共働き家庭が当たり前になりつつある昨今。
「子どもを預けられる場所がない」ために職場復帰が叶わず、泣く泣くキャリアを手放してしまう保護者の方が後を絶ちません。
とくに勤務時間が不規則になりがちな医療職は、一般園が開いている時間に子どもを送迎できないことがほとんど。保育園の抽選に受かるかどうか以前に、預けられる保育園を探すまでに大きなハードルがあります。
そんな医療職の育児を支援するべく設置されたのが、「病院内保育」と呼ばれる保育施設です。
この記事では「病院内保育」の魅力や特徴、また働く保育士さん目線でのメリットを詳しくご紹介します!
病院内保育とは
病院内保育とは、病院に勤務するスタッフの子どもを預かる保育施設のこと。
24時間交代で働くスタッフを対象とする保育施設がない中、病院が独自に設置したのが始まりと言われています。
勤務時間が不規則になりがちな医師や看護師の育児支援を目的として、施設内、もしくは近隣に併設する形で開かれています。
近年では医師・看護師の数が不足していることから、人材確保のために病院内保育を設置する例も増えているようです。
大病院であれば直営のところもありますが、一般企業の企業内保育と同様、外部の運営会社に委託している病院内保育園も多いようです。
病院内保育の開設・運営によって受けられる補助
病院内保育には、一定の施設基準を満たせば運営費の一部に補助を受けられる「病院内保育所運営事業 」制度や、設置時の工事費などを補助してもらえる「病院内保育所施設整備事業 」制度が存在しています。
保育施設の開設ハードルを下げ、病院内保育を普及させることで、医療スタッフが育児を理由に離職するのを防ぐねらいがあります。
一方、病院内保育は企業内保育のうちのひとつであるため、事業所内保育事業の一環として地方自治体の認可を受ければ助成金を受け取れます。
企業主導型保育事業の一環で申請して、内閣府から補助を受けることも可能です。
施設種別と人員配置のめやす
参考までに、「病院内保育所運営事業」で補助対象となる施設の規模を見てみましょう。
なお補助対象となる施設は、4つの種別に区分されています。
補助対象の病院内保育の種別 | |||
---|---|---|---|
区分 | 保育児童数 | 保育士等数 | 保育時間 |
A型特例 | 1人以上4人未満 | 2人以上 | 8時間以上 |
A型 | 4人以上 | 2人以上 | 8時間以上 |
B型 | 10人以上 | 4人以上 | 10時間以上 |
B型特例 | 30人以上 | 10人以上 | 10時間以上 |
病院内保育の主な特徴
病院内保育は病院内もしくは近隣に設置されている園で、受け入れ対象も病院関係者の子どもがメイン。そのため一般の園とは違った、さまざまな特徴が挙げられます。
- 病院の規模によるが、小規模なことが多い
- 24時間365日開園していることもある
- 職員のシフトに合わせた保育のため、預かる子どもに変動がある
- 保育士に多様な働き方を認めている
病院内保育では受け入れ対象となる層が限定されている上、保護者の出勤状況によって登園する子どもが変わるため、少人数の異年齢保育となるケースがほとんどです。
保育内容そのものは一般的な保育園とさほど変わりませんが、環境が大きく異なることは気を付けておきたいポイントですね。
また当直の医師や夜勤の看護師が働きやすいよう、24時間体制で保育を実施している病院内保育も珍しくありません。
そのため保育士さんにも、夜勤や早朝勤務・宿直勤務などが生じます。正社員でも夜勤に入ったり、シフト制のパートさんが早朝に入ったりと、働く時間が多岐にわたるので注意しましょう。
病院で働くには何が必要?
病院内保育で働くために必須となるのは、原則として保育士資格のみ。
職場は病院ですが、医療に関わる仕事をするわけではないため、医療関係の資格やスキルを取得する必要はありません。
強いて言えば、一般的な園とは少々勝手が異なるため、ある程度の経験を積んだ保育士さんが望ましいでしょう。実際の求人を見ても、経験者を歓迎する向きが大きいようです。
病院内保育で働くメリット
保育士さんが病院内保育で働くメリットは、主に以下のようなものが挙げられます。
- 小規模であることが多く、子どもとじっくり向き合える
- 行事が少ない分、業務負担が軽い傾向にある
- 保護者との連携が取りやすい
- 運営主体によっては高待遇が期待できる
- 夜勤がある場合は、別途で手当が支給されることもある
預かり人数や行事が少ないため業務負担が軽く、子ども一人ひとりに向き合えるといった病院内保育の特徴が、保育士さんから人気を集める大きな要因となっています。
保護者が同じ施設の中で勤務しているのも、子どもの急な体調不良時にもすぐに連携を取れるという点で嬉しいポイントですよね。
また運営母体である医療法人によっては福利厚生が充実していたり、夜勤・早朝勤務に入ることで手当が出たりと、一般園に比べると待遇面でも恵まれているのも魅力です。
病院内保育で働くデメリット
保育士さんが病院内保育で働くデメリットには、主に以下のようなものが挙げられます。
- シフト勤務で固定の勤務がしづらいケースがある
- 夜勤・早朝勤務が発生する場合がある
- 物足りなさを感じる場合もある
- 大規模園の保育ノウハウが身に付きづらい
- 感染症などには十分に注意する必要がある
24時間体制の病院内保育の場合、変則的なシフトを組まれることも珍しくありません。正規職員であっても夜勤に入らなければいけないこともあるので、夜間の勤務に不安がある方にとってはデメリットとなるでしょう。
土日祝日も関係なく開所するので、企業内保育のひとつといってもカレンダー通りの休日は期待できません。
またメリットとして挙げられる業務負担の少なさも、人によっては退屈に感じられるでしょう。一般園であれば経験できる行事準備や集団保育のノウハウが身につきづらい……というのは否定できません。
病院内保育で働く保育士の待遇
病院内保育の給与は、母体となる病院によって大きく異なります。病院の規模や経営状況、考え方などに左右されるため一概には言えません。
ただし一般的な園に比べると、比較的条件のいい園が多いようです。
保育士専門の転職支援サービス「保育のお仕事」に掲載されている求人を見ると、平均月給は17.3万円。最高額は24万円となっています。
しかし実際はここに夜勤・早朝勤務の手当や年2回の賞与がつくため、実際の給与の総支給額はさらに高くなります。
編集者より
病院内保育施設へ転職して「落ち着いて保育ができるようになった」という感想を持たれる方もいれば、「将来、大きい保育施設に転職したら、自分のノウハウが通用しなくなっているかも……?」と心配される方もいらっしゃるようです。
長期的にご自身のキャリアを検討したうえで、それに合った就職が実現できたらよいですね。
皆さまの転職、就職活動がうまくいきますように!
参考文献・サイト
- 厚生労働省「事業所内保育施設設置・運営等支援助成金のご案内」(2020/01/28)
- 厚生労働省「病院内保育所事業に対する支援」(2020/01/28)
- ほいくの森「院内保育所で働く保育士の仕事内容」(2020/01/28)