プール開きにお泊まり保育、夏祭り……。
どれも保育園ではおなじみの、楽しい夏の園内行事です。
しかし今年は新型コロナウイルスの流行により、どこの園でも思うようにイベントが開催できていないのではないでしょうか?
感染リスクを考えると、たくさんの人が集まる行事はどうしても自粛せざるを得ません。
日頃の保育でも、毎日「誰も感染しませんように」と祈るような気持ちで働いている保育士さんも多いでしょう。
そのような情勢のさなかに、園内行事の夏祭りをオンラインでやってみよう! と挑戦した保育園があります。
東京都板橋区ときわ台にある「ぼくのひみつきち」です。
今回、保育のお仕事レポート編集部はオンライン園内行事「ぼくの夏祭り」に参加。
オンラインイベントの様子や、イベントにかける保育士さんたちの想いを取材してきました!
「ぼくのひみつきち」って?
「ぼくのひみつきち」は、有限会社mode-Duoが運営する企業主導型保育園。
東京都板橋区常盤台に園舎を構える、0~2歳児向けの小規模園です。
モンテッソーリ教育を教育方針の基本として、保育士さんと子どもたちの間に生まれる愛着関係を最重要視した保育を実践しています。
またITツールを活用して保育士さんの業務効率化を図ったり、教育コンテンツを拡充したり……既存のスタイルにとらわれない、「新しい保育園の形」を模索している園です。
そんな「ぼくのひみつきち」が、コロナ禍の中で始めたのがオンライン保育。
4月~5月は感染予防のために休園の措置をとっていましたが、再開後、開園しての保育と並行する形で挑戦することとなりました。
どうやってオンライン保育を始めたの?
元々、一般向けに保育のサポートができるようなオンラインサロンが開きたかったという園長の町屋亮子(まちや りょうこ)先生。
コロナ禍でその需要が高まっているのを感じる中で、「何かできないか?」と思案した結果だったと言います。
そこから各家庭に制作キットを郵送して、オンラインでも工作あそびができるように手配。
オンライン保育を始めるきっかけは園長先生でしたが、実際にパソコン越しに保育を行うにあたり、保育士さんが主体となって「何をやるか」「どう指導するか」を試行錯誤しました。
オンライン園内行事「ぼくのなつまつり」
新型コロナウイルスの感染予防のため、あらゆる行事を自粛せざるを得なくなった昨今。
収束のめどが立たない中、町屋先生は子どもの経験の機会が失われていくことに危機感を覚えていました。
こういった想いから開催が決定した夏祭りは、さる2020年8月8日(土)、オンライン通話ツール「Remo」を用いて行われました。
Remo社が提供する、オンラインカンファレンスを行うツール。
ブラウザ上に大きなカンファレンス会場をつくることができ、参加者はテーブルを移動することでそれぞれの会話に入れます。
会話できるのは同じテーブルにいる参加者のみ。別のテーブルの人の音声は聞こえません。
今回のイベントではこのテーブルを「お店」に見立て、保育士さんが進行役となってワークショップやゲームを行いました。
さっそく、夏祭りにお邪魔します!
開催された「ぼくの夏祭り」は午前・午後の2部構成。
それぞれどのような様子だったのか、くわしくレポートしてまいります。
午前の部
午前の部は在園児(卒園した兄弟・姉妹も参加可)が対象。
20名前後の参加が見受けられました。
- 開場
- 受付、園長先生のごあいさつ
- 年齢別のミニゲーム
- 5つのブースで制作あそび
- 全員でダンス
園長先生の開会のあいさつが終わると、1歳児を対象とした「おせんべいぱくぱくゲーム」が早速始まりました。
赤ちゃんせんべいを誰が一番早く食べ終われるか競争です。
続いて2歳児以上の「ストロー大会」。
不思議な形をしたストローを使ってぶどうジュースを飲みます。誰が一番早いかな?
全体での催し物がひと段落すると、お店に見立てた5つのブースで制作あそびが始まります。
遊びに必要なキットは事前に郵送で配布されているので、ご家庭であらかじめ用意しなくても大丈夫。
各テーブルに移動すれば、すぐに工作を楽しめます。
最後はみんなでダンス!
普段から園で踊っている「バナナのおやこ」の振付を先生が見せてくれます。お子さん方も画面の向こうで元気に踊っていたことでしょう。
ダンスが終わったら、それぞれ途中の制作の部屋に戻ります。
5つの制作を終えてスタンプラリーを埋めたお子さんには、最後に園長先生からおやつのプレゼント。
これも事前に配布する形で、保護者の方にとっておいてもらったようです。
午後の部(一般向け)
午後の部は、公募で集まった一般のご家庭の子どもたちが対象です。
園長先生によれば、当初は在園児のみのイベントにする予定だったそう。
しかし「今のコロナ情勢の中で、少しでも楽しいことを共有できれば」といった思いから、一般の応募も受け付けることになったといいます。
東京・関東圏のみならず、愛知・山口・熊本など全国各地から参加者が集まっていたのが印象的でした。
- 開場
- 受付、園長先生のごあいさつ
- 5つのブースで制作あそび
- 全員でダンス
午前の部で行われたミニゲームをなくして、その分の時間を子どもたちの自己紹介や制作あそび、ご家庭同士の交流にあてていたようです。
撮影はできませんでしたが、パパ・ママ揃って子どもと工作を楽しんでいるご様子でした。
保護者の方から「最近は(子どもも)お友だちに会えないので、こういう機会があってとっても楽しんでいるようです。ありがとうございます!!」とコメントが寄せられるシーンも。
住む場所もまったく違う、本来ならば出会う機会のなかったご家庭同士が、オンライン上で顔を合わせて一緒に制作あそびを楽しむ……。
オンラインイベントだからこそ生まれた、素敵な瞬間がそこにありました。
イベント直後の園長先生&保育士さんにインタビュー!
歴史の古い認可園を筆頭に、「オンライン」「デジタル」に苦手意識を持っている保育業界。
この状況下でも、感染リスクを承知の上で、できる限りの対策をして開園している……という保育園も少なくありません。
その中で初めてのオンライン園内行事に取り組んだ「ぼくのひみつきち」。
今回はイベントをやり遂げられた直後の先生方に、お話を伺うことができました。
――「ぼくのなつまつり」を終えてみて、どのような感想をお持ちですか。
日向先生:初めてのオンライン行事ということで、うまくできるか不安でしたが、とても楽しかったです! 参加してくれた子どもたちや保護者の方の表情を見ても楽しそうだったので、自信がつきました。また何かやりたいなと思います。
町屋園長:午後の部は一般向けということもあり、初対面のご家庭ばかりで少し気を遣いましたね。子どもによって作業の進み具合が違う中で、「○○ちゃんは次にこれをやってね」と呼びかけにくい場面もあったと思います。
名札をつけていただくようにはしていましたが、画面越しだと見えにくかったので……この改善点はまた次回に活かしたいです。
――イベント実施にあたって、どのような点を意識していましたか?
町屋園長:通常のオンライン保育を行う際と同じように、どれだけ子どもを引き付けられるか、どんな風にやったら子どもが見て遊んでくれるかを意識していました。でも、具体的にどのような遊びをするかは、保育士の先生方が主体的に考えてくれましたね。
日向先生:園ではなく各ご家庭で取り組んでもらうので、特別な道具などが必要ない、簡単に作れて遊べるものを作ろうと今回の「お店」を用意しました。工作指導もやりやすかったですし、保護者の方も子どもたちを手伝ってくれてよかったなあと思います。
――今日のイベントを踏まえて、これからどのようなことがしたいですか?
日向先生:オンライン保育やオンライン行事をやってみて、「一般の方々を集めて保育の話をしたり、一緒に制作したりするのも楽しいんだ」って初めて知りました。今日をきっかけに、これから色々な方と交流する場所を開けたらいいなと思います。このご時世で実際に会えない人も多いので……県を跨いで、輪を広げていきたいです。
町屋園長:今このコロナの中で、育児の不安を誰にも相談できずに苦しんでいる人がいます。その中で私たちにできるのは、子どもたちはもちろんご家族も楽しめる、温かい保育園を提供すること。今の時代に合わせて、新しい保育にチャレンジしていきたいと思います。
編集者より
保育業界では珍しいオンライン保育に取り組み、園内行事もオンラインでできないかと挑戦した「ぼくのひみつきち」。
イベント会場では子どもたちが楽しそうに工作遊びをしているかたわらで、同じ「お店」に入った保護者の方同士が交流する様子も見られました。
コロナウイルスの流行により、わたしたちの生活様式は一変してしまいました。
できるだけ人の集まりを避け、外出時にはマスク必須。保育園が開園していても、ママ友・パパ友で談笑することも難しい状況です。
その中で今回のオンラインイベントは、子どもたちの思い出作りにはもちろん、保護者の方の息抜きにもなる素敵なイベントだったのではないでしょうか。
まだまだIT化へのハードルが高い保育業界ですが、この機会だからこそ、新しいものも臆さず取り入れていく姿勢が必要なのかもしれませんね。
「ぼくのひみつきち」のホームページはこちら!