子どもを保育園に預けたい気持ちはあるけれど、「私は専業主婦だから、入園はやっぱり難しいのかな?」と不安に思っている方もいらっしゃるかもしれません。これからお仕事復帰を考えていても、保育園に預けられなかったらどうしよう……と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
確かに、専業主婦が保育園を利用するのは難しいという話を聞いたことがあるかもしれませんが、実は保育園の利用条件は、保護者の就労状況だけではありません。他の条件を満たせば、専業主婦の方でも保育園を利用できるケースがあります。
この記事では、専業主婦の方が保育園を利用するために知っておきたい基本的な条件と、もし保育園以外の方法も検討したい場合に役立つ子育て支援サービスについて、詳しく解説していきます。記事の内容を参考に、ご自身に合った保育園の利用方法を見つけてください。
【この記事で分かること】
- 専業主婦は保育園を利用できるのか
- 専業主婦が認可保育園を利用できるケース
- 認可保育園以外の選択肢
もくじ
専業主婦は保育園を利用できない?

「専業主婦だと保育園の利用はやっぱり難しいのかな……」と諦めかけている方もいるかもしれません。保育園は「親が働いている、病気の状態にあるなどの理由により家庭において十分に子どもを保育できない場合」に家庭の代わりに保育を提供する児童福祉施設です。そのため、家庭で育児に専念できる専業主婦の場合は、利用条件に該当しないケースが多いとされています(※1)。
認可保育園は、保育の必要性を点数化した指数システムが採用されており、入園希望者が定員を上回る場合、この指数と優先順位に基づいて入園の可否が決定されます。各世帯の状況を総合的に評価し、保育の必要性が高いと判断された世帯から順に内定が出される仕組みです(※2)。
保護者の就労状況は、指数制度において重要な判断基準であり、就労日数や就労時間が長いほど高い指数がつきます。就労していない専業主婦の場合は必要な指数を獲得することが困難であり、特に待機児童が多い地域では入園が難しいのが現状です。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
近年は以前と比べて待機児童が少なく、保育園に子どもを預けられる家庭が増えてきました。しかし、専業主婦のいる家庭の場合、認可保育園への入園希望が通らないケースが少なくありません。特に、子どもが多いエリアや人気の認可保育の場合は、倍率が高く入園のハードルが高いという現状です。
※1参考:全国保育協議会.「保育園を知って下さい」.https://www.zenhokyo.gr.jp/hoikuen/kiji/ho-1.htm ,(参照 2025-03-28).
※2参考:豊島区.「選考基準について」.https://www.city.toshima.lg.jp/260/kosodate/kosodate/hoikuen/nyuen/documents/0610sisuuhyou.pdf ,(参照 2025-03-28).
専業主婦が認可保育園を利用できるケース

ただし、認可保育園の入園審査の判定は、保護者の就労状況だけで決めるわけではありません。実際には、生活環境や家庭の状況に応じて指数を獲得できる仕組みになっており、それによって専業主婦の家庭でも認可保育園への入園が可能となるケースがあります。
以下では、具体的にどのような場合に入園できるのかを詳しく見ていきましょう。
<専業主婦が認可保育園を利用できるケース>
- 同居親族を介護・看護している
- 自身に病気やけが、障害がある
- 自身が妊娠している
- 災害の復旧活動をしている
- 自身が求職活動をしている
同居親族を介護・看護している
自宅で家族の介護や看護を常に行っている場合、家庭での保育が難しいと認められることがあります。例えば以下の介護が必要な場合です。
- ベッドで寝たきりの方の介護
- 認知症で24時間の見守りが必要な方の介護
- 重い障害があり、日常生活に常に支援が必要な方の介護
このような介護や看護が必要な状況であれば、専業主婦でも入園審査に通りやすくなる可能性があります可能性があります。
自身に病気やけが、障害がある
親の就労状況にかかわらず、病気やけが、身体障害や精神障害が理由で家庭での保育が困難な場合には、認可保育園を利用できます。病気やけがの程度、障害の状況などについては、医師の診断書などの証明書類が必要となる場合があります。
このような特別な事情がある場合、保育の必要性が認められ、入園の優先順位も考慮されるケースが多いです。
自身が妊娠している
母親が妊娠・出産している場合、専業主婦でも認可保育園の利用が可能です。例えば、以下の事情がある場合にも、指数を獲得でき、認可保育園への入所が認められることがあります。
- 妊娠期間中に上の子どもの面倒を十分に見ることが難しい
- つわりがひどく日常生活に支障がある
- 母親が出産のために入院することになった
出産の予定がある方は、具体的な状況や利用可能な条件について、自治体の保育課や子育て支援窓口に早めに相談してみることをおすすめします。
災害の復旧活動をしている
自宅が損壊して災害の復旧に当たっている場合は、一時的に認可保育園を利用することが可能です。これは被災した家庭の生活再建を支援するための施策の一つとして、位置づけられています。
自身が求職活動をしている
保護者自身が仕事を探している場合も、保育園を利用できます。求職活動に専念できる環境は、保護者にとってより質の高い就職活動、ひいては早期の就職決定を促します。ただし保育の必要性が認められるのは求職期間中なので、自治体や保育園によって決められた猶予期間(2〜3カ月以内)までに仕事を決めなければいけません。
猶予期間内に就職先が決まらない場合は、保育園の利用継続が難しくなる可能性があるため、計画的な求職活動が重要です。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
保育園の入園申請の際、働いている場合は就労証明書を提出しますが、求職活動中の場合は「求職活動申立書」の提出が必要な地域もあります。求職活動申立書には、企業と面接した日時や、ハローワークへの相談やセミナー参加などの記録を記入します。そのため求職活動中は、自身で記録を取ったり、求職活動実績の証明となる書類をハローワークからもらったりしておきましょう。
専業主婦が認可保育園を利用するには?
前述したケースには該当せず「やはり認可保育園の利用は難しいのではないか」と思っている方もいるでしょう。しかし前述した内容以外にも、保育園を利用できる方法があります。以下では認可保育園を利用するために検討できる、さまざまな方法について詳しく解説します。
<専業主婦が認可保育園を利用するには?>
- 入園時期を後ろ倒しにする
- 個人事業主になる
- 待機児童数の少ない地域に引っ越す
入園時期を後ろ倒しにする
保育園では子どもの年齢が上がるにつれて、保育士一人当たりの受け入れ可能な園児数が増加します。特に1歳児以降は保育士一人当たりの受け入れ人数が増えるため、入園のチャンスが広がります。そのため時期を少し遅らせれば、入園できる可能性が高いです。
特に人事異動や転勤が多く発生する10月頃が狙い目です。この時期は退園する園児も出てくるため、空きが出やすくなります。さらに、4月の一斉入園時期と比べて競争率が下がることも多く、入園のチャンスが高まります。
個人事業主になる
指数を獲得する手段の一つとして、個人事業主として活動を始めるのも良いでしょう。この方法は、就労証明を得るための有効な選択肢の一つです。ただし、開業届や実績を証明できる書類を提出する必要があります。
個人事業主として開業する際には確定申告書類や収支内訳書、取引先との契約書などの提出が求められる場合があるので、事前に準備しておきましょう。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
専業主婦がすぐに始めやすい個人事業としては、在宅でできる仕事や家事の延長でできる仕事などが挙げられます。在宅ワークではWebライターやデータ入力、SNS運用などがおすすめです。ハンドメイドが得意な方は、作品をフリマアプリで売るのも良いでしょう。また子育て経験のある方や家事が得意な方は、ベビーシッターや家事代行などの仕事も選択肢として考えてみてください。
扶養内でパートをする
保育園に入園できる効果的な手段の一つとして、扶養の範囲内でパート就労を開始することが挙げられます。入園審査において重要な就労実績を示せます。
タイミングとしては、入園希望申請の段階でパートを始めるのが良いでしょう。早めに就労を開始すれば、保育の必要性を示すとともに、安定した収入実績を提示できます。就労証明書の提出時により具体的な勤務実績を示せれば、入園審査での評価にプラスとなるでしょう。
待機児童数の少ない地域に引っ越す
どうしても近所の保育園に待機児童が多い場合は、より入園しやすい地域への引っ越しを検討するのも方法の一つです。特に、保育園の数が充実している地域や新しい保育施設の開設が予定されている地域は、入園の可能性が高くなる傾向があります。
ただし認可保育園の入園条件は自治体ごとに異なっているため、地域の条件を詳しく確認しましょう。
各自治体のサイトでは、地域ごとの待機児童数や保育園の定員数、入園条件などの詳細な情報を確認できます。待機児童数の少ない地域を見つけ、引っ越し先の候補として検討することがおすすめです。
引っ越しを考える際は、通勤時間や生活環境なども併せて考慮しましょう。
認可保育園以外の選択肢も検討するのがおすすめ

「認可保育園への入園がなかなか決まらない……」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。しかし、保育の選択肢は認可保育園だけではありません。認可保育園への入園が難しい場合は、認可保育園以外のさまざまな保育サービスの利用をぜひ検討してみてください。自身の生活スタイルに合わせて、認可保育園以外の保育施設やサービスを検討すれば、子どもの保育環境を整えることが可能です。
以下では、おすすめの保育サービスを詳しく紹介します。
<認可保育園以外の選択肢>
- 認可外保育園
- 認定こども園
- 一時保育
認可外保育園
認可外保育園は都道府県知事からの認可を受けていない保育施設ですが、それぞれの施設が独自の特色を持って運営しています。
認可外保育園は、行政の入園基準に準拠しないため、認可保育園と比較して、入園の可否や手続きにおいて柔軟な対応が期待できます。特に決まった入園条件はないため、働いていない専業主婦でも利用できる場合があります。
各保育園が独自の選考基準を設けており、施設の方針や特徴によって優先順位が異なります。保育理念や運営方針も施設ごとに特徴があるため、子どもに合った環境を見つけやすいのがメリットです。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
認可保育園は保育の質が安定しており、保育料は所得に応じて変動するものの比較的安価です。ただし人気が高く、入園は選考制で難しい場合があります。一方、認可外保育園は保育料は園によって高いケースもありますが、比較的入りやすく、独自の保育や柔軟な預かりサービスが魅力です。保育料や安定性を重視するなら認可園、柔軟性を重視するなら認可外がおすすめです。
認定こども園
認定こども園は幼稚園としての教育機能と保育園としての保育機能の両方を備えており、国や自治体から正式な認定を受けた総合的な保育施設です。
子どもの年齢や保護者のニーズに応じて、柔軟な保育サービスを提供しています。1号認定(満3歳以上の子どもの教育を目的とする認定)の場合は、保護者の就労状況などの要件を満たす必要がなく、専業主婦でも利用しやすくなっています。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
認定こども園は大きく4つの種類に分けられます。幼稚園と保育所の機能を一体的に提供する「幼保連携型」、幼稚園が保育所の機能を備えた「幼稚園型」、保育園が幼稚園の機能を備えた「保育所型」、地域の特性に合わせて柔軟に教育・保育を提供する「地方裁量型」などがあります。保護者の就労状況に関わらず利用できるため、専業主婦でも利用ハードルが低いのが特徴です。保育園と幼稚園、どちらの要素も備わっているので「どちらの要素もほしい」という家庭にはぴったりでしょう。
一時保育
一時保育は、時間単位で一時的に子どもを預けられるサービスです。急な用事や通院、リフレッシュなど、さまざまな理由で利用できます。多くの施設では、事前登録をすると必要なときに柔軟に利用することが可能です。
就学前の子どもであれば保育の必要性の認定にかかわらず、一時保育を提供している認可保育園や認定こども園などを利用できます。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
仕事や通院、冠婚葬祭などやむを得ない理由がないと一時保育を利用してはいけないと思っている専業主婦の方もいますが「美容院に行きたい」「一人でゆっくりお茶がしたい」など、リフレッシュを目的に利用することも可能です。一時的に子育てから離れ、気分転換することですることまた笑顔でお子さんと向き合えるはずです。なお利用の際は申請書類のほか、タオルやおもちゃ、着替え、おやつ、飲み物などが必要になるので、事前準備をお忘れなく。
2026年度からは「こども誰でも通園制度」が開始予定
現行の幼児教育・保育制度に加えて、全ての子どもたちの健やかな成長を支援するため、新たな通園制度が導入されます。それが「こども誰でも通園制度」です。この制度では、各月で定められた利用可能時間の範囲内で、保護者の就労状況などの要件に関係なく、時間単位で柔軟に保育サービスを利用できます。
この制度改革は、子育て世帯のニーズに応える形で2026年度から本格的に実施される予定です。より多くの子育て世帯が利用しやすい保育環境が整備されることが期待されています。
※参考:こども家庭庁.「こども誰でも通園制度について」.https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/daredemo-tsuen ,(参照 2025-03-28).
まとめ
専業主婦でも求職活動や子育ての負担軽減など、さまざまな理由で保育園を利用できます。ただし、利用には自治体の審査があり、就労している家庭が優先される場合が多いため、事前に居住地域の保育園の利用要件を確認することが重要です。
保育園以外にも認可外保育園や認定こども園、一時保育など状況に応じて利用できるサービスがあります。記事を参考に、自分に合ったサービスを利用してみてください。
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よくある質問
専業主婦が認可保育園を利用する場合、どのようなケースが優先されやすいですか?
専業主婦の方が認可保育園を利用できるケースはいくつかありますが、中でも優先順位が高くなりやすいのは、同居親族の介護・看護が必要な場合、ご自身に病気やけが、障害がある場合、妊娠・出産を控えている場合など、家庭での保育が困難な状況と認められるケースです。
求職活動中の場合も利用できますが、利用期間に制限があります。自治体によって判断基準が異なるため、お住まいの地域の保育課に具体的な状況を説明し、相談することをおすすめします。
認可保育園に入れない場合は、他の保育施設を検討するべきですか?
認可保育園への入園が難しい場合は、認可外保育園を検討するのは一つの選択肢です。認可外保育園は入園基準が比較的緩やかな場合があります。
しかし、すぐに認可外保育園に絞るのではなく、他の選択肢も検討することをおすすめします。例えば認定こども園は、1号認定であれば専業主婦でも比較的利用しやすい場合があります。また一時保育を利用して短時間だけ預けるという方法もあります。
さらに、入園時期を遅らせる、個人事業主として働く、扶養内でパートを始めるなど、認可保育園への入園の可能性を高める方法も検討してみましょう。
「こども誰でも通園制度」は、専業主婦にとってどのようなメリットがありますか?
「こども誰でも通園制度」は、専業主婦の方にとって大きなメリットとなる可能性があります。この制度は、保護者の就労状況に関わらず、月ごとに定められた範囲内で時間単位で柔軟に保育サービスを利用できるため、これまで保育の必要性が認められにくかった専業主婦の家庭でも、子どもを保育園などに預けやすくなります。
これにより「急な用事ができた」「短時間だけ仕事をしたい」「少しリフレッシュしたい」など、さまざまなニーズに対応できるようになることが期待されます。制度の詳細な利用条件や時間数などは、今後の情報公開を待つ必要がありますので、自治体の情報を注視しておきましょう。
監修者情報

礒部はるか
保育士資格・幼稚園教諭一種免許状を保有。大学卒業後、学童・児童館にて保育士として従事。その後、保育園にて乳幼児クラスを担当。現在は複数の保育メディアにてライター・編集者・監修者として活動。子育て中の保護者の悩みに寄り添った情報発信を心がけている。