保育士の平均年収はいくら？地域・年齢別の平均月収やパートの給与、給料アップの方法

「年収が低い」「なかなか給料が上がらない」など、保育士は他の職業と比べて収入が少ないというイメージを持たれがちです。また、同じ保育士でも地域や年齢、勤続年数などにより年収額に差が出ます。では、実際に保育士の年収はどのくらいなのでしょうか。

この記事では、保育士の年収や給料を各項目別に徹底解説します。給料を上げるための方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

【この記事でわかること】

保育士の平均年収は、地域、年齢、経験年数などで差がある。
全体的に給与水準は平均より低いが、処遇改善の動きがある。
キャリアアップや転職など、年収を上げる方法がある。

1 保育士の平均年収はいくら？
2 保育士の平均月収相場
- 2.1 パートの平均給与はどれくらい？
3 保育士の給料が安いのはなぜ？
4 保育士の年収は今後上がる？
5 保育士の年収アップの方法
6 保育士の平均年収以上の給料アップを目指そう
7 監修者情報

保育士の平均年収はいくら？

厚生労働省が公表した「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均年収は396万9,000円です（※）。手取り計算は年収の75～85%といわれているため、手取り額は約297万～337万円となります。

国税庁の調査によると、2023年の給与所得者全体の平均給与は男女計で460万円と発表されているため、保育士の給与は全体平均よりも低水準であることがわかります。ただし、保育士の年収や給与は、地域や年齢、経験年数、施設形態などによって金額が変動する点に注意が必要です。

ここからは、4つのカテゴリに分けて、保育士の平均年収を見ていきましょう。

※参考：厚生労働省.「令和５年賃金構造基本統計調査　結果の概況」.https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/index.html ,（参照 2025-03-19）.

【地域別】保育士の平均年収

保育士の年収は地域により格差があるのが特徴です。以下に、2025年3月時点での保育士の平均年収額の上位10位までをまとめました（※）。

都道府県	平均年収
東京都	453万5,000円
京都府	452万8,000円
広島県	452万8,000円
和歌山県	449万9,000円
大阪府	428万円
神奈川県	416万7,000円
群馬県	415万1,000円
兵庫県	410万6,000円
静岡県	397万3,000円
愛知県	395万1,000円

※参考：厚生労働省.「職業情報サイトjobtag」.https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/131 ,（参照 2025-03-19）

上記の表から分かるように、平均年収が最も高かったのは東京都で453万5,000円でした。保育士の給与は都市部の方が高い傾向にありますが、最低賃金や自治体の予算、保育園の需要、人口密集率などが年収に影響しています。

また、最も平均年収が低かったのは山形県の310万3,000円で、トップの東京都と140万円以上の差が生じているのが現状です。地域間の給料格差も、今後の課題といえるでしょう。

【年齢別】保育士の平均年収

次に、年齢別に保育士の平均年収を見ていきましょう。20歳から59歳までの平均年収は以下の通りです（※）。

年齢	月給	平均年収
20～24歳	23万900円	313万6,800円
25～29歳	26万800円	373万4,700円
30～34歳	26万4,300円	379万1,500円
35～39歳	27万7,800円	402万8,200円
40～44歳	28万6,200円	416万3,900円
45～49歳	28万4,700円	415万7,800円
50～54歳	28万7,000円	413万400円
55～59歳	31万1,000円	453万5,700円

※平均年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出

※参考：厚生労働省.「令和5年賃金構造基本統計調査」.https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&query=%E4%BF%9D%E8%82%B2%E5%A3%AB&layout=dataset&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001213360&tclass2=000001215880&tclass3=000001215884&stat_infid=000040163745&tclass4val=0&metadata=1&data=1 ,（参照 2025-03-19）

年齢別のデータを見ると、20～24歳の月給が23万900円と最も低く、40～44歳にかけて増え続けていることが分かります。40～44歳と20～24歳とでは、その差が100万円近く開いています。

これは、経験年数が増えるにつれて役職に就くケースも多くなり、役職手当や賞与の増額などが給与に影響していると考えられます。

【経験年数別】保育士の平均年収

保育士の平均年収は、経験年数によって最大で280万円以上の差が生じます。2023年の「賃金構造基本統計調査」の結果を元に、経験年数別の平均年収をまとめました（※）。

経験年数	月給	平均年収
1年未満	23万600円	282万700円
1年～4年	24万4,200円	357万5,500円
5年～9年	29万100円	428万8,900円
10年～14年	34万9,200円	512万4,300円
15年以上	36万5,800円	566万400円

※平均年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出

上記の結果を見ると、1年未満の平均年収は1～4年目と比較して約75万円低いことがわかります。これは賞与の額が関係しており、1年目は賞与が5万円前後と低いのに対し、経験年数を積むにつれて賞与が増額することが一因です。

加えて、年齢別の結果と同様に、10年以上勤務していると主任や副園長などの役職に就く方も多く、役職手当などが年収にプラスされることも年収が高くなる理由として考えられます。

【施設別】保育士の平均年収

保育施設の形態によっても、年収額は異なります。こども家庭庁による「令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」の結果を元に、役職に就いていない常勤保育士の平均年収を見てみましょう（※）。

施設形態	平均年収
私立保育所	417万7,428円
公立保育所	438万6,504円
私立認定こども園	398万1,348円
公立認定こども園	415万6,412円

※参考：こども家庭庁.「令和6年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」.https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/443197f1-8796-458c-b5c8-27bb782a77d5/a24882bd/20241218_councils_shingikai_kodomo_kosodate_443197f1_18.pdf ,（参照 2025-03-19）

上記のデータから、保育所とこども園のいずれも私立より公立の方が、平均年収が17万5,000円～21万円程度高いことがわかります。ただし、上記はあくまで平均値であり、施設ごとに給与月額や賞与額は異なるため、勤務先の給与体系をしっかり確認しておきましょう。

保育士の平均月収相場

これまで保育士の平均年収を見てきましたが、保育士の平均月収の相場はいくらくらいなのでしょうか。

こども家庭庁の同調査によると、一人当たりの平均給与月額（賞与込み）は、保育所の保育士が34万8,000円、認定こども園の保育教諭は33万2,000円です。また、幼稚園（新制度）の教諭は33万5,000円なので、どの保育施設でも大きな差はありませんでした。

なお、上記の平均給与月額は前年度に比べて5万円程度増額しており、今後も月給や年収の増額が期待されています。

パートの平均給与はどれくらい？

保育士は常勤だけでなく、パート職員も多く活躍しています。2023年の保育士のパート職員の労働実態は以下の通りです（※）。

時給	所定内実労働時間	実労働日数	平均年収
1,317円	5.5時間	16日	148万1,752円

ただし、パートやアルバイトなどの非常勤職員は、配偶者の扶養や地域ごとに設定された最低賃金、施設形態などにより、給料に差が出る点に留意しましょう。

※参考：e-Stat 政府統計の総合窓口.「賃金構造基本統計調査」.https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0004008680 ,（参照 2025-03-19）.

保育士の給料が安いのはなぜ？

保育士の年収や月給の平均額を見てみると、やはり他の職業に比べて給料が安いと不満を抱く方も多いでしょう。保育士不足が叫ばれるほど需要があるはずなのに、給料が低水準なのはなぜなのでしょうか。

ここからは、保育士の給料が安いといわれる3つの理由について解説します。

公定価格の変動が少ない

公立保育園の場合は、各自治体により多少の差はあれど、「給料表」に基づいて給料が支給されます。給料表は自治体の条例により定められているため、比較的安定しているのが特徴です。

対して私立保育園は、国から支給される委託費（公定価格）や自治体からの補助金、保育料が主な収入源となっています。これらから運営費を差し引いたものから人件費、つまり保育士の給与が支払われる仕組みです。

しかし、国から委託費として支払われる公定価格は変動が少なく、地域や園児数などにより一定の基準が定められています。園側の希望に沿った金額が支給されるわけではないため、運営費が確保できない園は、給料が低くなる傾向にあります。

人件費などの財源確保が難しい

保育施設には配置基準が定められています（※）。配置基準とは、保育士1人が受け持つことのできる子どもの人数のことで、1人当たり0歳児が3人、1〜2歳児で6人、3歳児20人、4〜5歳児は30人です。

しかし2024年度から、保育の質向上のため4〜5歳児の配置基準が保育士1人当たり30人から25人に見直されました。園には常に配置基準を満たす保育士が在籍していなくてはならないため、人件費がかかります。こうした財源確保が難しく、なかなか保育士の給料を上げられないのが現状です。

※参考：e-Gov法令検索.「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」.https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100063#Mp-Ch_5-At_33 ,（参照 2025-03-19）.

昇給の機会があまりない

保育士は役職が少なく、就ける人数も限られています。そのため経験年数が長くなってもなかなか昇進できず、昇給の機会に恵まれないことも少なくありません。

しかし、保育士の処遇改善が行われ、新たな役職が3つ新設されました。役職に就くと補助金が支給されるため、給料アップのチャンスが広がります。この処遇改善加算Ⅱの仕組みや、支給額などの詳細は後述します。

保育士の年収は今後上がる？

保育士の給料は、財源確保の難しさや昇給の機会の少なさなどから、大幅なアップは難しいといわれてきました。しかし、政府の処遇改善や各自治体の取り組みにより、保育士の賃上げが期待されています。

保育士の年収アップが期待される理由を、以下で詳しく見ていきましょう。

保育士の月収の年間推移

厚生労働省で毎年行われている「賃金構造基本統計調査」の結果を見ると、保育士の平均月収は右肩上がりで推移しています。2014年に21万6,000円だった平均月収が2023年には27万1,000円まで増額しており、10年で約6万円増えている計算です。

政府は保育士の人手不足を深刻に捉えており、保育士の給料アップのためにさまざまな処遇改善策を進めています。今後もこれらの取り組みは継続される予定なので、さらなる年収アップも期待できるでしょう。保育士の処遇改善については次項で詳しく解説します。

※参考：e-Stat 政府統計の総合窓口.「賃金構造基本統計調査」.https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0004008680 ,（参照 2025-03-19）.

保育士の処遇改善が行われる

保育士の人材確保のために、政府はさまざまな保育士の処遇改善の取り組みを行っています。

特に注目したいのが、2024年11月にこども家庭庁が発表した「保育士の人件費の引き上げ」です。過去10年間の推移を見ても、最大で5.2%の引き上げだった人件費が、2024年度は前年比10.7%と過去最大の引き上げ率となっています（※）。

また、2013年から保育士の給与アップのために始められた「処遇改善等加算」にも新たな動きが見られています。処遇改善等加算は、経験年数やキャリアに応じて施設に加算される補助金です。要件に応じてI〜Ⅲの種類があります。

しかし、それぞれの事務手続きが複雑で負担がかかることから、2025年度より一本化が進められています。申請書類の簡素化や統一化をし、処遇改善をより多くの事業所に活用してもらえるようにするのがねらいです。

※参考：こども家庭庁.「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策の重点事項（こども家庭庁）」.https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/88749a20-e454-4a5b-9da8-3a32e1788a23/e36f0681/20241122_policies_budget_36.pdf ,（参照 2025-03-19）.

自治体ごとに独自の給与補助も

保育士不足改善のために、各自治体も独自の給与補助を実施しています。自治体ごとの処遇改善策として、給与補助の取り組み例を下記にまとめました。

千葉県流山市（※1）
保育士就職支援制度として、正規保育士に月額4万3,000円、非正規雇用の保育士に月額2万円の独自手当を支給。月額最大6万7,000円の家賃補助。

東京都江戸川区（※2）
月額最大5万円を給料に加算。月額8万2,000円を上限とする家賃補助。勤続5年ごとに10万円の報奨金の支給。

大阪府岸和田市（※3）
4年間で最大65万円を支給。

上記以外にも独自の補助金制度を設けている自治体はたくさんあるため、詳細はお住まいの自治体に確認してみましょう。

※1参考：流山市.「保育士就職支援制度」.https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1001107/1001162/1017311.html ,（参照 2025-03-19）.

※2参考：江戸川区.「保育士の仕事と暮らしを力強くサポートします！」.https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e047/kosodate/kosodate/oshigoto/hoikushishien.html ,（参照 2025-03-19）.

※3参考：岸和田市.「岸和田市保育士応援特別給付金、岸和田市保育士就職祝い金、岸和田市保育士キャリアリターン一時金について」.https://www.city.kishiwada.lg.jp/page/35-hoikushi-hojyo.html ,（参照 2025-03-19）.

保育士の年収アップの方法

保育士の給与アップのために国は処遇改善を推進していますが、対象施設ではない場合や、さらなる年収アップを目指す方もいるでしょう。国や自治体の取り組み以外にも、保育士の年収アップのために個人でできる方法がいくつかあります。

以下で、年収アップのためにできることを解説します。

キャリアアップをして役職に就く

2017年より厚生労働省はキャリアアップ研修を創設しました。乳児保育やマネジメントなど8つの研修分野を設け、規定の研修を修了するなどの条件を満たすと役職が与えられるようになります。

この「処遇改善等加算II」では、職務分野別リーダー・専門リーダー・副主任保育士の役職が新設され、役職に就くと月額5,000〜4万円がプラスで支給される仕組みです。経験年数を重ねても昇給の機会がなかった中堅保育士へのチャンスが増える他、保育の質向上にもつながることが期待されています。

公立保育士を目指す

施設別の保育士の年収で触れた通り、公務員である公立保育士は私立に比べると給料が高い傾向にあります。年数が浅いとそこまで大きな違いはありませんが、経験年数を重ねて主任やリーダーなどの役職に就くと、100万円以上差が付くケースも珍しくありません。

長期的に働くことを考え、地方公務員の保育士採用試験を受けるという方法もあります。ただし、公立保育士は採用倍率が高いことや異動の可能性、年齢制限が設けられているケースもあるため注意が必要です。

資格を取得する

保育のスキルアップも兼ねて、資格を取得するのも一つの方法です。保育園の中には、園の方針や子どもの指導のために必要な資格の取得に、手当を出す場合があります。保育士の他に取得しておくと役立つおすすめの資格を、以下にまとめました。

絵本専門士
モンテッソーリ教員
医療保育専門士
運動保育士
こども環境管理士
リトミック指導員
育児セラピスト
チャイルドマインダー
おもちゃコンサルタント
幼児食インストラクター
幼児英語検定

資格の種類としては育児関連や食育、医療、コミュニケーションなど多岐に渡ります。自分の興味のある分野や園が力を入れているものなどの資格があると、キャリアアップにもつながるでしょう。また、こうしたプラスアルファの資格を所持していると、転職や復職の際に有利になるケースもあります。

独立してフリーランスの保育士になる

保育士として働くのに、必ずしもどこかの保育施設に所属しなければならないわけではありません。個人事業主となり、フリーランスの保育士として柔軟なスタイルで働く方法もあります。他にも、人材派遣会社に登録して派遣保育士やベビーシッターとして働くなど、働き方はさまざまです。

独立して働く場合は、給料や労働時間などを自分で交渉や調整する必要があります。自分で仕事を探さなくてはならないため、軌道に乗るまでは安定した収入を得るのが難しい場合もあるかもしれません。

しかし、高単価の仕事を継続的に受けられるようになれば、収入アップが期待できます。全てが自己責任なのでプレッシャーがあるかもしれませんが、仕事量や単価などの自由度が高い点がメリットでしょう。

給料や待遇の良い園へ転職する

今すぐにでも年収をアップしたいという方は、給料や待遇の良い園への転職が一番の近道です。求人情報をチェックし、今よりも給与や福利厚生が充実している園を探してみましょう。求人サイトでは条件を入力して検索できる機能もあるため、自分の希望する職場を絞り込みやすくなります。

求人数が多く、どうやって選べば良いかわからないという方には、保育士の求人を専門に扱った転職支援サービスの利用がおすすめです。好待遇の非公開求人を扱っているところも多く、専門のアドバイザーが求人紹介から入職までを手厚くサポートしてくれます。まずは自分に合った求人サイトや転職サービスがあるか、チェックしてみましょう。

保育士の平均年収以上の給料アップを目指そう

保育士の平均年収は他業種と比べるとまだ低水準ですが、ここ10年間の平均年収は右肩上がりで推移しています。今後も政府の処遇改善等で、さらなる年収アップが期待されていますが、自分でできる改善策としてはキャリアアップや独立などが挙げられます。

もし、現在働いている園の給与や待遇に不満がある場合は、転職も検討してみましょう。転職の際には、求人情報をしっかりチェックし、自分の希望にマッチした保育施設を探すことが重要です。さまざまな求人があり、迷ってしまう場合は転職サービスの利用をおすすめします。

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