保育士さんは必ずしも1人でクラスを見るわけではなく、子どもの人数や年齢によっては複数担任制でクラス運営を行うこともあります。複数担任の場合には保育士同士の連携が欠かせませんが、中には人間関係がうまくいかずにストレスを感じるケースも多いようです。
今回は保育士さんを中心とする読者の皆さまに、複数担任制におけるストレスの実態と、その軽減のポイントを伺ってみました。
97%は複数担任制にストレス経験あり!
今回ご協力いただいたのは、保育の現場で活躍される保育士さんを中心とした98名の皆さま。うち複数担任でクラスを受け持ったご経験のある99%の方を対象にアンケート調査を実施しました。
まず、「複数担任でクラス運営を行う際に、ストレスを感じたことはありますか?」と伺ってみたところ、次のような結果になりました。
調査結果からは実に97%もの保育士さんが、複数担任制にストレスを感じた経験があるという実態が浮かび上がってきました。では複数担任制におけるストレスとは、いったいどのようなものなのでしょうか。
情報共有や報・連・相がうまくできない…
先の質問で、複数担任制にストレスを感じたことが「ある」と回答された方に、どのような点でストレスを感じるか伺ってみたところ、最も回答が多く集まったのは「情報共有・報告連絡相談がうまくできない」で66%。続いて「業務分担がうまくできない(44%)」、「1人の方が気が楽である(44%)」、「人任せになる保育士がいる(43%)」、「やりたい保育の方向性が合わず揉めてしまう(38%)」という結果になりました。
- 3人担任をしていたとき、2対1の構図になりやすく、2人は共有している情報がもう1人に伝わらなかったり、2人で相談したことが担任全員の総意として、ものごとが進んだりすることがあった。(40~44歳・保育士/パート・アルバイト・派遣・女性)
- 主担任が勝手にどんどん決めていって、知らされることもなく、ものごとが始まっていく。ことごとくこちらのやることは否定されて、自分がやることは全てOKという、矛盾がとても辛かった。(35歳~39歳・保育士/パート・アルバイト・派遣・女性)
- 保育の方向性や考え方の違いなどで、お互いの意見交換や意思疎通がないまま、押し付けられた保育になってしまうことがあった。(45歳~49歳・保育士/パート・アルバイト・派遣・女性)
- 年下だからといって意見を聞いてもらえない…。気が合わない人と1年間同じクラスを持つことになり、ぎこちないやり取りが続いた。(25歳~29歳・保育士/正規職員・女性)
そんな状態ではうまく連携を取って仕事ができずにストレスが溜まってしまうのも無理はないよね…。
複数担任制においては、一方的な指示や指導を行うよりも、協力してクラス運営を行っていくことが重視される傾向にあるようだホィね!
複数担任制のストレスを軽減する運用のコツは?
ではこのような複数担任でのクラス運営でのストレスは、どのように軽減すべきなのでしょうか。「どのようなことを心がければ、よりストレスなく複数担任でのクラス運営ができると思いますか?」と伺ったところ、次のような結果になりました。
最も回答が多かったのは「情報共有、報告連絡相談をこまめに行う」「困った際に助け合うことを心がける」でともに66%。「相手の話・意見をよく聞く(59%)」、「保育の方針や、行動方針について統一できるよう事前に決めておく(51%)」が後に続く結果となっています。
思いやりを持ってきちんと話し合いを!
複数担任制のなかでスムーズにクラスを運営していくためには、現状大きなストレス要因となっている「情報共有」について、しっかりと行うことはもちろん、相手に対する傾聴姿勢や、協力しあう意識が重要です。
自由回答で寄せられたご意見を一部ご紹介しましょう。
- 互いの保育の方向性を知り、話し合い、互いに相手を理解し歩みよることで子の成長、よりよいクラス運営につながりストレス緩和になると思う。子ども自身も保育士の思いが一つになることで混乱することなく過ごすことができると思う。(30~34歳・保育士/正規職員・女性)
- 先輩後輩なくクラスを良く出来るよう意見交換ができる雰囲気にする。相手の意見や発想が自分と違くても頭ごなしに「それは違う」「私はこう思う」と突っ走るのではなく、きちんと1度は受け入れないとケンカの元。1人1人が荒波を立てないように気を配る。(30~34歳・保育士/正規職員・女性)
- 相手を思いやる気持ちを忘れない。立場に上下をつけずに同等の関係なのだという意識を持つ。相手を尊重する。(20~24歳・保育士/正規職員・女性)
- 複数担任でストレス「0」はあり得ないと思う。しかし考えをその都度話し合う事で理解し合え ストレスは減ると思う。十人十色 保育士だって一人ひとり考え方も接し方もやり方も違うのだから 「なんで!?」「どうして?!」「私はこうしようと思ったのに!」と思うことはなくならない。その人の気持ちの持ちようだと思う。(50歳~54歳・保育士/パート・アルバイト・派遣・女性)
お互いに「意見が食い違うことは仕方ないこと」と理解したうえで、しっかりと話し合いの場を設けること、そして何よりも相手への思いやりの姿勢を持つことが大切というご意見が、とても多く寄せられました。
考えが異なる同士が同じ方向を向いてクラス運営を行うことは、決して簡単ではありませんが、互いに歩み寄り、意思疎通を図ろうと努力をすれば、複数人で子どもたちを見られることのメリットを最大限に活かすことができるでしょう。
まずは、そのことを全員がきちんと理解することが重要と言えそうです。
編集者より
自分の考え方こそすべて、他の考え方は受け入れない…ではものごとは前に進みません。社会においては、相手の意見、立場が自分と違うことを理解したうえで、積極的に話を聞き、必要な場合には相手の意見を受け入れる柔軟な姿勢が大切です。
複数担任のメリットのひとつは、「子どもたちのために良い保育を提供しよう」と考える複数の保育士さんがともに意見を寄せ合うことで、より良い保育の進め方の検討ができることでしょう。
人間関係がギクシャクすることで、そのメリットが活用できないのではもったいない!主担任、副担任などの職位、職歴、年齢などにかかわらず、お互いに心の柔軟さを持って、日々の保育に向き合えたら良いですね。
・実施期間:2017年7月10日~7月17日
・実施対象:
保育士/正規職員(56%)・保育士/パート・アルバイト(29%)・
幼稚園教諭/正規職員(6%)・幼稚園教諭/パート・アルバイト(3%)・
現在は働いていない潜在保育士(6%)
・回答者数:98人(平均年齢:34歳)
・男女割合:女性/95%・男性/5%
※うち複数担任制でクラスを受け持った経験のある方:99%
※ご協力いただきました皆さま、貴重なご意見をありがとうございました!
※ご意見は個人情報のわからないよう、一部抜粋・編集しご紹介しております。数値については四捨五入している関係で必ずしも合計が100とならない場合があります。