保育の基礎知識

保育士さんが知っておきたい「借り上げ社宅制度」のすすめ

近年、さまざまな保育園で導入されている借り上げ社宅制度
実家を出て働きたい・地元から都心へ上京したい、といった保育士さんを確保するために、さかんに行われている待遇改善策です。

保育士さんの中には、保育園が実施している住宅支援制度について、よくわからない……という方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな「借り上げ社宅制度」について、詳しくご紹介します。

そもそも「借り上げ社宅」とは?

借り上げ社宅制度

借り上げ社宅とは、法人が自社社員を住まわせるために契約している物件のこと。
保育士さんが自分でアパートを借りるより安価に住めるのが特徴で、大抵は園のそばの物件を紹介されることとなります。
自己負担額は法人によって異なりますので、ご自身の希望先の職場がどのような家賃設定をしているのか、入職前にきちんと確認しておくようにしましょう。

自己負担額は給料から天引きされる形になるホィ。

押さえておきたい「保育事業者宿舎借り上げ支援事業」

借り上げ社宅自体はどの業界にもある、さほど珍しくはない福利厚生です。
しかし保育業界においては、保育士人材の確保・定着・離職防止を目的として、国や自治体が保育士さんの住宅費用を補助する制度が設立されています。
それが「保育事業者宿舎借り上げ支援事業」です。

保育事業者宿舎借り上げ支援事業とは

「雇っている保育士さんのために宿舎を借り上げた場合、そこにかかる家賃の全額または一部を補助する」制度。
補助金額は市区町村や事業者によって変動するが、東京都の基準では一戸あたり月額82,000円を上限としている。

補助の適用条件は自治体によって異なりますが、おおよそ該当園に採用されてから5~10年以内の常勤保育士が入居していることとなります。
ちなみに補助金を受け取れるのは、あくまで物件を契約している園です。保育士さんに直接「住宅手当」として支払われるわけではないため、その点には注意しましょう。

東京都で「借り上げ社宅制度」を実施している主な自治体

保育事業者宿舎借り上げ支援事業の場合、補助金を拠出するのは国や自治体となります。
そのため、補助を受けて借り上げ社宅制度を実施している場合には、同じ法人の園でも所在地の自治体によっては行っていないことがあると念頭に置いておかねばなりません。

ここでは東京都のどの自治体が借り上げ社宅制度を実施しているのか、その一例をご紹介いたします。
自治体によっては住宅補助が期間限定のケースもあるため、事前にしっかり確認しておきましょう。

自治体によっては「保育事業者宿舎借り上げ支援事業」に上乗せして、積極的に保育士さんの支援を行っているよ。
たとえば千代田区。
区内で勤務する保育士さんのために借り上げ社宅を設けた園には、補助金額を独自に引き上げ、月額130,000円を支給するとしているホィ。

「借り上げ社宅」と「住宅手当」との違いは何?

借り上げ社宅制度

保育士さん向けの住宅支援制度には、借り上げ社宅の他に「住宅手当」というものがあります。
住宅手当は法人独自の福利厚生として、保育士さんの給与に手当として加える形で支給されるもの。
支給額は法人によってさまざまですが、月額1~2万円が一般的な相場とされています。

家賃の足しになるようにと支給されるものであるため、住む場所を自分で決められるのが利点です。
契約金や家賃などお金のやり取りも、賃貸契約者である保育士さん自身が行うこととなります。

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ただし手当は給与にカウントされるため、その分の所得税を払わなくてはならないというデメリットも。
せっかく多めにもらっているのに、差し引かれる税額もその分だけ増えてしまうのです。

借り上げ社宅は住む場所がすでに決まっていて、自分で選べない……という物足りなさがあるホィ。けれどお金のやり取りを企業が代行してくれるため、天引きされる所得税額が増えないというメリットもあるホィ。
借り上げ社宅制度は「安くした家賃を従業員から徴収する」ことで、徴収しなかった差額を保育士さんへの補助とみなしているんだね。

「借り上げ社宅制度」のメリット

借り上げ社宅制度

借り上げ社宅制度を利用することで保育士さんにどのようなメリットがあるのか、以下を見てみましょう。

  • 初期費用、更新料がかからない
  • 社宅にかかる賃借料が非課税
  • 条件の範囲内で住む場所を選択できる

先述の通り、借り上げ社宅はあくまで園が契約している物件です。
保育士さん自身が賃貸に関わる諸費用を支払う必要はありませんし、直接のやり取りをしているわけではないので税負担も生まれません。
給与が増えるほど税収も上がってしまう住宅手当とは異なり、昇給しても社会保険料の支払額が変わらない……というのは魅力的ですよね。

また園によっては、複数ある物件から好きな社宅を選ぶこともできます。
部屋探しにこだわりがある人には不向きかもしれませんが、住所が固定されてしまう社員寮などよりはいくらか自由度が高いのではないでしょうか。

「借り上げ社宅制度」の注意点

借り上げ社宅制度

借り上げ社宅制度を利用する上で、事前にしっかり確認しておかなければいけないポイントがいくつかあります。
直前になって「こんなはずじゃなかった!」と後悔しないよう、きちんと準備をしてくださいね。

対象者が限られるため、利用できない場合がある

上京してきた地方出身者を優先したり、遠くから通う保育士さんを支援するために現住所からの距離を厳密に規定したりと、園によっては借り上げ社宅の入居条件を限定しているケースがあります。
就業前の住所によっては利用できない場合があるので注意しましょう。

入居可能年数に規定がある

借り上げ社宅にずっと住んでいられる……という法人はなかなかありません。大抵は入居期限が設けられており、それを超過する場合は退去を命じられてしまいます。
何年間住めるのか、しっかり確かめておくとよいですね。

編集者より

借り上げ社宅制度

借り上げ社宅制度に関する規定や負担する家賃額、入居できる期間については、それぞれの園によって異なります。自身が勤めたいと思う保育園の求人をよく調べておきましょう!

住宅手当の種類も、導入のされ方もさまざま。みなさまが福利厚生のしっかりした職場で、いきいきと働けますように!

参考文献・サイト

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