「保育士資格は国家資格じゃない」と見聞きし、不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。もしかすると、現役の保育士さんの中にも、「実は国家資格じゃないの?」と疑問に思っている方がいるかもしれません。
しかし、保育士資格は、児童福祉法で定められているれっきとした「国家資格」です。保育士資格を取得している人しか、保育士と名乗れません。
本記事では、保育士資格の定義や取得方法、他の資格との違いを分かりやすくご説明します。
【この記事で分かること】
- 保育士資格は国家資格
- 保育士資格を得る方法
- 保育士試験の概要
もくじ
保育士資格は「国家資格」

保育士資格は、国の法律に基づいて定められた国家資格です。2003年11月29日に児童福祉法が改正され、それまで民間資格だった「保母資格」が、国家資格である「保育士資格」となりました。この改正により、保育士として働くためには、保育士資格を取得していることが必須条件となったのです。
児童福祉法の第18条の4には、「保育士登録簿に、氏名、生年月日その他内閣府令で定める事項の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者」と、保育士の定義が明確に定められています。
保育関係の仕事をしている人を、以前は「保母」「保父」などと呼んでいましたが、国家資格になったのを機に「保育士」に呼び方が統一されました。
また保育士資格は、名称独占資格に該当します(児童福祉法第18条の23)。名称独占資格とは、有資格者しかその名称を名乗ることができない資格のことです。そのため、保育士資格を取得していない人は、「保育士」と名乗ることはできません。
※参考:e-Gov 法令検索.「児童福祉法」.https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000164 ,(参照 2025-06-09).
保育士資格を得るための主な2つのルート

保育士資格を取得するには、主に2つの方法があります。ご自身の状況に合わせて、どちらのルートが合っているかを確認してみてください。
<保育士資格を得るための主な2つのルート>
- 指定保育士養成施設を卒業
- 保育士試験を受験
ルート1:指定保育士養成施設を卒業
1つ目のルートは、指定保育士養成施設を卒業する方法です。都道府県知事の指定する保育士を養成する学校その他の施設で、必要な単位を修得して卒業すると、保育士試験を受けることなく保育士資格を取得できます。
都道府県知事の指定する保育士を養成する学校その他の施設に該当するのは、4年制大学や短期大学、専門学校などです。社会人の方も保育士を目指しやすいように、学校によっては通信制の課程や夜間コースを用意している施設もあります。
※参考:e-Gov 法令検索.「児童福祉法」.https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000164 ,(参照 2025-06-09).
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
指定保育士養成施設を経由して保育士資格を取得するメリットはたくさんあります。たとえば、同じ志を持つ仲間と互いに励まし合いながら学べる点です。また大学や専門学校と連携している保育園に紹介してもらえる機会も多く、就職活動を有利に進められます。さらに、キャリア相談支援といったサポートも充実しているので、将来の進路に悩んだときも安心して相談できます。
ルート2:保育士試験を受験
2つ目のルートは、保育士試験を受験して合格する方法です。
大学・短期大学・専門学校を卒業されている方であれば、学部や学科を問わず保育士試験の受験資格が得られます。中学卒業や高等学校卒業の方の場合は、児童福祉施設での実務経験が一定の条件を満たせば、受験資格を得られます。
ご自身の学歴や職歴で受験資格があるかが不安な場合は、後ほどご紹介する「よくある質問」も参考にしてください。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
保育士試験の受験資格は多様で、大学や短大、専門学校の在学・卒業者だけでなく、高校卒業後に児童福祉施設で一定の期間(2年または5年)勤務した方にも受験資格があります。また外国で14年以上の教育課程を修了した方も対象です。学歴や経歴に応じた柔軟な受験条件が設けられているため、自分に合ったルートで保育士を目指すことができます。
保育士試験の概要
保育士試験は、筆記試験と実技試験で構成されています。まずは筆記試験に合格しなければ、実技試験を受けることはできません。
ここでは、保育士試験の概要を詳しく解説していきます。
<保育士試験の概要>
- 試験実施時期
- 試験内容
試験実施時期
保育士試験は、年に2回実施されています。2025年の試験日程は以下の通りです。
- 前期試験:
- 筆記試験:4月19日(土)、20日(日)
- 実技試験:6月29日(日)
- 後期試験:
- 筆記試験:10月18日(土)、19日(日)
- 実技試験:12月7日(日)
年2回チャンスがあるので、ご自身のスケジュールに合わせて受験時期を検討できます。
試験内容
保育士試験には、筆記試験と実技試験があります。筆記試験は、以下の9科目です。
- 保育の心理学
- 保育原理
- 子ども家庭福祉
- 社会福祉
- 教育原理
- 社会的養護
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
各科目において、満点の6割以上の得点で合格となります。ただし、「教育原理」と「社会的養護」は、両科目とも満点の6割以上の得点で合格です。片方だけ6割以上の得点が取れても、合格にはしてもらえません。
実技試験に進めるのは、筆記試験の全科目に合格した方のみです。筆記試験の内容だけを見ると「範囲が広い」「勉強が大変そう」と感じるかもしれませんが、一度合格した科目は3年間有効のため、数回に分けて着実に合格を目指す選択肢もあります。
一方で実技試験は、以下の3分野から2分野を選んで受験します。
- 音楽に関する技術
- 造形に関する技術
- 言語に関する技術
実技試験では自分の得意な分野を選べるので、強みを生かして取り組めるでしょう。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
保育士試験の筆記試験はマークシート形式で、複数の選択肢の中から正しい組み合わせを選ぶ形式が多いのが特徴です。実技試験の「音楽」では2曲をピアノもしくはギターで課題曲を弾き歌いして、「造形」では課題テーマを絵画などで表現します。「言語」では指定された昔話を子どもが集中できるように語ります。どの実技分野も実際の保育場面を想定した内容となっており、保育士としての実践力が重視されます。
関連資格を取得していれば試験の一部が免除になるケースも

「筆記試験で、全ての科目に合格できる自信がない……」という方もいるかもしれません。実は、所持している資格によっては、保育士試験の一部が免除になるケースがあります。
ここからは、保育士試験の一部が免除になる関連資格についてご説明します。
幼稚園教諭免許状
幼稚園教諭免許状をお持ちの方が保育士試験を受験する場合、保育士試験で免除になる科目があります。免除になる科目は、「保育の心理学」「教育原理」「実技試験」です。
ただし、2025年6月現在では、2029年度末までの特例制度が実施されています。特例制度の対象は、幼稚園教諭免許状を有し、幼稚園などで3年以上かつ4,320時間以上の実務経験がある方(3年特例)と、子ども・子育て支援新制度施行後の幼保連携型認定こども園で、保育教諭として2年以上かつ2,880時間以上の勤務経験がある方(幼保2年特例)です。
特例制度を利用すると、指定の保育士養成施設において習得した単位数に応じて免除される試験科目が増えます。例えば、3年特例の場合は特例教科目8単位、幼保2年特例の場合は6単位を修得すると、保育士試験が全科目免除になります。
特例制度を利用することで、より効率よく保育士資格の取得を目指せるので、該当する方は活用するのがおすすめです。
※参考:子ども家庭庁.「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」.https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/hoikushi-shikaku-tokurei ,(参照 2025-06-09).
社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士
社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士のいずれかの登録証をお持ちの方は、登録証のコピーを提出することで、「社会的養護」「子ども家庭福祉」「社会福祉」の3科目が免除されます。
また、指定保育士養成施設で、試験に対応する科目を個別に修得(科目等履修)し、施設が発行する証明書(専修証明書)を提出すれば、保育士試験の筆記試験や実技試験の一部、あるいは全部が免除となることもあります。修得した科目が該当するかどうかは、指定保育士養成施設に確認しましょう。
まとめ
保育士資格は、児童福祉法で定められた国家資格で、有資格者しかその名称を名乗ることができない「名称独占資格」です。そのため、保育士資格を保持している人しか「保育士」とは言えません。
保育士は、子どもたちの成長を支え、保護者の方々をサポートするお仕事です。もしあなたが保育士としての一歩を踏み出したい、あるいは現在の働き方に悩んでいて転職を考えているのであれば、ぜひ「保育のお仕事」にご相談ください。
「保育のお仕事」は、保育士・幼稚園教諭さん専門の転職支援サービスです。あなたが安心して転職活動を進められるよう、保育業界のプロが丁寧にサポートします。まずは、LINEの友だち追加をして、転職活動に役立つ情報を手に入れませんか。
監修者情報

礒部はるか
保育士資格・幼稚園教諭一種免許状を保有。大学卒業後、学童・児童館にて保育士として従事。その後、保育園にて乳幼児クラスを担当。現在は複数の保育メディアにてライター・編集者・監修者として活動。
よくある質問
保育士資格は国家資格なの?
保育士資格は児童福祉法で定められた国家資格で、 厚生労働省が管轄しています。
以前は「保母資格」という民間の資格でしたが、2003年の児童福祉法改正によって、現在の国家資格である「保育士資格」に変更されました。この法改正を機に、保育士として働くには、保育士資格の保有が必須になりました。
保育士の専門性や社会的な役割がより一層認められるようになり、自身の仕事に誇りを持って向き合いやすい環境が整っています。
保育士資格は国家試験を受けないと取得できない?
指定保育士養成施設を卒業すると、国家資格を受けなくても保育士資格を取得できます。指定保育士養成施設とは、都道府県知事が指定した保育士を養成するための学校(4年制大学、短期大学、専門学校など)です。所定の単位を修得して卒業すれば、保育士資格を取得できます。
指定保育士養成施設を卒業するルートで保育士資格を取得するメリットは、実践的な学びを得られることです。学校に通う中で、歌や手遊び、絵本の読み聞かせなど、実際の保育現場で役立つ技術を身に付けられます。保育士に必要なスキルを深めながら資格を取得したい方には、このルートがおすすめです。
保育とは無関係の大学の学部を卒業した場合、受験資格は得られる?
学校教育法に定められている大学や短期大学を卒業している場合は、学部や学科に関わらず、保育士試験の受験資格を得られます。また現在大学に在学中の方や中退された方でも、2年以上在学していて、かつ62単位以上を修得済みであれば、受験資格があります。
学校教育法に基づく学校以外、または海外の学校を卒業された方は、受験資格の事前確認が必要です。それぞれ確認や申請の手順が異なるため、まずは保育士試験事務センターに問い合わせましょう。