子どもたちの大好きな絵本の読み聞かせ…保育士さんなら毎日のように行っていますよね。この読み聞かせ、子どもたちにどのような影響があるかをご存じですか?本日は絵本の読み聞かせの効果とともに、明日から活かせる、より伝わりやすい読み聞かせのコツについてご紹介していきます!
読み聞かせにはこんな効果が!
「クシュラの奇跡」をご存じでしょうか。クシュラは複雑な障がいを抱えて生まれたニュージーランドの女の子で、医師から精神的、身体的に遅れがあると診断されていました。3歳になるまでものを握ることができず、自分の指先より遠いものは見えなかった彼女ですが生後4カ月から両親が1日14冊の本を読み聞かせたところ、5歳になる頃には平均より高い知性を身につけ、本が読めるようになっていたそうです。
絵本読み聞かせの具体的な効果
- ◆ 子どもの精神状態を落ち着ける
- 『読み聞かせハンドブック』の著者トレリースによれば、人間の声は、親が子どもの精神状態を落ち着かせるための最も強力な道具であるそうです。また読み聞かせは大人と子どもの親密な人間関係を基盤としており、同じ喜びを分かち合い共感する…そんな安心できる時間を提供することもできます。
- ◆ 幸福感を与える
- 絵本は、幼児にとって大人に「読んでもらう」ものであり、読み聞かせの際には、子どもは大人が自分のために読んでくれているという「幸福感」を満喫することができます。
- ◆ 脳への科学的な効果も!
- 日本大学大学院で行われた実験によれば、読み聞かせ中には子どもの脳の大脳辺縁系が活発になっているとのこと。大脳辺縁系は喜怒哀楽を生み出し、その感情に基づいて基本的な行動を決めている大切な部分です。健やかに育つためには、大脳辺縁系へ良い働きかけを行い、情動を豊かにしてあげることが大切であり、読み聞かせはそのために最適と言えるでしょう。
- ◆ 読み手の脳にも働きかける
- 読み聞かせ中、読み手の脳では思考や創造力、コミュニケーション、感情のコントロールといった機能を司る前頭前野が活発に働きます。読み手にとっても緊張や不安を抑制し、リラックスできる効果が期待できます。
- ◆ 好奇心のきっかけをつくる
- 絵本を通じてものごとを楽しいと思える心、好きなものを見いだせる心を育むことができます。
- ◆ 多くのことが絵本から学べる
- 友だちとの関わり方、やさしさ、悲しさ、世界の美しさ…絵本からは実に多くのことを学び取ることができます。自分が主人公だったら…といった視点からものを考え感じることで、より豊かな感受性が生まれます。
- ◆ 集団での読み聞かせが刺激になる
- ある研究によれば集団での読み聞かせでは他の子どもたちに刺激され、一緒に楽しみ理解しようとする積極性が生まれたという報告もあるそう。子ども同士の相互作用と友だちと場と時を共有する喜びがあることで、絵本体験はもっと豊かになります。
知っておきたい読み聞かせの10のポイント
- ◆ 子どもの想像力を邪魔しないようオーバーな表現は抑える
- 大げさに声色を変えたり、身ぶり手ぶりや表情で表現しようとすると、子どもの絵本への興味が中断され現実に引き戻されてしまします。子どもの創造力を途切れさせない程度にとどめましょう。
- ◆ アドリブは入れないようにしよう!
- 本に書かれた文章は場面ごとの絵とうまく合うように考えられたものです。ひとつひとつの言葉を説明したり、言い換えることなく、言葉のリズムを楽しみましょう。
- ◆ 質問などで話を中断するのはNG!
- 子どもから質問があったときは答えてあげるものの、大人から質問を投げかけたり事前に説明をするのはタブー。絵本の世界への集中力や感情移入をストップさせてしまいます。
わからないであろう言葉が出てきたときには、そっとその言葉が示す絵を指さしてあげるなど、読み聞かせを中断しなくとも理解できる環境を作ってあげるのがポイントです!
- ◆ 時間が足りない…文章をカットするなどはNG!
- あらかじめ事前にシミュレーションを行い、どのくらい時間が必要かを計測しておきましょう。既定の時間内に終わらないからと言って余計な文やページを飛ばすのは著作権上の「内容の改変」にあたりますので注意しましょう。
- ◆ 動きをつけたくても絵本は動かさない!
- 表現上の工夫であっても、子どもたちにとっては絵が動いてしまい何も読み取れません。絵本の良さでもある各ページの絵はしっかりと見せてあげましょう。
- ◆ 無意識の早口に注意!
- 気が付かないうちに早口になってしまっている…そんなことはありませんか?子どもたちが物語に集中できるよう、読み聞かせの時には、はっきり、ゆっくり、心を込めて読んであげましょう。また、絵をじっくり見せるためページは少しゆっくりめくると良いでしょう。
- ◆ 絵本が皆に見えるように工夫!
- 理解しやすい読み聞かせのためには子どもたちの配置と絵本の持ち方も重要です。
【子どもたちの座らせ方】
絵本を中心に扇状に座らせ、前の子2人の間から後ろの子どもが見えるようにします。全員に絵が見えるか確認するようにしましょう。また、人数が多い場合には大型の本を選ぶ、絵の大きく明確な作品を選ぶことも大切です。【本の持ち方】
片手で本ののどの下部分を持ち、脇をしめて本が前後左右に傾かないようにします。もう片方の手で、絵が見えやすいようにページの端を押さえて持ちます。 - ◆ 読み終わった後に感想を聞かない
- 読み聞かせでは心の中に広がった絵本の世界を大切にしましょう。子どもたちからアウトプットされない限りは、感想を聞くことはなるべく避け、物語の余韻を楽しむようにしましょう。
- ◆ 繰り返し読むことの大切さ
- イギリスのサセックス大学で行われた研究によれば、同じ本を繰り返し読み聞かせた方が、子どもはより速く新しいことを学ぶそうです。また一度読んだ本に関しては、二度目以降の読み聞かせでは子どもの反応が多くなること、自分の驚きや思ったことを発信することが多くなることがわかっています。対話を楽しみ、絵本の楽しさをじっくり味わう上でも繰り返し読むことが大切と言えます。
- ◆ 読み終わったら裏表紙まで見せて!
- 絵本は表紙から裏表紙まで、物語が続いていることも多くあります。文章のないページでも子どもたちは自由にその世界観を楽しみ、想像を膨らませることができます。しっかりと表紙から裏表紙まで見せてあげるようにしましょう。
読み聞かせの「プロ」による実践解説!
これだけ読んでも、実際には「どうやって読んだら良いのかわからない……」という方もいるでしょう。そこで、【保育のお仕事レポート】では、読み聞かせのプロである「聞かせや。けいたろう」さんに、読み聞かせのポイントを解説してもらいました!
月齢別!絵本の選び方
0歳児の読み聞かせ
乳児は生後6カ月頃からすでに絵本に興味を持ち始めます。言葉を覚える前の読み聞かせでは次のような作品を選びましょう。
- 身近なものや遊びなどが出てくるもの
- シンプルなくり返しが出てくるもの
- リズミカルでわかりやすい言葉、美しい日本語で表現されたもの
- 擬声語や擬態語が出てくるもの
- 絵の色彩や輪郭がはっきりしているもの
- 見開きに一場面が描かれているもの
- シンプルな絵で構成されたもの
1歳児以降幼児の読み聞かせ
言語の獲得や自我の目覚めなど発達が著しい時期、楽しいと思える本を繰り返し読みきかせることが大切です。物語もある程度理解できるようになるので、ストーリーのあるものを選んでも良いでしょう。
- 声に出した時の言葉の響きやリズム感が耳に心地よいもの
- シンプルなくり返しが出てくるもの
- 描写がしっかりしていてイメージが広がるもの
- 物語のテーマをも表現するような芸術的要素を持つもの
- 文章と絵がよく合っているもの
- 主題がしっかりとしていてわかりやすいもの
- 親しみやすく楽しめるもの
5歳以上の年長さんの読み聞かせ
少し長めの作品でも落ち着いて聞けるようになるため、幼児期の絵本選びをメインに、少し長いものも取り入れながら、集中して聞くことが出来るか様子を見ましょう。
「もっとくわしく知りたい!」という方には、発達に合わせたより詳しい選び方を解説した記事も公開していますので、チェックしてみてください。
編集者より
本を読んでいて自然に映像を思い浮かべていることはないでしょうか。そんな時ふと幼い頃の読み聞かせを思い出すことがあります。今文字だけの情報から情景が想像できるのは、母の読み聞かせがあったからなのかもしれません。
人は一生のうちに限られた環境下で限られた経験しかできません。本の世界はどの時代でも空想の世界ですら自由に旅し、体験することができます。日々の読み聞かせを通じて、子どもたちにさまざまな世界を体験させてあげられたらステキですね!