保育の基礎知識

保育士さんが知りたい「保育参観」のイロハ~目的から年齢別のねらい、心構えまで~

保育園に勤めていれば一度は経験する園内行事、そのひとつが「保育参観」です。
保育士さんが日々考えている「よりよい保育」を保護者の方にも見てもらい、その活動の狙いや目的を理解していただく貴重な機会であると言えます。
しかし一方で、「子どものどんな姿を見せたら、保護者の方は喜ぶのかな……?」と悩んでしまう保育士さんは少なくありません。また、保護者の方の目の前で保育を行うことについて、緊張から苦手意識を持ってしまう人も多いようです。

今回の記事では、そんな悩める保育士さんのために「保育参観」を成功させるためのコツをまとめました!

保育参観とは


保育参観とはその名の通り、保護者の方に園までお越しいただき、保育の様子を見学してもらう行事のことです。
子どもが普段、園でどのように過ごしているかを見てもらうことが第一の目的。家庭生活だけでは見えない子どもの一面を伝え、家庭での姿と園での姿をどちらも把握してもらうことで、よりよい保育へ繋げていきます。

また、保育参観には園の様子を保護者に見てもらい、園の保育方針を理解・認識してもらうという役割もあります。

年齢別!保育参観のねらいと工夫のポイント

保育参観で大切なのは、子どもができるだけ普段通りに過ごせるようにすることです。
そのためにはさまざまな配慮と工夫が必要になります。
保育参観における年齢別のねらいと、工夫のポイントについてみてみましょう。

0歳

0歳児の場合、授乳やおむつ替え、遊びの時間など、一日の基本的な流れを見てもらうことが大切です。また、スキンシップのノウハウを保護者の方にも伝えるために、親子での触れあい遊びを行うのもいいでしょう。
0歳児の場合は月齢によって発育の差が顕著に出るため、同じくらいの月齢の子どもでグループを作り、別れた状態で保護者に見てもらうのもいいですね。

子どもが保護者の存在に気付くと、普段通りに過ごすことが難しくなってしまいます。
そのため、0歳児の保育参観では気付かれないように窓越しに見てもらったり、のぞき穴を設けて順番に見てもらうなどの配慮が必要かもしれません。

こんな遊びがオススメ!

生後何か月かによってできる遊びが異なる0歳児。発達に合わせて、子どもの喜ぶ遊びをしましょう。
□いないいないばあ
□はいはいでトンネルをくぐる遊び
□つかまり立ちをしながらお散歩

1歳

1歳児の場合、卒乳して離乳食を食べ始める頃になるため、特に「園で子どもたちがどのような食事をしているのか」を見てもらう時間を設けると保護者に喜ばれるでしょう。
給食の時間に参観を取り入れたり、可能であれば子どもの午睡中に保護者にも給食を味見してもらったりするのがいいですね。

1歳児も0歳児同様、保護者の姿が子どもに見つかると普段の保育ができなくなります。そばに行きたがったり、それが叶わないと泣きだしたりしてしまうからです。
しかし、0歳児よりも行動範囲の広がっている1歳児から隠れて参観するのには、やはりどうしても限界がありますよね。
そういうときにはあらかじめ時間を決めておいて、参観の最後に親子で一緒に遊ぶ保育参加のメニューを取り入れるといいでしょう。

こんな遊びがオススメ!
感触を楽しんだり、手遊びのレパートリーが増えたりするころです。
□ぬいぐるみ遊び
□追いかけっこ
□手遊び

2歳

2歳の場合は、園でのさまざまな生活場面をそのまま保護者に見てもらうのがよいでしょう。
この年齢の子どもはいわゆる「イヤイヤ期」を迎えていることが多く、家で保護者を困らせている子が園ではきちんとしていたり、またその逆もあるなど、家庭での姿と園での姿に大きなギャップが生まれます。
園でどう過ごしているかを見てもらうことで、保護者は家庭での育児について「このタイミングで叱っていいのか」「これは受け入れてあげればいいのか」など参考にできるので、ぜひ普段の姿を見せてあげるといいですね。

こんな遊びがオススメ!
集中力が芽生え、手指の巧緻性も高まる頃。ごっこ遊びもできるようになります。
□ひも通し
□ごっこ遊び
□お絵描き

3歳

3歳の場合、集団行動ができるようになり始める年齢であるため、保護者の関心は日常生活から交友関係などに移っていきます。
そのため、子ども一人ひとりが頑張っている姿を見せられるような集団遊びのメニューを考えられるといいですね。
子どもの個人差が如実に出てしまうようなものは、保護者の方が自分の子どもとお友達とを比べてしまったりするきっかけになりかねないので、避けた方が無難です。

年少クラスから入園した子どもの場合、不慣れな環境で不安そうにしていることもあります。保護者の方はそれを見るとつい近くに寄ってしまいがちですが、他の子どもはしていないのに自分のところにだけ保護者が来ると、子どもはかえって不安を覚えます。
席を立たずに、子どもを笑顔で見守ってもらうようにしましょう。

こんな遊びがオススメ!
友達との関りを深め、高度なごっこ遊びをするようになります。簡単なルールも理解できるようになる年齢です。
□はないちもんめ
□おままごと
□おしくらまんじゅう

4歳

4歳の場合、園の生活にはほぼ慣れて、友達や先生とのかかわりについて自分で認識できるようになります。保育園という社会の中で立場を理解し、個性が強く出始めます。
この頃になると保護者の関心は「うちの子はどんなことに興味を持っているのかしら」「小学校の授業についていけるかな?」といった教育的な方向に向かっていきます。
そのため、保育参観では自由に絵を描いてもらったり工作をしてもらったり、子どもの個性を知ってもらえるような保育メニューを考えるといいですね。

こんな遊びがオススメ!
ルールを守ったり、言葉遊びを始めたりする年代。全身を使ってさまざまな動きができるようになります。
□かくれんぼ
□しりとり
□だるまさんがころんだ

5歳

園の最年長になる年齢です。家では甘えん坊でも、園では年長児として年下の子どもの面倒を見ているなど、しっかり者の一面を覗かせて保護者を驚かせることも多々あります。
保育参観では子どもたちが自分たちで物事を話し合い、協力しながら園での生活を送っている姿を見せられるとよいでしょう。子どもの自主性や集団での助け合いを目の当たりにすることで、保護者には我が子の成長を実感してもらえるはずですよ。

こんな遊びがオススメ!
全身を使った遊びがいいですね。自分達で計画を立て、達成感を得られるようなものもおすすめです。
□鉄棒やブランコ
□縄跳び
□ドッジボール

保育参観の計画・準備

保育参観の開催時期や回数は園によってさまざま。なかにはその日に休暇を取って臨む保護者の方もいることでしょう。
園の方針を確認した上で、保育参観のお知らせはスケジュールに余裕をもって渡すようにしましょう。

保育参観の計画と実施の流れは以下の通りになります。

★参観日の日案
日程調整が終わったら、参観日の活動計画を立てます。
その日の保育の狙いと評価の観点を明確にし、保育の流れと留意点を考えることは普段の日案と変わりませんが、忘れてはいけないのはここに「保護者の参観」という要因が入ってくること。
それを考えることで、どのような配慮と対応が必要になるかが明確になります。同時に、その保育を行うことで保護者に何をどう見せたいのかもはっきりします。具体的に記入するようにしましょう。
★保護者へのお知らせプリントの作成、告知
日程と内容が決まったら、保護者あてのプリントを作成します。保護者が問い合わせる必要のない、簡潔でわかりやすい内容にすることを心がけましょう。
日時や場所、内容、持ち物、交通に関する注意を箇条書きで盛り込むとよいですね。保護者にも参加してもらうプログラムがある場合には、その旨も記載して服装などに留意してもらうようにしましょう。

プリント配布の時期は余裕をもって1か月前頃が理想です。より多くの保護者に参加してもらえるよう、余裕のあるスケジュールで配布します。

★掲示物や道具の準備
保育参観に参加する保護者にとっては、子どもの様子はもちろんのこと、「園がどのような場所なのか?」「そこで子どもたちはどんなものを作っているのか?」も気になるところ。
保育室や廊下に子どもの絵や工作、写真を飾っておくと喜ばれるでしょう。同じものでなくともいいので、クラスの全員分のものを飾る配慮も必要です。
★環境整備
保護者の方はいわばお招きしているお客さまです。参観日当日に困ることがないよう、入り口やお手洗い、見学ルートなどをスムーズに移動するための準備をしておきましょう。

成功させるために! 保育士が気をつけたいポイント

保育参観について不安を抱く保育士さんが多いのは、普段の生活にはない「保護者の目」にプレッシャーを感じるからではないでしょうか。
さまざまな保護者の方が一挙に集まる保育参観。子どもにとっても保護者にとっても、そして保育士にとっても有意義な時間にするためには、ちょっとしたことから意識してみるとよいかもしれません。

好印象の身だしなみ

保育参観日も変わらず保育を行うので、服装やヘアスタイル、メイクは普段通りでおおよそ問題ありません。ただし、仕事に慣れてくるうちに「このくらいなら大丈夫かも」と手を抜いてしまったり、逆に華美になってしまったりしている部分があるかもしれませんよね。
働き始めの頃を思い出して、清潔感があって子どもの安全面にも配慮した身だしなみを改めて心がけるようにしましょう。

主役はあくまで子どもたち

保育士さんの中には気合を入れるあまり、自分たちがいかによい保育をしているかをアピールしてしまいがちな人もいます。
しかし、保育参観の主役はあくまで子どもたち。保護者が知りたいのは子どもたちの園での様子であり、保育士がどのような保育を行っているのかは二の次であると言っても過言ではありません。
保育士さんが一生懸命やっていることは、その姿から自然と伝わるもの。子どもたちと保護者の方が楽しい時間を過ごせるように心がけることが大切です。

保育参観で困ったときは

老若男女、さまざまな保護者の方が集まる保育参観。時には「こういうとき、どうしたらいいの?」と困ってしまうケースに当たることもあるかもしれません。イレギュラーな事態でも慌てずに、落ち着いて対処できるようにしておきましょう。

そもそも、保育参観と保育参加ってどう違うの?

保育参観と混同されがちな行事に「保育参加」があります。
こちらは保護者にも積極的に保育に参加してもらい、保育の在り方を園と家庭とで共有することを目的としているもの。保育参観とは、似ているようで実は違います。
保育参観はあくまで「子どもの日常を保護者に見てもらうもの」。プログラムの関係で保護者の方にごいっしょしてもらうこともありますが、原則としてできるだけ保育に介入してもらわないように配慮をしてもらいます。

保護者の私語が多い……

保育参観が始まる前に、保護者同士が和やかなムードで話しているのはとてもいいことです。ですが保育参観が始まってからもおしゃべりが続いてしまうと、保育の妨げになり、子どもたちも気になってしまいます。
笑顔でにこやかに、「保育中の私語はご遠慮ください」とお伝えするようにしましょう。言い聞かせたり突っぱねたりするような口調にならないよう注意が必要です。

編集者より


たくさんの保護者が来る保育参観。保育士さんが緊張してしまうのもよくわかります。
ですが、いつもと違った環境で落ち着かない思いをしているのは子どもたちもいっしょ。先生が不安そうな顔をしていたら、子どもたちも日頃のように元気には振る舞えないですよね。
事前準備をしっかりして臨めばきっと大丈夫。短くても構わないので、はきはきと元気に始まりの挨拶をして、参観日の一日を楽しいものにしましょう!

参考文献・サイト

  • 『実例でわかる保育参観&懇談会性向マニュアル』成美堂出版(2018/4/1)

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