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幼稚園の園長の年収はどれくらい? 公立・私立の違いや給料平均、仕事内容を解説

幼稚園教諭として毎日働くうちに、将来は幼稚園の園長を目指したいという気持ちになる方がいるかもしれません。園長として働くとしたら、実際にどれくらい給料をもらえるのかが気になる方も多いでしょう。

本記事では、幼稚園の園長の年収について、公立と私立の違いや相場を交えて具体的に紹介します。園長になる方法や仕事内容、メリット・デメリットについても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

【この記事で分かること】

  • 幼稚園の園長の年収相場
  • 幼稚園の園長の仕事内容
  • 園長になるメリット・デメリット
  • 園長になるための転職のポイント

幼稚園の園長とは

幼稚園の園長は、園の運営や経営を担う最高責任者です。通常の幼稚園教諭とは異なり、保育業務以外にも人事や資金管理など、園の運営に関わる広範囲な業務を行います。園の円滑な運営のために、経営者として長期の計画を立てることや、行政・保護者への対応も業務の一つです。

業務内容は多岐にわたるため、幼稚園の園長には、職員指導力やマネジメント力が求められます。また専門性と人間力を備えた的確な判断と対応も欠かせません。

幼稚園の園長の年収相場

幼稚園の園長の年収相場

幼稚園の園長の年収は、運営母体が私立か公立かによって異なります。ここでは、こども家庭庁が公表した「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」の結果を基に、幼稚園の園長の年収相場を私立と公立に分けて紹介します。退職金の計算方法なども私立と公立では異なるので、違いを見ていきましょう。

  • 私立幼稚園園長の平均年収(給料)
  • 公立幼稚園園長の平均年収(給料)
  • 幼稚園の園長の退職金

私立幼稚園園長の平均年収(給料)

私立幼稚園の園長は、常勤で賞与込みの平均給与月額が約54万2,000円、平均年収は約650万円です。常勤の幼稚園教諭の賞与込みの平均給与月額が約33万5,000円、平均年収が約402万円なので、約1.6倍の年収であることが分かります。なお、非常勤の園長の場合は、賞与込みの平均給与月額が約55万7,000円、平均年収は約668万円と、常勤よりも高額という結果でした(※)。

ただし私立幼稚園の場合は、人気が高い園や教育水準の高い名門園などに勤務する園長になると、年収1,000万円を超えるケースもあります。また施設の規模や園の経営状況など、さまざまな要因によって給料の差が生じることがあるのも、私立幼稚園の特徴です。私立は公立とは異なり、年収が園ごとに変わってくるため、幼稚園の給与体系を前もってチェックしておくと良いでしょう。

※出典:こども家庭庁.「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>」.https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/443197f1-8796-458c-b5c8-27bb782a77d5/a24882bd/20241218_councils_shingikai_kodomo_kosodate_443197f1_18.pdf ,(参照2025-06-02).

【監修者・礒部はるかのアドバイス】

私立幼稚園の園長における給料格差の背景には、園の運営主体や経営方針、規模、地域性の違いがあります。特に、都心の名門園や人気園では園児数が多く、保護者からの収入や補助金が安定しており、経営に大きく関与する園長には高報酬が支払われることも。また英語や体操、ピアノ、プログラミングなどの課外教室で追加収入を得ている株式会社の私立幼稚園も、比較的収入が多い傾向があります。

公立幼稚園園長の平均年収(給料)

公立幼稚園の園長は、常勤で賞与込みの平均給与月額が約65万8,000円、平均年収は約790万円となっています。常勤の幼稚園教諭の平均年収が約486万円で約1.6倍なので、年功序列といえど、給料の上昇幅は私立幼稚園と差はありません(※)。

結果を見ると、私立幼稚園と比べて公立幼稚園の園長の方が年収・給与月額ともに高いことが分かります。年収差は約140万円となっていますが、これは公立幼稚園の職員は地方公務員に当たるためです。転職活動をする際には、こうした給料面の違いも知っておきましょう。

※出典:こども家庭庁.「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>」. https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/443197f1-8796-458c-b5c8-27bb782a77d5/a24882bd/20241218_councils_shingikai_kodomo_kosodate_443197f1_18.pdf ,(参照2025-06-02).

幼稚園の園長の退職金

幼稚園の園長の退職金も、私立と公立によって計算方法が異なります。私立幼稚園の場合は、特に決まった指針はなく、計算方法も園によって変わります。運営元により基準はまちまちですが、退職手当共済制度に加入している園では、「福祉医療機構の退職手当金計算シミュレーション」を用いると、おおよその退職金の計算が可能です。制度に加入していない園や、独自の退職金制度を設けている園などもあるため、その際は事前に確認しておくと良いでしょう。

公立幼稚園の場合は、「地方公務員の退職手当制度」に基づき、以下の計算方法で退職金が求められます。

退職手当額 =基本額 +調整額

基本額は退職日の給料月額に退職理由や勤続年数などを加味したもので、これに月額に応じた調整額が加算される仕組みです。例えば、60歳で定年退職した場合の退職金の目安は、約2,000万円前後となります。公立幼稚園は私立とは違い、園によって退職金の額が変わることがないため、事前に金額を把握しやすいでしょう。

幼稚園の園長になるための資格

幼稚園の園長になるためには、原則として幼稚園教諭一種免許状が必要です。小・中学校などの一種免許状を取得していて、5年以上の実務経験かつ都道府県の幼稚園管理部局に認められた場合には、園長としての資格が得られます。また10年以上教育に従事していれば園長になれるケースもあるため、園への確認が必要です。

加えて、公立幼稚園の園長になるには、都道府県の各自治体が開催する公務員試験に合格しなければなりません。採用後に公立幼稚園の教諭としての勤務経験を重ねてから、管理職試験を受験して合格すれば、晴れて園長の資格が得られます。

私立幼稚園の場合は、主任の経験がある人を園長に採用したいなど、園によって求められる実務経験や経歴が異なります。園長を目指す場合は、事前にどのような人材が園長として採用されるのかといった情報を得ておくのがおすすめです。

幼稚園の園長の仕事内容

幼稚園の園長の仕事内容

幼稚園の園長の業務は、多岐にわたります。主な仕事内容は以下の通りです。

  • 園の運営管理
  • 資金、安全、衛生管理
  • 人材育成、人事業務
  • 保護者対応
  • 行政・自治体対応、地域連携
  • 行事の総指揮

まず、最高責任者として長期の事業計画や保育理念などを作り運営方針を定めます。園の資金管理も園長の責任の下に行われますが、業務負担を軽減するために、事務職員の配置や専用システムが導入されている園も少なくありません。また子どもたちのために園内を安全で衛生的な環境にする設備点検や修理依頼、感染症対策などの安全管理も園長の重要な仕事です。

他にも、職員の採用や研修会などを通じた人材育成、人事管理といったマネジメント業務や、園の窓口として保護者対応なども行います。また保育業務以外に補助金を申請するための書類作成や、自治体からの監査対応、自治体や地域との連携や交流も欠かせません。さらに、幼稚園には運動会や遠足など季節ごとの行事があるので、職員と連携しながら準備から開催までの総指揮を務めるのも仕事の一つです。

【監修者・礒部はるかのアドバイス】

園長は「園全体の運営と管理」、幼稚園教諭は「子どもへの直接保育と現場の実践」が主な役割です。例えば運動会の準備では、幼稚園教諭は競技の構成や子どもの指導、当日の進行を中心に動きます。一方、園長は全体の安全管理、地域や保護者との調整、予算管理を担当します。双方の役割を理解した上で、打ち合わせや会議では役職に関係なく意見を出しやすいようにフラットな雰囲気作りを心掛けると、チームとしての一体感も高まるでしょう。

幼稚園の園長職に就くメリット・デメリット

幼稚園の園長になると、職員を指導する立場になるため、自分の理想とする園作りをすることが可能です。一方で、責任が重くなる、保育以外の仕事が多くなるといったデメリットがあることも忘れてはいけません。ここでは、園長になるメリットとデメリットの両面を知り、園長職についての理解を深めていきましょう。

幼稚園の園長になるメリット

幼稚園の園長になるメリットは、主に以下の3つです。

  • 収入が増えて経済的に安定しやすい
  • 自分の理想の保育ができる
  • 人材育成などやりがいを感じられる

前述した通り、園長は園全体をまとめる責任者として高いスキルが求められるため、年収は他の職員よりも高額になるのが一般的です。園長の仕事は広範囲にわたりますが、スキルや専門性に見合った収入が得られるので、経済的なゆとりも得られるでしょう。

また園長になると、自分の理想とする保育を目指すことができるのも大きなメリットです。年間計画に自身の考えを取り入れた保育理念や教育方針を盛り込むことができるので、園全体の保育の質を高めながら、理想とする保育を形にしていくという、園長ならではの大きなやりがいを感じられるでしょう。食育や運動、音楽など、子どもたちのために特に力を入れたいことや、園の特色を出したいものがあれば積極的に採用することも可能です。

他にも、職員を指導する中で一人ひとりの成長を見られることもモチベーションにつながります。管理職として人材育成に関わることができ、やりがいを感じられるのも幼稚園の園長ならではのメリットです。

幼稚園の園長になるデメリット

園長として働くメリットは多いですが、以下のようなデメリットも存在します。

  • 責任が重くプレッシャーがかかる
  • 保育以外の業務が増える
  • 子どもと関わる機会が減る

幼稚園の園長になると園全体を統括する立場となるため、その分の責任は重くなります。経営や職員の育成、子どもたちの安全、保護者や外部とのやりとりなど、多岐にわたる業務にプレッシャーを感じることがあるかもしれません。教諭のときにはなかった外部とのやりとりなど仕事が広範囲になるので、保育以外の業務が増えて負担やストレスにつながる可能性もあります。

また管理職であるため、保育業務以外の仕事が多く、子どもたちと過ごす時間はどうしても少なくなってしまいます。子どもたちと関わるのが好きで幼稚園教諭になった方にとっては、園長職はデメリットに感じられるかもしれません。園長になったら、これまでの保育で感じていたやりがいを別の形に昇華できないか、経営者としての視点から考えてみるのも方法の一つです。

幼稚園の園長に向いている人の特徴

幼稚園の園長に向いている人の特徴

次のステップとして「園長」というキャリアを考え始めたとき、気になるのは「自分は園長に向いているのかな?」ということではないでしょうか。次の特徴に当てはまる人は、幼稚園の園長に向いているといえます。

  • リーダーシップがある
  • コミュニケーション能力が高い
  • ポジティブ思考
  • 問題が起こっても冷静に対処できる
  • 中立な立場で物事を考えられる
  • マネジメント能力がある など

幼稚園の園長に向いているのは、リーダーの適性がある方です。園長は園の総責任者として職員を率いる力が求められます。職員や保護者、地域の人などと良い関係を築くためにも、リーダーシップやコミュニケーション能力が求められます。加えて、園の経営に必要なマネジメントスキルがあれば申し分ありません。

また園長職は人間関係のトラブル対応など、何かとメンタル面の負担も多いものです。ポジティブな思考力や冷静に対処できる力も、園長にとって必要なスキルとなります。何か問題が起こっても前向きに対処できる人なら、人望も厚くなるはずです。

加えて、園長は常に中立的な立ち位置でいることも重要です。相手によって態度を変えることなく誰にでも平等に接することができれば、園長として信頼されるでしょう。

幼稚園の園長になるための転職のポイント

今の職場からステップアップして幼稚園の園長を目指す場合、園長の求人に応募して転職するのが方法の一つです。しかし、いざ求人を探し始めると、そもそも園長のポストは募集される数が限られており、「なかなか良い求人が見つからない」と感じる方もいるのではないでしょうか。

もちろん、求人サイトで「園長候補」や「管理職」といったキーワードで探すこともできます。しかし、特定のスキルを持つ人材を求めている園の募集は、一般には公開されない「非公開求人」として扱われているケースもあります。そのため、保育業界に特化した転職エージェントなど「プロの力」を上手に活用することがコツです。

専門のエージェントに登録することで、一般には出回らない非公開求人を紹介してもらえたり、これまでのご経験を最大限に生かせる園を一緒に探してもらえたりと、より納得のいく転職活動を進めやすくなるでしょう。

幼稚園教諭からキャリアアップして園長を目指そう

幼稚園の園長の年収は、公立と私立では異なるものの、幼稚園教諭よりも格段にアップします。園長になりたいのであれば、経験を積んで必要なスキルを習得しましょう。

「保育のお仕事」は保育士・幼稚園教諭専門の転職支援サービスです。園長職などの非公開求人もあり、ます。専任のキャリアアドバイザーが、丁寧にヒアリングをした上で転職活動を手厚くサポートするため、初めてこうしたサービスを利用する方にもおすすめです。まずは手軽にできるLINEのお友だち登録で、幼稚園の園長の求人情報やお役立ち情報をゲットしましょう。

監修者情報


礒部はるか

保育士資格・幼稚園教諭一種免許状を保有。大学卒業後、学童・児童館にて保育士として従事。その後、保育園にて乳幼児クラスを担当。現在は複数の保育メディアにてライター・編集者・監修者として活動。

よくある質問

Q. 園長の年収は、結局のところ公立と私立でどちらが高いのでしょうか?

平均年収で見ると、地方公務員の給与体系が適用される「公立」の方が高い傾向にあります。

ただし、私立幼稚園の場合は、園の規模や経営方針、地域などによって給与に大きな幅があるのが特徴です。例えば、人気の高い園や特色ある教育を行う園の園長であれば、年収1,000万円を超えることも珍しくありません。

「安定した収入や福利厚生を重視したい」ということであれば公立が、「ご自身の経営手腕や園の成果に応じて高い報酬を目指したい」というお考えであれば私立が、それぞれ向いているかもしれません。ご自身のキャリアプランに合わせて検討してみてくださいね。

Q. 園長になるには、幼稚園教諭一種免許状が絶対に必要ですか?

原則として一種免許状を持っていることが望ましいですが、「絶対」というわけではありません。

例えば、小中学校の教員免許を持っていて5年以上の実務経験がある場合など、一定の条件を満たせば園長として認められるケースもあります。

ただし、公立幼稚園の場合は公務員試験や管理職試験に合格する必要がありますし、私立幼稚園でも園独自の採用基準を設けていることがほとんどです。将来的に園長を目指すのであれば、キャリアの選択肢を広げるという意味でも、二種免許状から一種免許状への切り替えなどを視野に入れておくと良いでしょう。

Q. 園長になると、子どもと直接関わる時間が減ってしまうのが少し寂しいです。やりがいは変わりますか?

確かに、一人の先生としてクラスの子どもたちと密に接する時間は、どうしても少なくなってしまう傾向にあります。

しかし、園長には新しい形の大きなやりがいが生まれます。それは、ご自身の理想とする保育を、園全体で形にしていくという喜びです。一人の力では難しかったことも、園長という立場で先生方と協力し、園の方針として実現していくことができます。

子どもたちの成長を支える先生方を育てたり、保護者や地域の方々と連携してより良い園を創り上げたりと、「やりがいがなくなる」のではなく、「やりがいの質が変わる」と捉えてみると、園長というキャリアをより前向きに考えられるかもしれません。

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