保育の基礎知識

幼稚園教諭と保育士はどう違う? 気になるお給料や働き方を徹底比較!

幼稚園教諭と保育士、2つの職業がどのように違うかをご存じでしょうか。幼稚園教諭も保育士も「子どもを預かる」という点では共通していますが、与えられた役割や必要な資格など、異なる点も多くあります。

今回は幼稚園教諭、保育士それぞれの職業について詳しくご紹介するとともに、給与や仕事内容など、働くという視点から見た違いをチェックしてみましょう!

そもそも「幼稚園」と「保育園」ってどう違うの?

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小学校に入学する前の子どもたちを預かる「幼稚園」と「保育園」。そもそもどのような違いがあるのでしょうか。まずは幼稚園と保育園の定義や役割を確認してみましょう。

幼稚園の定義と役割

幼稚園の目的は「幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達を助長すること(学校教育法第 77 条)」。文部科学省が管轄する教育施設のひとつです。

幼稚園
管轄 文部科学省
根拠法令 学校教育法(第1条、第77条)
基準 幼稚園教育要領
対象年齢 3歳~小学校入学前までの幼児
給食 任意
保育時間と日数 4時間を標準として各園で定める(39週以上)
夏季休暇等の長期休業がある
保育料 設置者が入園料や保育料等を定める
目的 幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達を助長すること
ねらい
内容
幼児の発達の側面から「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5領域で示す

保育園の定義と役割

いっぽう、保育園の目的は「日々保護者の委託を受けて、保育に欠けるその 乳児又は幼児を保育すること(児童福祉法第39条)」。こちらは厚生労働省が管轄する児童福祉施設のひとつです。

保育園
管轄 厚生労働省
根拠法令 児童福祉法(第7条、第39条)
基準 保育所保育指針
対象年齢 保育にかける0歳の乳児、1歳~小学校入学前の幼児
給食 義務
保育時間と日数 8時間を原則として保育所長が定める(約300日)
長期休業はない
保育料 市町村が家庭の所得等を考慮して定める
目的 日々保護者の委託を受けて、保育に欠けるその乳児又は幼児を保育すること
ねらい
内容
子どもの発達の側面から「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5領域と生命の保持及び情緒の安定にかかわる基礎的な事項で示している
(3歳未満児については,基礎的な事項及び5領域を一括して示している)
対象年齢や保育時間だけでなく、法律や管轄する省庁も違うんだね!
多くの違いがある幼稚園と保育園だけど、近年ではそのよい部分をあわせ持った「認定こども園」という施設も増えてきているホィ。

https://hoiku-shigoto.com/report/archives/1649/

「幼稚園教諭」と「保育士」資格の違い

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幼稚園と保育園の違いのひとつとして、働くうえで必要になる資格が異なるという点があげられます。幼稚園で働く幼稚園教諭には「幼稚園教諭普通免許状」が必要なのに対し、保育園で働く保育士に求められるのは「保育士資格証明書」です。

これらの資格は取得方法にも違いがあります。それぞれ確認してみましょう!

幼稚園教諭免許状とは

幼稚園教諭免許状は、幼稚園教諭として勤務するうえで必要な国家資格で、「普通免許状」「臨時免許状」の2種類があります。臨時免許状は、普通免許状を保有する職員が採用できない場合に与えられる免許状のため、幼稚園教諭として働くには「普通免許状」を取得する必要があります。

免許を取得するには?

普通免許状には3つの種類があり、それぞれ取得方法が異なります。

幼稚園教諭一種免許状 【基礎資格】「学士の学位を有すること」

◆4年制大学(通信制可)で幼稚園教諭養成課程を修了し卒業する。

◆二種免許状取得後に所定の期間、教員として勤務し、大学や認定講習などで必要な単位を修得して教育職員検定に合格する。

幼稚園教諭二種免許状 【基礎資格】「短期大学士の学位を有すること」

◆短期大学、あるいは文部科学省が定める専門学校や養成学校で幼稚園教諭養成課程を修了し卒業する。

専修免許状 【基礎資格】「修士の学位を有すること」

◆幼稚園教諭一種免許状を大学で取得したうえで、大学院修士課程や大学の専修科で所定の単位を取得し卒業する。

◆幼稚園教諭一種免許状取得後に所定の期間、教員として勤務し、大学院や大学の専攻科の課程、認定講習などで必要な単位を修得して教育職員検定に合格する。

なお、保育士の資格を持っている場合で、保育士などとして一定期間の実務経験があれば、少ない取得単位で幼稚園教諭免許状(一種または二種)を取得することができる特例もあります。

働ける施設は?

幼稚園教諭免許状を取得すると、主に公立や私立の保育園に勤務することができます。なお、認定こども園で働くためには、原則あわせて「保育士資格証明書」が必要となります。

保育士資格証明書とは

保育士資格証明書は保育士として勤務するうえで必要な国家資格です。

ただし、保育士資格証明書を取得しただけでは保育士としては働けません。都道府県知事に対して登録申請を行い、保育士証の交付を受けてはじめて、保育士として働くことができるので注意が必要です。

資格を取得するには?

保育士資格証明書を取得するには、大きく分けて2つの方法があります。

保育士試験に合格する
年に2回各都道府県で行われる保育士試験を受験し、合格することで保育士資格証明書を取得する方法です。

※幼稚園教諭免許状を持っていて一定の実務経験があるなど、所定の要件を満たす場合には、一部の試験科目が免除される場合があります。

厚生労働省指定の保育士養成施設に通う
厚生労働大臣が指定する、保育士を養成する大学や短大、専門学校などで所定の過程・科目を履修し卒業する方法です。保育士試験を受験することなく保育士資格証明書を取得できます。

働ける施設は?

保育士資格証明書を取得し、保育士登録が完了すると、保育園や企業内保育施設、児童養護施設、母子生活支援施設などで働くことができます。ただし、公立の保育園で働くには、自治体が実施している保育士採用試験に合格する必要があります。

施設で働く以外にも、保育ママとして自宅等で開業するなどの働き方も検討できるでしょう。なお、認定こども園で働くためには、原則あわせて「幼稚園教諭免許状」が必要となります。

働き方はどう違う?

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幼稚園教諭と保育士とでは、仕事の内容や日々の働き方も異なります。

保育士の主な仕事内容

保育士は、0歳から小学校入学前の乳児や幼児を預かり、「保育に欠ける」子どもたちのお世話をします。子どもたちの発達状況を見守りながら、適切な支援ができるよう計画を立て、保育を行うことが重要です。

基本的な生活習慣や集団生活におけるルールを身につける、保護者が不在のなかでの心の安定を保つといった「福祉」の部分が重んじられます。

日中の子どもの様子を保護者に伝えたり、家庭での様子を保育に活かしたり、保育士と保護者とで連携を取りながら、子どもたちの成長を支えていくことが必要です。

    【保育士の主な業務】

  • 受け入れ準備(清掃、安全チェック)
  • 登園児の受け入れ(健康チェック、休む場合の電話応対)
  • 合同保育やクラス別の活動
  • 昼食(準備、介助、アレルギー対応)
  • 午睡(布団の準備、着替え、寝かしつけ)
  • 職員会議、連絡帳記入など
  • おやつ(午前と2回の場合もあり)
  • 午後の活動(同時に随時降園対応)
  • 清掃・次の日の準備
  • 職員間の情報伝達(シフト制のため)
  • 書類作成(月案、週案、日案、個別指導計画、園だより)
  • 制作(子どもの制作あそびの準備、壁面、行事準備)

幼稚園教諭の主な仕事内容

幼稚園教諭は、3歳から小学校入学前の子どもたちを預かります。幼稚園の場合は「教育施設」という位置づけから、知育や運動などを通じて、子どもたちの心身の発達をサポートする役割を担っています。

なお、預かり保育を実施する幼稚園も多く、その場合には保育士の仕事内容と重なる部分もあるでしょう。

    【幼稚園教諭の主な業務】

  • 受け入れ準備(清掃、安全確認、園によってはバス添乗)
  • 登園児の受け入れ(健康チェック、休む場合の電話応対)
  • 自由遊び
  • 設定保育(制作や幼児教育、運動)
  • 昼食(準備、介助、アレルギー対応)
  • 連絡ノートなどの記入
  • 降園、受け渡し(園によってはバス添乗)
  • 預かり保育
  • 職員会議・勉強会など
  • 清掃・次の日の準備
  • 書類作成(成長記録、始動案、振り返り、園だより)
  • 行事準備など
  • 休んだ子の保護者などへの電話フォロー

労働時間・労働日数の違い

保育士は、勤める園の体制にもよりますが、基本的に子どもを預かる時間が長く、シフト勤務を取り入れています。月に数回は交代があり、それぞれ異なる時間帯に勤務する勤務体系が特徴的です。土曜保育がある保育園では、交代で土曜出勤があります。

いっぽう、幼稚園教諭の場合には、出勤時間が朝に固定されているケースが多いようです。また、土曜の預かり保育を実施していない場合、基本的には土日・祝日はお休みです。

保育士には園の休業にともなう長期休暇はありませんが、幼稚園教諭の場合には夏休みなど、長期のお休みが取りやすい傾向にあります。

なお、2016年の統計局のデータによれば、平均の月間所定内実労働時間は、幼稚園教諭のほうがやや多いようです。

平均月間所定内実労働時間数
(2016年)
幼稚園教諭 176時間
保育士 169時間

幼稚園の方が行事は多め!

保育園の場合には基本的に保護者が働いているため、大きな行事は年に数回。しかし、幼稚園の場合には保護者が参加する行事が多く、平日であっても開催されます。

保育園でも日中園内で季節の行事などを行っているため、負担が少ないわけではありません。ただし、保護者が参加する行事の場合、準備が大掛かりなものになるケースも多く、園児の練習や準備も必要です。幼稚園教諭は行事準備により多くの時間を割く必要があるでしょう。

気になる「お給料」はどちらが高い?

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幼稚園教諭と保育士とでは、お給料に違いはあるのでしょうか?ここでは統計局の2016年の調査データをもとに、毎月の現金給与額平均(税込額)を比べてみましょう。

平均月間きまって支給する現金給与額
(2016年)
幼稚園教諭 225,700円(うち所定内給与額222,400円)
保育士 221,900円(うち所定内給与額214,600円)
若干だけど幼稚園教諭の方がお給料が高いみたいだね!
保育士の場合には所定内給与額との差が大きく、多く残業代が発生していることがわかるホィ。残業代を含めない給与額は、幼稚園教諭さんのほうが1万円ほど高いことになるホィね。

給与については、公立か私立か、園の運営主体や規模など多くの違いがあるため、一概に「どちらの方が高いお給料をもらえる」とは言えません。また、職位や勤続年数などでも変化するものであるということも認識しておきましょう。

「幼稚園教諭」と「保育士」長く働けるのは?

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幼稚園教諭と保育士、どちらが長く働くことができるのか……資格取得や就職を検討している方は気になる情報ですよね。ここではそれぞれの平均勤続年数と、平均年齢をご紹介します。

平均勤続年数(2016年)
幼稚園教諭 7.6年
保育士 7.8年
平均年齢(2016年)
幼稚園教諭 32.7歳
保育士 36.3歳

平均勤続年数についてはさほど大きな差は見られませんが、平均年齢は保育士の方が4歳ほど高いようです。要因としては、子育てがひと段落して再就職するケースなどが多いことが考えられます。

給与同様、園ごとに労働条件や働く環境が大きく違います。「長くキャリアを築いていきたい!」という場合には、希望する園について、結婚や出産などのライフイベントがあっても続けられる制度があるか、長く続けている職員がいるかなど、細かくチェックしてみるとよいでしょう。

両方の資格を持っているとメリットも多い!

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ここまでご紹介したとおり、幼稚園教諭と保育士は働くうえで異なる部分が多くあります。もしも今どちらの資格を取得するか迷っている場合には、両方の資格を取得しておくことで、将来的なキャリアの選択肢を広げることができるでしょう。

また、待機児童問題の解決に向けて、国が今後取り組んでいくとする「子育て安心プラン」の中には、幼稚園における2歳児の受け入れや、預かり保育を推進するという計画があります。

認定こども園では基本的に幼稚園教諭免許状、保育士資格証明書のどちらも必要です。両方の資格を持っていれば、今後幼稚園が認定こども園に移行するようなことがあっても安心です。

編集者より

保育士たちのイラスト
いかがでしたか?幼稚園教諭と保育士が、さまざまな点で異なっていることがお分かりいただけたかと思います。

これから幼稚園教諭や保育士を目指すという方や、幼稚園や保育園への転職を検討している方は、ぜひ参考にしてみてくださいね!

参考文献・サイト

※記事中の労働時間、給与、平均勤続年数、平均年齢のグラフについては、統計局『主要職種別平均年齢,勤続年数,実労働時間数と月間給与額(平成28年)』より抜粋し、作成しております。

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