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「保育士資格を介護士にも取りやすく」 保育士の約5割が反対する理由とは

保育士資格を介護福祉士などにも取得しやすくして、保育士不足に対処しよう。そんな取り組みが始まっているのをご存じでしょうか。厚生労働省は介護福祉士などの資格を持つ人に対し、一部試験科目を免除することを決めました。

果たして保育士不足は改善するのか、少ない人手で福祉分野を支えようとする国の目的は成功するのか…。今回は保育と介護の現場で働く読者、計246名にアンケートを行った結果をご紹介し今後の課題を探ります。

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保育士資格を取りやすくする取り組みとは?

保育士のイラスト
深刻な保育士不足の解消を目指し、厚生労働省は介護福祉士などの資格を持つ人に対して、保育士試験の筆記試験を一部免除することを決めました。

対象となる資格 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士
免除となる科目 保育士試験の9科目の筆記試験のうち福祉関連で内容の重複する「社会福祉」など3科目
導入 2018年度試験から
取り組みの目的 福祉分野における人材不足に対処すべく、少ない人手で福祉を支える仕組みづくりを目指すもの
1人が複数の資格を取得しやすいように、2021年度からは保育士、介護福祉士、看護師などの資格について、養成課程の一部を共通化する方針も決まっています。

今回はこの取り組みについて、保育や介護の現場で働く方にご意見を聞き、賛否や今後の課題について調査しました。

保育士の約50%は反対!という事実

赤ちゃんのイラスト
今回アンケート調査にご協力いただいたのは、保育士など保育現場で働く155名および介護福祉士など介護の現場で働く91名の読者の皆さま。まずは国の取り組みについての賛否をそれぞれに伺ってみました。

「介護福祉士などの資格保有者が保育士資格を取得しやすくする取り組みに賛成ですか?」という質問に対し、保育職では「賛成」が22%、「どちらかと言えば賛成」が27%、「どちらかと言えば反対」が32%、「反対」が19%と、約半数が取り組みに反対していることがわかりました。

保育職グラフ1

一方、介護職では、「賛成」が37%、「どちらかと言えば賛成」が35%、「どちらかと言えば反対」が19%、「反対」が9%と、賛成派が7割以上を占めています。

介護職グラフ1

保育の質低下への懸念大きく…賛否の理由は?

賛成派、反対派にそれぞれ回答の理由を伺ってみました。

◆「賛成」「どちらかと言えば賛成」の方のご意見

まずは賛成派のご意見からチェックしてみましょう。

保育職グラフ2

保育職の意見の中で多かったのは「すでに取得している資格と重複する科目は受けなくて良いと思うから(55%)」「選べる職業の幅が増えるのは良いことだと思うから(43%)」という回答。「保育士の人材不足解消に役立つと思うから」というご意見も42%あり、人材不足に対しても一定の期待感があることが伺えます。

介護職グラフ2

一方介護職では「選べる職業の幅が増えるのは良いことだと思う」という回答が圧倒的に多く91%。次いで「保育士の人材不足解消に役立つと思う(31%)」という結果になりました。

◆「反対」「どちらかと言えば反対」の方のご意見

続いて反対派のご意見もチェックしてみましょう。

保育グラフ3
保育職で最も多かった回答は「資格取得を容易にすることが、保育の質の低下につながると思うから」で78%。「介護福祉士などと保育士とはまったく違う仕事・資格だと思うから(70%)」「保育士の人材不足解消にはつながらないと思うから(54%)」が続く結果となりました。

介護グラフ3

介護職では「介護の職業と保育士とはまったく違う仕事・資格だと思う(68%)」というご意見の他にも「介護職の人材の流出(52%)」という懸念が伺えます。

双方のご意見を伺ってみると、そもそも保育と介護はまったくの別ものなのだから、資格を取りやすくしたところで意味があるのか…そんな疑問が保育職、介護職双方で強いことが伺えるとともに、保育職では保育士の門戸を広くすることで、全体的な「保育の質」が下がってしまうのではないかという不安が大きいことがわかります。

介護福祉士らが保育の現場で働くことへの期待度は?

続いて保育職の方に、介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士が資格を取得して、保育の現場で働くことに対しての期待度を伺ってみました。

グラフ4
調査の結果「かなり期待できる(7%)」「まぁ期待できる(40%)」「あまり期待できない(37%)」「まったく期待できない(15%)」と、若干疑問視する意見が多い結果になりました。
 

保育の質、改善への期待と不安

保育士のイラスト2
では実際に期待する点や懸念点は何なのか、チェックしてみましょう。

先の質問で「かなり期待できる」「まぁ期待できる」と回答された方に、期待する点を伺ったところ、「多角的な視点が入ることによる保育の質の改善」が67%と最も多く、「他の福祉資格におけるノウハウを保護者対応に活かすなどの知識活用(53%)」「異業種からの人材が入ることによる労働環境の改善(44%)」が続く結果となりました。

グラフ5

    【回答者の声(一部抜粋)】
  • 保育士は意外と保育士しかしたことがない人が多く他業種の人が入ってくることで目線や考え方など刺激を受けることも多いと思う。(45~49歳・保育士/パート・アルバイト・派遣・女性)
  • 保育士の質の向上と言われているが、現状改善に至っていないので、他職種のやり方を上手く反映させてほしい。幅広い視野で子ども、保護者に教育効果をもたらしてほしい。(35~39歳・その他保育関連職・女性)
  • 介護などで対応してきた丁寧な受け答えでの保護者への支援方法(伝え方)や子どもへの語りかけ方を共有してほしい。(30~34歳・保育士/正規職員・女性)

一方先の質問で「あまり期待できない」「まったく期待できない」と回答された方に期待できないと思う点を伺ったところ、「各資格の専門性が希薄になること(72%)」「異業種からの人材が入ることによる保育の質の低下(51%)」などが大きな懸念点となっていることがわかりました。

グラフ6

    【回答者の声(一部抜粋)】
  • 子どもの動きに慣れておらず、危険な場面が増える。年齢だけいっていると臨機応変や柔軟性が損なわれる中、子どもたち相手に危険を察知できずにいることがあるのではないか。それでいて職員配置には1カウントされることで、現保育士の負担が増えることが考えられる。(35~39歳・保育士/正規職員・女性)
  • 福祉という点では同じ分野と思われるが、専門性からしても介護と保育はまったく別物だと思う。ただでさえ、業務が沢山あり大変なのに、保育をあまりわかっていない方が入ってこられても、人材不足は解消されるかもしれないが、指導などで逆に仕事が増えそう。(25~29歳・潜在保育士・女性)
  • 保育士不足の根本的な解決策は、誰でも保育ができるようにすることではない。簡単になれば質が落ちるのは当たり前。保育資格者が復職就職したいという、魅力のある職場を作るべき。この仕事量、時間で給料が低いから離れるのだ。(35~39歳・保育士/正規職員・女性)
子どもたちに良質な保育を提供することについては、多くの保育士さんが関心を寄せているね。
保育の質を維持、向上させるには、単に保育内容に工夫を凝らすだけでなく、設備など環境面の配慮や、職員の配置基準の改善、そして保育士さんの資質や専門性を高めることも大切なんだホィ!
資格を取りやすくして新たな人材を登用することに対しては、保育士の資質、専門性の面での不安要素が大きいようだね…。

介護ベースではなく「保育士」として働いて欲しい

職業イラスト保育士
最後に、保育職、介護職それぞれに対して「介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士が保育士として働く際に、どのようなポジションを任せたい(担当したい)ですか?」と伺ってみました。

まず保育職では「通常の保育士と差異なく、同様の業務を担当してほしい」が43%、「保育補助など、あくまでも保育士のサポートとしての業務を担当してほしい」が25%、「保育士以外の資格を活かせるような専任のポジションを担当してほしい」が30%となりました。

保育職グラフ9

一方介護職では「通常の保育士と差異なく、同様の業務を担当したい」、「保育補助など、あくまでも保育士のサポートとしての業務を担当」がそれぞれ27%、「保育士以外の資格を活かせるような専任のポジションを担当したい」が33%となりました。

介護職グラフ9

    【保育職:具体的に担当してほしい業務に関する意見(自由回答・一部抜粋)】
  • 保育士として働くのであれば、保護者から見れば、どの保育士も自分の子どもを預かってくれる先生なので、差はなく働いてほしい。(35~39歳・保育士/正規職員・女性)
  • 保護者や子どもの目線からは、どの保育士も同じ一人の先生にすぎない。以前にどのような肩書きだったとしても、保育士として保育園で働くのであれば、特別なポジションを作る必要はないと思う。(40~44歳・保育士/パート・アルバイト・派遣・女性)
  • 特別に支援を必要とする子どもの支援をお願いしたい。(40~44歳・保育士/正規職員・女性)

保育の現場で働く方からは、自由回答においても「前職や保有資格がが何であれ、保育士資格を取得して働くからには、十分に保育士としての知識と意識を持って、対等に働いて欲しい」という声が多く寄せられました。

もしも保育現場で働くならば「保育士以外の資格を活かせるような専任のポジションを担当したい」「保育補助など保育士のサポートとしての業務を担当したい」と考える介護職の方が多いなかで、この意見の差をいかに埋めることができるのか。それも今後の課題の1つと言えそうです。

編集者より

草花イラスト
今回の調査からは、「保育と介護では全くの別物であり、福祉分野とひとくくりにしないで欲しい」という保育職、介護職双方の意見が伺えました。また保育職では特に異業種、未経験の人材が増えることで、保育の質が保てなくなるのではないか、現保育士の負担が増えるのではないか…そういった懸念が大きいと感じます。

待機児童問題、保育士不足の問題において最優先にすべきは、子どもたちが健全に育つ環境を、そして保護者が安心して子どもを預けられる環境を整備すること。決して人材不足だからと頭数を集めることではありません。

保育士になるための門戸を広く設けることは決して悪いことではありませんが、保育職、介護職ともに不安を抱える部分が多いことを国が十分に理解し、懸念を払拭するために十分な説明やフォローを行うこと、あわせて「保育士として働き続けたい」「専門性を高めていきたい」と思えるよう処遇改善や環境整備に力を注ぐなど、長期的な人材確保のための対策も必要なのではないでしょうか。

【アンケート実施概要/保育職】
・実施期間:2017年7月1日~7月15日
・実施対象:
 保育園経営者・園長(5%)・保育士/正規職員(41%)・
保育士/パート・アルバイト(17%)・保育士資格取得見込(インターン・学生)(7%)・
その他の保育関連職(保育士資格保有者)(8%)・元保育士/潜在保育士(8%)・
その他(14%)
・回答者数:155人(平均年齢:35歳)
・男女割合:女性/94%・男性/6%

【介護職】
・実施期間:2017年7月10日~7月13日
・実施対象:
 介護福祉士(79%)・初任者研修(ヘルパー2級)(40%)・
実務者研修(ヘルパー1級)(14%)・ケアマネージャー(10%)・
社会福祉士(7%)・精神保健福祉士(1%)・無資格(1%)・その他(13%)
・回答者数:91人(平均年齢:39歳)
・男女割合:女性/78%・男性/22%

※ご協力いただきました皆さま、貴重なご意見をありがとうございました!
※いただいた回答は一部抜粋し、個人が特定できないようご紹介しております。

参考文献・サイト

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