保育ノウハウ

環境構成とは|保育における4つの要素や考慮のポイントを解説

毎日の保育の中で「子どもたちがなかなか落ち着かない」「遊びが続かない」と感じることはありませんか。

そのようなときは、保育室の環境構成を少し見直してみるのも一つの手です。モノの配置を少し変えるだけで、子どもたちの集中力や意欲が引き出されクラスが落ち着くことがあります。

本記事では、環境構成の基本から考慮するポイントまで詳しく紹介します。記事の内容を参考に、子どもたちの笑顔があふれる保育環境を作ってみてください。

【この記事で分かること】

  • 保育の環境構成とは
  • 環境構成の4つの要素
  • 環境構成の作成方法
  • 環境構成で考慮すべきポイント

環境構成とは?

環境構成とは、子どもたちの活動や遊びを支援するために、意図的に保育室や園庭などを整えることです。環境構成には、玩具や教材の配置や空間の使い方、安全性の確保など、さまざまな要素が含まれます。

子どもたちの発達段階や興味関心に合わせて環境構成を工夫すると、主体的な活動や創造的な遊びの促進につながります。季節や行事、活動に応じて環境を変化させることで、子どもたちの学びや気付きを深められるでしょう。

【監修者・礒部はるかのアドバイス】

保育における環境構成は、子どもの発達や学びに大きな影響を与える重要な要素です。例えば、子どもが自由に遊べるコーナーを作り、興味を引く遊具や絵本を置くことで、子どもの自主性や創造性を育むことができます。また、保育室の温度や湿度、空気の質などを考慮し、子どもたちが快適に過ごせるように配慮することも環境構成の一環として挙げられます。これらの工夫を通じて、子どもたちが安全かつ主体的に活動できる環境を整えることが、保育士の大切な役割です。

環境構成の4つの要素

環境構成の4つの要素

環境構成には以下の4つの要素があります。これらの要素は、子どもの成長と発達を支える基盤となり、相互に関連し合っています。それぞれの要素について、具体的に見ていきましょう。

<環境構成の4つの要素>

  • 人的環境
  • 物的環境
  • 自然環境
  • 社会的環境

1.人的環境

人的環境とは、子どもを取り巻く人に関する環境を指します。

保育士との関わりは人的環境の一つです。保育士は、子どもに対する受容的・応答的な態度や豊かな言葉掛けを行うことが求められます。また保育士同士の協力体制と共通理解も、子どもの育ちを支える上で不可欠です。日々の保育における情報共有や意見交換を通じて、より良い保育環境を目指します。

子ども同士の関わりも人的環境の重要な要素です。互いを認め合い、共に学び合える関係性を築くことで、社会性や協調性を育む貴重な機会となります。

人的環境としては、地域の人々との交流も重要です。さまざまな世代や立場の人と関わる経験を積むことで、社会性を広げられます。

人的環境は、子どもたちの心の安全基地となり、安心感・自己肯定感・社会性を育む重要な基盤といえます。

【監修者・礒部はるかのアドバイス】

人的環境は、子どもの情緒に大きな影響を与えます。保育士が「〇〇ちゃんの絵、とってもすてきだね」「〇〇されて嫌な気持ちになったんだね」など、子ども一人ひとりに寄り添った声かけや関わりを行うことで、子どもの自己肯定感が育まれ、保育士との間に信頼関係も生まれます。また保育士同士の関係性も重要です。保育士同士の仲が険悪ですと、子どもは敏感に察知し、不安な気持ちになってしまいます。日々のコミュニケーションや協力し合う姿勢を大切にして、チーム全体で子どもたちを支える環境を作りましょう。

2.物的環境

物的環境は保育室の玩具から教材、絵本、園庭の遊具まで、子どもが関わる全ての物を指します。

物的環境は、子どもたちの安全性と衛生面に十分配慮した空間作りが不可欠です。適切な設備や遊具の配置を通じて、子どもたちが安心して活動できる環境を整えなければいけません。常に清潔な状態の維持に努めましょう。

保育室の環境を設定する際は、活動しやすい動線と空間を意識しましょう。年齢や発達段階に応じた家具配置や仕切りを工夫すれば、子どもたちの自主的な活動や交流を促進する環境を作れます。必要に応じて柔軟に変更できるよう、可動式の家具や設備を取り入れることもおすすめです。

3.自然環境

自然環境は子どもたちが直接触れる動植物(花、木、虫、小動物など)や自然現象(雨、雪、風など)、自然物(水、土、石、光など)を指します。自然環境を通じて、子どもたちは感性を育み、生命の大切さや自然の不思議さを学びます。

自然との関わりを安全に楽しんでもらうには、適切な環境設定と危険予測が欠かせません。毒性のある植物や危険な生き物への対策、天候の変化に対する備えなど、適切な安全対策が必要となります。

自然体験を大切にしつつ、過度な制限は避け、適切な見守りと支援を行いましょう。

4.社会的環境

社会的環境は、園の生活や地域とのつながりに関する環境を指します。季節の行事や伝統文化に触れる経験は、子どもたちの文化的感性を育み、日本の伝統への理解を深める重要な機会です。

地域社会との交流(散歩、行事参加、人的交流)も、子どもたちの視野を広げ、多様な価値観や生活様式に触れる機会です。地域の商店街での買い物体験や、地域の高齢者との交流などの活動を通じて社会性を育めます。

これらの経験を通じて、子どもたちは他者との関わり方を学び、地域社会の一員としての意識が育ちます。このような経験は、将来の社会参加への基礎となる力を養うことにもつながるでしょう。

環境構成の作成方法

環境構成を考える際は、まず保育室の配置図を作成し、その中で工夫したいポイントや配慮すべき点を箇条書きで整理していきます。

作成する際は、活動の場所を明確に記しましょう。遊具や教材などの物的環境の配置も具体的に書き入れます。必要な支援がすぐに行える場所に保育士も配置してください。

配慮するポイントを書く際には、安全面や発達段階などさまざまな観点から考慮すべき点があります。これらのポイントについては、次の章で具体的に説明していきます。

環境構成で考慮すべきポイント

環境構成で考慮すべきポイント

保育の現場において、子どもたちの成長と発達を支える環境構成は重要な要素です。以下では、環境構成を考慮すべき重要なポイントについて詳しく解説していきます。

<環境構成で考慮すべきポイント>

  • 安全性の確保
  • 子どもの主体性・自発性の尊重
  • 子どもの発達状況への適合
  • 周囲とのコミュニケーションの促進

安全性の確保

子どもたちが安全に過ごせる環境を整えることは、環境構成において絶対条件です。施設内の設備や遊具、教材など全ての要素において、安全性を最優先に考慮する必要があります。

同時に、子ども自身が環境との関わりを通じて危険を認識し、適切に判断・回避する能力を育んでいけるような工夫も重要です。危険認識は、子どもの成長における重要な学びの機会となり、将来的な自己管理能力の発達にもつながります。

環境構成で安全性の確保について書く際は、以下のような内容が該当します。

  • 乳児が玩具を飲み込んでしまうサイズではないか、事前に確認する
  • 危険のないようにはさみは保育者が管理し、使用する際に子どもに渡すようにする
  • 園庭の遊具には職員が一人付き、危険な行動をしていないかを見守る

【監修者・礒部はるかのアドバイス】

指導案で環境構成を記載する際は、安全性を確保している旨も書くとより具体的で実践的な計画になります。例えば、室内で体操といった運動遊びをする際は「床に敷いたクッションマットの下に滑り止めシートを挟んでマットがずれないようにする」「体操をしている子どもと待っている子どもが接触しないように白線を引いて、活動エリアを明確に区切る」などの工夫も、環境構成の欄にしっかり明記しておきましょう。

子どもの主体性・自発性の尊重

子どもが自分でやってみたいという動機付けを大切にした環境作りが重要です。子どもたちの自主性を育むためには、自分の意思で遊びを選択し、安全かつ自由に手に取れるような玩具の配置や収納方法を工夫すると良いでしょう。また年齢や発達段階に応じた適切な高さや配置を考慮すると、より良い環境を作れるはずです。

環境設定する際は、子どもの興味や好奇心を刺激するような、多様で魅力的な遊具や素材を用意しましょう。季節や行事に合わせた素材を取り入れたり、さまざまな感触を体験できる素材を提供したりすることをおすすめします。

また大人が一方的に決めつけることなく、子どもが自由な発想で遊び込めるような工夫を心掛けましょう。そのためには、子どもたちの様子を丁寧に観察し、興味や関心に基づいて環境を柔軟に調整していくことが大切です。

子どもの主体性・自発性の尊重についての具体例は、以下の通りです。

  • さまざまな素材を用意し、自分で選択して製作をできるようにする
  • トラブルがあった場合は話し合いの機会を設け、自分たちで解決できるように援助する
  • 事前に必要なものを用意し、自分たちで遊びの設定ができるようにする

【監修者・礒部はるかのアドバイス】

指導案で環境構成を記載する際、子どもの主体性・自発性を育む工夫も具体的に書いておきましょう。例えば、クリスマスの製作では「いろいろな色のリボンや素材を用意して、子どもが自分で選んで作る楽しさを味わえるよう促す」といった形で、子ども一人ひとりの個性や発想を尊重した環境を整えることが大切です。製作の過程では、ほかの子どもや保育士との会話でアイデアが生まれることもあるので、保育士から「〇〇してごらん」と支持するのではなく、想像力を刺激するような言葉がけを意識しましょう。

子どもの発達状況への適合

子どもの発達には個人差があり、それぞれのペースや特性に合わせた環境が大切です。すべての子どもが安心して活動できるよう、日々の保育の中で環境づくりに気を配りましょう。

手指の発達や運動能力、認知・言語能力、社会性など、さまざまな視点から子どもの発達を捉えながら、必要に応じて環境を見直していくことが求められます。

発達の見通しを持ちながら、子どもの成長に応じて少しずつ環境を調整していくことで、よりよい保育につながっていくでしょう。

例えば以下のような工夫があります。

  • 食具は子どもの発達に合ったものを用意し、個々の状況を見て箸へ移行していく
  • 運動が苦手な子には無理強いせず、保育者と一緒に行いながら楽しめるようにする
  • 言葉の理解が難しい子には、全体で声をかけた後個別で伝えるようにする

周囲とのコミュニケーションの促進

環境構成の際は、子どもたち同士で交流ができる場を設けることが重要です。複数で一緒に遊びやすい空間や遊具を用意し、子どもたち同士が自然に関わり合える環境を作りましょう。テーブルの配置やコーナーの広さを工夫し、自然な交流が生まれるように調整します。友だちと協力したり、相談したりする場面が生まれるような遊びや活動を取り入れることで、社会性や協調性を育めます。

保育士が子どもたちの間に入り、関わりを仲立ちしやすいような配置を意識すれば、必要なときにすぐに援助ができ、子どもたちの関係作りをサポートしやすくなるでしょう。

周囲とのコミュニケーションを促すための環境構成の具体例には、次のような工夫があります。

  • 複数で遊べる玩具やスペースを用意し、みんなで遊びを楽しめるようにする
  • 製作活動ではグループに分かれ、話し合いをしながら活動を進められるようにする
  • 遊びコーナーを区切り、同じ遊びを友だちと楽しめるよう環境を設定する

まとめ

保育における環境構成は、子どもたちの活動や遊びを支援するための重要な要素です。4つの基本要素である人的環境や物的環境、自然環境、社会的環境を適切に整えることで、子どもたちの主体的な活動と創造的な遊びが促進されます。

特に重要なのは、子どもの発達段階や興味関心に合わせて柔軟に変化させることです。定期的な見直しと改善を通じて、子どもたちが落ち着いて過ごせる保育環境を作っていきましょう。

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監修者情報


礒部はるか

保育士資格・幼稚園教諭一種免許状を保有。大学卒業後、学童・児童館にて保育士として従事。その後、保育園にて乳幼児クラスを担当。現在は複数の保育メディアにてライター・編集者・監修者として活動。

よくある質問

環境構成とは何ですか?

環境構成は、子どもの保育環境を整えることです。環境構成を考える際は、保育室や遊び場の配置を考え、玩具や教材を選び、安全に気を配ることが重要です。

子どもは周りの環境から学び、成長していきます。そのため、子どもの年齢や発達に合わせて環境を整え、季節や活動に応じて設備を調整しましょう。

環境構成を考えるポイントは?

環境構成では、まず子どもの安全確保が最優先です。その上で子どもの自主性を大事にし、大人や友だちとの関わりを通じて、コミュニケーション能力が育つように環境設定をしましょう。

これらの要素をバランスよく取り入れた環境作りを通じて、子どもたちの健やかな成長と発達を支援することが大切です。

環境構成を書くときのポイントは?

環境構成を書くときは、見取り図を作ると、子どもたちがどこでどう動くかが一目で分かり、保育室の準備がしやすくなります。また必要な物や気を付けることを箇条書きにまとめておくと、準備し忘れを防げます。

子どもたちの行動を想像しながら、玩具や教材をどこに置くかを考えましょう。具体的に書いておくと、活動中にトラブルがあっても即座に対応できるようになるはずです。

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