子どもの好き嫌いに悩む保護者は多いもの…。保育士さんが相談を受けたりするケースもあるのではないでしょうか。好き嫌いが起こる理由には子ども特有の味覚のメカニズムが関係しています。本日はその”大人と子どもの味覚の違い”と好き嫌い克服のポイントとをご紹介します!
※「保育のお仕事」では、有識者の隅弘子さんに食育のお話を伺うシリーズ「しあわせ食育教室」も掲載中!ぜひこちらもご覧ください。第一回は↓から!!
味覚センサーは大人の3倍!子どもの味の感じ方は大人と違う
私たちの舌には味蕾(みらい)という味を感じるセンサーがついています。味蕾は子ども時代に発達し、その数が多いほど味覚を強く感じることができますが、ある時期を過ぎると減少し、30代〜40代頃には子ども時代の約3分の1まで減ってしまいます。つまり子どもの方が大人よりも味覚に敏感であると言えるのです。
子どもの頃苦くて飲めなかった薬が飲めるようになったり、クセの強い食べ物を大人が好んで食べるようになるのも、この味覚のメカニズムが関わっています。ある意味では子どもに好き嫌いが多いのは自然なことなのかもしれませんね。
子どもが甘いものを好む理由…味覚にも発達がある!
子どもたちは甘いものを好む傾向にあります。子どもたちに人気のある野菜もジャガイモやトウモロコシなど甘味を含むものが多いそう。なぜなのでしょうか…?ここでは子どもの味覚の発達について少し学んでみましょう。
おさらい!5つの基本味 | |
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甘味 | エネルギー源のシグナル |
塩味 | ミネラルのシグナル |
酸味 | 腐敗したもののシグナル |
うま味 | タンパク質(アミノ酸) のシグナル |
苦味 | 毒のシグナル |
(辛味) | 辛味は強い刺激からくる痛覚や温覚などから感じるもので基本味には入っていません |
本能的に好む味と経験で好きになる味がある!
5つの基本味のうち【甘味・塩味・旨味】は人間が生きていくうえで不可欠な栄養素、エネルギー・ミネラル・タンパク質を見抜くシグナルとなるもので、本能的に好む味とされています。母乳にもこの3つの成分が含まれています。
なお【苦味・酸味】については毒物や腐敗物などを見抜くシグナルであるといわれています。そのため本能的に好む3つの味とは異なり、経験によって好んでいく味と言えます。好きになるには食事で多くの経験を積むことが大切です。
好き嫌い克服の基本は多くの”食経験”
好き嫌いが起こる要因として、味覚のメカニズムがあることをお伝えしましたが、”食経験”の少なさもひとつの要因。「食べたことのない味、食べなれない味」=「嫌い」と判断してしまい好き嫌いが起こっているのです。繰り返し多くの味覚を経験することで「なじみのある味」=「好き!」に変化させることが、好き嫌い克服のポイントです!
- 初体験の食材はネオフォビア(新規恐怖)に注意!
- “ネオフォビア”とは新しい食べ物に挑戦する際に感じる不安や恐怖のこと。新しい食材を食べた際に不快感を覚えると、その経験から2度と食べたくなくなってしまいます(味覚嫌悪学習)。逆に初体験で満足感が得られれば、その食べ物への嗜好が増す(味覚嗜好学習)ため、ファーストコンタクトは非常に重要!子どもが苦手とする食材の香りを調理法で軽減するなどの工夫が必要です。
豊かな味覚を育てるための5つのポイント
人間の味覚は3歳までにほぼ決まり、8歳頃までには確定すると言われています。そのため特に3歳までに多くの味覚に触れておくことが大切です。ここからは食体験をさせる上での5つの注意点をお伝えします。
味の発見を楽しむ工夫をしよう!
ひとつの食材にある複雑な味、それを楽しみながら感じるために、味覚クイズなどをしてみてはいかがでしょう。「チョコレートはどんな味?」というクイズに対し「甘い!」と答えたら、苦みもあることなどを伝えて、味覚への関心を高めていきましょう。
よく噛むことが味覚を磨く!
味蕾は舌だけでなく上あごやのどにも分布しており、よく噛むことでおいしさをより感じることができます。5つの基本味があることを意識して噛むと「甘じょっぱい」などその複雑に組み合わさった味覚を意識することができます。
薄味になれておくこと
濃い味付けは舌の感覚をまひさせてしまいます。繊細な舌の感覚を養うためにも、健康のためにも薄味を心がけましょう。またご飯もふりかけをかけたり焼飯にするばかりでなく、白米そのものを味わう経験をさせてあげたいものですね。
言葉で表現すれば語彙力もUP
「甘いね」「ちょっと苦いけどくせになるね」など大人が積極的に味を言葉で表現してあげましょう。「コレが甘いで、こっちは酸っぱいなのか」と味への理解が深まります。基本味以外にもみずみずしい、コクがあるなど多くの表現をすることで子どもたちの言語力も鍛えられます。
苦手意識をつくらない調理法の工夫
子どもの苦手とする苦み、食べにくさを感じる固さや繊維感を取り除いてあげるのもポイントです。ダイス状に小さく切る、よく煮込む、とろみをつけるなどで口に運びやすい工夫をしましょう。
【オマケ】野菜嫌い克服♪カンタンレシピ
子どもの多くが苦手意識を持ってる野菜。特に苦みを持つピーマンや特有の香りや食感を持つセロリなどは嫌いな子どもも多いですよね。多くの食体験をさせてあげるためには苦手な野菜も食事に取り入れたいもの…そんなときに役立つ、食べやすく調理も簡単なメニューをご紹介します。
定番おやつ♪野菜入りのいももち
子どもの好きなジャガイモを使い、ほんのりと自然な甘さに仕上がるいももち。細かく刻んだ野菜を加えれば栄養バランスもアップします!苦手なピーマンもこれなら食べられるかも?!
とろみと柔らかさが絶品!チキンと野菜のクリーム煮
味だけでなく食感が野菜嫌いを生み出していることもあります。そういった際には、固さや繊維感を出来るだけ感じない調理法をすることが大切です。細かくしたうえでよく煮込み、とろみをつけたクリームで仕上げれば苦手な野菜も格段に食べやすくなりますよ!チキンの香りで野菜特有の香りも気になりません。
ほんのりした甘さがおいしい!野菜入りベビーカステラ
たこ焼き器があればホットケーキミックスを使用して簡単にベビーカステラが作れます。子どもたちと一緒に作れば食育の一環にも。具のアレンジがきくので、カボチャ、ほうれん草とチーズ、枝豆などいろいろと試してみてはいかが?
編集者より
編集者が幼い頃偏食がひどかった弟。先日久々に会ったら、嫌がっていた野菜や魚を「おいしい」と食べられるようになっていました。大人になって味覚が変わったからかもしれません。保護者の方のなかには、お子さんの好き嫌いが多くイライラしたり焦ったりしてしまう方もいらっしゃるとは思いますが、食体験を積むには時間がかかるものです。ある程度は気長にいろいろな味を味わわせてあげたいものですね。