楽しい週末が終わり、月曜が近づくにつれて憂うつな気分になってしまう、いわゆる「ブルーマンデー症候群」。
「今日からまた仕事か……」「職場に行かなきゃいけないのに、なんだか気が重いな」月曜の朝にため息をついた経験のある保育士さんも多いのではないでしょうか。
今回は、精神科医・産業医としてご活躍され、保育のお仕事レポートでもおなじみの奥田弘美先生に、そんなブルーマンデーを克服して、気持ちよく一週間をスタートするためのコツを教えていただきました。
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*シリーズ「保育士さんのための保健室・メンタル編」は、医療関係者などの専門家への取材を通じて、保育士さんの心健康維持・向上に役立つ情報を発信していく連載企画です。
大丈夫!「月曜日が憂うつ……」はあなたひとりじゃない
月曜の朝を自分へのご褒美タイムに!手軽にできる「食べる瞑想」
憂うつになりがちな月曜日の朝には、ちょっぴり自分にご褒美をあげてみてはどうでしょうか。
たとえば、好きな果物を朝食に用意したり、普段よりワンランク上のパン屋さんで美味しいパンを買ってきたりしてもよいですし、とっておきの紅茶やコーヒーを淹れたりしてもよいでしょう。
1日のスタートは朝食から。大好きな食べものを用意して、体と心にエンジンをかけてあげましょう。
「食べる瞑想」で心を整えよう
そんなお気に入りの朝食を食べる際にオススメなのが、「食べる瞑想」です。
食べる瞑想はマインドフルネス瞑想のうちのひとつで、これから起こることへの不安や、先週の仕事のミスなど、未来や過去に向いてしまっている心を「今この瞬間」に戻して心を整えることに役立ちます。
【マインドフルネス瞑想についてはこちらの記事をチェック!】
瞑想というと、ハードルが高いように思えるかもしれませんが、食べる瞑想は、食事の時間のなかで気軽に取り組めます。
憂うつになりがちな月曜の朝を気持ちよく迎えるためにも、ぜひ取り入れてみましょう。
さっそく実践してみよう!
では、さっそく「食べる瞑想」を実践していきましょう。
【1】まず一口目に食べる食べものを決めます。(食べる瞑想に使う食べものはなんでも構いませんが、ここでは例としてイチゴを取りあげます)
【2】心の中で「イチゴを食べます」とつぶやきながらイチゴを取ります。
【3】まずはイチゴの色や形をじっくり眺めます。はじめてイチゴを目にするような気持ちで、じっとその色彩や形状を観察してみましょう。
【4】つづいてイチゴの香りを嗅ぎます。甘酸っぱいさわやかな香りを、胸いっぱいに吸い込んでみましょう。
【5】ゆっくりと口の中にイチゴを入れます。イチゴと触れた舌や粘膜の感覚に意識を集中させてみましょう。
【6】ゆっくりとイチゴを噛み、その歯ざわりを感じます。
【9】最後にゆっくりとイチゴを飲み込み、瞑想は終了です。
これだけの短い瞑想でも、未来や過去にとらわれていた意識を、イチゴを食べている「今」に向け、心が落ち着きやすくなる効果が期待できます。
ブルーマンデー克服にピッタリの朝食メニューは?
朝食を食べることは、医学的にもメリットが多いとされています。たとえば、朝食で糖質を摂ると、それがブドウ糖というエネルギー源になって脳に送られ、スッキリと覚醒することができます。
また、血液や筋肉、骨をつくるために欠かせない栄養素であるタンパク質には、疲労回復物質が豊富に含まれ、腹持ちもよいためパワーの源です。
加えて体の調子を整えるビタミンも摂れば、1日のスタートにぴったりの朝食となるでしょう。
糖質・タンパク質・ビタミンを含んだメニュー例
朝はなにかとバタバタするもの。そんな忙しい朝でも手軽に作れるオススメ朝食メニューをご紹介しましょう。
【1】マフィンを焼き、さっと洗ったレタス、マヨネーズ、目玉焼きを乗せます。
【2】イチゴやオレンジなどのフルーツをヨーグルトとあえてフルーツサラダを作ります。
<それぞれの素材が含む栄養素>
●マフィン……炭水化物(糖質)
●卵・マヨネーズ・ヨーグルト……タンパク質&脂質
●レタス・フルーツ……ビタミン(フルーツは糖質も含有)
【1】食パンにチーズやツナなどの具材をはさんで焼きます。ホットサンドメーカーがある場合には機材にはさんで焼き、ない場合にはパンのふちを包丁の切れない面などでぎゅっと押して閉じ、オーブントースターで焼きます。
【2】イチゴ、バナナ、豆乳(お好みでシロップ)をミキサーにかけてスムージーを作ります。
<それぞれの素材が含む栄養素>
●食パン……炭水化物(糖質)
●チーズ・ツナ・豆乳……タンパク質&脂質
●イチゴ・バナナ……ビタミン(糖質も含有)
ケーキやカフェのモーニングだってOK!
日々のご褒美として、お気に入りのケーキを用意しておいてもよいでしょう。
ケーキというと「お菓子」のひとつというイメージが強いですが、小麦粉・砂糖などの炭水化物、生クリーム・バターなどの脂質が多く含まれています。朝に食べると十分なエネルギーが補えます。
ケーキにフルーツなどをさらにプラスし、豆乳や牛乳でタンパク質を補えば、朝のバランスメニューに早変わり。
糖尿病などの疾病がない健康な方であれば、月曜の朝食代わりにして、気分を高めてあげるのもおススメです。
また、近所や職場の近くに、モーニングを提供するお気に入りのお店があれば、利用するのもひとつの方法でしょう。
月曜の朝起きたらまず朝日をしっかり浴びて
朝の憂うつな気分を払拭するためには、朝食を食べる環境づくりも大切です。
たとえば、カーテンを閉め切った薄暗い部屋では、どんなにお気に入りの朝食を用意しても、美味しく食べることはできませんよね。
朝起きたらカーテンを開け、しっかりと朝日を浴びましょう。
朝日を浴びるメリットとは?
私たちの体内時計は毎日少しずつずれてしまうのですが、朝、日光を浴びることで、その体内時計がリセットされます。また、朝日を浴びることは、脳を活性化する「セロトニン」 というホルモンの分泌にも役立ちます。
セロトニンは頭をクリアにし、気持ちを冷静にしてくれるため、憂うつさや不安の軽減につながります。
また、セロトニンが分泌されて14時間~16時間後には、質の良い睡眠をもたらしてくれる「メラトニン」というホルモンが分泌されます。朝日を浴びることは、活動をスムーズにスタートするためだけでなく、その日の安眠にもつながるのです。
曇りの日はどうするの?お悩みQ&A
【Q】曇りの日など日光を浴びられないときはどうすればよいのでしょうか。
【A】曇りの場合でも体内時計をリセットする照度は十分にあります。天候が悪くても、できるだけカーテンを開けて部屋を明るくしましょう。
【Q】部屋の日当たりが悪く、いつも薄暗いのですが……。
【A】そんなときには蛍光灯色(ブルーライト)のあかりをつけることでも代用が可能です。部屋を明るくして朝の時間を過ごすようにしましょう。
リフレッシュしたつもりがブルーマンデーの原因に?!
なかには、休日の過ごし方が月曜の朝の憂うつの一因になっているケースもあります。そのため、休日の過ごし方を振り返り、見直すことも大切です。
自分自身の休日を振り返ってみよう
月曜日の憂うつさや不安を軽減するためには、土日に心身の疲れをとることがまず大前提。気分転換に……と飲み明かしてしまったり、タイトなスケジュールで旅行をしたりなどすると、気付かないうちに体に疲労が蓄積してしまいます。
すると月曜日に疲れを持ち越してしまい、余計に憂うつさが増してしまうおそれがあります。
休日のリフレッシュは「心地よいくらい」にとどめよう
とくに、前週に仕事が忙しく疲労が溜まっている場合や、次の週に行事を控えていたり多忙なスケジュールが組まれたりしている場合には、できる限り休日に心と体を休めてあげることが必要でしょう。
月曜を気持ちよく迎えるためには、旅行であっても、運動であっても、くたくたになるまで活動するのではなく、心地よい疲労を感じる程度にとどめ、日曜は早めに帰宅してゆっくり過ごすことが大切です。
あなたも、みんなも「頑張っている」
月曜日に憂うつな気分になってしまう、それは言いかえればあなたが毎日「責任をもって精一杯仕事に頑張っている」ということ。だからこそ、自分自身を責めるのではなく、休日や月曜の朝の時間をつかって、自分の体と心をしっかりいたわってあげましょう。
また、ブルーマンデーは働く人の多くが経験します。「自分ひとりではないんだ」と思うことができれば、少し心が軽くなるかもしれません。
今回ご紹介した内容を活かして、ぜひ気持ちのよい一週間のスタートを切ってくださいね!
編集者より
月曜の朝に憂うつになってしまうと、職場に行く足取りが重くなってしまったり、頭痛や吐き気など、体調の悪化につながってしまったり……。つらいものですよね。
軽減する方法がわからずに、つらい状態のまま頑張り続けている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、ただ「頑張り続ける」だけでは、よけいに心身に疲労が溜まり、月曜の憂うつが重くなってしまいます。
今回はブルーマンデー軽減のコツとして、奥田先生に、休日と月曜の朝の過ごし方、また心を「今ここ」に戻すための食べる瞑想を教えていただきました。
今回ご紹介した内容が、より明るく、充実した皆さまの毎日につながりますように!
◆奥田弘美先生について◆
奥田 弘美(おくだ ひろみ)
精神科医、産業医(労働衛生キャリアアドバイザー)
作家、日本マインドフルネス普及協会代表理事
平成4年山口大学医学部卒。
精神科医・産業医として都内20か所の企業で産業医として
働く人の心身のストレスケアに携わるほか、
日本マインドフルネス普及協会を仲間とともに設立し、マインドフルネスの普及活動も行っている。
著書にはベストセラーとなった「心の折り合いをつけて、うまいことやる習慣」(すばる舎)
「何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから」(扶桑社)のほか、
「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)
「図解・めんどくさいをスッキリ消す技術」(マキノ出版)、など多数。
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※本連載でご紹介しているマインドフルネス瞑想は、「悟り」を目的とした瞑想修行や、病的症状の治療を目的とする集中プログラムではありません。
※心身の病気などで医療機関にかかっている場合などには、主治医に相談し、許可をうけたうえでマインドフルネス瞑想を取り入れることをおすすめします。