取材・インタビュー

「グローバル教育のベースに、保育がある」CGK International School(旧コスモグローバルキッズ)理事長インタビュー

CGK International School(旧コスモグローバルキッズ) 横浜馬車道」。
神奈川県横浜市は馬車道に2016年から構えられたプリスクールで、認可外保育所として登録されています。
週に5日・フルタイムでの預かり時間を固定で設けており、子どもたちはその長い時間の中で、ゆったりと英語教育を受けています。

そんな子どもたちとネイティブの先生を優しく見守っているのが、CGK International School(旧コスモグローバルキッズ)の理事長である甲斐実(かい みのる)先生です。
今回の記事では、CGK International Schoolの立ち上げから現在に至るまでについて、甲斐先生に詳しいお話をお聞きしました。

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「三つ子の魂百まで」グローバル人材を1から育むため

――甲斐先生が、CGK International Schoolを設立した経緯を教えてください。

甲斐先生:第一に、日本人が世界に飛び出していくきっかけづくりをしたかった、というのがあります。
私が海外生活で強く感じたのは、「日本人はもっと世界に出て、視野を広く持つべきだ」ということでした。しかし日本ではそういった海外に触れる機会が少ないので、その架け橋になりたかったんですね。
そのとき、CGKの運営会社である株式会社CosmoBridgeで代表を務めている飯尾(代表取締役社長・飯尾恭平さん)とシドニーで出会いました。彼から「帰国後に国際交流の事業で起業したい」と聞いて、私は彼を手伝う形で取締役という立場になったんです。
それで、まずは英会話スクールの立ち上げを任されました。

――保育園をやる前に、英会話スクールを運営されていたのですか?

甲斐先生:そうです。実際に海外に行くのなら語学ができなきゃいけないし、授業を通じて、日本人が世界で生きる上でのマインドを伝えたかったんですね。多い時は60人近い生徒の方が通っていましたが、大人が英語力を向上させながら、新しい価値観を柔軟に受容することは、容易なことではありませんでした。
そのふたつの問題を解決するために、子ども向けに教育事業を展開しようと思ったんです。ただの英会話教室じゃなくて、長く預かって幼児教育をしながら英語を教える施設。それで立ち上げようと思いました。

自分の国のこと、話せる大人に

――世界に飛び出すきっかけづくり、ということで開園されたCGK International Schoolですが、甲斐先生が保育や教育の面において大切にされていることは何ですか?

甲斐先生:週5固定でいろいろなプログラムをやっているので、教育面だけを推しているように思われがちですが、ベースにあるのは保育だと思っています。日本人保育者全員が保育士資格の所有者なのも、保育が土台になっていると思っているからです。
英語は言ってしまえばスキルなので、極論、後からでも苦労すればできないことはありません。ですが子どもの性格や人格形成の大部分は幼少期にしかできないので、その子の人生に関わる責任を強く感じています。
他のプリスクールだと英語だけに注力しているところが多いかと思いますが、CGKは長い保育時間の中で、教育だけに留まらないさまざまなプログラムを実施するようにしていますね。

――さまざまなプログラムといえば、CGK International Schoolでは日本語活動の時間を設けていますよね。とても珍しいと思います。

甲斐先生:日本語での活動の時間を取っている理由はさまざまですが、そのうちのひとつに、子どもたちに自国のことをきちんと話せる大人になってほしいというものがあります。いざ海外に出てみると、外国人から聞かれるのは「自分の国の話」なんですね。卒園後も日本に住み続ける子どもも多いですし、日本の文化は大事にしてほしいと思います。
また、他の国の文化を学ぶにしても、比較対象として日本の文化にも興味を持っていることが大切だと思っています。
私自身、海外に出てから日本のことがもっと好きになったんです。いいところ・そうでないところ両方を非常に意識するようになり、「日本」そして「日本人」であることについてよく考えるようになりました。
ですから、これから海外に飛び出そうとする子ども達にも、日本人としてのアイデンティティを意識してほしいと思います。

――保護者の方からの反応はいかがですか?

甲斐先生:保護者の方にも喜んでいただけていると思います。英語だけじゃなくて保育をきっちり行っていること、さまざまな体験やプログラムを提供しているということについては特によく喜んでいただいている声を聞きますね。CGKでは連絡帳をアプリでおこなっているのですが、そこで「子どもが園での活動をきっかけに、色々なことに興味を持つようになりました」と書いてもらえるようになりました。「探究心」を非常に大事にしている園として、本当に嬉しく思います。

「英語さえできればグローバル」ではない

――CGK International Schoolの保育・教育理念について、詳しく教えてください。

甲斐先生:基本にしているのは「表現力・思考力・探究心」。表現(英語)に関すること以外で思考力と探究心を入れたのは、海外で出会った日本人に、英語で話せるにもかかわらず自分の意見を主張しない人が多かったのが理由のひとつにあります。
自分の意見を言えないのは、そもそも意見を持っていないからではないか? と私は考えました。物事への興味が薄かったり、興味を持てる分野が少なかったりして、視野が狭くなっているからだと。ですから、視野を広げていろいろなものに興味を持つためには、探究心とそれを深堀りする思考力が必要だと思ったんです。
CGKでは幼児期から英語を注力して教えているので、子どもたちの英語力はかなり高いものになっています。ですが、そういう能力は卒園後も継続して勉強しないと落ちてしまうんですね。でも思考力と探究心は一生もの。これらが育まれていれば、さまざまな場面で子ども達の行動や考え方が良いものになると期待できるため、力を入れています。

――ご経歴を見ると、甲斐先生は保育士をしておられたわけではないようですが……保育理念などはどのように決められたのでしょうか?

甲斐先生:おっしゃる通り、私は保育士資格を持っていないし、開園前は保育経験もありませんでした。だから子どもたちに今後どういう大人になってほしいか? という明確なイメージはありますが、それを達成するためにどんな保育が必要なのかという具体的なところまではそれまでわかりませんでした。ですから立ち上げ前から、有資格者である保育士の先生や、プリスクールでの経験豊富な先生たちの意見も参考にしながら、カリキュラムを作っています。
今はそれを実践しながらさらに改善をしているところになりますね。

――保育士の先生方とのコミュニケーションはどのようにされていますか

甲斐先生:先生方への接し方は指示ベースというよりは相談ベース、基本的には格好つけないということを意識しています。私が保育未経験なのはみんな知っていますから、上から目線で指示したところで信用は得られません。「こうであってほしい」という最終の結果を意識するあまり、現場の先生の意見を聞かずにいれば、信頼関係はおろか貴重な意見交換による成長の機会さえ失いかねません。
上司として上司らしく振る舞い、責任ある責任者としての自覚を持った行動は非常に大事ではありますが、格好つけないというところも常に意識していきたいですね。
威厳のある姿とみんなの意見を仰ぐ姿、両方を大切にしたいと思っています。

卒園した後も見守ってあげたいから

――理事長としてのやりがいを教えてください。

甲斐先生:そうですね、やはり子どもの成長に驚かされる瞬間にやりがいを感じます。
CGKスタートしたとき、園児は3人だけでした。それが今では60人を超える子どもたちがいて、来年度中には72人の定員が埋まりそうです。経営面で非常に苦しんできた過去があるので、たくさんの子どもたちがわーっと駆け寄ってきてくれるときは、理事長としてはいろんな意味で感慨深くなりますね(笑)。
設立から3年目の園で、卒園児がまだいない状態なので、今後どういった子に育っていくのかがとても楽しみです。卒園後も子どもたちを見守りたい、というのが理想としてあるので、再来年度には小学生を対象とした、英語を教える学童を開設する構想もあります。

――卒園児のアフターケアも視野に入れておられるのですね!

甲斐先生:プリスクールを卒園しても、日本の小学校に行けば英語力はやはり下がってしまいますからね。キープするためにはインターナショナルスクールに進学するか、英語教育を行う学童しか現状では有効な手段がないんです。ネイティブに近い英語力が付いても、英会話スクールに短時間通う程度では効果がないですし。
ですから、いずれは自分達で小学校も作れたらいいなと思います。

――保護者の方とのかかわりでは、何かやりがいを感じられることはありますか?

甲斐先生:個人的な話ですが10月にパパになりまして。そのことを保護者の方に話したら、まるで自分のことのように喜んでくださったんです。そういう関係性を築けているのは、きっと親御さんがうちの保育や教育を喜んでくれているからなんだな、と感じましたね。その瞬間はすごく嬉しかったです。
また、あるときの年末に、保護者の方が感謝の気持ちを伝えるためにサプライズで訪問してくださったことがあって。急に保護者の方々が園に大挙していらっしゃったので何事だろう? と驚きましたが、とても印象深い出来事でしたね。「CGKに入れてよかった」と涙ながらに話していただいた方もいらっしゃって。それはずっと大事にしていきたい思い出であるとともに、手を抜かず保育と教育に向き合うための大きな原動力になり続けています。

子どもが好きで、保育士になったはず

――甲斐先生が一緒に働きたいと思う保育士さんのイメージを教えてください。

甲斐先生:子どもが好きであるというのは当然として、保育の仕事にやりがいを感じてほしいと思いますね。
子どもの命を預かっている以上、神経は張りつめているし大変なこともある職業です。その中でどのようにしてモチベーションを保つかと言えば、子どもの成長を見ることだと思うんです。子どもの成長を促すためにどんなことが必要か、親身に考えられる人がいいですね。
あとは、自分の意見をはっきり言える人。日本人同士でなら言わずに察することができることでも、ネイティブの先生がいるCGKでは伝わらない場合もありますし、言っても伝わらないこともたくさんあります。その文化や感覚の違いを理解した上で、はっきりと伝えられるコミュニケーション能力が必要だと思います。ネガティブなことであっても、言わないでいるよりはずっといいので。待ちの姿勢ではなく、率先して動ける人が来てくれたらいいなと思います。

――最後に、全国の保育士さんへメッセージをお願いします。

甲斐先生:保育士は大変だけどやりがいのある仕事だと思います。その中で、せっかく保育士になったのに退職してしまい、潜在保育士になっている人がいるのはとても悔しいことです。環境や状況が理由なら、ぜひ転職するという選択肢を常に持っていてほしいですね。子どもが好きで働いているはずだから、諦めずにどんどん転職して、長く子どもたちと接して働いていってほしいと思います。「人」を大事にする園は必ずあるので!
◆CGK International Schoolについてはこちら

編集者より

保育や国際交流にかける熱い想いを語ってくださった甲斐先生。「私が直接、授業を担当することはないのですが」と言いながら案内してくださった教室で、子どもたちから笑顔を向けられている姿が印象的でした。
堪能な英語で子どもたちとやり取りしながら、温かな眼差しで教室全体を見守っている甲斐先生。その愛情や思いを、きっと子どもも肌で感じているのでしょう。

次回の記事では、CGK International Schoolで働いている保育士の末木先生にお話をお伺いします!

※この取材記事の内容は、2018年12月に行った取材に基づき作成しています。

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