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【保育士必見】2026年度開始「こども誰でも通園制度」を詳しく解説! 制度の概要や試験運用の状況、対応のポイント

近年、日本社会では少子化問題が深刻化する中、子育て支援策の充実が国の重要課題となっています。そのような中で注目されているのが「こども誰でも通園制度」です。

こども誰でも通園制度は、経済的状況や家庭環境にかかわらず、全ての子どもが質の高い幼児教育や保育サービスを受けられるようにするための制度です。子どもの健全な発達と親の就労支援を両立させる社会基盤の構築を目指しています。

今回は、こども誰でも通園制度の目的や背景について詳しく見ていきます。現在保育士をしている方や今後転職を考えている方はぜひチェックしてみてください。

【この記事でわかること】

  • こども誰でも通園制度の概要と開始時期
  • 制度創設の目的と背景
  • 一時預かり事業との違い

「こども誰でも通園制度」とは? 開始はいつから?

新たに創設されるこども誰でも通園制度は、月一定時間の利用可能枠内で、就労要件にかかわらず柔軟に利用できる新たな通園制度です。

2025年度に子ども・子育て支援法に基づく地域子ども・子育て支援事業として制度化され、2026年度から全国の自治体で実施される予定です。実施により、地域社会全体で、子育てを支援する体制がさらに強化されることが期待されています。

※参考:こども家庭庁.「こども誰でも通園制度について」.https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/daredemo-tsuen ,(参照 2025-03-14).

制度創設の目的や背景

子育て世代の負担軽減と子どもの健全な発達環境の確保は現在の課題です。現在、就園していない子どもは0〜2歳児の約6割を占め、保育所や認定こども園は、家庭で保育のできない保護者が利用の対象となっています。そのため専業主婦家庭などを含めた就園していない子どもへの支援を強化していく必要があると考えられています。

こども誰でも通園制度は、全ての子どもたちに公平な教育・保育の機会を提供し、社会的な課題を解決することが目的です。

こども誰でも通園制度の意義は、以下の通りです。

  • 在宅育児の子どもが家庭外での経験や地域での対人関係を得られる
  • 専門家から子どもの良さを伝えられることで、保護者が新たな気付きを得る
  • 子どもの成長と親子関係の発展をサポートする

「こども誰でも通園制度」と一時預かり事業との違い

こども誰でも通園制度と一時預かり事業は、利用条件や目的に大きな違いがあります。

一時預かりの場合は保護者の仕事や病気などの具体的な理由が必要とされ、理由が認められない限り、利用することが困難なのが現状です。利用できる施設や時間帯も限られていることが多く、希望通りの日時に預けられないケースも少なくありません。

一方、こども誰でも通園制度では、特別な理由や証明書類を提出する必要がなく、保護者の都合に合わせて柔軟に子どもを預けられます。保護者のリフレッシュや育児負担の軽減につながり、より良い子育て環境を実現することが可能です。

制度の違いを以下の表にまとめました。

こども誰でも通園制度 一時預かり
実施自治体 全ての自治体(園によって保育体制や配置人数は異なる) 一時預かりをしている1269自治体
対象 6カ月~満3歳児未満 ・家庭保育が一時的に困難な子ども
・仕事や親のリフレッシュなどが理由で一時保育が望ましい子ども
利用時間 月10時間程度(検討中) 市区町村によって変動
目的 ・就労していない家庭も支援する
・子ども同士の関わりを増やす
・一時的に家庭での保育が困難な世帯を支援する
・保護者の育児不安の解消を図り、負担を軽減する
利用場所 ・保育園
・認定子ども園
・地域型保育事業所
・幼稚園
・子育て支援センター
保育方法 ・在園児と同じクラスで過ごす
・専用のクラスで過ごす
※園によって保育方法は異なる

「こども誰でも通園制度」の試験的運用の内容

こども誰でも通園制度は2023年度からモデル事業として試験的に運用が開始されました。2025年3月現在もまだ試験運用段階であり、全国展開に向けた準備を進めています。制度の詳細について詳しく説明しましょう。

保育方法

保育方法は大きく分けて3つのパターンがあります。それぞれのパターンには特徴があり、施設の状況や保育のニーズに合わせて選択することが可能です。

一般型(在園児合同)は保育園などの定員に関係なく、在園児と一緒に保育を行います。既存の保育環境を活用し、新たに受け入れる子どもたちと在園児が一緒に活動することで、社会性や協調性を育めます。お互いを思いやる心や助け合いの精神も培われるでしょう。

一般型(専用室独立実施型)は保育園などの定員に関係なく、在園児と別のスペースで保育を行います。専用の保育室を設け、年齢や発達段階に応じたきめ細かな保育を提供することが可能です。子どもたち一人ひとりの特性やペースに合わせた活動を展開しやすく、個別的な配慮や支援を充実させられます。落ち着いた環境で保育を行うことで、子どもたちの集中力や創造性も育みやすいです。

余裕活用型は利用児童が定員に達していない場合、子どもを受け入れて在園児と一緒に保育を行います。定員内での受け入れであり、一般型に比べて職員を確保しやすいです。既存の保育環境や人材を最大限に活用しながら、質の高い保育サービスを提供することが可能です。

保育従事者の人員配置

こども誰でも通園制度の試行的事業における人員配置基準は、基本的には一時預かり事業と同様です。

一時預かり事業では、保育園の配置基準と同じ人数を保育従事者(保育の業務に携わる人の総称)として配置します。そのうち、保育士は2分の1以上(※保育士以外は一定の研修を受けた者を配置)とすることが定められています。

保育従事者の数は基本的に2人以上必要ですが、保育園内に事業を併設していて、保育園の職員の支援を受けられる場合は、配置基準を下回らない範囲で保育士1人とすることが可能です。

試行中のこども誰でも通園制度では、保育士以外の人材も活用し、前述したパターンによって以下の基準に従った人員配置が求められています。

  • 一般型(在園児合同):一般型一時預かり事業に準じた基準(保育士は2分の1以上とする)
  • 一般型(余裕活用型):各保育施設で制定された配置基準

利用方法

利用方法は定期利用と自由利用の2つのパターンがあります。

定期利用は利用する園で月や曜日、時間を固定し、定期的に利用する方法です。この方法であれば、安定したスケジュールで利用できます。子どもの生活リズムが整うと同時に、保育園側も計画的な保育体制を組むことが可能です。

自由利用は利用する園で月や曜日、時間を固定せず、柔軟に利用する方法です。子どもや保護者の都合に合わせて預けられます。急な仕事や予定変更、子どもの体調など、状況に合わせて臨機応変に保育サービスを利用できるのがメリットです。

想定されている利用の流れは以下の通りです。

  1. 市区町村の窓口で、こども誰でも通園制度の利用を申請する
  2. ユーザーIDと認定証が発行されたらシステムにログインし、アレルギー情報など子どもの情報を入力する
  3. システム上で利用施設を検索・選定し、初回面談の申し込みを行う
  4. 施設は申し込みの連絡を受けて、面談日の日程調整を行う
  5. 面談終了後、施設の利用が可能となる
  6. 登録した施設の空き状況を確認しながら予約を行う
  7. メールおよびシステム内の通知機能で決定の連絡が届く
  8. 予約日に施設を利用できる

※参照:こども家庭庁「③資料2-1_子ども誰でも通園制度の実施に関する手引(素案)」.https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/cd3e0064-0ab4-4bde-93db-b74ba24c7cf9/fa93df27/20241226-councils-newkyuufudaredemotsuuen-cd3e0064-04.pdf ,(参照 2025-03-14).

「こども誰でも通園制度」の試験的運用を利用した利用者の声

こども家庭庁が実施したこども誰でも通園制度を利用したアンケート調査結果を参照し、保護者から寄せられた具体的な意見や感想を一部紹介します。

まずは保護者が利用して良かったと思ったことについて「用事を済ませることができた」(75.4%)が最も多く挙げられており、日常的な買い物や手続きなどを行う時間的余裕が生まれたことを示しています。

次に多かったのは「自分の時間が持てた」(64.7%)という回答や「園の先生から子どもの様子を聞くことで、新たな気付きを得られた」(59.9%)、「育児への負担感が減った」(53.3%)という感想です。

また利用したことにより、子どもへの良い変化があった点については「子どもが新しいことに取り組む機会が増えた」(56.3%)と答える保護者が多かったです。

※参照:こども家庭庁.「保育所の空き定員等を活用した未就園児の定期的な預かりモデル事業 具体的な実施状況参考資料1」.https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0bce7a5a-1447-4ca5-af04-d3c5616eff9e/a8a4ed4f/20231225_councils_daredemotsuuen_38XFPZ8w_01_0.pdf ,(参照2025‐03-14).

「こども誰でも通園制度」試験的運用に関わった保育士の声

こども家庭庁で行われたアンケートを基に、こども誰でも通園制度の運用に関わった保育士の意見を一部紹介します。

アンケートの結果、事業のやりがいについては「ふだん保育を利用している家庭以外にも、地域の子育て支援に関わることができる」(63.9%)「預かりモデル事業を利用するこどもたちの成長・発達を感じることができる」(62.9%)といった肯定的な意見が多数を占めていました。

利用する子どもの育ちにとってどのような意義があると感じるかに関しては、8割以上の保育従事者が「同年齢・異年齢の子ども同士で関わり合う機会を得ることができる」(86.6%)と回答しています。

※参考:こども家庭庁.「保育所の空き定員等を活用した未就園児の定期的な預かりモデル事業 具体的な実施状況参考資料1」.https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0bce7a5a-1447-4ca5-af04-d3c5616eff9e/a8a4ed4f/20231225_councils_daredemotsuuen_38XFPZ8w_01_0.pdf ,(参照2025-03-14).

「こども誰でも通園制度」で懸念される課題

こども誰でも通園制度で、保育従事者から課題に挙がっている意見を一部紹介します。

アンケートによると半数以上の保育従事者が「普段の保育に加え、預かりモデル事業の子どもの対応にかける時間・労力が増えた」(60.8%)「事務仕事が増えた」(51.5%)と回答しています。事業の実施に伴う業務量の増加が保育従事者の働き方に大きな影響を与えているといえるでしょう。

また事業の課題については、「通常保育に比べて、子どもが環境に慣れることが難しい」(53.6%)が最も多く挙げられています。不定期または短時間の利用が多いため、安心して過ごせる環境作りに特別な配慮や工夫が必要であることが課題となっています。

※参考:こども家庭庁.「保育所の空き定員等を活用した未就園児の定期的な預かりモデル事業 具体的な実施状況参考資料1」.https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0bce7a5a-1447-4ca5-af04-d3c5616eff9e/a8a4ed4f/20231225_councils_daredemotsuuen_38XFPZ8w_01_0.pdf ,(参照2025-03-14).

課題への対応策

これらの課題に対して、現場の保育士からは以下のような対応策が提案されています。

  1. 業務負担の軽減策:事務作業の簡素化や専用のシステム導入、事務専任スタッフの配置などを行う
  2. 子どもの環境適応支援:初回利用時の丁寧なオリエンテーションを行う、同じ保育士が継続して担当する仕組みを構築する
  3. パート保育士等の活用:一定の時間帯に限定して追加の保育士を配置し、正規職員の負担軽減を図る

多くの施設では工夫を重ねながら運用していますが、国や自治体レベルでの制度設計の改善も望まれています。

「こども誰でも通園制度」の本格稼働を見据えて処遇改善も

こども家庭庁は、2024年度から保育士や幼稚園教諭などの人件費を10.7%引き上げる方針を発表しました。この引き上げは、基本給や手当、賞与を含む給与総額を対象にしており、保育士一人ひとりの実質的な収入増加を目指すものです。。

方針が実現すると保育士や幼稚園教諭、認定子ども園で働く正社員の給料基準が上がり、収入アップと生活の安定が期待できます。処遇改善はこども誰でも通園制度の導入による業務負担増加への重要な対策としても位置づけられます。

ただし注意点として、給与は園児数や保育士の配置基準、施設の運営状況などで決まり、施設や地域によって増額幅は異なります。

それでも、今回の給料アップは保育従事者の待遇改善が本格的に進む大きな一歩です。保育の質を高め、人材を確保するためにも意味のある政策変更といえるでしょう。

※参考:こども家庭庁.「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策の重点事項(こども家庭庁)」.https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/88749a20-e454-4a5b-9da8-3a32e1788a23/e36f0681/20241122_policies_budget_36.pdf  ,(参照 2025-03-14).

「こども誰でも通園制度」の対象施設は? 実際に対応する際に大切なこと

こども誰でも通園制度の対象施設は現時点では未定となっています。全ての保育園で一律に実施されるわけではなく、一定の条件や基準を満たした施設が対象となる予定です。

事業を実施する主な場所として想定されているのは、以下の施設です。

  • 保育所
  • 認定子ども園
  • 小規模保育事業所
  • 家庭的保育事業所
  • 幼稚園
  • 地域子育て支援拠点事業所
  • 企業主導型保育事業所
  • 認可外保育施設
  • 児童発達支援センター

ただし必要な基準を満たしていれば、上記の他にもさまざまな施設が対象となる可能性があります。

園が制度の対象施設として認定された場合に、適切な対応をするために大切なポイントは、職員同士の密な連携や円滑なコミュニケーションを常に意識し、情報共有を徹底することです。

こども誰でも通園制度では、多くの子どもたちと短時間の関わりを繰り返す特性があるため、通常の保育業務とは異なります。特性を十分に理解し、子どもたち一人ひとりに適切な関わりができるよう、効果的な保育計画の立案と実行が求められます。

制度導入に向けた準備のポイント

施設が制度の対象となった場合に備えて、以下のような準備を進めておくことをおすすめします。

  1. マニュアルの整備:受け入れから見送りまでの流れや緊急時対応などを明記したマニュアルを作成し、施設全員で共有・確認する
  2. 職員研修の実施:未就園児の特性や子どもとの短時間での信頼関係構築スキルなどについて学ぶ
  3. 保護者対応の準備:簡潔で効果的な連絡方法や情報共有の仕組みを考える
  4. これらの準備を事前に進めておくことで、制度導入後のスムーズな対応が可能になるでしょう。

よくある質問

Q1: こども誰でも通園制度は既存の保育業務とどのように両立すればよいですか?

A:既存の保育業務との両立には、以下のような工夫が効果的です。

  • 既存の保育プログラムとの融合を図り、無理なく一体的に運営できるよう計画する
  • 保育士の配置を工夫し、特定の時間帯に人員を増やすなどの対応を検討する
  • 業務の効率化を図り、書類作成などの事務作業を簡素化する
  • パート職員の活用など、柔軟な人員体制を構築する

Q2: 勤務先が対象施設になるかどうかは誰に確認すればよいですか?

A:勤務先が対象施設になるかどうかは、まずは施設長や園長に確認することをおすすめします。また、各自治体のこども部門や保育担当課にも問い合わせることができます。2026年度に向けて各自治体で実施に関する計画が進められるため、情報が出次第、職員への共有が行われるでしょう。

Q3: 制度導入によって保育士の処遇は具体的にどう変わりますか?

A:2024年度の処遇改善により、基本給や手当を含めた給与総額が10.7%引き上げられる方針です。ただし、実際の増額額は施設や地域によって異なります。またこども誰でも通園制度の導入に伴う業務負担増加については、人員配置の工夫や業務効率化などの対応策も併せて検討されています。自治体や園によっては、制度導入に伴う特別手当などが設定される可能性もあります。

まとめ

こども誰でも通園制度は保育士の負担が増える制度というデメリットばかりではありません。実際には、子育て支援の充実や保育の質の向上など、多くのメリットも存在します。

長期的に見れば、子育てを取り巻く環境が充実することが期待され、社会全体の子育て環境の改善につながる可能性を秘めています。また、処遇改善も同時に行われることで、保育士にとっても働きがいのある制度となることが期待されます。新制度の導入は保育現場において新たなキャリアの可能性も広げます。特に、地域の子育て支援に関わる経験は、保育士としての専門性を高め、キャリアアップにつながるでしょう。

子どもたちの笑顔あふれる未来のために、社会全体で支える姿勢が今、求められているのです。

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監修者情報

礒部はるか

保育士資格・幼稚園教諭一種免許状を保有。大学卒業後、学童・児童館にて保育士として従事。その後、保育園にて乳幼児クラスを担当。現在は複数の保育メディアにてライター・編集者・監修者として活動。

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