく、人体にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られています。今回は子どもたちの紫外線対策の必要性をお伝えするとともに、具体的に園で実践する際のポイントをご紹介します!

本当は怖い!紫外線の人体への影響とは

太陽のイラスト
夏が近づいてくると、ドラッグストアやスーパーの売場にはUVケア商品がずらりと並びます。その多くは「日焼け防止」や「美白」といった美容効果をうたっていますが、紫外線が人体に及ぼす影響はそれだけではありません。

まずは紫外線による健康への影響をチェックしてみましょう。

※紫外線が人体に及ぼす影響には、紫外線を浴びて数時間~数日後に現れる「急性傷害」と、長期にわたって紫外線を浴びることで数ヶ月~数年、数十年後に現れる「慢性傷害」の2種類があるよ!

 

◆紫外線がもたらす急性傷害

比較的短時間で現れる「急性傷害」には次のようなものがあります。

1 日焼け(サンバーン・サンタン)
2 紫外線角膜炎(雪目)
3 免疫機能低下

紫外線と聞いて真っ先に思い浮かぶ体への影響が「日焼け」ではないでしょうか。日焼けにも、皮膚が赤くなりヒリヒリと痛むサンバーン、皮膚が小麦色に黒ずむサンタンの2種類があります。

サンバーンは紫外線により皮膚が炎症を起こすことにより、サンタンは紫外線で色素細胞が刺激を受け、メラニンを多く作ることにより起こります。

その他、紫外線が短期的に引き起こす人体への影響としては、結膜の充血や異物感などが生じる紫外線角膜炎(雪目)、細菌やウイルスなどの侵入を感知するセンサーの役割を果たす皮膚細胞(ランゲルハンス細胞)がダメージを受けることによる免疫機能低下などが挙げられます。

◆紫外線がもたらす急性傷害

長期的に繰り返し紫外線を浴び続けることによって現れる「慢性傷害」には次のようなものがあります。

1 シワ
シミ・日光黒子
3 良性腫瘍
4 前がん症(日光角化症・悪性黒子)
5 皮膚がん
6 白内障
7 翼状片

長年にわたり、紫外線を浴び続けているとシミやシワといった肌老化が見られるようになります。また良性、悪性の腫瘍(皮膚がん)ができてしまうこともあります。

これらは単に「老化が原因なのでは…?」と思われがちですが、光老化(ひかりろうか)と言い、紫外線を防ぐことで予防ができるもの。だからこそ子どものうちから紫外線を予防することが大切なのです。
 

ねぇ、ほいくん、なぜ紫外線を浴びることが皮膚がんの原因になるの?
紫外線にはA、B、Cの3つに分けられるホィ。地表に届くA、Bのうち、UV-Bは皮膚の細胞のDNAに傷を付けてしまうんだホィ。
皮膚の細胞は傷ついたDNAを正しい状態に戻そうとするんだけれど、DNAが繰り返し傷つくと、元に戻すときに誤った遺伝情報に書き換えてしまうことがあって(突然変異)、それが皮膚がんの原因になると考えられているホィ!

その他、紫外線を長年にわたって浴び続けることは、水晶体が濁って視力が低下してしまう白内障や、眼球結膜(白目)が角膜(黒目)にかかってしまう翼状片の原因になるとも言われています。
 

◆「日焼け=健康的」はもう古い!

保育士のイラスト

昔は「紫外線は体内でビタミンDを合成し、骨を丈夫にする」と言われ、母子手帳には日光浴を推進する記載がありました。しかしながら1998年に母子手帳から「日光浴」の記載は消え、「外気浴」の推奨へと書き換えられています。

これは日光浴のメリット以上に紫外線の浴びすぎによるデメリットが問題視されるようになったことや、オゾン層の破壊により紫外線量が増えたこと、子どものほうが紫外線の影響を受けやすいことなどが背景となっています。

こんがりと日焼けした小麦色の肌は、かつて健康の象徴とされていましたが、今では考え方がずいぶんと変わってきていることを認識する必要がありますね。

◆乳幼児こそ紫外線対策が必要

子どものイラスト

子どもの紫外線対策が大切と言われるのはなぜでしょうか。その主な理由をチェックしてみましょう。

  • 屋外での活動が活発で、一生に浴びる紫外線の半数以上を18歳までに浴びるため
  • 子どもの頃から浴びた紫外線の総量が多いほど、将来の悪影響が起こりやすいため
  • 子どもの皮膚は大人の半分ほどの薄さしかなく、紫外線の影響を受けやすいため
  • 肌の細胞分裂が活発であり、DNAの突然変異が生じる可能性が高いため

また、紫外線は直接降り注ぐだけでなく、地表で反射します。身長が低く、地表に近い場所にいる子どもたちだからこそ、大人がしっかりと紫外線から守ってあげる必要があると言えるでしょう。
 

保育園での紫外線対策~6つの実践アイデア~

保育士さんのイラスト

ではここからは保育園における紫外線対策と、実践する際のポイントについて考えていきましょう!

◆1:外遊びやプールの時間帯を工夫しよう

紫外線が1日のうちで強いのは 午前10時から午後2時までの間。夏場は1日の60%あまりがこの時間帯に降り注ぐと言われています。

屋外での遊びやプールなどの活動は、なるべく紫外線の弱い時間に行うこと、また紫外線の強い時間帯に行う際にはしっかりと紫外線対策をすることが大切です。

◆2:日陰をうまく活用しよう

日向に比べて、日陰の紫外線量は約50%。外遊びの際にはテントやパラソル、よしず、日除けネットを積極的に活用すると良いでしょう。

薄曇りの場合には紫外線の80%は地表に届いてしまうと言われています。曇った日でも油断は禁物ですよ!

◆3:帽子で6割の紫外線がカットできる!

つばが7センチある帽子であれば、約60%の紫外線が防げます。直接降り注ぐ紫外線をカットするには有効な対策となりますので、外遊びの際には必ず帽子を着用させるようにしましょう!

◆4:シャツやラッシュガードを活用しよう

体を覆う部分が多ければ、より広範囲の肌を紫外線から守ることができます。特に肌の露出が増えるプールなどでは、シャツやラッシュガードを着用するのもひとつの方法です。

ただし、通気性の悪いものは熱中症の原因にもなりかねません。また園によってはラッシュガードが禁止!というところもあるため、規定や方針を確認し、検討すると良いでしょう。

◆5:室内でも紫外線に注意しよう

建物の中にいたとしても、紫外線を完全に防げるわけではありません。屋内でも約10%の紫外線は届いてしまうので、ガラスにUVカットフィルムを貼る、よしずなどで窓辺に日陰を作るなどの対策が必要です。

◆6:必要に応じて日焼け止めクリーム等の活用も

園によってNGというところもあるとは思いますが、紫外線対策には、日焼け止めクリームや乳液等のサンスクリーン剤を塗ることも有効です。

園での塗布が難しい場合、午前中にプール遊びをする際には、登園前に塗ってきてもらうなどの工夫をしても良いでしょう。

プールの水質については、耐水性のサンスクリーン剤であれば汚濁されないことが、複数の研究で明らかになっているそう。必要に応じて活用を検討しても良いかもしれませんね。
子どもたちが使うサンスクリーン剤を選ぶ際は

・SPF15以上/PA++~+++を選ぶこと
・無香料、無着色であること
・プールの場合は耐水性/ウォータープルーフを選ぶこと

を目安にするのがオススメだホィ!

保護者の理解と協力も不可欠!

幼児

子どもたちを紫外線から守るためには、保育士さんだけでなく、保護者の方の協力が不可欠です。

各家庭で考え方が異なる場合も多いので、紫外線の危険性や園での紫外線対策の方針、お家での対策方法について情報共有をすること、また園での対策でできること、できないことをしっかりと理解をしてもらうことが必要でしょう。
 

◆保護者の方の理解と協力を得るためのポイント
1 おたよりや掲示物で紫外線の子どもへの影響、紫外線対策の重要性を伝える。
2 園で行っている紫外線対策、保護者の方にお願いしたい紫外線対策について、送迎時の会話や連絡ノート、おたよりなどでしっかり伝える。
3 個別の対応依頼などについては、園で対応可否を検討したうえで伝える。対応が難しい場合にはどのような理由でできないのか、代わりの対策としてどのようなことに気をつけていくかについても伝え、理解を求める。
4 保護者ニーズや園周辺の環境等の変化に合わせて、園内でのルールや方針も定期的に見直し、改善点を検討する。

 
個別に紫外線対策をして欲しい、園での紫外線対策を見直して欲しいといった要望がある場合、子どもの体質的に必要性があったり、園での対策がそもそも不十分であったり…さまざまなケースが考えられます。

「神経質な保護者」「クレーマーだ」などと捉えずに、ケースバイケースで対応を検討することを心がけましょう。

保育士さんの紫外線対策もお忘れなく

保育士さん

最後に…ここまで子どもたちへの紫外線の影響と、紫外線対策についてお伝えしてきましたが、保育士さんの体にとっても紫外線は有害なもの。

外に出る機会が多い、なかなか日焼け止めを塗り直せない、など紫外線にさらされてしまうことが多いお仕事ですが、

  • 肌の露出の少ない衣服を選ぶ
  • 休憩の時だけでもサンスクリーン剤やUVカット機能のあるファンデーションの塗り直しをする
  • アームカバーやネックカバーを活用する
  • 戸外に出る時には帽子を必ず着用する
  • 光を通しにくい濃い色の衣服を選ぶ

など、できるかぎりの紫外線対策を行って、ダメージを最小限に抑えましょう!

編集者より

おひさま

編集者が子どもの頃には紫外線対策などほとんどせず、真っ黒になって走り回っていましたが、今や紫外線のリスクに対する認識も広まり、何らかの対策をしているという園がほとんどではないでしょうか。

ただし園や保護者の意識の違いで、その対策には大きな差があるようです。今回ご紹介した保育園での紫外線対策のポイントは、日本臨床皮膚科医会が、統一見解として明示している「学校生活における紫外線対策に関する具体的指針」にもとづいています。

紫外線と上手に付き合うためにも、状況に応じて園での紫外線対策を見直してみても良いかもしれませんね。
 

参考文献・サイト

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