子どもを何回も抱っこしたり、小さな椅子にずっと座っていたり、外遊びで園児たちといっしょに走り回ることになったりと……日々の業務で身体を酷使している保育士さん。
気付いた時には「肩こりがひどい!」「腰が痛い!」「足のむくみが悪化している!」なんて悲鳴を上げている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、リハビリ分野のプロフェッショナルにしてスポーツトレーナーとしても活躍されている理学療法士・石渡雄次(いしわた ゆうじ)先生に、保育士さんが簡単にできるセルフケアについて聞いていきます!
第2回は、つらい『肩こり』について、コリをほぐす方法や予防のポイントをお聞きしました!
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*シリーズ「保育士さんのための保健室・セルフケア編」は、医師・専門家などのプロへの取材を通じて、保育士さんが自分でできる健康維持・向上に役立つに紹介していく連載企画です。
そもそも、肩こりってどうして起こるの?
石渡先生……。毎日肩がこってつらいのですが、どうしてこんなに硬くなってしまうのでしょうか?
肩こりの主な原因は、血流が悪くなって筋肉が緊張してしまうことにあります。保育士さんの場合だと、子どもをずっと抱っこしていたり、事務作業でデスクワークをしていたりすると起こりますね。
子どもを抱っこしていても肩こりになるのですか? おんぶならわかりますが、抱っこは肩というより腕に負担がかかるものだと思うのですが……。
指から肘にかけて筋肉が固まってしまっているかどうかも、肩こりに影響します。腕をまっすぐ前に伸ばして、指を身体側に引っ張って腕を伸ばすストレッチがありますが、その際に肘がきちんと伸びるかどうかチェックしてみるといいですよ。特にベテランさんは要注意です。
なるほど!てっきり、肩こりは姿勢の悪さで起こるものかと思っていました。私自身、少し猫背になりがちなので。
肩こりは、姿勢がいいバレエ選手でもなるものです。特に「いかり肩」や「なで肩」の人は肩こりを起こしやすいですね。
あんなにピンと背筋が伸びているバレリーナでも、肩はこるのですね……!
肩こりになりやすいふたつの「肩」って?
「いかり肩」と「なで肩」……聞いたことはありますが、どうしてこれらが肩こりになりやすいのでしょうか。
「いかり肩」は、通常よりも肩が持ち上がってしまっていて、首から肩の筋肉が縮んでしまっている状態です。背中にまでこりが現れます。
逆に、「なで肩」は通常より肩が下がっているために、首から肩の筋肉が伸びてしまっている状態を指します。首や胸の筋肉が張りやすいです。
逆に、「なで肩」は通常より肩が下がっているために、首から肩の筋肉が伸びてしまっている状態を指します。首や胸の筋肉が張りやすいです。
状態は真逆だし、こり方も違いますが……。どちらも筋肉に負担をかけてしまっているから肩こりになりやすい、ということですか?
そうです! 適正な状態の筋肉は、弾力があって少し柔らかく感じるものなので、指で肩を押したときにちゃんと指が沈む感覚があるかどうか? というのがチェックポイントになりますね。
……全然指が埋まらないくらい硬かったです。自分がいかり肩かなで肩か、判断するにはどのようにしたらよいですか?
鏡で自分の鎖骨の角度を見るといいですね。正常な人間の鎖骨は、大体水平から少し傾いているくらいなんです。時計でいうところの、3時~9時のラインより少し上くらい。ですが鎖骨がそれよりも急な角度になっていたり、逆に水平よりも下がりすぎている場合には、いかり肩・なで肩になっていると言えます。
なるほど!さっそく、チェックしてみます!
簡単に肩こり軽減!3つのセルフケア
こりをほぐすために自分でできることは何かあるでしょうか。
肩こりの原因は血流の悪化と筋肉の緊張なので、それらを解消することが大切です。セルフケアとして挙げられるのは、ツボ押し・ストレッチ・肩甲骨回しなどでしょうか。
ツボ押し
肩こり解消によいとされているツボはこの4点ですね。最後の腕の付け根については、ピンポイントでツボを突くというより、この肩~胸にかけて張っている部分があれば、掌底(手のひら)を使って全体的にほぐしてあげるのがいいでしょう。
どのくらいやればいい、といった目安はありますか?
個人差があるので一概に言えませんが、1か所10秒くらいで大丈夫です。自分の好きなタイミングの時に軽く刺激して、「何となく肩が軽くなったかな?」と思ったらやめていいですよ。
ストレッチ
まずはいかり肩の人向けのストレッチです。いかり肩の場合は首が特にこりやすいので、頭を手でぐっと横に倒して伸ばします。伸ばしている方の腕は下に下げるようにして、縮んでいた筋肉をよく伸ばしてあげるようにしましょう。
こちらはなで肩の人向けのストレッチ。なで肩の場合は胸の筋肉が張りやすいので、壁に手をついた状態から身体をひねってのばしてあげるといいですね。壁についた手から身体を逃がすような向きでぐっとひねりましょう。
あとは、椅子に座った状態で手を後ろ手に組んで伸ばすのもいいでしょう。交互に片側に引っ張るようにして、肩の筋肉をほぐしてあげるといいですね。これなら、休憩中でも楽にストレッチができると思います。
肩甲骨まわし
肩を回すといい、というのはよく聞きますね!
はい。ですが多くの人は、きちんと肩を回せていないんです。ここで大切なのは、固定されてしまっている肩甲骨をしっかり動かすこと。ですから、自分が思っているよりもずっと大きく肩を回す必要があります。
手を肩に置いて前から後ろに回しますが、このとき肘がちゃんと前を通っていくように動かすのがポイントです。初めのうちは鏡の前などで行って、自分の肘がちゃんと見えるように回せているかをチェックするといいですね。
手を肩に置いて前から後ろに回しますが、このとき肘がちゃんと前を通っていくように動かすのがポイントです。初めのうちは鏡の前などで行って、自分の肘がちゃんと見えるように回せているかをチェックするといいですね。
思ったよりオーバーな動きをしている感じがします……! ですが、肘を後ろまで回して戻ってくるとき、左右の肩甲骨がぎゅっと寄る感じがして気持ちいいです。
その感覚が大切ですね! 腕が自分の耳よりも高く、後ろに回るように意識しながら、肩甲骨を動かしていきましょう。30分おきに1回くらい、こったタイミングで楽になるまでぐるぐる回すといいですよ。
肩こり予防のポイントは有酸素運動!?
肩こり予防のために、何かできることはあるでしょうか。
そうですね、まずは常に動かすことを意識する点でしょうか。同じ姿勢でずっと固まっていることは、それだけ筋肉の緊張を招いてしまいますので、保育士さんもお仕事中、合間を見つけてストレッチができるといいと思います。それから、心臓の機能を高めておくことも、肩こり予防にはいいかもしれませんね。
心臓!?
肩こりの原因は血流の悪さにある、と言いました。ですから、血液を送り出すポンプの役割をしている心臓の機能を向上させることは、血流の改善にも繋がるんですね。
心臓も「心筋」と呼ばれる筋肉でできているのですが、女性は特にこの心筋が男性に比べて弱いので、それだけ血流が悪くなりがちです。肩こりにもなりやすいですし、血流の悪さが原因となるその他の不調も引き起こしやすくなります。
心臓も「心筋」と呼ばれる筋肉でできているのですが、女性は特にこの心筋が男性に比べて弱いので、それだけ血流が悪くなりがちです。肩こりにもなりやすいですし、血流の悪さが原因となるその他の不調も引き起こしやすくなります。
なるほど……! 心臓の機能を高めるためには、どのようなことが必要でしょうか。
ウォーキングやサイクリングといった、有酸素運動がおすすめです。身体を動かすことにも繋がるので、肩こり予防にもよいと思います。あとは、血液がどろどろして滞ってしまわないよう、水分をまめに補給する習慣もつけられるといいでしょう。
石渡先生、ありがとうございました!
実際にやってみた感想
私は若干なで肩気味で、胸の筋肉も張ってしまっていたのですが、教わったストレッチを行うようになってから少しずつコリがほぐれてきた感じがします。毎日の習慣にして、肩こりを改善していきたいと思います!
肩こりにお悩みの保育士さんは、ぜひご参考になさってくださいね。
次回は、保育士さんを悩ませる「ひざ痛」について石渡先生に相談します。
※記事中で紹介しているセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
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