職業訓練で保育士になるとは
社会人の方がこれから保育士の資格を取得する場合、
- 国家試験を受験する
- 自費で養成校(通学、通信)を卒業する
- ハローワークの職業訓練として養成校を卒業する
これらのいずれかになると思いますが、私はハローワークの職業訓練で資格を取りました。
今回のコラムでは、「ハローワークの職業訓練で資格を取るには?」ということについて書いていきたいと思います。
別の職種に就いている社会人が保育士を目指すときの参考になれば幸いです。
ハローワークの職業訓練で資格を取る
職業訓練のコースは各都道府県が設置し、実際の授業は委託を受けた専門学校や短期大学が行います。
ハローワークで4月入学の訓練生の募集があり、どの学校にするかは自分で希望を出して申し込むことができます。自分の住所地でない学校を選ぶことも可能です。私自身も、自分が住んでいる県ではなく、その隣の県の学校に通いました。
私は働いていたときに雇用保険に入っていたので、職業訓練コース在学中はいわゆる失業手当をもらうことができました。
とはいえ、雇用保険に入っていなかったり、失業保険をもらえる期間が過ぎてしまったりした人でも、条件によって職業訓練コースに通える場合があります。私のクラスメイトにも失業保険をもらわずに通う人は多かったです。高校から新卒で入った人もいました。
手続きが面倒だったり色々な条件や制約があったりもしますが、実費以外の基本的な学費が無料で、失業保険ももらえるというメリットがあるので、興味のある方は是非ハローワークで相談してみてください。
養成校の選び方
学校を選ぶときに私が考えたのは、「保育士資格だけでなく幼稚園教諭の資格を取れるか」「自宅からの通いやすさ」「短期大学か専門学校どちらにするか」です。
入学した2年前の時点では、幼稚園と保育園は今後こども園に集約されていくと思っていたので、保育教諭として働けるようにするために保育士資格だけではなく幼稚園教諭免許も取れることを最優先に学校を選びました。
私が住んでいる県では、幼稚園教諭免許が取れる学校が通える距離に無かったため、隣の県の学校の中から選ぶことにしました。
ここで問題になったのが、幼稚園教諭免許は取れるが追加費用が30万円くらいかかる短期大学にするか、追加費用なしで幼稚園教諭免許も取れる専門学校にするかです。
説明会で話を聞いて自分なりに調べた結果、既に他の大学を卒業しているため短期大学に通う必要はないと思い、専門学校を選びました。
大学に通っていない人の場合には、短期大学に通って学士を取得しておくというのも選択肢としてありますね。
こんなことを学びます・実技編
授業は実技科目が多く、特に保育教材を制作するものが多かった印象があります。
ペープサート(紙人形)、パネルシアター、紙芝居、壁面、あやつり人形、ダンボール工作、泥団子、折り紙などは実際に自分で作りました。
選択科目を取ると折り紙、エプロンシアター、指人形なども作ります。
ただ、作ってみんなの前で発表して終わりという授業がほとんどだったので、個人的には各保育教材の特徴や効果的な使い方などを教えてもらった方がいいのにと思っていました。
その疑問を学校の先生に訪ねたところ、「働き始めると自分用の教材を作る時間が無いので、卒業のときに色々な教材を持たせてあげたい。だから作ることを最優先している」「授業時間との兼ね合いで使い方まで教える時間が取れない」という学校の方針を教えて頂きました。
このあたりは学校によって考え方が異なるようで、知人が通った学校ではプロの劇団の方を招いて演じ方を教えてもらう授業があったそうです。
また、他の業種からの転職の場合、ピアノが弾けなかったらどうしようと気になる方もいるかと思います。
私が通っていた学校では、カリキュラムとしては1年生の前期・後期で必修、2年時は選択科目になっていましたが、責任実習でピアノを弾く可能性を考えてほとんどの学生が2年の前期まではピアノの授業を取っていました。実際、私自身は2年後期まで取っていました。
授業では、バイエルや童謡などの課題曲が設定されていて、授業中に先生のOKがもらえるとカードにはんこをもらいます。
そして、各授業で必要な数のはんこをもらった人だけがテストが受けられるという仕組みになっていましたので、授業以外でも毎日少しずつ練習しました。
ピアノが苦手で苦労していた人たちも、テストを何度もやり直したり単位を落として2年生に持ち越したりしてどうにか単位を取っていたので、初めての人でも頑張ればどうにかなると思います。
学校によってピアノに対する温度差も異なるようで、ハイレベルな学校だと入試でピアノを弾くテストがあるところもあったり、幼稚園教諭の取得が無い場合は、もう少し楽だったりすると聞いたことがあります。
こんなことを学びます・講義編
講義科目では相談援助や栄養、健康について、発達心理学や障害児保育、社会的養護など幅広い内容を学びます。
ただ、基本的に高校を卒業した学生向けの内容なので、内容が社会人には物足りなかったり、反対に必要ないものが入っていたりしました。
例えばある授業では、先生がスライドに法律の条文を映して学生はひたすらそれをプリントに書き写し、そのプリントを持ち込んでテストを受ける、という仕組みになっていました。
私から見ると、法律の条文なら法令集を見れば済むことで、書き写す時間が無駄ではないかと思ったのですが、授業中に書き写すくらいしないと学生が条文を読まない、ということでした。
また、保育士と幼稚園教諭の両方を取るため、内容が重複しているような科目がいくつかあったように思います。
ただ、2つの資格の管轄が厚生労働省と文部科学省と別の官庁で、それぞれが個別にカリキュラムを設定しているものを一度に学習しているので、仕方がないのかなと思いました。
こんなことを学びます・実習編
実習は、1年前期に学校の付属の幼稚園で体験実習があり、その後正規の実習を5回行いました。内訳は、保育士で保育所2回と施設1回それぞれ2週間ずつ、幼稚園教諭は2回それぞれ10日間ずつです。
多分、誰に聞いても同様のことを言うと思いますが、8時間実習をした後に実習記録を作成して他の準備をするのは本当に大変でした。私は5回の実習中、それぞれ最低1回はこのまま倒れてしまうのではないかと思ったほどなので、年齢の高い人にはハードルがかなり高いと思います。
特に、責任実習をする2年次の保育実習は8月のお盆休みの期間中だったので、気温が38℃に達する日もあり本当に命懸けでした。
今にして思うこと
学校に通って良かったことは、学生生活を通じて気のおけない仲間ができたことです。
40代になってから、利害関係のないただの友だちというのは作ることが難しいと思います。ましてや、自分が進もうとしている保育という分野について理解しあえる友人関係というのは、本当に得がたいものだと思います。
今もLINEグループでそれぞれ自分の仕事のことをあれこれ言い合ったり、一緒にご飯を食べに行ったりしています。
ただ、今にして思うと、資格取得は保育士のみにした方がよかったと思っています。
なぜかというと、幼稚園教諭と保育士両方の単位を取得し、合計5回の実習を2年間で行うのはかなり大変で、アルバイトをしたり将来に向けて自分のために勉強をしたり準備をしたりする時間がほとんど取れなかったからです。
実は、在学中に保育関係のアルバイトすることは密かに重要だと思っています。アルバイト先にそのまま就職することもできますし、そうならなかったとしても「2年間実務経験あり」と言って就職活動ができます。
私は年齢が高い上に全く保育の実務経験が無い状態で就職活動をしたので、就職活動にかなり苦労をしました。
このように、よく考えてやったつもりでも思わぬことが落とし穴? になったりしますので、最終的にはなるようにしかならないということなのかもしれません。
今後保育の進路を考える方に、私の拙い体験が少しでもお役に立てばと思います。