
「保育教諭」という言葉を聞いて、「保育士や幼稚園教諭とは違うの?」「具体的にどのような仕事をするの?」と疑問に感じている方もいらっしゃるかもしれません。
保育教諭とは、保育と教育を一体的に行う専門職のことで、主に幼保連携型認定こども園で求められている職種です。
この記事では、保育教諭のやりがいや保育士・幼稚園教諭との違いを詳しく解説します。新しい働き方を検討している保育士さんや、これから保育の道に進もうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
【この記事で分かること】
- 保育教諭とは
- 保育教諭になるには
- 保育教諭として働くメリット
もくじ
保育教諭は認定こども園で活躍する「教育」と「保育」のプロ
保育教諭は、主に認定こども園で活躍している、教育と保育を一体的に行う専門職です。子どもたちの生活全般を支える「保育士」としての役割と、遊びや学びを通して成長を促す「幼稚園教諭」としての役割を両方とも担います。
保育教諭という単独の資格はありません。またたとえ両方の資格を持っていても、保育園で働けば「保育士」、幼稚園で働けば「幼稚園教諭」と呼ばれます。
なお、2025年現在では国が幼保一体化の推進をしており、幼保連携型の認定こども園では保育教諭の配置が義務付けられています。
認定こども園とは?
保育教諭が活躍している認定こども園は、教育と保育を一体的に提供する施設です。共働き家庭の増加や多様な保育ニーズに応えるため、2006年に創設されました。保護者の就労状況に関わらず、全ての子どもが質の高い教育と保育を受けられ、地域の子育て支援の拠点となることを目指しています。
認定こども園には、施設の成り立ちによって主に4つのタイプがあります。幼稚園と保育所の機能をあわせ持つ「幼保連携型」、幼稚園が保育機能を提供する「幼稚園型」、保育所が教育や子育て支援を行う「保育所型」、地域の実情に合わせた独自の基準で設置される「地方裁量型」です。この中でも、教育と保育が一体的に行われる「幼保連携型認定こども園」が、保育教諭の主な活躍の場となっています。
保育士・幼稚園教諭との違いは?

保育教諭は教育と保育の両方を担う専門職ですが、「保育士や幼稚園教諭とは具体的に何が違うの?」と疑問を抱く方もいるでしょう。
ここからは、それぞれに必要な資格や求められる役割、働く場所の違いをご説明します。
<保育士・幼稚園教諭との違い>
- 必要な資格
- 主な仕事内容と役割
- 対象となる子どもの年齢
- 主な働く場所
必要な資格の違い
保育教諭になるためには、保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方が必須です。
一方で、保育士として働くには、厚生労働省が所管している保育士資格のみ、幼稚園教諭として働くには、文部科学省が所管する幼稚園教諭免許状のみが求められます。
主な仕事内容と役割の違い
保育教諭は、子どもたちの遊びや学びを通して、健やかな成長をサポートする役割を担います。
一方で保育士は、生命保持や情緒の安定など、子どもの保育に重点を置きます。乳幼児の生活全般を支え、基本的な生活習慣の自立を促すことが主な役割です。
幼稚園教諭は教育に重点を置いており、文部科学省が定める教育課程に基づいた指導を行います。集団生活の中で社会性を育み、小学校への円滑な接続を図るための基礎的な教育を行うことが主な役割です。
保育教諭は、保育士が担う「保育」の視点と、幼稚園教諭が担う「教育」の視点の両方を持ち合わせ、実践していくスキルが求められます。
対象となる子どもの年齢の違い
保育教諭が活躍する認定こども園では、0歳児から就学前までと、非常に幅広い年齢の子どもたちと関わります。乳児から幼児まで、長期的に子どもたちの成長を見守れることが、保育教諭の大きな特徴です。
保育士も、0歳から就学前の子どもたちを対象としている点は同じです。一方で、幼稚園教諭の場合は、主に満3歳から就学前の子どもたちを対象としているため、関わる子どもの年齢がより限定されます。
主な働く場所の違い
保育教諭の主な勤務先は、幼保連携型の認定こども園です。一方で、保育士の主な勤務先は保育園です。加えて、一部の認定こども園や乳児院、児童養護施設、障害児施設など、多様な場所で活躍しています。また幼稚園教諭の主な勤務先は幼稚園で、一部の認定こども園でも働けます。
また働く施設にもよりますが、保育士と保育教諭では勤務時間が異なる場合があります。幼保連携型認定こども園の場合は、お昼寝する子どもや夕方に帰宅する子ども、延長保育の子どもなど、保育園よりも多様な過ごし方をするからです。そのため、より細かく時間を区切ってシフト制にしている園もあります。
保育教諭になるには「保育士資格」と「幼稚園教諭免許」の両方が必須
保育教諭として働くためには、「保育士資格」と「幼稚園教諭免許状」の両方が不可欠です。どちらか一方の資格・免許だけでは、残念ながら保育教諭として働くことはできません。
しかし現在、国が推進する認定こども園の普及を背景に、すでに片方の資格・免許をお持ちの方が、もう一方の資格・免許を取得しやすくするための「特例制度」(経過措置)が設けられています。この特例制度をうまく活用すれば、効率よく保育教諭を目指すことが可能です。具体的な取得ルートについては、後ほど詳しくご説明します。
保育教諭資格取得の特例制度
保育教諭の資格取得の特例制度とは、保育士資格・幼稚園教諭免許状のどちらか一方を持っていれば、経過措置の期間中は保育教諭として働ける制度のことです。保育教諭の人材を増やし、認定こども園の普及を後押しすることを目的に設けられています。
この特例制度を利用すれば、もう一方の資格・免許状の取得に必要な単位を通常よりも短い期間で修得できたり、試験科目が免除されたりします。保育教諭として働きたい人にとっては、資格取得にかかる時間や費用を抑えられることがメリットです。
ここでは、特例制度の具体的な内容をご説明します。
<保育教諭資格取得の特例制度>
- 保育士資格の保有者向け制度
- 幼稚園教諭免許状の保有者向け制度
保育士資格の保有者向け制度
すでに保育士資格をお持ちの方が幼稚園教諭免許状の取得を目指す場合、「幼保特例制度」を活用できます。この制度の特徴は、保育士として3年以上かつ4,320時間以上の実務経験(3年特例)があれば、大学で必要な単位(最低8単位)を取得するだけで幼稚園教諭免許状の取得が可能なことです。通常の幼稚園教諭免許取得に必要な単位数に比べるととても少ないため、働きながらでも学びやすいでしょう。
ただし、2025年6月現在、この特例制度は2029年度末までと定められています。利用を考えている方は、期限内に計画的に取得を目指しましょう。
幼稚園教諭免許状の保有者向け制度
幼稚園教諭免許状をお持ちの方が保育士資格の取得を目指す場合、「保育士資格取得特例」を活用できます。この特例制度は、幼稚園で就業中の方だけでなく、以前幼稚園で就業していた方や、現在幼稚園・保育関係の仕事をしていないという方も活用できるのが特徴です。
保育士資格を取得するには、保育士養成施設において特例教科目を修得した後、保育士試験の受験が必要です。ただし、「3年特例」の場合は特例教科目8単位、「幼保2年特例」の場合は特例教科目6単位を修得すると、保育士試験が全科目免除されます。
それぞれの状況に応じて免除される科目が異なるため、ご自身の状況に合わせて取得ルートを選ぶことが大切です。
保育教諭の具体的な仕事内容

保育教諭は、認定こども園で多岐にわたる業務を担います。日々の具体的な仕事内容は、下記の通りです。
- 指導計画作成(教育・保育課程連携)
- クラス運営(環境設定、活動展開、生活援助)
- 園児の観察、記録、評価
- 健康管理や安全確保
- 保護者対応(連絡帳、面談、相談)
- 行事企画や運営
- 地域の子育て家庭に向けのイベント企画・育児相談対応
- 研修参加、自己研鑽
保育教諭は、子どもたちの発達をさまざまな面からサポートするのが主な仕事です。子ども一人ひとりに合ったきめ細やかな支援を行うために、見守り以外にもさまざまな業務を行います。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
保育教諭は、0~2歳児にはおむつ替えや食事の援助、午睡の見守りなど生活面の支援を行い、3~5歳児には製作活動や集団遊び、文字や数の基礎を養う活動を通して、就学に向けたサポートを行います。また、認定こども園は地域の子育て支援拠点でもあるため、地域の子育てイベントの実施や育児相談も担当します。幅広い年齢の子どもの保育・教育、地域の育児支援に携われる点が大きな魅力です。
保育教諭として働くメリット・やりがい
保育教諭の仕事には、子どもの成長を間近で感じられるなど、専門職ならではのやりがいがたくさんあります。また、保育と教育を一体的に担うからこそ子どもへの理解がより深まり、保育スキルも磨かれていきます。
ここからは、保育教諭として働くメリットややりがいを具体的にご紹介します。
<保育教諭として働くメリット・やりがい>
- 幅広い年齢の子どもの成長に関われる
- 幼稚園教諭免許状の保有者向け制度
- 教育・保育の両面からスキルアップできる
- キャリアパスの選択肢が増える
幅広い年齢の子どもの成長に関われる
保育教諭は、0歳から就学前まで幅広い年齢の子どもたちと関われます。ハイハイから歩き始め、言葉を覚え、やがて友だちとの関わりの中で社会性を身に付けていく一連の成長を、同じ場所で、一貫した視点で見守れることがメリットです。
乳児期からの連続した成長を間近で見守れるのは、保育教諭ならではの大きな喜びです。日々の仕事を通して、子どもたちの発達に合わせた関わりをする面白さを、より深く感じられるはずです。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
保育教諭は、0~5歳までの子どもの発達段階に応じた支援を行います。例えば、0歳児には愛着形成を意識した関わりや離乳食のサポート、2歳児にはトイレトレーニングや自己主張への対応、5歳児には就学に向けた文字・数への関心を育てる活動を行います。異年齢保育を実施している園も多く、子どもたち一人ひとりの発達段階を理解しながら、年齢の異なる子ども同士が多様な関わりを楽しめるよう支援します。
教育・保育の両面からスキルアップできる
保育教諭として働くメリットには、教育と保育どちらのスキルも向上できることが挙げられます。例えば、遊びを通じて子どもが学ぶ過程を理解し、それを実践に生かす力や、集団の中で個々の子どもの特性を理解して適切な働きかけを行う力などが磨かれます。実践的な学びを繰り返すことで、保育者としての知識や経験の幅が広がり、子どもたち一人ひとりに合わせた多様な保育ができるスキルが身に付くでしょう。
また教育力と保育力をバランス良く身に付けられるため、保育者としての専門性をどんどん高められます。
キャリアパスの選択肢が増える
保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方を持っていると、将来のキャリアパスの選択肢が大きく広がります。認定こども園でのキャリアアップ(リーダー、主任、園長など)はもちろん、将来的に別の働き方を考えたときにも、保育園や幼稚園といった他の施設への転職をスムーズに進めやすくなるでしょう。
また児童養護施設や障害児施設など、より専門的な支援を必要とする現場でも、両方の資格・免許を持つ人材は重宝される傾向にあります。保育関係の仕事でキャリアを築いていきたい人にとっては、大きな強みとなるでしょう。
保育教諭として働く上で大変なこと
保育教諭として働くデメリットはほとんどありませんが、強いて大変な点を挙げると、幅広い知識やスキルを習得し続けていくことに大変さを感じる可能性があることです。教育と保育の両面に関わるため学ぶべき範囲が広く、常に新しい情報を吸収し、自身の専門性を高めていく努力が求められます。やりがいになる一方で、人によっては負担に感じることもあるかもしれません。
また幼稚園勤務に比べると、認定こども園は保育園と同じように開園時間が長いため、シフト制で働かなければなりません。早番や遅番など、勤務時間が不規則になることで、プライベートとのバランスを取るのが難しいと感じる方もいるかもしれません。
しかし、慣れてしまえば問題なく働ける方がほとんどです。むしろ、時間帯による子どもの様子の違いを学べたり、保護者とコミュニケーションを取ったりするチャンスが生まれます。
保育教諭を目指すのがおすすめな人
保育教諭は、何よりも子どもが好きで、その成長を心からサポートしたいという気持ちがある方におすすめです。特に教育と保育の両方に関心がある方には、もってこいの仕事です。
また乳児から幼児まで、幅広い年齢の子どもと長期的に関わることを楽しめる人にも向いています。仕事を通して自分自身の成長も感じられるため、スキルアップに意欲的な方は仕事の充実感を味わえるでしょう。
【監修者・礒部はるかのアドバイス】
こども園で保育教諭として活躍する人は、子ども一人ひとりの成長段階や個性に寄り添いながら、保育と教育をバランスよく提供できる人です。私の周りでは、保育園と幼稚園、どちらも勤務した経験のある方や、「就職先を選ぶ際に保育園と幼稚園で悩んだ」という方が活躍しています。そうした方たちは、どちらの視点も持ち合わせているため、幅広い年齢の子どもに対応できるのが強みです。保育と教育の両方に関心がある方には、保育教諭という働き方がぴったりです。
保育教諭の将来性と今後の需要
保育教諭の主な活躍の場である「認定こども園」は、全国的に増加傾向にあります。特に幼保連携型が多く、2021年には6,093施設でしたが、2024年には7,136施設まで増えています。
増加している理由は、共働き家庭の増加や保育ニーズの多様化などに対応するために、国が認定こども園の設置を強く推進しているからです。施設数の増加に伴い、教育と保育の両面に対応できる専門性を持つ人材のニーズも高まっており、保育教諭の募集も今後さらに増えていくと考えられます。
また現代社会では単に子どもを預かるだけでなく、「保育の質の向上」が強く求められています。幼児期の教育・保育の重要性が、社会全体で認識されつつあるからです。教育と保育の両面から質の高い保育を提供できる保育教諭は、今後も社会的な需要がますます高まっていくでしょう。
「長く働きたい」「安定したキャリアを築きたい」と考えている方にとっては、魅力的な仕事になるはずです。
※参考:こども家庭庁.「認定こども園に関する情報(調査結果等)」. https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido/kodomoen/jouhou ,(参照 2025-06-19).
まとめ
保育教諭は、認定こども園で教育と保育を一体的に担う専門職で、主に幼保連携型の園で活躍しています。保育教諭として働くには、保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方が必要です。
認定こども園の数は年々増加しており、保育教諭の需要は高まっています。乳児期から幼児期にかけて長期的に成長を見守れるため、大きなやりがいを感じられる仕事です。また日々の仕事を通して、保育力と教育力の両方を磨けます。スキルアップが期待できるため、あなた自身のキャリアパスの選択肢が増やせることも保育教諭ならではのメリットです。
保育教諭として働いてみたい方は、ぜひ「保育のお仕事」にご相談ください。保育業界のプロが、あなたの状況に合わせた情報提供や、資格取得に関する具体的なアドバイスなどで、就職・転職をきめ細やかにサポートします。
まずはLINEのお友だち登録をして、限定情報や役立つコンテンツを受け取りませんか。
監修者情報

礒部はるか
保育士資格・幼稚園教諭一種免許状を保有。大学卒業後、学童・児童館にて保育士として従事。その後、保育園にて乳幼児クラスを担当。現在は複数の保育メディアにてライター・編集者・監修者として活動。
よくある質問
保育教諭とはどのような職種?
保育教諭とは、教育と保育を一体的に行う専門職で、主に幼保連携型認定こども園で活躍しています。0歳から就学前の子どもを対象に、遊びや学びを通して健やかな成長をサポートするのが仕事です。
生活に重点を置いている「保育士」と、教育に重点を置いている「幼稚園教諭」と違い、保育教諭は両方の役割を担います。
保育教諭になるには?
保育教諭になるには、保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方の保有が必須です。もしどちらかの資格・免許しか保持していない場合は、国が設けている特例制度を利用して、資格取得にかける時間や費用を抑えて、もう一つの資格・免許を取得できます。
ただし、特例制度には経過措置の期間が定められています。特例制度の利用を検討している方は、計画的に準備を進めましょう。
保育教諭になるメリットは?
保育教諭になるメリットは、0歳から就学前まで幅広い年齢の子どもの成長に長期的に関われることと、教育と保育の両方のスキルを実践的に向上できることです。仕事を通してより深く子どもの発達について学べる上に、保育者としての専門性も向上できます。
スキルアップが目指せる仕事のため、将来のキャリアの選択肢の幅も広がっていきます。