運動会や作品展、クリスマスに向けて行事も忙しくなるこの時期……。
ついつい後回しになってしまいがちな「敬老の日」イベント。
「『敬老の日』が近づいてきたけど、子どもにどう伝えよう?」
「おじいちゃん・おばあちゃんに贈るお手紙やプレゼントの製作アイデアってどんなものが喜ばれる!?」
「元気いっぱいな子ども達もお年寄りも一緒に楽しめる遊びって???」
なんてお困りの先生方もいるのではないでしょうか。
でもご安心ください!
この記事を読めば由来のお話やプレゼント製作、当日の出し物まで、バッチリです。
保育参観で気を付けることやプレゼントのアレンジ例はこちらも参考に
敬老の日は9月の第3月曜日!園行事も見据えて早めの準備が◎
2019年の敬老の日は9月16日(月・祝)です。
以前は9月15日と定められていましたが、 国民の祝日に関する法律(いわゆるハッピーマンデーの導入)により、現在は9月の第3月曜日になりました。
では、そもそも「敬老の日」とはどのような日なのでしょうか?由来をみてみましょう。
第五条 国民の間に広く老人の福祉についての関心と理解を深めるとともに、老人に対し自らの生活の向上に努める意欲を促すため、老人の日及び老人週間を設ける。
(「老人福祉法」/注:太字は編集部による)
「敬老の日」から7日間は「老人週間」と定められていることから、このシーズンにあわせてお年寄りを園に招いて一緒にゲームをしたり、遠くに住む祖父母に手紙を書いて送ったり、近隣の老人ホームに訪れたりと子どもとお年寄りが交流するイベントを開催する園もありますね。
『保育所保育指針』「3歳以上児の保育に関するねらい及び内容」でも「高齢者や地域の人などの身近な人とも人間関係を築いていく」ことが触れられています。
子ども達にとっては歳の離れた人との関わりをもち、人間関係を広められるよい機会となりますね。
「身の回りにいるお年寄りを敬う気持ち」を伝えられるように企画・言葉かけを
敬老の日は身内の祖父母だけに感謝を伝える日ではありません。
祖父母がいない、関わりが少ないという家庭もあるでしょう。
そのような家庭の様々な事情もふまえて、「子ども達が社会生活の中で関わるお年寄りに目を向け、親しみや敬う気持ち」がもてるよう伝えていけるとよいですね。
たとえば、園に祖父母を招く場合は「おじいちゃん・おばあちゃんが子どもの頃好きだった遊び」を聞き、一緒にその遊びを楽しむという企画ができます。
子ども達は「おじいちゃん・おばあちゃん達は、自分の知らない面白い遊びを知っているなぁ」と自然と気づけるのではないでしょうか。
それでは、「敬老の日」の言葉かけの例を見てみましょう。
「言葉かけ」の例①
みんなが頑張って描いた絵やお歌を見たり聞いてもらおうね。
でもね、おじいちゃんやおばあちゃんはみんなのニコニコ笑顔が一番楽しみなんだって。
一緒に住んでいても、遠くにいても、いつもみんなのこと見守ってくれているおじいちゃんやおばあちゃんに「ありがとう」って伝えようね。
普段は園に来ることがない祖父母が園に来ることへの期待感をもたせ、たくさんの愛情を注いでもらっていることを伝えましょう。
交通安全の見守りをしてくださっている近所のお年寄りやファミリーサポート(通称ファミサポ)の方への話へと広げてもよいですね。
「言葉かけ」の例②
みんなが生まれる前ってどんなことが起きていたのかな? おじいちゃんやおばあちゃんが子どもの頃はどんなおもちゃで遊んでいたのかな?
お手紙に書いて聞いてみようか。
お年寄りの経験や知識の豊富さを伝え、お手紙を書く導入にします。
「言葉かけ」の例③
……そうだね、髪が白くなったり、耳が聞こえにくくなったり、重い荷物をもつのが大変になったり、元気いっぱいのみんなとは違いがあるんだね。
それじゃあ、街で困っているお年寄りを街でみかけたらどうしようか?
「お手伝いしましょうか?」って声をかけたら、きっととっても嬉しくなるだろうなぁ。
問いかけを通してお年寄りへの理解を深め、子ども達がもっている思いやりの心を育み共有していきましょう。
【お手紙】遠くのおじいちゃん・おばあちゃんにも伝わる「成長の証」
子ども達が描いたお手紙をおじいちゃん・おばあちゃんに送ることは、敬老の日の定番のイベントです。
大人でもなかなか手書きのお手紙をもらうことが少なくなった今、孫から届くお手紙はきっと格別に嬉しいことでしょう。
直接会うことができなくても、子ども達の成長が伝わるアレンジを加えたお手紙を書きましょう!
【0歳・1歳~】ハートがいっぱい! フォトフレーム風のお手紙
自立するフォトフレーム風のお手紙です。
日々できるようになることが増えていく赤ちゃん。
「〇月〇日ハイハイができるようになりました」などというひとこと成長記録も添えると喜ばれそうです。
【作り方】
①横半分に中心線(赤線)に折り目を付ける。そこから1~2cmの幅(青線)を山折りにします。
②スタンピングしていきます。
ハートで型抜きをした画用紙をマスキングテープなどで貼り、上から絵の具をつけたスポンジやタンポなどでポンポンします。
(子どもと一緒に行いましょう)
③子どもの写真や吹き出しの飾りなどを添えたら完成です。
【2歳・3歳~】野菜のスタンプはがき
「野菜の断面図って不思議な形!」と子ども達が気づくきっかけにもなるかもしれません。
野菜の切れ端などをもらったり、調理師さんからお話をしてもらったりと調理室と連携しても素敵ですね。
【作り方】
①切った野菜と絵の具を準備し、子ども達は自由にはがきにぺったんと押していきます。
レンコンやオクラは形が独特なのでオススメの野菜です。
②先生は、子どもの代わりに宛名・子どもの名前とメッセージを添えましょう。
③仕上げに食事風景の写真も添えて、元気に成長している様子をあわせて伝えられるとGOOD!
【4歳・5歳~】さつまいものレターカード
さつまいもを折ったり、ツルとつなげたり……ガーランドのような面白い形のお手紙です。
おいも堀りのイベントもあればその導入にも使えます。
【作り方】
①パーツを作る
・折り紙でサツマイモを作る※のちほど紹介します
・葉っぱの形に切った色画用紙にメッセージを書いたり写真を貼る
・千代紙で肩たたき券を作る……など
②穴あけパンチでパーツに穴をあけ、毛糸や麻ひもを通せば完成!
封筒に入れて投函しましょう。
【カンタン! 折り紙のサツマイモの作り方】
①縦半分、横半分に折り、十字の折り目をつける(青線を山折り)
②四隅を中心に持ってくる(青線を山折り)
③左右の角を中心に折り込む(白線を山折り)
④ひっくり返して、おいもの線を書いたら完成
【プレゼント】キーワードは「和」と「実用性」
お年寄りにプレゼントをあげるなら、「和」の落ち着いたトーンを意識して。
子ども達も普段とは違う素材や技法、色彩などに触れるチャンスです。
また、せっかくプレゼントを作っても使ってもらえないのは少し寂しい……。
贈ったあとも使ってもらえる実用性のある手作りプレゼントを紹介します。
【0歳・1歳~】お手紙ラック
ちりめんなどの和風の布を使って、お手紙ラックを作りましょう。
いつでも目につくところにおけるのが嬉しいポイントです。
【作り方】
①和柄の布を厚紙を包むように布用ボンドで貼ります。ポケットも付けましょう。
②和紙または白い布に足形スタンプしてポケット部分に貼れば子どもの成長も感じられます。
足形スタンプは乾いたらペンで書き足して猫にしても。和紙で装飾して賑やかに。
③ひもをつけて壁に掛けられるようにすれば完成です。
【2歳・3歳~】和の染め物しおり
人の顔なども描けるようになってくる頃。
染め物でどんな模様ができるかも楽しみですね。
【作り方】
①障子紙や和紙を折って、色水へ。
きれいな柄ができるのを楽しみましょう。
乾燥したら、好きな形にカットします。
②しおりより小さく切った色画用紙に、おじいちゃん・おばあちゃんの似顔絵を書いて、染めた紙へ貼ります。
顔を書くのが難しければ、塗り絵や子どもの写真にしてもOK
③ラミネートして、穴あけパンチで穴を開け、毛糸またはリボンを通せば完成です。
ここではクリアファイルに入れて、周囲にはマスキングテープを貼りました。
【4歳・5歳~】ちぎり絵のペン立て
少し時間のかかる製作にもチャレンジしてみましょう。
完成をイメージして貼ることで想像力を、細かい張り付ける作業で集中力を育むことが期待できます。
【作り方】
①折り紙をグシャグシャに丸め、ちぎっていきます。
②逆さにした紙コップにちぎった紙を貼っていきます。
ここでは「柴犬」をイメージしました。
③底を厚紙でふさぎます。
④モールにメッセージカードをつけて、ペン立てに立てて渡してもかわいいです。
【交流会プログラム】懐かしの遊びも! 世代を超えてふれ合おう
交流会があるなら、ぜひ実践したいのが懐かしさを感じる音楽や遊びです。
「お年寄りにとっては懐かしく、子ども達にとっては新しい」。
そんな楽しいひとときを過ごせるプログラムを紹介します。
おじいちゃん・おばあちゃんと歌いたい歌5選
子ども達から歌のプレゼントをしたり、一緒に合唱を楽しみましょう。
模造紙に歌詞を書いて見せたり歌詞カードを配っておくと、初めての音楽でも一緒に楽しめることができます。
流行している歌や子どもの大好きな歌であれば、お年寄りにとっては新しい刺激に。
反対にお年寄りになじみのある曲を選べば、子ども達はいつもと違う音楽に興味をもってもらえるかもしれません。
ここでは様々な切り口で敬老の日におすすめの歌を紹介します。
①敬老の日にピッタリ『ずっとずっとずっと』
敬老の日にピッタリの歌詞です。
「おじいちゃんやおばあちゃんとの楽しい時間を思い出しながら歌おう」などと言葉かけをすると、曲の理解もふかまるかもしれませんね。
歌詞やメロディーのくり返しが多く、初めて耳にする場合でも一緒に歌いやすいのがオススメのポイントです。
視聴・楽譜の購入はこちらからできます。
②手話にもチャレンジ⁉ 『きっとありがとう』
「敬老の日」の発祥の地はどこか知っていますか?
答えは兵庫県・多可町(たかちょう)でした。
多可町では古くから敬老会を町で開いたり、「敬老の日」制定にむけて働きかけたと言われています。
2013年には公募で敬老の日のテーマソングとも言える『きっとありがとう』を制作。
合唱のアレンジをしたり手話verも展開されたりと、全国的にもこの歌が広まりました。
園でも振り付け代わりに手話を取り入れてみてはいかがですか?
●多可町が公式で『きっとありがとう』を動画で紹介しています。
③世代にマッチ! 『およげたいやきくん』
子ども達は初めて耳にするかもしれませんが、60代のおじいちゃん・おばあちゃんにとってはちょうど青春時代の流行歌です。
1975年の大ヒットソングなので、おじいちゃん・おばあちゃんの年齢に幅があっても耳なじみがあるはずです。
ストーリー性がある歌なので、パネルシアターなどにして音楽とお話を楽しんでもらうのもよいでしょう。
④童謡で秋を感じよう『とんぼのめがね』
秋めいてくる9月。
おじいちゃん・おばあちゃん世代が子どもの頃からなじみがある季節の童謡を子どもと一緒に歌って、日本の伝統の風景を受け継いでいきたいですね。
『とんぼのめがね』はメガネを手で作ったりと手遊びをしながら楽しむこともできます。
♪『赤とんぼ』
♪『虫の声』
♪『ちいさい秋見つけた』
♪『紅葉(もみじ)』
♪『うさぎ』
⑤わらべ歌でふれあい! 『あぶくたった』
『あぶくたった』は『かごめかごめ』のような歌付きの伝統の遊びです。
保育の学校で習ったという方もいるのではないでしょうか。
オ二とそれ以外の集団に分かれ、前半は歌いながら、後半はかけあいをします。
交流会で行う場合は、まず先生たちがやって見せ、その後に子どもとお年寄りがチャレンジするとよいですね。
以下は歌詞と遊び方です。
(オニは真ん中で目をつぶって座ります
オニ以外はまるで大きなお鍋を囲むように、手をつないでオニを囲います)
(オニ以外は歌いながら、オニを中心にして回ります)
♪~
あぶくたった 煮えたった
煮えたかどうだか 食べてみよ
ムシャ ムシャ ムシャ
まだ煮えない
あぶくたった 煮えたった
煮えたかどうだか 食べてみよ
ムシャ ムシャ ムシャ
もう煮えた
<場面転換:セリフのかけあい>
(オニとオニ以外で分かれます)
(オニは集団の近くに行ってノックするふりをする)
オニ:トン トン トン
みんな:なんの音?
オニ:風の音
みんな:あーよかった
オニ:トン トン トン
みんな:なんの音?
オニ:おばけの音!
みんな:キャー!
(オニはみんなを追いかける)
たくさん実演動画もあるので、参考にしてみてください。
歌詞・遊び方は地域や人によってバリエーションがあるようです。
「もう煮えた?」と聞く回数や「なんの音?」の返答は色々アレンジして楽しんでみてくださいね。
♪『ずいずいずっころばし』
♪『おせんべい焼けたかな』
♪『とおりゃんせ』……など
「伝承遊び」に+αでみんなで大盛り上がり
敬老の日だからこそ楽しみたい「伝承遊び」。
お年寄りから教わりながら、子ども達にとっては「新しい」遊びとの出会いになるでしょう。
さらに「伝承遊び」にちょっとした工夫をプラスして、ゲーム要素を高くしたアレンジも紹介します。
「お手玉」×キャッチゲーム
みなさんの園にはお手玉はありますか?
お手玉の色とりどりの模様やお米・小豆といった中身の感触が楽しいですね。
みんなで歌にあわせて投げてみたり、お手玉が得意な方に披露してもらってもよいでしょう。
うまくできない子どももいるかもしれませんが、その場合はコツをお年寄りから聞いてみるよう先生が促してみてください。
《アレンジ例》
お年寄りと子どもがペアになって行うゲームです。
ペットボトルの飲み口側を切り取り、切り口はテープなどで保護した道具を用意します。
子どもはその道具を持ってスタンバイし、お年寄りがお手玉をやさしく投げて道具でキャッチします。
「けん玉」×簡単工作
けん玉は集中力や想像する力、体のバランス感覚を養える遊びです。
木のけん玉を使う場合は、玉が周囲に当たらないように十分なスペースをとるようにしてください。
《簡単けん玉の作り方》
まずは紙コップに色紙やシールを貼ったり絵を描いたりして装飾します。
紙コップを二つつなげ、玉(ビニール袋に和紙を詰めたもの)を毛糸で繋げましょう。
「福笑い」×似顔絵
「福笑い」を楽しむのはお正月だけではもったいない!
子ども達にもなじみのある福笑いを敬老の日に行い、いっぱい笑って元気になりましょう。
特大サイズにして、みんなで声を掛け合いながらやるともっと盛り上がります。
《似顔絵福笑い》
①輪郭のみが描かれた土台を用意しましょう。
クリアファイルに入れたりラミネート加工をしておくと便利です。
②子ども達におじいちゃん・おばあちゃんの似顔絵を描いてもらい、パーツごとに切り離します。
③各パーツの裏面にマスキングテープなどを貼って福笑いとして遊びましょう。
編集者より
子ども達だけでなく私たちもお年寄りから学ぶことは多いですよね。
敬老の日のイベントを大々的に行わない園でも、この機会に懐かしの音楽や遊びに親しんでみてはいかがでしょうか?
参考文献・サイト
- 厚生労働省「保育所保育指針」(2019/08/06)
- 老人福祉法(◆昭和38年07月11日法律第133号)(2019/08/06)
- ほいくらいふ – 明日の保育がもっと楽しくなるサイト「敬老の日にオススメの人気の子どもの歌ベスト6 ~世界に1つのサプライズプレゼント~」(2019/08/06)
- 敬老の日発祥のまち多可町「敬老の歌」(2019/08/06)
- 公益社団法人日本けん玉協会「けん玉協会について」(2019/08/06)
- 桧垣淳子,2016,「保育現場における伝承遊び-保育者の視点より-」『中村学園大学・中村学園大学短期大学部 研究紀要』(48):43-50
- 高橋詠美子・中島祐子・金田英恵・菊地君江・小菅恭子・部井友紀子(2008)『年齢別 行事ことばかけハンドブック』世界文化社
- 『あそびと環境0.1.2歳 2013年9月号』学研
- 『Piccolo 2013年9月号』学研
- 北向邦子・宮地明子ほか(2017)「敬老の日」『必ず役立つ! 保育の年中行事まるごとアイデア』ナツメ社
- 三好春樹 監修, 土居新幸 編著,2017,『完全図解 遊びリテーション大全集』講談社
- 『PriPri 2018年9月号』世界文化社