保育園を卒園する子ども達に、感謝の気持ちを伝える「お別れ会」。卒園児にとって、楽しかった園での生活を振り返り、小学校への進学を前向きに捉えるための大切な園行事です。
また、在園児にとっては、お兄さん・お姉さんに「ありがとう」を伝え、進級への期待を膨らませることにもつながるため、卒園児・在園児がともに楽しめるような、思い出深い会にしたいもの。
今回は、楽しく、心に残る「お別れ会」にするための演出アイデアを、たっぷりご紹介します。
お別れ会のねらいは?
お別れ会は、在園児が卒園児を見送るというという役割のほかに、卒園児が在園児に感謝の気持ちを伝える役割も持っています。
そのため、卒園児と在園児とでは行事のねらいが異なります。
卒園児は、楽しかった園生活を振り返ることで、成長を感じたり、感謝の気持ちを深めることができます。
「お別れ」というと寂しく、悲しいイメージがありますが、在園児と楽しい時間を過ごすことで、その思い出を胸に明るく前向きに卒園・進学に気持ちを向けられるようにしましょう。
2~4歳の在園児にとって「お別れ会」は、お兄さん・お姉さんと楽しく過ごす最後の時間。いっしょに楽しく過ごすなかで、卒園児への感謝を深め、「ありがとう」「小学校へ行っても頑張ってね」という気持ちを伝えられるようにします。
また、卒園していく年長さんの姿から、進級することを実感し楽しみに思えるように、言葉かけなどに工夫をするとよいでしょう。
まだ幼い0~1歳児の場合には、いつもとは違う園の雰囲気を味わうことやお兄さん・お姉さんとのかかわりを楽しむことが立派なねらいとなります。
睡眠時間や食事の時間を考慮して、先に保育室に戻るなど、楽しく過ごせるように進行を工夫するとよいでしょう。
お別れ会をもっとステキにする言葉かけ
お別れ会を有意義な時間にするためには、保育士の言葉かけも重要です。「お別れ会とはどんなものなのか」をしっかり伝え、卒園児・在園児それぞれのねらいが果たせるような、お別れ会を目指しましょう。
在園児への言葉かけのポイント
在園児には、卒園児と過ごした楽しい思い出について話し、自然と感謝の気持ちが持てるようにしましょう。また、お別れ会に、どのような目的があるのかを伝え、在園児が「ありがとう」の気持ちをも持って、準備ができるようにします。
【言葉かけの例】
みんなが泣いているとき、年長組のお兄さん・お姉さんは、優しく声をかけてくれたよね。いっしょにたくさん遊んでもらって楽しかったよね。年長さんは、もうすぐ保育園とさよならして、小学校に行きます。だから、みんなで「ありがとう」を伝えるためにお別れ会を開こうと思います。
お別れ会は、年長さんに「いままでありがとう」という気持ちを伝えて、「小学校に行っても元気でね!頑張ってね!」と送り出してあげる会なの。お兄さん・お姉さんが楽しんでくれるように、みんなで準備をしようね。
年長さんが卒園したら、みんながひとつお兄さん・お姉さんになるの。年長さんにしてもらって嬉しかったことを、今度はみんなが小さなお友だちにしてあげようね。
卒園児への言葉かけのポイント
保育園を卒園して、小学校に進学することについて、心待ちにしている子もいれば、不安に感じている子もいることでしょう。
卒園児への言葉かけは、楽しかった園での生活を思い起こさせるよう、そして、新しい生活に期待と希望を持てるように心がけるとよいでしょう。
【言葉かけの例】
みんなは今まで、小さなお友だちといっしょに遊んでくれたり、やさしい言葉をたくさんかけてくれたよね。だから、小さなお友だちはみんなにとっても感謝しているの。
お別れ会は、小さなお友だちがみんなのために「ありがとう」の気持ちを伝えるために開いてくれる会なの。みんなも、そんなお友だちにありがとうの気持ちをもって、お返しをしてあげようね。
保育園とさよならして、小学校に行くのが寂しくて、不安なお友だちもいるよね。でも保育園では、運動会や遠足、お外遊びなど、楽しい思い出がいっぱいできたよね。卒園しても、そんな楽しかったことを思い出して、笑顔でいてくれたら、先生はとってもうれしいな。
年齢別!お別れ会を盛り上げる出し物アイデア
では、ここからはお別れ会を盛り上げ、より思い出深いものにするための、出し物のアイデアを年齢別にご紹介します。
「毎年マンネリになってしまう」「子ども達がもっと楽しめる会にするにはどうしたらいいの?」と悩んでいる保育士さん必見です!
0・1歳児の出し物アイデア
まだ小さな0・1歳児クラスの場合、お別れ会の雰囲気を楽しむだけでもよいですが、できれば卒園児をはじめ、異年齢での交流を楽しみたいもの。
あらかじめ作っておいたプレゼントを渡す、体を使う遊びをお兄さん・お姉さんと楽しむなど、いっしょにお別れ会を楽しめるよう、工夫しましょう。
卒園児がやさしく手を引いてあげるなどしながら、簡単なダンスをしたり、会場内を歩くなどしてふれあいを楽しみます。
まだ月齢的に歩けない子が多いようならば、段ボールで作ったバスに0歳児を乗せて、卒園児が押してあげるゲームにアレンジしても楽しめるでしょう。
シール・指スタンプなどで飾り付けをしたメダルや賞状などをあらかじめ作っておき、お別れ会当日に卒園児にプレゼントします。
乳児でも楽しめる歌を卒園児に披露するのも、定番ながら楽しいアイデア。しっかり歌を歌えなくても大丈夫。ズンズンとリズムに乗る姿は、卒園児をやさしい気持ちにさせてくれるはずです。
2歳児の出し物アイデア
2歳児クラスになると、ある程度言葉の意味を理解したり、しっかりとした足取りで歩いたり走ったりできるようになります。
卒園児への感謝を込めたお遊戯や歌などを企画してもよいでしょう。
卒園児とのふれあいができるゲームも楽しい出し物のひとつ。
くじ引きで5歳児と2歳児のペアを作り、スタートから途中までは5歳児が2歳児を抱っこで運びます。途中に用意したくじには「頭をなでる」「ギューッとする」などふれあいをテーマにしたお題が書かれています。お題をクリアして、最後は手をつないでいっしょにゴール!
5歳児にとっては年下の子を思いやる体験となり、2歳児にとっては、卒園するお兄さん・お姉さんとふれあうよい機会となるでしょう。
卒園児に歌やダンス、簡単な劇などの出し物を企画し、当日までに練習して披露します。定番ではありますが、「ありがとう」を伝えるために、一生懸命練習をするという経験は、子ども達の心の成長にもつながるでしょう。
3歳児の出し物アイデア
3歳児クラスになると、しっかりと歌を歌ったり、ダンスを披露したりといった発表も、比較的スムーズにできるようになるでしょう。
たとえば、卒園児が3歳児クラスにいたころに発表会などで披露した歌やダンスを、披露してあげるのもよいでしょう。
「小さな頃に同じ歌を歌ったね」「みんなでたくさん練習したね」など、楽しかった思い出を振り返るきっかけにもなるはずです。
「保育園で楽しかった思い出はなに?」「どこの小学校にいくの?」など、卒園児にインタビューをしてみましょう。緊張してうまくしゃべれないこともあるため、保育士さんは質問する子、回答する子の傍について、フォローしながら進行していきましょう。
卒園児と一緒に、お別れ会の特別メニューを食べたり、バイキング形式の食事を楽しみます。3・4・5歳児の合同で行ってもよいでしょう。
4歳児の出し物アイデア
来年度には、園で一番年長となる4歳児クラスの子ども達。卒園児を送り出すうえで、大きな役割を果たしてくれることでしょう。
チューリップや菜の花など、お別れ会・卒園式のために育てて、卒園児にプレゼントします。卒園式の装飾として飾るのもよいでしょう。
長期的な準備が必要にはなりますが、自分たちの手で一生懸命育てた植物をプレゼントすることで、感謝の気持ちがより伝わる会になるはずです。
4歳児にお別れ会の司会進行をしてもらうのも、ひとつのアイデア。「5歳児クラスのみんなが卒園したあとは、自分たちがいちばんお兄さん・お姉さんになるんだ」と、進級への自覚をすることにも役立ちます。
4歳児くらいになると、より高度な制作にもチャレンジできるようになります。写真立てや時間割入れ、ペン立てなど、小学校に進学しても使えるような制作物を作って、プレゼントするのもよいでしょう。
なにを作ったら卒園児が喜んでくれるのか、子ども達に考えてもらってもよいですね。
5歳児の出し物アイデア
お別れ会の主役である5歳児。このお別れ会が、園生活のひとつの楽しい思い出となるように、そして前向きに進学の日を迎えられるように、心に残る出し物を検討しましょう。
お別れ会では定番中の定番ですが、園やお友だちに感謝を込めて、歌をプレゼントしてみましょう。
お別れ会で人気の歌には、園での生活を振り返り、先生やお友だちの大切さを再確認する要素がたっぷり詰まっています。聴いたことのある歌であっても、卒園児にとっては感慨深いものとなるはずです。
【お別れ会で人気の歌】
たとえば、新年度に5歳児の部屋に飾る壁面飾りを、卒園児みんなで作って、プレゼントしてはいかがでしょうか。
来年度、同じ保育室で過ごすお友だちを思いながら作る壁面は、卒園児からの「ありがとう」の気持ちをしっかりと伝えてくれるはずです。
園で動物を飼育しているなど、係や当番制にしていることがあれば、それを4歳児クラスに引き継ぐ場を設けるのもよいでしょう。
4歳児が「責任感を持ってその活動に取り組もう」と思うきっかけを作ってくれることでしょう。
お別れ会とは別に、最後の思い出作りとして卒業遠足に行くのも楽しいもの。遠方でなく、近くの公園などでも、みんなで遊び、お弁当を食べるなど、いつもの園生活とは違った時間を楽しむことができるでしょう。
心に残る保育士さんの出し物アイデア
子ども達の成長をずっと見守ってきた保育士さんにとっても、お別れ会はとても感慨深いもの。
ぜひ保育士さんからも、卒園児が楽しんでくれるような出し物を用意してあげましょう。
卒園児の今の写真と、入園してきた頃の写真の2枚をそれぞれ用意します。それを並べて画用紙などに貼り、飾り付けましょう。
お別れ会と当日は、一人ひとり名前を呼んで、入園してきた頃の様子を伝えます。最後は「大きくなったね!卒園しても元気な〇〇くんでいてね!」そんな前向きな言葉をかけてあげましょう。
そんなときには、入園してきた頃の写真だけをみんなに見せて「これ誰だ?」と当てっこするゲームにしてもいいね。
卒園をお祝いする内容のパネルシアターを披露します。卒園ソングや、卒園に関する絵本をモチーフに、オリジナルの作品作ってもよいですし、市販の制作キットを活用してもよいでしょう。
卒園児たちがお遊戯会で踊ったダンスや、発表会で歌った歌などを交えながら、保育士さんが劇を披露します。
【劇のテーマの例】
・園での生活を振り返りながら、最後には小学校に楽しそうに進学していく内容
・異年齢の子も楽しめるような定番の童謡やおとぎ話
・卒園児がお遊戯会で発表した劇を再現する
お別れ会を盛り上げる装飾のポイント
最後に、お別れ会を盛り上げるための、会場の装飾のポイントをご紹介します。
【華やかさを添えて】
卒園していく子ども達を、晴れやかに送り出してあげる気持ちを込めて、明るい装飾を心がけましょう。ガーランドや花飾り、バルーンなど、華やかな飾りを活用するのがオススメです。
【卒園児の写真を飾ろう】
1年間の思い出の写真を壁に飾れば、「こんなことがあったね」「遠足はたのしかったな」など、子ども達が楽しかった園生活を振り返るきっかけになってくれるでしょう。
季節ごとに分け、1年を振り返れるようにすると、それだけでステキな壁面飾りになります。
【テーマカラーを決めよう】
リボンや花飾りなどで装飾をする際、テーマカラーを決めておくと、統一感がありきれいに飾り付けができます。飾り付けを担当する保育士さん同士で、検討しておくとよいでしょう。
編集者より
保育園から小学校にあがるというのは、子ども達にとって、大きなステップ。小さな背中には、きっと、大きなランドセルとともに、期待や不安も背負うことでしょう。
しかし、保育園での楽しい思い出は、どんな時でも、そっと子ども達の背中を押してくれるはずです。それを力にし、新たな環境のなか、子ども達はいっそう大きく成長していくことでしょう。
皆さんの園でも、楽しく思い出に残るお別れ会で、子ども達をあたたかく送り出してあげてくださいね!
卒園していく子ども達の未来が、明るく希望に満ちたものであることを願って……。
参考文献・サイト
- PriPri(プリプリ)2016年3月号『盛り上がる!別れ会&入園式を』世界文化社
- 兵頭惠子 監修(2008)『年齢別行事ことばかけハンドブック』世界文化社
- 輝く明日の保育につながるサイト 保育をもっと好きになる!『保育園・幼稚園のお別れ会のねらい、出し物やプレゼントアイデア!』(2019/3/1)