グローバル化の流れで需要が高まる外国語教育。2020年度には小学校5年生から英語が教科化されることもあり、幼児の英語教育にもますます注目が集まっています。
そこで今回は、幼児英語教育のメリットやデメリットをご紹介するとともに、英語が得意な保育士さんが、語学力を活かして活躍するためのポイントをお伝えします!
英語教育を取り入れる幼稚園・保育園が増加中
小学校では、2020年度より新・学習指導要領が実施され、3年生から「外国語活動」が導入され、5年生からは英語が教科として扱われることになりました。そんななかで、小学校に入学する前の子どもたちが、英語を学ぶことも珍しくなくなっています。
保育園や幼稚園でも英語教育に取り組むところが増えており、2008年から2012年までの4年間で、公立の保育園では英語に取り組む園が倍増。園児獲得に奔走する私立幼稚園では2012年時点で、なんと58%もの園で英語が取り入れられています。
英語教育に取り組む保育園・幼稚園の割合 | ||
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施設種別 | 2008年 | 2012年 |
公立保育園 | 5.3% | 10.7%(5.4%増) |
私立保育園 | 27.5% | 33.8%(6.3%増) |
公立幼稚園 | 16.7% | 17.1%(0.4%増) |
私立幼稚園 | 47.6% | 58.0%(10.4%増) |
英語で保育を行うプリスクールも人気!
英語で保育を行う保育施設「プリスクール」も子どもに英語を学ばせたい保護者に人気。その数は全国で500を超えるとされ、現在も増加傾向にあるようです。
- 【プリスクール(プレスクール)とは?】
- 英語を使用した環境で子どもを保育する施設のこと。カリキュラムの一部に英語教育を含めるのではなく、生活を通して英語を自然に身につけられるとして人気があります。インターナショナルスクールの隣接施設となっているケースや、保育園の中に併設されるケース、独立して経営しているケースなどさまざまな種類があります。
幼児英語教育のメリットとは?
このように、人気の高い幼児英語教育ですが、早期の英語教育には、いったいどのようなメリットがあるのでしょうか。
【メリット1】英語への抵抗感がない
ひとたび英語に苦手意識を持ってしまうと、英語への抵抗感が強くなり、なかなか身に付かなくなってしまいます。子どもたちは、外国語に対する抵抗感が少ないため、スムーズに英語教育に取り組むことができるでしょう。
【メリット2】耳から学ぶことができる
音楽における絶対音感のように、早期に耳から学ぶことが、英語の学習においても大切だといわれています。英語独特の発音の違いに幼いうちから親しみ、音をインプットしておくことができれば、就学後の英語学習もスムーズに進みやすいでしょう。
【メリット3】幼いころの方が知識の習得がしやすい
アメリカの神経生理学者であるレネバーグは、言語については幼児期から12、13歳頃までに完全に習得され、それ以降に学習をはじめても、不十分にしか修得されないとする「臨界期仮説」を立てました。
その時期をすぎると、日常的に耳にする母国語にない音を聞き分ける能力が、下がってしまい、外国語の習得が難しくなるといわれています。そのため幼いころに、外国語を日常的に聞くことが、言語能力の習得に役立つとされています。
【メリット4】遊びの中で楽しみながら学べる
義務的な学習ではなく、遊びや生活の一環として英語に親しむことができるため、抵抗感なく取り組めるのもひとつのメリットです。楽しみながら取り組むことができるでしょう。
幼児英語教育のデメリットは?
その必要性の高さや、グローバル化の流れのなかで「わが子をバイリンガルにしたい!」という保護者のニーズが高まったことなどからも、注目されている幼児英語教育。しかしながらデメリットもあります。
【デメリット1】母国語の習得が遅れる可能性がある
英語教育に力を入れるあまり、母国語である日本語の習得に、支障をきたすケースもあるそうです。家庭ではきちんと日本語で話す環境を整える、日本語の絵本もたくさん読んであげるなど、豊かな日本語に触れる機会を、十分に作ってあげることが大切です。
【デメリット2】会話の中で英語と日本語が混合してしまう
日本語と英語を同時に習得していくと、 言葉が混乱してしまう時期もあるそう。一定の時期を過ぎれば、きちんと使い分けられるようになるともいわれますが、「英語の学習時間」以外は日本語のみを使うなど、きちんと区分を設けて、2つの言語をバランスよく学んでいく必要があります。
【デメリット3】英語アレルギーになることも……
教育熱心な家庭の場合、本来なら楽しみながら身につけられたはずの幼児期の英語が、義務的な押し付けになってしまい、子どもが英語嫌いになってしまうという可能性もあります。
【デメリット4】忘れてしまう可能性
せっかく習得したのに、中学生になるころには、すっかり知識が抜け落ちていた……ということも多いようです。大人になるまでしっかりと英語の語学力を身につけておくには、継続的に英語を使い、学習を続ける必要があります。
幼児英語教育ってどんなことをしたらいいの?
ひとくちに幼児英語教育といっても、英語教育を実践する保育園や、専門スクールなどによって、その取り組みはさまざまです。ここでは年齢別に、どのような取り組みをしたらよいのか、おすすめをご紹介します。
- ◆【0歳~1歳】には英語の歌がおすすめ
- 脳の発達がめざましいこの時期には、本物の英語に触れる機会が手軽につくれる英語の「歌」がおすすめです。この時期の子どもたちの耳は母国語にはない音も、聞き分けることができるといわれています。いわゆる「英語耳」を養うためにも、積極的にネイティブの発音を聞かせてあげるとよいでしょう。
- 英語の歌を集めたCDのほか、幼児英語教育用に作られた教材のCDを利用するという方法もあります。
- ◆【2歳~3歳】には歌やダンスがおすすめ
- 2~3歳ごろには、英語のCDなどで歌を聴くだけでなく、いっしょに歌ったり、踊ったりしながら楽しむのがおすすめです。
- 英語の絵本の読み聞かせもよいですが、正しい発音で聞くことが重要なので、ネイティブの発音が録音されたCDなどを利用するとよいでしょう。
- ◆【4歳~5歳】にはコミュニケーションの機会を!
- 英語の習得のためには、英語でのコミュニケーションが取れる機会を作ることが、とても大切です。あわせてネイティブの講師を呼ぶなど、本物の英語を耳にする機会を設けるとよいでしょう。
英語教材だけで英語力は身に付く?
世の中には数多くの幼児向け英語教材セットが販売されています。親近感のわくキャラクターを起用する、CDやDVDなど、さまざまな教材がセットになっているなど、子どもが楽しみながら英語に親しめる工夫がされています。
日々英語に親しむには便利な教材セットですが、そのいっぽうで、英語でのコミュニケーション能力を養うには、会話など、人との交流の場を設けることも必要でしょう。
「英語が得意」を活かして保育士として働く方法も!
英語教育を実践する保育園や幼稚園が増える今、「英語が得意!」という保育士さんにとっては、その能力を活かせるチャンスともいえるでしょう。
英語を活かして就職することのメリットは?
「英語教育に携わる」という軸から保育士さんが就職先を選ぶ場合、そのメリットとして、「英語が好き」という気持ちを活かして働けることが挙げられるでしょう。また働きながら語学スキルを高めることも可能です。
「英語教育」という視点だけではダメ!
ただ、「英語教育に携われる!」という視点だけで就職先を決めてしまうのはおすすめできません。入ってみてから「保育方針があわない」「労働条件が希望にあわない」とならないように、処遇、勤務地、保育の特徴や園の方針など、さまざまな切り口から、自分にあった職場かどうかを見るように心がけましょう。
どれくらいの英語力が必要なの?
プリスクールや英語教育を行う保育施設で、幼児英語教育に携わりたい!と思っている保育士さんのなかには、「自分の英語力で通用するのだろうか……」と不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
英語教育に力を入れている保育園、幼稚園でも、職員に求められる英語力はまちまちです。
留学経験がある、TOEICで高得点を取得している、などの場合には高い語学力を必要とする園にも応募でき可能性は広がるでしょう。しかし一方で入社時の英語力は不問で、働きながら英語力を高められるケースもあります。ご自身のレベルに合わせて応募先を検討するとよいでしょう。
【参考】TOEICテスト得点から見るレベル感の目安 | |
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【スコア】 | 【一般企業でのレベル感・できることの目安】 |
900~990 |
・専門分野の高度な専門書を読んで理解できる ・英語を話す人たちの議論を聞いて内容が理解できる |
800~895 |
◆国際部門職員に求められるレベル
・英語のwebページから必要な情報や資料を収集できる |
700~795 |
◆国際部門職員に求められるレベル ◆海外赴任の際に求められるレベル ◆中途採用社員に求められるレベル ・会議の案内など社内文書、通達が読んで理解できる |
600~695 |
◆海外赴任の際に求められるレベル ◆中途採用社員に求められるレベル ◆新入社員に求められるレベル ・自分あてに書かれた簡単な仕事のメモを理解できる |
500~595 |
◆新入社員に求められるレベル
・電車やバスの時刻表が理解できる |
400~495 |
◆新入社員に求められるレベル
・看板をみてどんな店か、どういったサービスを提供するかわかる |
編集者より
幼児英語教育にいっそうの注目が集まっている今、「英語が得意」「留学の経験がある」といったスキルは、とても貴重です。
「自分の能力を保育にを活かしたい」という強い思いがあれば、志望動機にも説得力が増すでしょう。
新しい環境に飛びこむのは不安かもしれません。しかしながら、人生は一度きり。「好き」を仕事に活かせる機会があれば、チャレンジしてみるのもよいでしょう。
参考文献・サイト
- ベネッセ教育総合研究所『通常保育時間内の活動・課外活動』(2018/7/30)
- 白畑知彦『言語習得の臨界期について』(2018/7/30)
- DMM英会話Blog『【パパママ必見】幼児英語を始める時に絶対に知っておきたい4つのこと』(2018/7/30)
- 保育ぷらす+『保育士も英語が必要になる?最近の保育業界の英語教育事情とは
』(2018/7/30) - 一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会『TOEICテスト・レベル別評価の一覧表』(2018/7/30)
- NHK生活情報ブログ『過熱する幼児英語教育 背景は』(2018/7/30)
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編』(2018/7/30)