保育士さんの仕事の大変さのひとつが、その”業務量の多さ”。指導計画や保育日誌などの書類作成や、壁面装飾、行事に必要な小道具の制作など、勤務時間内に終わらずに自宅に持ち帰るケースも多いようです。今回は読者の皆さまを対象にアンケートを行った結果から、保育士さんの持ち帰り業務の実態と、軽減のポイントについて考えてみましょう!
読者アンケート!一日の平均持ち帰り業務時間は?
先日読者の皆さまを対象にアンケートを行った結果、一日に持ち帰り業務を行う時間の平均は約2時間。「一切ない」という方もいらっしゃる一方で、3時間以上毎日持ち帰り業務をされている方も。
・実施期間:2014年11月21日~12月7日
・実施対象:
保育士(82%)・幼稚園教諭(16%)・その他(2%)
・回答者数:50人
・平均年齢:28.9歳
・男女割合:女性/98% 男性/2%
- 持ち帰り業務でかかった時間の最長は?
- ◆ 一晩。書類と製作の準備に追われて気がつけば朝でした。(保育士/20代女性)
- ◆ 8時間(保育士/20代女性)
- ◆ 発表会の衣装作り 総計15時間くらい!?(幼稚園教諭/20代女性)
- ◆ 生活発表会の衣装作りで土日に24時間。平日でも6時間はしたことがあります。(保育士/30代女性)
持ち帰る業務の内容は?
日々持ち帰っている業務の内容については、指導計画などの書類作成と、行事前の衣装などの制作が特に大変…というご回答が多くありました。
- 日ごろ持ち帰って行っている業務
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●年間計画・月案などの指導計画
●個人の保育経過記録
●園・クラスだより
●行事に必要な衣装・小道具などの制作
●教室内の装飾物・壁面制作など
●誕生日カードやイベントのお誘いカードなどの制作
●手づくりおもちゃ
●卒園時に渡すアルバム作り
教えて!一番大変だった持ち帰り業務エピソード
では、皆さまが苦労された、持ち帰り業務のエピソードを少し聞いてみましょう。きっと共感できる部分があるのではないでしょうか。
- 書類作成は時間がかかる…
- ◆ 児童表や月案が一番時間かかります。(保育士/50代女性)
- ◆ 年間カリキュラムをPCで打つのにとても時間がかかりました!(保育士/20代女性)
- ◆ 持ち出し禁止書類ですが自宅に持ち帰って作成しました。最大で4.5時間くらいかかり、夜中まで頑張りました。(保育士/20代女性)
- 行事前の準備が大変!
- ◆ ほぼ3日徹夜で、発表会の衣装、小道具などを仕上げました。家族総出で手伝ってくれました。(幼稚園教諭/20代女性)
- ◆ 織姫と彦星のモービルを全クラス分作るのが大変でした。(保育士/40代女性)
- ◆ 1年目の時、龍踊りの龍を1人で作り数日かかりました。道具や材料も多く、持って行くのも持って来るのも大変…(保育士/20代女性)
- ◆ 発表会の衣装や小道具作り。連休をつぶしても終わらず、勤務日以外に出勤してやっていました。(保育士/20代女性)
- やることが多すぎて…
- ◆ 月末の土日は特にひどいです。行事が近い時には会議などに追われて自分の仕事ができず、月案、週案、日案、クラスだより、壁面、シール帳をすべて持ち帰りました。(幼稚園教諭/20代女性)
- ◆ 月末にお便り・誕生会・個人記録・月案・週案が全て重なり…加えて行事の担当の時は毎日夜中の3時まで仕事して、仮眠をとり出勤していました。寝ないで行ったときも…(保育士/20代女性)
- ◆ 月末に実習生が来た時が大変! 休憩中も実習記録と指導案を見ることに費やすので、持ち帰ってお便りと個人経過記録、翌月の月案、さらに保育参観の内容を考えたりしました。(保育士/20代女性)
※アンケートにお寄せいただいたコメントの一部をご紹介しております。
帰宅後の仕事を減らすために…毎日の工夫でできることとは?
毎日頑張って業務を行っているのに、なぜか持ち帰りが一向に減らない…そんな悩みをお持ちの方に、少しでも自宅での業務が少なくなるよう、日頃保育士の皆さまが気を付けているポイントをご紹介します!
スキマ時間を活用しています!
午睡の時間や休憩中にできるだけ仕事を片付ける、という方が多くいらっしゃいました。一日のうち手が少しでも空く時間を考えて、そこで何ができるか、計画を立ててみても良いかもしれませんね。
得意分野を活かして作業分業します!
職員同士のチームワークも大切。全行程を自分でやるのではなく、得意な分野でそれぞれ分業すれば大幅な時間短縮になります。パート職員の方に手伝ってもらうという方もいらっしゃいました。
作業工程はなるべく削減!
例えば【切る】【貼る】の工程が必要な作品を複数作るなら、必要な数の分まとめて【切って】でき上がったらまとめて【貼る】方が効率よく作業を進められます。細かい時間短縮も積み重なれば大きな効率アップになるでしょう。
制作物は長持ちさせる工夫も大切!
必要に応じ、壁面などは繰り返し使える工夫をすれば、新しく作る手間を削減できます。色画用紙の色あせを防ぐにはUV防止スプレーを活用しても良いでしょう。
大切なのは持ち帰らない!という意識付け
「残った仕事は家で…」と意識のなかにあると、無意識のうちに作業効率が下がることもあります。何がなんでも園で終わらせるという意識で、持ち帰り業務を減らそうと努力している保育士さんも多いよう。
自宅での作業もメリハリをつけて!
自宅は職場とは違い、集中力が途切れがち。疲れて帰った後ならなおさらですよね。中には「家だとだらけるのでカフェでやる」という方も。自宅で作業をする際は、アラームなどで時間をしっかり管理し、他の家事などで集中が途切れないように工夫しましょう。
持ち帰りが増えるだけ…形だけの残業削減にしないために…
職場によっては、労働環境改善や残業代をおさえる目的で、残業の削減や持ち帰り業務の禁止を実践している園もあることでしょう。しかし「残業はしないように!持ち帰りは禁止!」というだけでは状況は変わりません。実際、禁じられていても仕事が終わらずに持ち帰っている…という方もいらっしゃいました。
こういった状況を改善するには、まず現状把握が重要です。その上で時間確保や業務の振り分けなど、より具体的に改善策を考える必要があるでしょう。
- 状況改善のために労務管理の上からできることの例
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□ 勤務時間外に業務を行っている時間を把握する
□ 勤務時間内に終わらない仕事をリストアップする
□ リスト化した仕事それぞれにかかる時間を計算する
□ 非効率業務の洗い出しをする
□ その人しかできない仕事とそうでないものに分ける
□ 不足している作業時間を確保する方法を検討する
□ 正規職員と非正規職員の仕事の分担方法を見直す
□ 時間がかかる原因を追究し原因に応じた対処を行う
(事務のデジタル化・システム化の検討)
(指導計画などのフォーマット改善)
(PC技能など必要なスキル習得のための研修実施)
上記は労務管理者向けではありますが、何にどれくらい時間がかかっているか見直すことで、ご自身の状況改善の糸口が見えてくることもあるでしょう。
編集者より
皆さまのご意見を拝見しながら、保育士さんの業務の大変さには、本当に頭が下がる思いでした。国や行政にはこのような現状を踏まえて、処遇の改善を図って欲しいと感じます。
努力家であればあるほど、休日など、業務はしていなくても、仕事のことばかり考えてしまう方も多いのではないでしょうか?ストレスが気付かないうちに蓄積することもありますので、こういった「精神的な持ち帰り業務」にも注意したいもの…。ON・OFFのメリハリをつけて気持ちを切り替えることも大切ですね。
参考文献・サイト
- 働く“ゆる女子”の学びマガジンmanazine
- リクナビNEXT
- Amebablog|男性保育士の本音 たこぼうず