共働き世帯が増えている昨今、病気の子どもを預かって保育する「病児保育士」のニーズがどんどん高まっています。
通常の保育所では子どもが急に熱を出したり病気になったりした場合、そのまま夕方まで預かっておくことができません。37.5度を超える発熱の場合、保護者に連絡してお迎えに来てもらうケースがほとんどです。
しかし、保護者の中には、どうしても仕事を抜け出してお迎えにいけない方もいます。そんな心苦しい思いをしている保護者の心強い味方となるのが、急病の子どもを預かって保育する病児保育です。
今回はそんな病児保育の仕事内容や、気になる待遇、病児保育士として働くメリット・デメリットをお伝えしていきます!
病児保育とは?
病児保育とは先述の通り、保育所などに通っている子どもが病気になった際、仕事を休めない保護者の代わりに子どもの保育をするサービスのこと。
厚生労働省の「乳幼児健康支援一時預かり事業」として国の補助金のもと行われている事業です。
病児保育は主に以下の3つのタイプに分けられます。
- ◆病児対応型
- 病気の急性期~回復期までの病児を預かります。
処置などが不要な子どもを対象にしていますが、医療機関などに併設されていて、急変時にも対応できるような体制を取っているケースが多いです。
【配置基準】看護師:子ども10人につき1名以上 保育士:子ども3人につき1名以上 - ◆病後児対応型
- 病気の回復期の子どもを預かります。保育所などに併設されていることが多くあります。
【配置基準】看護師:子ども10人につき1名以上 保育士:子ども3人につき1名以上 - ◆非施設型(訪問型)
- 看護師や保育士、家庭的保育者などが自宅に訪問し、病児や病後児の保育を行います。
【配置基準】保育士など:子ども1人につき1名以上
どんなところで活躍できる?
病児保育士の勤務先となる施設にもさまざまな種類があります。
医療施設併設型
病院やクリニックなどに併設されている病児保育施設です。病児保育の求人のうち多くがこの形態となります。
医師が常駐しているので、伝染性の強い病気や症状が重い子どもを受け入れるケースもあります。
病院の系統によって採用基準や求められる知識も変わってくるので、事前によく調べておくことが大切です。
保育所併設型
保育所などの保育施設に併設されている病児保育施設です。医療機関併設型に次いで多い形態となります。
隔離疾患や急性期の場合は預かり不可としていて、比較的症状の軽い子どもを受け入れる傾向にあります。
単独型(病児保育専門施設)
NPO法人や民間企業が運営している、病児保育を専門に行っている施設です。
全国的にはまだ施設数が少ないですが、今後ニーズに合わせて増加されることが予想されています。
病児保育士の仕事内容
病児保育士の主な仕事内容は、病気になった子どもを保育すること。
保育の時間を通じて子ども達をリラックスさせ、治療に臨む気力を育ててあげることが求められます。
一緒に絵本を読んだりDVDを見たりして、できるだけ安静にしつつも楽しく過ごせるようにしてあげられるといいですね。
医療行為に関わることは基本的にはありませんが、必要なときには看護師や医師を呼んだり、病院に連れて行ったりする必要はあります。
医療職と連携を取りながら、子どもたちをサポートすることが大切です。
病児保育士になるには?
病児保育士を証明する正式な国家資格はありません。病気の子どもを預かる仕事に就いている人は、医師でも看護師でも保育士でも「病児保育士」と総称されます。
すでに保育士や看護師などの資格を取得していれば、病児保育を行う施設へ勤めることで病児保育士として働くことができます。
ただし、「認定病児保育スペシャリスト」や「認定病児保育専門士」といった民間の認定資格もあり、取得すれば転職のさいに病児保育の知識や技能があることを示すこともできるでしょう。
以下に、病児保育にかかわる主な民間資格を紹介します。
認定病児保育スペシャリスト
日本病児保育協会が認定する資格です。高校卒業済みの18歳以上の人が対象となります。
全13回のweb講座の受講後、1次試験を通過すると24時間の実習(現職者は免除)を受けられます。
資格認定証の有効期限は1年間。病児保育スペシャリストとしての活動がポイント制となっており、更新の際にはそのポイント基準を超えている必要があります。
講座受講料:65,000円(税別)/実習費用:10,000円(税別)/1年毎の更新料5,000円(税別)
※講座受講料に8,000円(税別)の認定試験受験料が含まれています。不合格の場合は、次回の受験から8,000円の受験料が必要となります。
認定病児保育専門士
全国病児保育協議会が認定する、病児保育の専門性を高めるための認定資格です。
受験するためには以下の条件を満たしている必要があります。
- 保育士もしくは看護師の資格を取得している
- 全国病児保育協議会加盟施設に常勤として2年以上勤務している、または非常勤として2年以上施設に勤務し、週20時間以上働いている
- 施設長から全国病児保育協議会所定の「施設長推薦状」を出してもらっている
- 全国病児保育病児保育協議会が開催する「病児保育専門士認定講座」をすべて受講している
書類審査を通過した後は研修会に参加して課題を提出、その後の面接と口頭試問に合格することで資格を取得できます。
資格認定研修費用:25,000円/資格認定料:10,000円
病児保育士の待遇
病児保育士の給与相場は月給20万4000円(常勤1人あたり平均)。平均勤続年数は4.9年となっています。
医療法人が運営を行う場合、比較的給与相場が高い傾向にあるようです。
待遇についても、実際の求人を参考にしながら見てみましょう。
◆待遇の目安(正社員/医療施設併設の場合の例)◆ | |
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給与 | 月給200,000~(賞与年2回) |
看護知識 | 不問 |
勤務時間 | 8:30~17:30 |
休日・休暇 | 日曜・祝日・年末年始 |
病児保育士になるメリット・デメリット
預かり人数が少ないために一人ひとりの子どもとじっくり向き合える、行事がないため残業が発生しにくい……といった理由から、保育士さんの間でも人気のある病児保育。
実際に働く上でどのようなメリット・デメリットがあるのか見てみましょう。
メリット
預かる子どもは基本的に療養が中心となるので、激しい運動などをする必要がないのが大きな特徴です。体力的な負担が少ないのもメリットのひとつですね。
また、訪問型の場合は毎日違うお家に訪問することになるため、変化を楽しめる方には適していると言えるでしょう。
- ◆病児保育で働くメリット★
-
□ 子どもとじっくり向き合える
□ 日々変化が多く、毎日毎日うまくリセットしながら仕事に取り組める
□ 保護者のピンチを支える立場としてやりがいを感じられる
□ クラスごとの指導計画などがない
□ 残業が少ない
□ 行事がない
□ 知力的負担が少ない
□ 土日休みなどの希望条件に合いやすい
デメリット
メリットも多い病児保育ですが、大変な点ももちろんあります。
具体的に、下記のような点は覚悟する必要があるでしょう。
◆毎日預かる子どもが変わる
◆訪問型の場合毎日知らない土地に赴くので事前準備が不可欠
◆訪問型の場合、子どもだけでなく家も預かる立場になる
◆契約職員、パートなど有期雇用(非正規雇用)の職場が多い
◆感染症の流行期には多忙となる
◆医師や看護師など別職種のスタッフとのコミュニケーションが必要
病児保育士の求人、どう探す?
現状、病児保育での保育士求人数はあまり多くありません。
さまざまなメリットややりがいのある仕事で人気のため、応募が殺到しないよう、好条件の職場ほど「非公開求人」として募集を出しているようです。
非公開求人を個人の力で見つけるのは難しいもの。
病児保育士として働きたい場合には、人材紹介サービスなども活用しながら求人を探すといいですね。
編集者より
病児保育は働くお父さん・お母さん、そして子ども自身のピンチを救う重要なお仕事。
共働きの家庭が増える中、今後さらにニーズが高まることでしょう。
今後のキャリア形成のひとつの選択肢として、検討してもよいかもしれませんね!
病児保育についてまずは知りたい、という方には、ドラマ化もされた椎名チカさんの漫画『37.5℃の涙』もオススメ。保護者の気持ちや働くイメージをより具体的にできるかも知れませんよ。
参考文献・サイト
- 保育士くらぶ「病児保育士になるには?資格や給料、求人情報を詳しく解説」(2017/08/31)
- 認定病児保育スペシャリスト(2019/03/20)
- ほいくと仕事「病児保育士ってどうなの?仕事や違い、メリットを知ろう!」(2018/09/17)
- 「認定病児保育専門士について」(2019/03/20)