保育士の悩み

ありえない?!保育園が受ける、保護者の理不尽クレーム事例

保育士の仕事で避けて通れないのが「保護者対応」。
いつも円滑に信頼関係が構築できるのが理想的ですが、全員とスムーズな関係づくりをするのはなかなか難しいですよね。中には理不尽で自己中心的な要求を突き付けてくる保護者もいるでしょう。あなたも、一度はそうした保護者に遭遇したことがあるのではないでしょうか?

今回の記事では読者のみなさまからお聞きした、今までに受けた「ありえない!」要求やクレームとその対応をまとめてまいります!

90%は経験あり!保護者からの理不尽な要望

悩む女性のイラスト
今回アンケートにご協力いただいたのは、保育士さんをはじめとする20名の読者の皆さま。まずは今までの業務のなかで、思わず「ありえない」と思ってしまうような理不尽な要求やクレームを受けた経験があるかどうか伺ってみました。
 
理不尽な要求・クレームに関する調査グラフ1
 
すると20人中、90%にあたる18人が「経験がある」と回答する結果になりました。日頃保育業務にあたる中で、保護者の方から思いもよらない要求をされる機会はやはり多くあるようです。
 

実際にあった!理不尽な要求&クレーム事例と対処法

怒る女性のイラスト
ではここからは実際にあった要求・クレームの内容と、保育士さんのその時の対処方法をご紹介していきましょう。もしかしたら「うちの園でもあった!」と思い当たる部分があるかもしれませんね。
 

◆うちの子は虫刺されNGで!◆
山の中の保育園で、蚊に刺されないで欲しいという要求が…。
【保育士さんの対応】
長袖のシャツを用意してもらい、戸外に出るときは着用。
 
…事情があるのかもしれませんが、まったく刺されないように、というのは難しいですよね。蚊に刺されやすい体質であれば、衣服で調節するのが有効ですが、中には「暑いのになんで長袖なんか着せなきゃいけないんだ!」という理不尽なクレームも…。

 

◆我が子至上主義◆
行事での役決めで「うちの子可愛いから主役以外ないですよね」「席替えでうちの子が好きな〇〇君と同じグループにしてください」との要求。
【保育士さんの対応】
お子さんがどう考えているか、何の役をしたいかを大切に決めたい旨を伝え、保護者のための行事、席替えでないことをやんわり伝える。
 
…うちの子一番!の典型的な自己中心的発言ですね…。主役でなくても大切な役目はありますし、多くの友だちと関わることも大切なことに気付いてほしいものですね…。

 

◆絵が下手なのは保育士のせい?!◆
「絵を描くのが下手なのは保育士のせいだ!」と役所までクレーム。何かあるとすぐに役所にクレームを入れるという繰り返し…。
【保育士さんの対応】
匿名のクレームだったため個人の特定を行う。上司から叱られ、その子に絵画指導をさせられる。
 
絵の良し悪しをとは一体何なのでしょうか。それを決めているのは保護者です。頑張って描いた絵をまったく評価してもらえず、役所にクレームを入れられる…子どもとしても悲しい気持ちになるのでは…?いろいろな考え方もありますが、要求を通すために役所…というのはやりすぎな気がしますね…。

 

◆トイレトレーニングはよろしくね~◆
家ではできないので、トイレトレーニングをしてくださいと言われた。しかしパンツや着替え、タオルなどを用意してくれるよう頼んでも何も持参せず…。他の職員には「○○先生は何度も頼んでるのにトイレトレーニングしてくれない!」と言われた…。
【保育士さんの対応】
できないからやってくれ、ではなく、家庭と保育園、両方の環境に一貫性がなければ子どもが戸惑うだけです。努力もせずに丸投げ…というのは理不尽で、なにより子どもにとって良い環境とは言えないでしょう。

 

◆コインランドリーではないです…◆
保育園で汚した服は全部洗濯して返してほしいとの要求が…。
【保育士さんの対応】
無記名のアンケートで対応ができませんでした。
 
…それはご家庭のお仕事では…?大変なのはわかりますが、保育所は家事代行サービスではないのですから…。

 

◆お人形さん扱い…◆
ケガをさせられるのが嫌だから散歩は行かせないで、ラックから降ろさないで、他のクラスの子を近寄らせないで!」という保護者が…。合同保育だし、人員も少ないので困った。
【保育士さんの対応】
何度も話しましたが解決せず…。他の認可園が決まりそのまま退園されました。
 
…お子さんを心配する気持ちはわかりますが、集団で保育を行う施設への要求ではないですよね…ベビーシッターさんなど、ご自宅で単独でお世話をされた方が良いのでは…と感じますね。

クレーム対応のコツ


保護者のクレームへの対応は、その時の状況に応じて臨機応変にするのがベストです。しかし判断に迷ってしまうケースもあるでしょうし、特に新人保育士さんなどはパニックになってしまうこともあるでしょう。
その要求やクレームが理不尽であればあるほど、「何でそんなことで私が責めらなきゃいけないの!?」と腹立たしくなってしまいますよね。しかしそこで相手を打ち負かそうとしたり、論破して追い返してしまおうとしたりすると、結果的に主任や園長まで出てくる大騒ぎになりかねません。

クレーム対応のコツをしっかり押さえて、平和的解決を模索していきましょう!
詳細は以下の記事をご参考ください。

▼カウンセリング技術を応用!保護者クレームへの対応のコツ(前編)
▼カウンセリング技術を応用!保護者クレームへの対応のコツ(後編)

理不尽な要求は増えている…?その背景とは

赤ちゃんのイラスト
今回ご回答いただいた皆さまに、近年保護者からの理不尽な要求・クレームが増えていると感じると思うかを伺ってみたところ、「増えている」と回答したのは全体の70%。「今までも代わらない」が15%、減っていると回答した方は0でした。
 
中には「要求はしないものの、自分勝手な方が多くなってしまった気がする。園から丁寧に手紙を出しても読んでくれずに、子どもが忘れ物や間違いで、悲しい思いをすることもある」という回答もあり、理不尽な要求をすることだけでなく、保護者が果たすべき役割を果たしてくれないという課題もあることが伺えました。
 
理不尽な要求・クレームに関する調査グラフ2
 

◆理不尽な要求をする保護者が増えた背景とは…?

現代においては、核家族化、地域交流の希薄さなどから、子育てにおいて他者と関わるという機会がとても少なくなっています。また少子化、晩婚化により、子どもを産み育てることが貴重になったことから、子どもを大切にしたい、守りたいという意識が過度に強くなっていることも、集団の中で理不尽な要求をする保護者を生むひとつの要因になっているでしょう。
 
また、ネット社会により情報交換が簡単にでき、ネットで例えば園への不満を公開して意見を求めれば、全国各地の同じ立場の保護者が後押しをしてくれるような環境にもあります。また、共働きがいわば”当たり前”の社会となり、両親とも忙しい中、それでも我が子には少しでも良い思いをさせてあげたいという思いもあるのかもしれません。
 
理不尽な要求、クレームは、その保護者のみに原因があるだけではなく、社会全体として抱える問題の影の部分であるとも言えるのではないでしょうか。

保護者が保育園にクレームを入れる心理


理不尽な要求・クレームをつけてくる保護者に対し、「何て面倒くさい保護者だろう!」と思ってしまうのは簡単です。しかしそれでは問題の根本的な解決にはなりませんし、別のクレームでまた揉め事が起きてしまうかもしれません。
よりより信頼関係を築いていくために、どうして保護者がクレームを入れるのか?について、立ち止まって考えるのもよいのではないでしょうか。

クレームを入れる心理

クレームを言いに園までいらっしゃる保護者はたいてい、「腹立たしい気持ちを受け止めてもらいたい」という状態になっています。まずは受け止めることに専念しましょう。
その気持ちは、普段から我慢していた気持ちから厳選したもの。くれぐれも真摯に対応してください。

保育園に子どもを預けているということは、共働きのご家庭である可能性が高いですよね。つまり、ご両親とも忙しい毎日を過ごされています。少し気に入らないことがあったとしても、わざわざ勇気を出してクレームを言いに来るような保護者はそういません。
保護者は普段から、言いたい不満をため込んで我慢しているのです。

ゆえに保護者から何かひとつでもクレームを入れられたら、本当は他にも言いたいことがたくさんあると考えていいでしょう。これまでの不満が積もり積もって爆発したのが、保育士の目に見える「要求」なのです。

もちろん筋の通らない要求やクレームには毅然と対応しなければなりませんが、保護者がどんな気持ちで意見を言いに来たのかは、頭の片隅にきちんととどめておくといいですね。

編集者より

親子のイラスト
昨今では保育が福祉からサービス業化しつつあるという見方もありますが、保育施設は保護者のニーズに迎合するものではありません。保護者の代わりに、子どもに必要なケアを提供して成長を支える、福祉の視点を忘れてはならないと感じます。
 
子どもを愛すること、守りたいと思うことは間違ってはいませんが、保育の役割や、施設には他の子どもたちも通っているということ、子どもの将来を考えた時に、どのようなことが大切か…一方的に注文をする「お客さま」の立場ではなく、保育士とともに子どもの成長を支える存在として、発言の前に少し考えることが必要なのではないでしょうか。
 
もちろん保育士さんも、保護者が忙しい業務に追われていること、孤立化していることなどの環境的要因にも目を向けなくてはなりません。難しいことではありますが、子どもの成長を支えるためには、どちらか一方の歩み寄りではなく、互いの信頼関係の構築が必要と言えそうですね。

 

【アンケート実施概要】
・実施期間:2015年9月18日~9月30日
・実施対象:
 保育士(80.0%)・幼稚園教諭(15.0%)・その他保育関連職(5.0%)
・回答者数:20人(平均年齢:31.5歳)
・男女割合:女性/100%
 
※ご協力いただきました皆さま、貴重なご意見をありがとうございました!

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